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5.2.1 対象地域および基本概念

本研究では既往の九州のセグメントエコリージョン区分に関する研究(厳島ら 2009)における九 州北西部中下流域のセグメントエコリージョンに属する57 地点を対象に行った(図5-1).ここで は「同一セグメントエコリージョン内であれば生物相の良否が比較可能である」という仮説に基 づき,最も魚種数が多く見られた中下流域のグループを対象に生態学的健全度を評価可能な指標 作成を行った.ここでの基本概念は,セグメントエコリージョンが同じで,環境の状況が同じで あれば生息する魚類相は等しいというものである.すなわち生息する魚類相は環境の状況を反映 していると考えるのである.ここでは魚種数が多いほど環境が良いとして評価を行う.

本研究で使用する魚種データは,対象とする57地点で実施された水辺の国勢調査結果(1992年

-2005年)で出現した純淡水魚の採捕有無データを用いた.1992年から2005年の間で一度でも生

息が確認された種を確認ありとした.

図5-1 対象地点

Ong7 Ong8 Ong9 Ong11

Ong12 Ong16

Ma2 Ma9 Ma3 Ma10

Ma8 R5R4 Ka9

Ka2

C14

C23

C7 C6 C5 C18 C22 C17 C4 C3

C9 C10

Yb10 Yb11

1.遠賀川 2.松浦川 3.嘉瀬川 4.六角川 5.筑後川 6.矢部川 7.菊池川 8.白川 9.緑川 10.本明川

Kk7 Kk2 Kk3

Kk8 Kk4

Kk6 Kk9

Kk11 Kk10

Si3 Mi6 Mi7

Mi8 Mi4

Yb3 Yb4

Yb5

Mi3 Ma4

Ma7

Ma6Ma5 Ka10 Ka3Ka4

Ho4 Ho5

5.2.2 指標値の算出方法

本研究で使用する魚種データは,対象とする57地点で実施された水辺の国勢調査結果(1992年

-2005年)で出現した純淡水魚の採捕有無データを用いた.1992年から2005年の間で一度でも生

息が確認された種を確認ありとした.

本手法は魚種ごとの生態的特性に基づいて作成した15項目のから成る生物的指数を用いて,当 該地点の生態学的健全度を指標値の点数から評価するものである.対象とする魚種が利用する生 息場を概念的に表したものを図5-2に示す.得点として用いる項目は1.在来種,2.外来種,3.希少 種,4.純淡水性種,5.通し回遊性種・汽水性種,6.遊泳性種,7.底性種,8.瀬を必要とする種,9.

淵を必要とする種,10.氾濫原を必要とする種,11.植生域産卵種,12.泥底産卵種,13.砂礫底産卵 種,14.岩裏産卵種,15.二枚貝産卵種の15項目である.15項目の生物的指数の意味するところを 簡単に述べると,項目1~5は主にその項目の価値に関するもの,項目6~10はその地点の環境構 造の多様さに関するもの,項目11~15は産卵環境の多様さに関するものである.上記の項目に該 当する部分にチェックを入れ表を作成する.例えば,河道内の瀬・淵を利用する種については,

「8.瀬を必要とする種」と「9.淵を必要とする種」の両方にチェックを与えるようにして表を作成 する.対象とする九州北西部の中下流域のセグメントエコリージョンに出現した種を上記15項目 に分類した結果を表5-1に示す.

指標値の計算方法はきわめて単純である.対象全地点に出現した魚種数を分母に,当該地点 の魚種数を分子にし,その値を 10 倍にしたものを指標値とする.例えば,57 地点で確認された 総純淡水魚種数を33種,ある地点での種数を20種とすると,指標値=20/33×10=6.1点となる.

2.外来種については,その生息が在来の生態系に対して負の影響を与えることから,外来種数の 増加に伴い,指標値が減少するような計算方法とした.例えば,57地点で確認された外来種の種 数を12種,ある地点での種数を5種とすると,指標値=(1-5/12)×10=5.8点となる.

計算した指標値を指標毎にまとめることで,当該指標の各地点の健全度を比較することが可能 となる.また,地点毎に各指標値のレーダーチャートを作成することで,当該地点にどのような 環境構造が欠落しているかを推測することが可能となる.

純淡水魚

移行域 止水域 (氾濫原)

湿地 溜池

河川 ワンド

恒久的水域

一時的水域

表5-1 九州北西部セグメントエコリージョンに出現した魚種の指標項目分類

魚種 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 魚種 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

スナヤツメ + + + + + + ヒモハゼ + + +

サケ + + + + + マハゼ + + +

アマゴ(サツキマス) + + + + + + + スジハゼ + + +

ヤマメ(サクラマス) + + + + + + + トビハゼ + + + +

コイ + + + + + + ニクハゼ + + +

ギンブナ + + + + + + ヒメハゼ + + +

オオキンブナ + + + + + + アシシロハゼ + + +

ヤリタナゴ + + + + + + アベハゼ + + +

アブラボテ + + + + + + シモフリシマハゼ + + +

ニッポンバラタナゴ + + + + + + ヒナハゼ + + +

カゼトゲタナゴ + + + + + + ショウキハゼ + + + +

セボシタビラ + + + + + + アカオビシマハゼ + + +

カネヒラ + + + + + ノボリハゼ + + +

カワヒガイ + + + + + + + ムツゴロウ + + + +

オイカワ + + + + + ワラスボ + + + +

カワムツ + + + + + + チワラスボ + + + +

ヌマムツ + + + + + ハゼクチ + + + +

タカハヤ + + + + + + サツキハゼ + + +

ウグイ + + + + + + + ガンテンイシヨウジ + + +

モツゴ + + + + + + マゴチ + + +

ムギツク + + + + + スズキ + + +

ゼゼラ + + + + + シマイサキ + + +

カマツカ + + + + + コトヒキ + + +

ツチフキ + + + + + + ヒイラギ + + +

ニゴイ + + + + + ボラ + + +

カワバタモロコ + + + + + + セスジボラ + + +

イトモロコ + + + + + コボラ + + +

ヒナモロコ + + + + + + メナダ + + +

ドジョウ + + + + + クロダイ + + +

ヤマトシマドジョウ + + + + + + + キチヌ + + +

ズジシマドジョウ + + + + + + + + ヘダイ + + +

ギギ + ※1 + + + + + コショウダイ + + +

アリアケギバチ + + + + + + + カライワシ + + +

アカザ + + + + + + ヒラメ + + +

ナマズ + + + + + + テンジクガレイ + + +

オオウナギ + + + + デンベエシタビラメ + + +

ウナギ + + + + + イシガレイ + + +

アユ + + + + + マコガレイ + + +

カジカ(大卵型) + + + + + + クサフグ + + +

カジカ(中卵型) + + + + + + コノシロ + + +

ヤマノカミ + + + + + ヒラ + + +

アユカケ(カマキリ) + + + + + サッパ + + +

オヤニラミ + + + + + + クルメサヨリ + + + +

メダカ + + + + + + + ギンガメアジ + + +

ユゴイ + + + + コイチ + + +

シロウオ + + + + + + イダテンギンポ + + +

ドンコ + + + + + + アリアケシラウオ + + + +

カワアナゴ + + + + + + ギマ + + +

ウロハゼ + + + + + イセゴイ + + +

ゴクラクハゼ + + + + + + アカエイ + + +

シマヨシノボリ + + + + + クロサギ + + +

オオヨシノボリ + + + + + 51 0 8 0 51 25 26 0 0 0 0 0 0 0 0

トウヨシノボリ + + + + + + ドイツゴイ + + + + +

カワヨシノボリ + + + + + ニシキゴイ + + + + +

ビリンゴ + + + + + ゲンゴロウブナ + + + + + +

スミウキゴリ + + + + + キンギョ + + + + +

ウキゴリ + + + + + + タイリクバラタナゴ + + + + +

ヌマチチブ + + + + + + イチモンジタナゴ + + + + +

チチブ + + + + + ワタカ + + + + +

エツ + + + + ハス + + + + + +

60 1 26 43 24 28 32 21 37 12 15 3 13 21 7 タモロコ + + + + + +

コウライモロコ + + + + +

1在来種 ビワヒガイ + + + + +

2外来種 ソウギョ + + + +

3希少種 カダヤシ + + + +

4純淡水性種 グッピー + + + +

5通し回遊性種・汽水性種 ブルーギル + + + + +

6遊泳性種 オオクチバス + + + + +

7底性種 ニジマス + + + + + +

8瀬を必要とする種 ナイルティラピア(チカダイ) + + + + +

9淵を必要とする種 カムルチー + + + + +

10氾濫原を必要とする種 ワカサギ + + + + +

11植生域産卵種 31 21 3 21 32 44 8 2 19 5 9 2 6 1 4

12泥底産卵種 13砂礫底産卵種 14岩裏産卵種 15二枚貝産卵種

種数

種数

種数

5.2.3 生物指標値と物理環境の関係

算出された各指標値と物理環境との関係を明らかにするため,各指標値を目的変数,物理環境 項目を説明変数として重回帰分析を行った.ここでは,九州北西部中下流域のセグメントエコリ ージョンに属する57地点のうち,国土交通省が管理する区間に属する38地点を対象とした.物 理環境データは河川水辺の国勢調査結果の河川調査結果に加え,国土交通省が保有する環境情報 図に記載されている調査地点の航空写真からプラニメーターにより計測を行った 49 項目(図 5-3)を対象とした.航空写真からプラニメーターによって直接計測した項目は,1.河道幅,3.最 大水面幅および4.最小水面幅6.水面面積および7.河道面積である.1.河道幅は調査区間の始点,

終点および中心の 3断面の河道幅を計測し平均することで求めた.また,早瀬,淵,湛水域およ びワンドの総面積は,水辺の国勢調査結果で公表されている調査区間内に存在する個々の早瀬,

淵,湛水域およびワンドの幅と長さから個別の早瀬,淵,湛水域およびワンドの面積を計算し合 計することで求めた.水面幅の測定例を下記、参考図に示す.

分析に際し,物理環境項目間の相関係数を算出し,独立性及び各指標値との相関関係を考慮の うえ指標毎に10項目を抽出した.重回帰分析の変数選択は変数減少法により行い,説明変数選択 基準(Ru=1-(1-R2)(n+k+1)/(n+k-1),R:重相関の数値,n:データ数,k:説明変数の数)が最も高い 重回帰式を採用した.

図5-3 重回帰分析に用いた物理環境項目

参考図 水面幅の算出方法

1.河道幅 2.リーチ長 3.最大水面幅 4.最小水面幅

5.水面積比(最大水面幅/最小水面幅)

6.水面面積 7.河道面積 8.河道幅比

9.水面面積/河道面積 10.流入支川数 11.用排水の数 (1)落差あり (2)落差なし 12.護岸率

(1)通常護岸率 (2)生態護岸率 13.水制の数 14.

(1)個数 (2)落差

17.湛水域 (1)個数 (2)総幅 (3)総長 (4)最大の淵の幅 (5)最大の淵の長さ (6)湛水域総面積 (7)湛水域総面積/水面面積 (8)湛水域総面積/河道面積 18.ワンド

(1)個数 (2)総幅 (3)総長

(4)最大のワンドの幅 (5)最大のワンドの長さ (6)ワンド総面積 (7)ワンド総面積/水面面積 (8)ワンド総面積/河道面積 15.早瀬

(1)個数 (2)総幅 (3)総長

(4)最大の早瀬の幅 (5)最大の早瀬の長さ (6)早瀬総面積

(7)早瀬総面積/水面面積 (8)早瀬総面積/河道面積 16.

(1)個数 (2)総幅 (3)総長 (4)最大の淵の幅 (5)最大の淵の長さ (6)淵総面積

(7)淵総面積/水面面積 (8)淵総面積/河道面積

調査区間

始点

終点 中心

a b c

d

e

当該区間の水面幅 f { (a+b+c)+d+(e+f)}/3