15 河川に属する各調査地点を対象にTWINSPAN 分析を行った結果,セグメント区分と魚類相 区分の関係性について,以下の傾向を得た.
①セグメント区分と魚類相区分が良く対応した河川 筑後川,緑川,松浦川,川内川,山国川,本明川
②セグメント区分と魚類相区分があまり対応しなかった河川 五ヶ瀬川,菊池川,大分川,嘉瀬川,遠賀川,大野川,小丸川
③魚類相区分が入れ子状であり,セグメント区分と一致しなかった河川 白川,球磨川
ここでは,セグメント区分の区切れと魚類相区分の区切れがどの程度一致しているかというこ とを,セグメント区分と魚類相区分が良く対応した河川,対応しなかった河川の判断基準とした.
入れ子状に魚類相が区分された3河川を除く12河川中,一致した程度が高い6河川をよく対応し た河川とし,残りの6河川をあまり対応しなかった河川とした.
ここでは上記の①~③の河川について詳述する.15 河川の魚類相を表 3-1~表 3-15 に,
TWINSPAN分析の結果を図3-2(a)~図3-16(a)に,流域毎にセグメントと魚類相の関係を表した
ものを図3-2(b)~図3-16(b)に示す.また,15河川のセグメント区分の境界と魚類相の分類結果
をまとめたものを図3-17に示す.
図3-2(a)を例にTWINSPAN分析結果の表示の仕方を説明する.上から順に図を見ると,St.1~ St.7は,St.1及びSt.2~St.7に分類され,その分類に大きく寄与したのがオイカワであり,St.1は オイカワが確認されないことを,St.2~St.7 は確認されたことを示している.次にSt.2~St.7は,
St.2 及びSt.3~St.7に分類されたことを示しており,最終的にSt.1~St.7 の7地点は,St.1,St.2, St.3,St.4~St.5,St.6~St.7の5グループに分類されることを示している.なお,図中に示された
種名はTWINSPAN分析の結果,分類に最も寄与した種であり,その種が持つ符号と同符号を記さ
れたグループはその種が確認され,異符号が記されたグループはその種が確認されなかったこと を示している.
(1)筑後川
筑後川は対象とした15河川のうち,最多の51種の純淡水魚・回遊魚の生息が確認された河川 である.特にタナゴ亜科が5種と多いことが特徴である(表3-1).ここでタナゴ亜科とはヤリタ ナゴ,アブラボテ,セボシタビラ,カゼトゲタナゴ,カネヒラの 5種を指す.魚類の縦断方向の 移動に大きく影響を及ぼす河川横断工作物として,St.2とSt.3の間には潮止め堰の筑後川大堰が,
St.4~St.7 間には恵利堰,山田堰,大石堰,夜明ダム,三隈堰がある.TWINSPAN 分析の結果,
筑後川の 7地点の魚類相は縦断方向に 5つのグループに区分された(図3-2(a)).最下流のSt.1 は汽・海水魚で魚類相が構成され,純淡水魚は確認されなかった.感潮域に属するSt.2 ではタナ ゴ亜科の生息が確認されずコイ科の種数に乏しいが,ヤマノカミ,ウナギなどの回遊魚が多く確 認された.St.3はカワアナゴ,ヨシノボリ類などハゼ科の種数に富んでいた.St.4は7地点の中で 最も多い 28種の魚類が見られ,タナゴ亜科をはじめとするコイ科が多く確認された.また,St.4 とSt.5の間には恵利堰があるが,St.5で確認された23種のうち21種がSt.4と一致しており,両 者の魚類相に大きな差は見られなかった.St.6,St.7ではタナゴ亜科の種数に乏しく全種数もSt.4, St.5と比較して少なかった(表3-1).
セグメントとの対応をみると,セグメントTに属する2地点がそれぞれ異なるグループに分類 され,セグメント2-2,セグメント2-1およびセグメント1はそれぞれ1つの区分となった.この ように筑後川では,魚類相区分とセグメント区分が良く対応した(図3-2(b)).
図3-2(a) 筑後川におけるTWINSPAN結果
セグメント2-2
セグメントT セグメント2-1 セグメント1 St.1
St.2
St.3
St.4 St.5
St.6 筑後大堰 St.7
恵利堰 山田堰
大石堰
夜明ダム三隈堰
図3-2(b) 筑後川におけるセグメント区分と魚類相分類結果
オイカワ(-)
(+) (-)
St.1
タカハヤ(+)
(+) (-)
St.1~7
St.2~7
St.2
カワムツ(-)
(+) (-)
St.3
St.3~7
ヤリタナゴ(+)
(+) (-)
St.6 St.7 St.4 St.5
St.4~7
表3-1 筑後川の各調査地点で確認された魚種
2-2
St.1 St.2 St.3 St.4 St.5 St.6 St.7
ヤツメウナギ科 スナヤツメ + +
コイ + + +
ギンブナ + + + + +
ヤリタナゴ + + +
アブラボテ + + + +
セボシタビラ +
カゼトゲタナゴ + + +
カネヒラ + +
カワヒガイ + + + +
オイカワ + + + + + +
カワムツ + + + +
ヌマムツ +
タカハヤ +
ウグイ + + + +
モツゴ + + + +
ムギツク + + + + +
ゼゼラ + + +
カマツカ + + + + +
ツチフキ + + +
ニゴイ + + +
イトモロコ + + + + +
コウライモロコ +
スジシマドジョウ小型種 + +
ヤマトシマドジョウ + + +
ギギ科 アリアケギバチ + + +
カジカ科 ヤマノカミ +
ナマズ科 ナマズ + + + + +
ウナギ科 ウナギ + + +
アユ科 アユ + + + + +
メダカ科 メダカ +
スズキ科 オヤニラミ + + +
ドンコ + + + + +
ウロハゼ + +
カワアナゴ +
オオヨシノボリ +
トウヨシノボリ + + +
カワヨシノボリ + + + + +
ヌマチチブ + + + + +
2 13 22 28 23 18 14
T 2-1 1
種数 セグメント 魚類相区分 調査地点 確認魚種
コイ科
ドジョウ科
ハゼ科
タナゴ亜科
(2)緑川
緑川は 27 種の純淡水魚・回遊魚の生息が確認された河川である.魚類相の構成としては,27 種中14種がコイ科魚類であり,タナゴ亜科についてもヤリタナゴ,アブラボテ,カネヒラの3種 がセグメント2区間に属するSt.2,St.3で生息が確認されている.また,St.4では熊本県レッドデ ータブックで絶滅危惧Ⅱ類(VU)に記載されているアリアケギバチが確認されている(表3-2).流域 内の主要な横断構造物として,St.1~St.2 の間には六間堰,上杉堰が,St.2~St.3 間には高田堰,
築地堰,St.3~St.4間には糸田堰,麻生原堰,St.4~St.5間には鵜ノ瀬堰,St.5~St.6間には緑川ダ ムがある.TWINSPAN分析の結果,緑川の魚類相は縦断方向に3つのグループに区分された(図
3-3(a)).最下流のSt.1は汽・海水魚で魚類相が構成され,純淡水魚・回遊魚は3種と僅かしか確
認されなかった.セグメント2区間に属するSt.2およびSt.3ではコイ科の種数が多く,流域内で タナゴ亜科が確認されたのはこの2地点のみであった.セグメント1区間に属するSt.4~St.6では 魚類相の多くはコイ科魚類によって構成されているが,St.2 およびSt.3 とは異なりタナゴ亜科の 生息は見られなかった.最上流のSt.7ではコイ科は2種と少なく,ヤマメやアマゴといった冷水 性の魚類によって魚類相が構成されていた(表3-2).また,St.5~St.6間には大規模横断構造物で ある緑川ダムがあるが,St.5とSt.6の間で魚類相に大きな違いは見られなかった.
緑川では,セグメント区分の境界と魚類相の分類結果が一致しており,魚類相区分とセグメン ト区分が良く対応した(図3-2(b)).
図3-3(a) 緑川におけるTWINSPAN結果
(+) タカハヤ(-)
(+) (-)
オイカワ(+) (-) St.1~7
St.2~7
ヤリタナゴ(+)
(+) (-)
St.4~6 St.2 St.3
St.7 St.1
St.2~6
セグメント2
セグメントT セグメント1
St.1 St.2
St.3 St.4
St.5 St.6 St.7
六間堰
上杉堰
高田堰
築地堰
麻生原堰 糸田堰
鵜ノ瀬堰
緑川ダム
表3-2 緑川の各調査地点で確認された魚種
2-2
St.1 St.2 St.3 St.4 St.5 St.6 St.7
ヤツメウナギ科 スナヤツメ + +
コイ + + +
ギンブナ + + + + +
ヤリタナゴ + + +
アブラボテ + + + +
セボシタビラ +
カゼトゲタナゴ + + +
カネヒラ + +
カワヒガイ + + + +
オイカワ + + + + + +
カワムツ + + + +
ヌマムツ +
タカハヤ +
ウグイ + + + +
モツゴ + + + +
ムギツク + + + + +
ゼゼラ + + +
カマツカ + + + + +
ツチフキ + + +
ニゴイ + + +
イトモロコ + + + + +
コウライモロコ +
スジシマドジョウ小型種 + +
ヤマトシマドジョウ + + +
ギギ科 アリアケギバチ + + +
カジカ科 ヤマノカミ +
ナマズ科 ナマズ + + + + +
ウナギ科 ウナギ + + +
アユ科 アユ + + + + +
メダカ科 メダカ +
スズキ科 オヤニラミ + + +
ドンコ + + + + +
ウロハゼ + +
カワアナゴ +
オオヨシノボリ +
トウヨシノボリ + + +
カワヨシノボリ + + + + +
ヌマチチブ + + + + +
2 13 22 28 23 18 14
T 2-1 1
種数 セグメント 魚類相区分 調査地点 確認魚種
コイ科
ドジョウ科
ハゼ科
タナゴ亜科
(3)松浦川
松浦川は34種の純淡水魚・回遊魚の生息が確認された河川である.魚類相を構成する主要な科 はコイ科およびハゼ科であり,34種中15種がコイ科魚類,10種がハゼ科魚類である.タナゴ亜 科についてもヤリタナゴ,アブラボテ,カネヒラの 3 種がセグメント 2 区間に属する St.2~St.7 で生息が確認されている.また,St.3 では佐賀県レッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類(VU)に記載 されているスナヤツメ,オヤニラミ,準絶滅危惧(NT)に記載されているアリアケギバチが確認さ れ,St.2~St.7 で絶滅危惧Ⅱ類(VU)に記載されてメダカが確認されている(表 3-3).流域内の主要 な横断構造物としては,St.1~St.2 間に河口堰である松浦大堰が,St.6~St.7 間には大黒井堰があ る(図3-4(b)).TWINSPAN分析の結果,松浦川の魚類相は縦断方向に3つのグループに区分さ
れた(図3-4(a)).最下流のSt.1 は汽・海水魚で魚類相が構成され,純淡水魚・回遊魚は8種が
確認された.また,8種のうち7種が回遊魚であり,その多くがハゼ科魚類である.St.2では純淡 水魚の種数が増加し20種が確認された.St.3では希少種であるスナヤツメ,オヤニラミ,アリア ケギバチを含む流域内最多の28種の魚種が確認された.St.4~St.7の魚類相はSt.2およびSt.3に 類似していたが,回遊魚であるカワアナゴ,ヌマチチブが見られないなどの相違いが見られた(表 3-3).St.1と St.2 の魚類相が大きく変化する要因として,潮止め堰である松浦大堰による縦断方 向の移動阻害が考えられる.また,大黒井堰があるSt.6~St.7間で魚類相の大きな違いは見られな かった.
セグメントとの対応をみると,セグメントTに属する2地点は2つのグループに分類され,セ グメント2に属する6地点も異なる2つのグループに分類されたが,セグメント区分の境界と魚 類相区分の境界は一致しており,松浦川では魚類相区分とセグメント区分が概ね対応していた(図 3-4(b)).
図3-4(a) 松浦川におけるTWINSPAN結果
図3-4(b) 松浦川におけるセグメント区分と魚類相分類結果
ドジョウ(-)
(+) (-)
St.1
カワアナゴ(+)
(+) (-)
St.1~7
St.2~7
St.2 St.3 St.4~7
セグメント2
セグメントT セグメント1
St.1 St.2
St.3 St.4
St.5 St.6
St.7 松浦大堰
大黒井堰