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第 7 章 [研究 3]専攻の振り分けによる日本語専攻学習者の動機減退要因の比較

7.5 考察

第4因子 専攻選択上の問題 α=.615

専攻を真面目に選択しなかった -.071 -.018 .052 .864 .105 専攻を選択するときに選択肢は少なかった .076 .079 -.032 .505 .160 第5因子 学習への非強制欲求 α=.548

たくさん勉強しなくても、日本語でゲームやドラマな どを楽しむことには支障がない

-.180 .039 .436 -.142 .651

教師に日本語の学習を強制されたくない .160 .048 -.183 .130 .502 日本語学習以外のことで忙しい -.011 -.084 .067 .370 .499 抽出後の負荷量平方和(%) 32.15 37.45 41.72 45.13 47.87

以上のように、中国における日本語志望群の学習者の動機減退は、<成績と運用能力への落差感>、<授業テ ンポの速さによる学習困難>、<自信と興味の喪失>、<専攻選択上の問題>、<学習への非強制欲求>という 5 因子から構成されている。

本語学習の苦しさは学習者の動機と関連がある。また、教師能力の不足は杨(2016)と高(2016)でも指 摘されている。

第 4 因子は<学習量による学習困難>である。「記憶量の多さ」についても杨(2016)の「学習能力の 低下」という因子に見られる。非志望群の学習者は、学習内容の多さ、単語や文章の記憶などに困難を感 じた。「学習内容が多すぎる」の因子負荷量が高いため、学習量と記憶量という量的な側面で感じた困難が 動機減退と関連しているといえる。

第 5 因子の<進路選択上の日本語の重要性の低下>について、非志望群の一部の学習者にとって、日本 語を生かして就職する欲求はないため、どの程度まで勉強できるかはそれほど重要ではなくなる。しかし、

日本語専攻として勉強してきたからには最低限の日本語能力を証明できる資格が欲しいというのが多くの 学習者の考え方であると思われる。

以上のように、日本語非志望群の特徴は、<日本語学習資質の不足>という葛藤を持ちながら、日本語 を学習しようとしたが、<学習量による学習困難>と<有能感の不足>が感じたことである。また、学習 過程では、教師の能力や授業に依存する傾向があり、教師に不満を持ち、予想外の教室内学習に困難を感 じている。そして、今後の進路を考慮する際、日本語と関係のない仕事を探そうとし、日本語の重要性の 低下に繋がったと言える。

7.5.2 日本語志望群の因子構造に関する考察

第 1 因子の<成績と運用能力への落差感>に関しては、「自分が期待していた成績が取れなかった」「勉 強しても効果がない」という項目があるため、日本語志望群の学習者は、目標があり、期待していた目標 や成績に達成できないという落差を感じることが、動機減退に繋がったと言える。また、「学校で勉強し た知識が運用できない」は最も因子負荷量の高い項目である。志望群の学習者も知識の実用性への欲求が 見られたが、項目全体から判断すると、個人の理想上運用できる程度と実際に達成できた程度には落差が あるように思われる。

第 2 因子は<授業テンポの速さによる学習困難>である。これは、授業のテンポの速さ、単語や文法の 記憶上の困難などに関する項目からなる。「授業のテンポが速い」の因子負荷量が最も高いため、日本語 志望群が直面している最も大きな困難だと言える。

第 3 因子は<自信と興味の喪失>である。「日本語学習への自信がない」という下位項目の因子負荷量 が最も高く、自信の喪失と動機減退との関連が窺えた。また、「日本語学習への自信がない」「日本語に

興味がなくなった」「日本語の学習は苦しいと予想できなかった」は情意的側面であり、「自分は怠け者 だ」は行動的側面に関わる項目である。このような情意的側面と行動的側面の両方が動機減退に繋がった と思われる。

第 4 因子の<専攻選択上の問題>は杨(2016)と高(2016)にはない因子であり、日本語志望群の動機 減退要因にのみ現れた。日本語は志望したが、選択上の問題には 2 つの可能性が考えられる。一つ目は学 習者が第 1 志望は慎重に選択したが、第 2 志望、第 3 志望は慎重に選択しなかったことである。また、受 かった大学がその省に配分した枠数が限られていたため、日本語を選択せざるをえないという入試制度上 の理由がある可能性もある。

第 5 因子は<学習への非強制欲求>である。下位項目「日本語学習以外のことで忙しい」は杨(2016)

の<学習動機の欠如>という因子に現れる項目の一部と一致している。すなわち、学習以外のやりたいこ とが日本語より優先されているように思われる。このような優先度が低い日本語学習を教師に強制された くないという非強制欲求が動機減退要因となる。

このように、日本語を志望したとはいえ、<専攻選択上の問題>が動機減退の理由となっている。学習 過程では、<授業テンポの速さによる学習困難>を味わい、理想の成績や運用能力に落差が感じた。また、

予想できなかった困難な日本語学習過程が自信と興味の喪失に繋がった。そして、学習への非強制欲求を 持ち、日本語を優先しない態度を取ることが日本語志望群の特徴である。

7.5.3 日本語志望群と非志望群の相違点

7.5.3.1 日本語非志望群の「教師」の作用の重視

「教師」と関係のある動機減退因子は日本語非志望群のみに見られた。「教師の日本語知識の説明がわか りにくい」「教師の教え方が受け入れられない」は教師の技能に関するものである。調査対象者の担当教師 はそれぞれ異なるため、日本語非志望群の学習者は担当教師に偶然問題があった可能性は否定できないが、

非志望群の学習者は志望群の学習者より教師への期待値が高く、学習を教師に依存する傾向があると思わ れる。

7.5.3.2 日本語非志望群の「言語学習資質」への懐疑

日本語非志望群では「日本語学習資質の不足」という因子が抽出された。非志望群は学習才能、目標が ないなどのような言語学習資質から能力を否定し、動機が減退した。t検定の結果でも、p<.001 で、「自 分は日本語学習の才能がない」に、両群の間で、有意差が見られた。すなわち、非志望群は個人の言語学 習資質について懐疑的な姿勢があると思われる。

7.5.3.3 日本語非志望群の「進路選択上の日本語の重要性の低下」

「進路選択上の日本語の重要性の低下」は日本語非志望群のみに見られた因子である。「日本語と関係 のない仕事を探すつもりだ」という項目は日本語志望群では床項目であり、両群の間p<.001 で有意差が あった。日本語非志望群が進路を考慮する時は、日本語から離れる傾向があるため、日本語の上達がそれ ほど重要ではなくなり、学習動機が減退したといえる。

7.5.3.4 日本語志望群の「専攻選択上の問題」

<専攻選択上の問題>は日本語志望群のみに見られた因子である。これは中国の大学入学制度と大きく 関連していると思われる。入学制度の関係で、志望を選択する際、所在県に配分された枠は限られている ため、日本語を志望した可能性がある。また、第 1 志望のみを真面目に選択し、第 2 志望や第 3 志望を適 当に選択した学習者がいると推測される。このように、日本語を志望していても、必ずしも動機が高いと は言えない。

7.5.3.5 「実用性と有能感」の有意差

言語知識の実用性重視の傾向は両群の類似点であるが、t検定では、「学校で勉強した知識が運用できな い」「達成感が感じられない」「勉強しても効果がない」という 3 項目に、日本語非志望群と志望群の間 で有意差があった。日本語非志望群は志望群よりすべての平均値が高い。非志望群の動機減退に対する実

用性と有能感の影響はより強いと言える。

7.5.4 日本語志望群と非志望群の類似点

日本語志望群と日本語非志望群の動機減退の構造やt検定の結果から、日本語志望群と非志望群は以下 のような 4 つの類似点があると考えられる。ぞれぞれは、「内的要因からの影響の強さ」、「<日本語学習上 の困難>の共通性」、「実用性への追求」、「自己満足の傾向」である。

7.5.4.1 内的要因からの影響の強さ

日本語志望群と非志望群の動機減退因子は、両群とも外的要因より内的要因の方が動機減退との関連が 強い。日本語非志望群の第 3 因子<予想外の教室内学習の苦しさ>のみは外的要因教師関連の内容が含ま れる。日本語志望群には、第 4 因子<専攻選択上の問題>のみは入学システムに影響される可能性を示唆 し、外的要因だと認識できるが、第 1、2、3、5 因子は全て内的要因である。中国における日本語学習者の 動機減退要因は内的要因が主であると言える。この結論は本研究[研究 1]学習者の内的要因の方が動機減 退との関連が強いという結論を裏づけた。

7.5.4.2 <日本語学習上の困難>の共通性

日本語非志望群の<学習量による学習困難>と日本語非志望群の<授業テンポの速さによる学習困難>

はいずれても下位項目が全て共通している因子である。全ての学習者は、授業のテンポ、単語とテキスト の記憶、学習量の多さに困難を感じた時に、動機減退した。英語教育が広く普及している中国では、中学 校から英語を学習してきた学習者たちにとって、日本語の文字や単語、文法体系は英語と明らかに異なり、

単語とテキストに慣れない最初の段階で困難を多く感じたと思われる。

ただし、両群は学習困難と感じた理由の優先順位が異なることには注意すべきであろう。日本語非志望 群は「学習内容が多すぎる」という項目の因子負荷量が最も高いため、学習量による学習困難が主な困難 であるのに対して、日本語志望群は「授業のテンポが速い」という項目が.991 と最も高い因子負荷量を持