5.3 結果および考察
5.3.2 各流域における生物指標値
(1)遠賀川
図5-19に遠賀川に属する6地点の各指標値を示す.遠賀川流域の6地点の平均値(以下,流域 平均値)は13.砂礫底産卵種以外において10河川57地点の平均値よりも小さかった.特に3.希少 種,12.泥底産卵種,15.二枚貝産卵種は極めて小さな値であり,遠賀川の中下流部ではこうした種 が生息するために必要な環境に乏しいことが伺える.
最下流のOng7では2.外来種及び7.底性種が流域平均値より低く,10.氾濫原依存種と11.二枚 貝産卵種が高かった.Ong7は岡森堰の湛水域が調査区間内に存在し,外来種が好む止水域が多く 存在する一方,止水域に二枚貝が生息するためこのような結果になったと考えられる.
Ong8では6.遊泳性種,10.氾濫原を必要とする種および11.植生産卵種の得点が高い.Ong8は遠 賀川中流域にあたり,止水域や河岸の植生など河道内に多様な環境構造が生じている可能性が高 い.
支川八木山川に属するOng9では8.瀬を必要とする種,13.砂礫底産卵種および14.岩裏産卵種の 得点が高く,9.淵を必要とする種,10.氾濫原を必要とする種など止水環境を利用する種が極めて 少ない.支川に属する調査地点であり,河道内に瀬はあるものの河道幅が狭くワンド等が生じに くい環境となっていることが示唆される.
Ong11では4.純淡水魚,7.底生性種,8.瀬を必要とする種,13.砂礫底産卵種の得点が流域平均値
より高く,15.二枚貝産卵種の得点が低かった.Ong11は力丸ダムより上流に位置する調査地点で あるが,河道内の環境は他の地点と比べて良いことが伺える.
Ong12 は7.底生性種,および8.瀬を必要とする種の指標値が流域平均値より低かった.当該地
点は岩下堰の湛水区間を調査地点に含むため,瀬を必要とする種の生息環境に乏しいと考えられ る.
Ong16では2.外来種,7.底性種の得点が流域平均値より高く,10.淵を必要とする種,11.氾濫原
を必要とする種,15.二枚貝産卵種の指標値が低かった.中下流域のセグメントエコリージョンに 属するものの,上流域に位置する当該地点では,こうした種が生息する止水環境に乏しいものと 考えられる.
図5-19 遠賀川流域における各指標値
当該地点 遠賀川平均 57地点平均
1.在来種
2.外来種・国内移入種 3.希少種
4.純淡水魚
5.通し回遊性種・汽水性種 6.遊泳性種
7.底性種 8.瀬を必要とする種 9.淵を必要とする種 10.氾濫原を必要とする種 11.植生産卵種 12.泥底産卵種 13.砂礫底産卵種 14.岩裏産卵種 15.二枚貝産卵種
Ong7
Ong9 Ong8
Ong12
Ong16 Ong11
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 8 7 10 9
11 12
13 14
Ong715
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4
5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
Ong915
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4
5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
Ong12 15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4
5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
Ong8
Ong11
Ong16
(2)松浦川
図5-20に松浦川に属する9地点の各指標値を示す.松浦川流域の9地点の平均値(以下,流域 平均値)は2.外来種・国内移入種が10河川57地点よりの平均値より低く,10.氾濫を必要とする 種および15.二枚貝産卵種が平均値より高い他は10河川57地点の値とほぼ同程度であった.以下,
松浦川流域における特徴的な地点についてその指標値と物理環境について考察を行う.
本川の最下流に位置するMa2では2.外来種・国内移入種が流域平均値より低く,5.通し回遊性 種・汽水性種,9.淵を必要とする種および10.氾濫原を必要とする種の指標値が高かった.Ma2は 河口域から最も近い地点であり回遊魚が多く生息している一方,松浦大堰の湛水区間を調査地点 に含むため,止水環境を好む外来種が多いと考えられる.
Ma3では10.氾濫原を必要とする種および15.二枚貝産卵種以外の指標値は流域平均値より高か
った. Ma3は支川伊岐佐川が合流する地点であり,河道内に他の地点とは異なる多様な環境が生
じており,瀬や淵など河道内に生息する種が多く生息していると考えられる.一方で氾濫原を必 要とする種の指標値が低く河道内外の連続性は乏しいと考えられる.
Ma5は2.外来種・国内移入種,5.通し回遊性種・汽水性種,14.岩裏産卵種の指標値が低い一方,
6.遊泳性種,10.氾濫原を必要とする種,11.植生産卵種,15.二枚貝産卵種が高かった.Ma5は自然 再生事業により氾濫原の再生を実施した箇所が近傍にあり,氾濫原利用種が多くみられるものと 考えられる.一方,止水環境を好む外来種も多く見られている.
支川徳須恵川に属する Ma9 では,8.瀬を必要とする種,10.氾濫原を必要とする種および 11.植 生産卵種が流域平均値より高く,2.外来種・国内移入種の指標値が低かった.当該地点は瀬や氾 濫原など河道の環境構造が多様である一方,外来種が好む止水域が多く存在していることが伺え る.
図5-20 松浦川流域における指標値
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 8 7 10 9
11 12
13 14
Ma2 15
当該地点 松浦川平均 57地点平均 1.在来種
2.外来種・国内移入種 3.希少種
4.純淡水魚
5.通し回遊性種・汽水性種 6.遊泳性種
7.底性種 8.瀬を必要とする種 9.淵を必要とする種 10.氾濫原を必要とする種 11.植生産卵種 12.泥底産卵種 13.砂礫底産卵種 14.岩裏産卵種 15.二枚貝産卵種 0.0
2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4
5
6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4
5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 8 7 10 9
11 12
13 14
15
Ma5 Ma6
Ma4
Ma3
Ma7 Ma8 Ma9 Ma10
Ma2 Ma3
Ma7 Ma8
Ma9 Ma10 Ma4
Ma6 Ma5
(3)嘉瀬川
図5-21に嘉瀬川に属する5地点の各指標値を示す.嘉瀬川流域の5地点の平均値(以下,流域 平均値)は10.氾濫原を必要とする種,11. 植生産卵種および13.砂礫底産卵種の指標値が10河川 57地点の値より若干大きく,他の指標項目は10河川57地点の平均値とほぼ同じであった.嘉瀬 川は流域として平均的な環境構造を有していると考えられる.以下,嘉瀬川流域における特徴的 な地点についてその指標値と物理環境について考察を行う.
Ka3では 3.外来種以外の全ての項目が流域平均値を大きく上回っており,流域内で最も多様な 環境構造を有していると考えられる.特に 3.希少種,12.泥底産卵種および 15.二枚貝産卵種の指 標値が高く,河床材料に細粒分を含むなど河床環境が良好で二枚貝が定着可能な止水域が河道内 に存在していると考えられる.
Ka4では8. 瀬を必要とする種および13.砂礫底産卵種の指標値が流域平均値より高く,10.氾濫 原を必要とする種,12.泥底産卵種および 15.二枚貝産卵種の指標値が低かった.当該地点は嘉瀬 川流域内における中下流域のセグメントエコリージョンに属する地点で最も上流に位置しており,
瀬や砂礫を生息に必要とする種が多く生息しているものの,止水域が少なく泥底や氾濫原のよう な環境が乏しいと考えられる.
支川本庄江川に位置するka9では2. 外来種・国内移入種,10.氾濫原を必要とする種および12.
泥底産卵種以外の指標値が流域平均値より低く,総合的に嘉瀬川流域では最も環境が劣った地点 であった.佐賀平野の低平地に属する当該地点は,氾濫原的環境があるものの河道内の環境構造 は多様でないことが伺える.
支川祇園川に属するKa10の指標値は流域平均値および10河川57地点とほぼ同程度であった.
図5-21 嘉瀬川流域における指標値
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4
5
6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4
5
6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
Ka2
Ka9 Ka4 Ka10
Ka3
Ka2Ka3 Ka4
Ka9 Ka10
1.在来種
2.外来種・国内移入種 3.希少種
4.純淡水魚
5.通し回遊性種・汽水性種 6.遊泳性種
7.底性種 8.瀬を必要とする種 9.淵を必要とする種 10.氾濫原を必要とする種 11.植生産卵種 12.泥底産卵種 13.砂礫底産卵種 14.岩裏産卵種 15.二枚貝産卵種
当該地点 嘉瀬川平均 57地点平均
(4)六角川
図5-22に六角川の支川牛津川に属する2地点の各指標値を示す.六角川流域の2地点の平均値 は10河川57地点と比較して,2.外来種・国内移入種,3.希少種および7.底性種の指標値が低かっ たがそれ以外の指標値は10河川57地点の平均値より高く,特に10.氾濫原を必要とする種および 13.砂礫底産卵種の指標値が高かった.六角川では回遊魚,止水域依存種の種数が豊富である一方,
外来種が多く,河床環境に依存する種の種数が少ないことが伺える.六角川は感潮区間が長く,
河床勾配が緩やかであることから,これらの指標値の傾向は六角川の物理環境特性を良く表して いると考えられる.
R4 と R5 では3.希少種および 15.二枚貝産卵種を除いては指標値に大きな差はない.下流側の R4 でこれらの指標値が大きくなっており,R5 と比較してこれらの種の生息に必要な環境構造が 存在すると考えられる.
図5-22 六角川流域における指標値
R4 R5
当該地点 六角川平均
57地点平均 0.0 2.0
4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1
2 3
4
5 6 7 8 9 10 11 12
13 14
15
R4
R5
1.在来種
2.外来種・国内移入種 3.希少種
4.純淡水魚
5.通し回遊性種・汽水性種 6.遊泳性種
7.底性種
8.瀬を必要とする種 9.淵を必要とする種 10.氾濫原を必要とする種 11.植生産卵種
12.泥底産卵種 13.砂礫底産卵種 14.岩裏産卵種 15.二枚貝産卵種
(5)筑後川
図5-23に筑後川に属する12地点の各指標値を示す.筑後川流域の12地点の平均値(以下,流 域平均値)は10河川 57地点の平均値と比較して,10.氾濫原を必要とする種および11.植生産卵 種が低く他の指標値は同程度であった.以下,筑後川流域における特徴的な地点について,その 指標値と物理環境について考察を行う.
最下流のC3では2.外来種・国内移入種および12.泥底産卵種が流域平均値より低く,5.通し回 遊性種・汽水性種,10.氾濫原を必要とする種,14.岩裏産卵種および 15.二枚貝産卵種の指標値が 高かった.当該地点は,筑後川で河口からの距離が近いため回遊魚が多く生息しており,当該地 点は筑後大堰の感潮区間を一部含む影響で止水域が多く外来種・国内移入種が多く生息している と考えられる.
C4は筑後川流域の中で最も指標値が高い地点であり,2.外来種以外の項目で流域平均値以上で あった.特に,3.希少種,12.泥底産卵種および15.二枚貝産卵種の指標値が大きく他の地点を上回 っており,当該地点は河床環境が良好でタナゴ亜科の産卵基盤である二枚貝が豊富に生息してい ると考えられる.
C6 では 2.外来種,8.瀬を必要とする種の指標値が流域平均値より高く,10. 氾濫原を必要とす る種12.泥底産卵種および15.二枚貝産卵種が低い値であった.当該地点は中下流域のセグメント エコリージョンに属する地点では上流部に位置する地点であり,瀬に依存する種が多く見られる 一方,河床材料に細粒分が乏しく,氾濫原等の止水環境が少ないことが伺える.この傾向が上流 のC7においても見られた.
支川山ノ井川上流に位置する C10では,2.外来種・国内移入種および8.瀬を必要とする種以外 の指標値が全て流域平均値以下であった.支川の上流に位置する地点であり,瀬が存在するもの の河道内の環境に乏しい地点であることが伺える.