本章では,魚類相の縦断方向の変化とセグメント区分との関係について考察し,魚類相の観点 からのセグメント区分を提案する.15河川のセグメント区分と魚類相区分の関係性を示したもの を図3-17に示す.また,15河川の魚類相の縦断方向の変化を考える際に重要となる 9種の出現 地点の河床勾配を示したものを図3-18に示す.図3-19には魚類相が縦断方向に連続して変化し た13河川のうち,流路延長が短く急勾配河川である本明川を除いた12河川の魚類相区分と河床 勾配の関係性を示した.
3.4.1 魚類相の縦断方向変化
魚類相の縦断方向変化を確認した研究事例は海外では複数みられ,本研究においても15河川中,
白川,球磨川を除く13河川について魚類相が縦断方向に区分され,大規模な堰を有する河川につ いても魚類相の縦断方向の変化が確認された.ただし,白川,球磨川においては魚類相が入れ子 状に変化している(図 3-17).その原因として,堰やダムなど横断構造物による湛水の影響が考 えられる.横断構造物により,上流域でもセグメント 2区間を代表する環境である止水域が発生 すると,魚類相は本来当該セグメントに生息する魚種とは異なる止水域を好む種が出現する.横 断構造物の影響により,本来当該セグメントが持つ環境とは異なる環境構造が形成される.また,
本研究で対象とした比較的大規模な一級河川では,潮止めの役割を果たす河口堰の上下流で魚類 相の縦断方向の急激な変化が認められる河川が多かったが,その他の堰が魚類相の変化を決定付 ける要因ではないことが示唆された.
Huetはヨーロッパの緩勾配河川を源流部から河口まで4つの区間に区分し,各区間は上流から サケ科のブラウントラウト,カワヒメマス,コイ科のバーベル,ブリームの4 種によって特徴付 けられるとした(Huet 1959).TWINSPAN 分析で分類に寄与した種を参考に,ギンブナ(Carassius auratus langsdorfii),オイカワ(Zacco platypus),カマツカ(Pseudogobio esocinus esocinus),ヤリタナ ゴ(Tanakia lanceolata),アブラボテ(Tanakia limbata),ビリンゴ(Gymnogobius breunigii),ウロハゼ (Glossogobius olivaceus),チチブ(Tridentiger obscurus)およびヤマメ(Oncorhynchus masou masou)の9種の 15 河川における出現地点の河床勾配を示したものが図 3-18 である.この図から,九州の河川の 魚類相は上流からサケ科(ヤマメ),コイ科(オイカワ,ギンブナ,カマツカ,タナゴ亜科),ハ ゼ科(ウロハゼ,ビリンゴ,チチブ)によって特徴付けられると考えられる.
図3-17 15河川のセグメント区分と魚類相区分 セグメント
筑後川 菊池川 大分川 嘉瀬川 緑川 五ヶ瀬川
松浦川 遠賀川 川内川 白川 大野川 球磨川 小丸川 本明川 山国川
5 6 7
2-1 1
5 6
M
1 2 3 4 5 6 7
T 2-2
1 2 3 4
1 2 3 4
7
1 2 3
1 2 3 4
7 4
1 2 3 4
5 6
5 6
7 8
5 6 7
5 6
4
6 5
1 2 3 4
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
1 2 3
11
5 6 7
9 10
4 1 2 3 4
1 2 3 4
12
5 6 7
14
1 2
5
8 3
7
1 2 3 4 5 6
1 2
3
1 2 3 4 5 7 6 8
5 6 4
6 7 8 10 13 9 11
0.0000 1/10000 0.0001 0.00101/1000 0.01001/100 0.10001/10 ヤマメ
チチブ ウロハゼ
ビリンゴ アブラボテ ヤリタナゴ カマツカ オイカワ ギンブナ
3.4.2 魚類相の縦断方向の変化とセグメント区分の関係
セグメント区分と各調査地点の魚類相の分類結果が完全に一致したのは筑後川,緑川および川 内川の3河川であり,魚類相区分と山本のセグメント区分が良く対応していた.
各セグメントについてみると,セグメントTとセグメント2の境界で魚類相が分かれた河川が 9河川あった.また,筑後川および川内川はセグメントT区間内でも魚類相が2つのグループに 分類されていた.筑後川の感潮区間は23km,川内川の感潮区間は20kmと両河川は九州内では長 い感潮区間を持つ河川である.両河川ともに 2つのグループの魚類相は大きく異なることから,
感潮区間が長い河川では,セグメントT区間は海の影響を強く受ける河口域と海の影響があまり 強くない感潮区間に区分されると考えられる.一方,セグメント2とセグメント1の境界で魚類 相が分かれた河川は6河川であった.また,川内川や松浦川のセグメント2区間のように長いセ グメント区間では魚類相は同一セグメント内においても2 つのグループに区分され,大分川や本 明川のように短いセグメント 2区間を持つ河川においては,上流または下流のセグメントの調査 地点に類似した魚類相を持つことが分かった.
以上を考慮し,魚類相の縦断方向の変化に対応したセグメント区分を提案する.図 3-19 は 14 河川の魚類相区分と河床勾配の関係を示したものである.この図から4河川(筑後川,菊池川,
松浦川,遠賀川)で1/2000付近で魚類相が区分されていることがわかる.また,1/1000付近では 8 河川(筑後川,大分川,五ヶ瀬川,川内川,大野川,小丸川,山国川)で魚類相が変化し,上
流域では 1/100程度で嘉瀬川,緑川,遠賀川の3 河川で魚類相が変化している.山本のセグメン
ト区分では1/5000~1/400がセグメント2区間となっており,魚類相の変化を規定するには充分で ない.以上より1/2000~1/1000,1/1000~1/100の区間で魚類相が区分されると考えられる.
0 2 4 6 8 10 12 14
1 10 100 1000 10000
筑後川 菊池川 大分川 嘉瀬川 緑 川 五ヶ瀬川
松浦川 遠賀川 川内川 大野川 小丸川 山国川
1/100 1/1000
1/10000 Level
図3-19 12河川の魚類相区分と河床勾配