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本研究では九州北西部中下流域セグメントエコリ-ジョンを対象に魚類を生息場ごとに分類し,

指標を作成し生態学的健全性の比較を行ったものである.本研究により得られた知見を要約する と以下の通りである.

1)エコリージョン,セグメントエコリージョンを考慮して指標を作成する事で,従来困難であっ た流域間あるいは同一河川内地点間のある環境に依存する魚種数の比較が可能となることが わかった.

2)指標値が高く多様な環境構造を有していると考えられる河川は菊池川であり,特にタナゴ亜科 など止水域を生活史の一環で利用する種が豊富であった.一方で環境が悪いと考えられる河川 は遠賀川であり希少種が少なく,河道内外の横断方向の連続性が乏しいと考えられる.

3) エコリージョンを考慮したセグメントエコリージョンの概念を用いることで,従来困難であ った流域間あるいは同一河川内地点間のある環境に依存する魚種数の比較が可能となること がわかった.

4) 重回帰分析の結果から種数を増大させる要因としては水面幅の大きさやワンドの有無が挙げ られ,一方で種数を減少させる要因として堰や湛水域の有無,通常護岸の割合などがある.

5) 魚種数と関係の強い物理環境項目は航空写真レベル判別可能であることが示唆された.しか し,河川と水田や氾濫原の連続性を必要とする種が利用する用水路と河川の連続性や特定の 植生を必要とする種などは航空写真では判別が困難であり現地調査によって明らかにする必 要がある.

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6 章 結語

本研究は河川環境の健全度を評価する指標を物理環境および生物相の両者の観点から開発する 事を目的として行ったものである.まず指標開発の前段階として,九州21河川で確認された魚類 相を用い,指標を適用可能な領域であるエコリージョンを決定した.また,河川生物相は流程ご とに生物相が大きく異なるため,流程に沿うエコリージョンであるセグメントエコリージョン区 分を設定した.各章について研究結果の概要は以下の通りである.

第2章では,環境指標が適用可能な生物相が相同と判断できる領域として九州におけるエコリ ージョン区分を設定した.九州21河川の魚類の出現有無データを二元指標種分析によって魚類相 の類似度から河川を分類した.分類結果に加え,日本列島への純淡水魚の浸潤過程,九州地方の 河川の成立過程や地史的変遷を考慮しエコリージョンを決定した.その結果,九州地方は九州北 西部,九州北東部,九州南部および奄美大島の4つのエコリージョンに分類されることが明らか となった.各エコリージョンに出現する河川について流域面積と魚種数の関係についてみると,

コイ科が多く生息する九州北西部に属する河川については流域面積が大きくなるほど魚種数は増 え,対数曲線で比較的よく説明されたが,北東部,南部は流域面積と魚種数に明瞭な傾向は見ら れなかった.また,流域面積に代わり氾濫想定面積とコイ科種数の関係を見ると流域面積を用い た場合よりも相関は強くなり,コイ科魚類と氾濫原面積との関係が見られた.

第3章では,魚類相の縦断方向変化とセグメント区分の関係性について調べた.九州15河川を 対象に魚類相の分類と河床勾配の関係を調べ,魚類の観点からのセグメント区分を決定した.そ の結果,魚類相の縦断方向の変化は15河川中12河川で確認され,人為的なインパクトをある程 度受けた九州の河川についても魚類相が縦断方向に複数のグループに分類されることが分かった.

また,魚類の観点からのセグメント区分として下流から,河口域,感潮区間,1/2000~1/1000,1/1000

~1/100,1/100の5つの区分が妥当であることが示された.

第4 章では,九州北西部および九州北東部のエコリージョンを対象に,セグメントエコリージ ョンを区分した.九州北西部に属する10河川136地点の魚類相を分類した結果,河口域,下流域,

中下流域,中上流域,最上流域の5つに区分された.また,九州北東部に属する4河川35地点は 海水域,河口域,下流域および中・上流域の 4つに区分された.同一エコリージョン内において 魚類相を比較することで流域間の相違に優先してセグメント間の相違により魚類相を類型化する ことが可能であることが明らかになった.また,エコリージョンを考慮したセグメントエコリー ジョンの概念を用いることで,従来困難であった流域間あるいは同一河川内地点間のある環境に 依存する魚種数の比較が可能となることが示唆された.

第5章では,九州北西部中下流域エコリージョンの57地点において生態学的健全性を比較可能 な指標開発を行った.魚種を生活史や生息場から分類し15の指標項目を作成した.また,指標値 と物理環境の関係を調べるため,各指標値を目的変数に物理環境項目を説明変数として重回帰分 析を行った.物理環境データは河川水辺の国勢調査結果の河川調査結果に加え,航空写真から計 測を行った 49項目について検討を行った.その結果,指標値と物理環境との相関は魚類相を生息 場ごとに分類して指標化することで強くなることから,生態学的健全性の評価の為には魚類相を

て堰や湛水域の有無,通常護岸の割合などがあることが明らかになった.魚種数と関係の強い物 理環境項目は航空写真レベル判別可能であるランドスケープユニットであることが示唆された.

しかし,河川と水田や氾濫原の連続性を必要とする種が利用する用水路と河川の連続性や特定の 植生を必要とする種などは航空写真では判別が困難であり現地調査によって明らかにする必要が ある.

本研究はエコリージョンの概念を用いて指標開発を行ったものである.作成した指標は同一セ グメントエコリージョンにおける生態学的健全度の良否を定量的に判別可能であり,当該地点で 欠落している環境構造を大まかに把握することが可能である.また,自然再生事業の実施に際し て簡易な魚類調査を行い,魚種数を把握することで,事業実施後の評価や経年変化を評価するこ とが可能である.セグメントエコリージョンという複数の流域間を比較可能なため,広域的な魚 種の保全計画の作成や自然再生事業地の選定を行う際に有効と考えられる.

また,本研究で用いた河川水辺の国勢調査で得られた生物データは,近年複数の研究の材料と して活用されているものの調査の精度や手法について議論も多く,充分に活用されていない現状 にある.しかし,膨大なデータの蓄積や全国統一した調査は多に見られないことから,非常に有 用なものと考えられる.本研究で決定したエコリージョン区分は従来の生物地理学的知見とほぼ 一致するものであり,河川水辺の国勢調査データを用いても大差のないことが示された.文献な どによって誤同定などの課題を克服することで河川水辺の国勢調査データをかなりの精度まで引 き上げることが可能であると考える.