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第二言語習得研究(SLA)における動機減退研究の結果分析

第 2 章 先行研究

2.3 先行研究

2.3.1 第二言語習得(SLA)における動機減退研究

2.3.1.4 第二言語習得研究(SLA)における動機減退研究の結果分析

本のみであるが、具体的に採用される方法は多種多様であり、Trang & Baldauf (2007)は学習者に振り返りの 小論文を書かせた。Song & Kim (2017)は自由記述調査とインタビューを合わせた質的研究法を使用した。

荒井 (2004)は自由記述調査を実施した。

次に、主流となる量的研究法の質問紙の作成方式については以下のように整理できる。

2009 年以前の研究の質問紙の作成はDörnyei (2001)を参考にしたものが多い。例えば、Falout & Maruyama (2004)、Kim (2009)である。また、Falout & Elwood & Hood (2009)は自身の研究(Falout & Maruyama 2004)

に基づき、質問紙を作成し、研究を進めてきた。2009 年以後の研究の質問紙の作成はおおよそ 3 派に分け ることができる。1 つ目はSakai & Kikuchi (2009)の動機減退要因に対する分類や質問紙を参考に質問紙を作 成する研究(Krishnan & Pathan 2013、Ghadirzadeh & Hashtroudi & Shokri 2012, Meshkat & Hassani 2012,

Kim2009, Cankaya 2018)であり、2つ目は、インタビューか自由記述調査を実施することで、対象となる学

習者の動機減退要因の基礎データを収集し、ボトムアップ的方式で、独自の質問紙を作成する研究

(Hosseinpour & Tabrizi 2016、Yadav & BaniAta 2013,Sahragard & Ansaripour 2014, Li & Zhou (2013)である。3 つ目は、Sakai & Kikuchi (2009)以外の先行研究を参考に質問紙を作成してきた。例えば、Gao & Liu (2016) はLiu (2014)を参考にした。Hu (2011)ではChang & Cho (2003)を参考に質問紙を作成したなどである。それ 以外に、研究では、質問紙の作成方法が明示されていない研究(Rajabi & Pozveh 2016、Agawa & Ueda 2013) もある。

最後に、質問紙の項目数については、最も多いのがFalout & Elwood & Hood (2009)の 52 項目であり、最 も少ないのがRajabi & Pozveh (2016)の 18 項目である。多くの研究の質問項目数は 30 項目-40 項目である。

Sakai & Kikuchi (2009)では、先行研究をまとめたうえで、動機減退要因の6カテゴリーを提示した。それ ぞれは、教師(Teachers)、クラス(授業)の特性(Characteristics of classes)失敗の経験(Experiences of failure)、

クラス環境(Class environment)、クラスの学習内容(Class materials)、興味の欠如(Lack of interest)であ る。そのうち、教師(Teachers)、クラスの特性(Characteristics of classes)クラスの環境(Class environment)、

クラスの学習内容(Class materials)という4カテゴリーは外的要因であり、興味の欠如(Lack of interest)、

失敗の経験(Experiences of failure)は内的要因である。

表17 廣森(2015)とSakai & Kikuchi (2009)による動機減退要因分類の比較 廣森(2015) Sakai & Kikuchi (2009)

具体的な内容 分類 分類 具体的な内容

教師の性格、熱意、指導

方法、外国語力など 教師 外的要因 教師

教師の態度、授業能力、言語熟 達度、性格、ティーチングスタ イル

健康状態、学習経験、自 信、言語や文化に対する 態度など

学習者 内的要因

失敗の経験

成績への失望、教師のアクセプ タンス(受容)の不足、俗語と 単語が覚えられない

興味の欠如

学校で勉強した英語は実用性が ない、英語母語話者から賞賛さ れない

教室環境、教材、評価方

法、周りの学習者 学習環境 外的要因

クラスの特性

コースのコンテンツとペース、

難しい文法や単語に焦点を当て る、入学試験と言語そのものに 焦点を当てる

クラスの環境

クラスメートの学習態度、英語 学習の強制性、友達の学習態度、

不活発な教室活動、視聴覚資源 の不十分な利用

クラスの学習内容 不適当な学習内容、興味のない 学習内容

表17は廣森(2015)とSakai & Kikuchi (2009)による動機減退要因分類の比較を示す。廣森(2015)では3 つのカテゴリーに分類したのに対し、Sakai & Kikuchi (2009)は6つのカテゴリーに分類した。まず、この2 つの分類方法の対応関係を見てみると、「教師」というカテゴリーは独立して対応するカテゴリーである。

廣森(2015)では、「学習者」というカテゴリーはSakai & Kikuchi (2009)で指摘された「失敗の経験」と「興 味の欠如」という2つの動機減退カテゴリーと対応できると考えられる。さらに、廣森(2015)で指摘され ている「学習環境」というカテゴリーはSakai & Kikuchi (2009)の「クラスの特性」、「クラスの環境」、「ク ラスの学習内容」に当たる分類である。

さらに、内的要因と外的要因の視点から以上の分類を見ると、学習環境と教師に関する要因は外的要因 であり、学習者要因は内的要因である。

2.3.1.4.1 東アジア文化圏における動機減退研究の結果分析

本節では、東アジアにおける動機減退研究の結果、および、各国の学習者の動機減退要因の特徴をまと める。東アジア文化圏の研究は日本、韓国、中国、台湾の4つの国・地域で調査が行われた。以下、日本、

韓国、中国、台湾という順番で述べる。

表18 第二言語習得における日本人英語学習者の動機減退要因結果 内的要因・外的要因 動機減退要因(日本の英語学習者) 先行研究

外的要因

教科書 Kikuchi & Sakai (2009), Hamada (2001)

不十分な教室施設 Kikuchi & Sakai (2009), Sakai & Kikuchi (2009) テストの得点 Kikuchi & Sakai (2009), Sakai & Kikuchi (2009)

Hamada (2001) 教授法と授業(例えば:コニュニ

カディブでない教授法、レッス ン・スタイル)

Kikuchi & Sakai (2009)Falout & Elwood & Hood (2009)Hamada (2001)、荒井 (2004)

教師(能力、指導スタイル) Kikuchi & Sakai (2009)、Sakai & Kikuchi (2009)、Falout

& Elwood & Hood (2009)Hamada (2001)Agawa &

Ueda (2013)、荒井 (2004)

学習内容(内容、コースのレベル Sakai & Kikuchi (2009)、Falout & Elwood & Hood

など) (2009) 学習環境(クラスの雰囲気など) 荒井 (2004)

内的要因

興味の欠如 Sakai & Kikuchi (2009)

自信の喪失 Hamada (2001)、Falout & Elwood & Hood (2009) 英語科目の特性に対する認知(難

しい科目である、英語の自然特性、

英語の価値づけなど)

Hamada (2001)Agawa & Ueda (2013)Falout &

Elwood & Hood (2009)

学習不安 Agawa & Ueda (2013)

L2セルフの不足 Agawa & Ueda (2013)

表18は第二言語習得における日本人学習者を対象とした動機減退要因の結果を示す。それは、荒井 (2004)、

Kikuchi & sakai (2009)、Sakai & Kikuchi (2009)、Falout & Elwood & Hood (2009)、Hamada (2001)、Agawa & Ueda

(2013)という6本の先行研究の研究結果をまとめたものである。

抽出された動機減退要因は内的要因と外的要因に分類することができる。外的要因は内的要因より数量 的に多いことと言える。外的要因は教科書、不十分な教室施設、テストの得点、教授法と授業、教師、学 習内容、学習環境という7要因があることに対して、内的要因は内発的動機づけの欠如、自信の喪失、英語 科目の特性に対する認知、学習不安、L2セルフの不足の5要因である。

外的要因の中で、「教師」(能力、指導スタイル)という要因は6先行研究の全てで抽出された。「教授 法と授業」(例えば:コニュニカディブでない教授法、レッスン・スタイル)という要因も4先行研究で指 摘された。日本という社会的コンテクストの中で、日本人英語学習者にとって、教師や授業など教室内学 習への重視は特徴であると言える。

内的要因の中で、「英語科目の特性に対する認知」(難しい科目である、英語の自然特性、英語の価値 づけなど)は最も多く指摘されている。それ以外に、「学習不安」、「L2セルフの不足」、「自信の喪失」、

「興味の欠如」も見られる。

全体的には、日本人英語学習者の動機減退要因では、外的要因は内的要因より学習者の動機減退への影 響が強いように考えられる。特に、教師、授業、学習内容、教科書など実際の教室内学習における学習場 面での要因が主である。一方、内的要因も学習者の動機に影響しているが、英語科目の特性に対する認知

(難しい科目である、英語の自然特性、英語の価値づけなど)という要因以外は、先行研究で共通する要 因は少なく、研究者の間に、統一した意見が得られていないことが窺える。

表19に第二言語習得における韓国人学習者を対象とした動機減退要因の結果を示す。Kim (2009)、Li &

Zhou (2013)、Song & Kim (2017)という3本の先行研究の研究結果をまとめたものである。

韓国人英語学習者の動機減退要因を外的要因と内的要因に分類すると、外的要因には「教師」、「学習 環境」、「不十分な教室施設」、「英語クラスの特徴」、「他者からの影響」、「L2とその文化」、「英 語学習の必要性」という7要因があり、内的要因には「英語学習困難」、「動機と興味の減少」、「自信の 喪失」という3要因が見られる。

日本人英語学習者と同様に、教師の存在(Li & Zhou 2013、Kim 2009)と学習環境(Li & Zhou 2013)、Song

& Kim 2017)が見られる。しかし、Kim (2009)では、教師は最も弱い要因であると指摘している。日本の英

語学習者は教師からの影響が強いのとは反対に、韓国人英語学習者は教師からの影響はそれほど強くはな いことが一つの特徴であろう。

表19 第二言語習得における韓国人英語学習者の動機減退要因 内的要因・外的要因 動機減退要因(韓国の英語学習者) 先行研究

外的要因

教師 Li & Zhou(2013)、Kim (2009)

学習環境 Li & Zhou(2013)、Song & Kim(2017) 不十分な教室施設 Li & Zhou (2013)

英語クラスの特徴 Kim (2009) 他者からの影響(他の学習者・社

会・家族)

Li & Zhou (2013)Song & Kim (2017)

L2とその文化 Song & Kim (2017)

英語学習の必要性 Song & Kim (2017)

内的要因

英語学習困難 Kim (2009)

動機と興味の減少 Kim (2009)

自信の喪失 Li & Zhou (2013)

また、内的要因に関しては、Kim (2009)は「英語学習困難」、「動機と興味の減少」を指摘し、Li & Zhou

(2013)では、多くの先行研究で広く見られる「自信の喪失」を指摘した。

韓国人英語学習者の動機減退も、日本人英語学習者と同様に、内的要因より、外的要因からの影響がよ り強いと思われる。しかし、「教師」からの影響はそれほど強くはなく、他の学習者・社会・家族など「他 者からの影響」は韓国人英語学習者の特別な要因であることが特徴である。

表20は第二言語習得における中国人学習者を対象とした動機減退要因の結果を示す。中国人英語学習者 を対象とした研究はLi & Zhou (2013)とGao & Liu (2016)である。

Li & Zhou (2013)は探索的な因子分析を用いた。その結果、「教師」、「不十分な教室施設」、「学習環

境」という3つの外的要因と、「自信の喪失」、「目標言語や文化に対する消極的態度」、「学習ストラテ ジーの不足」という3つの内的要因が抽出された。

外的・内的要因の視点から見れば、日本と韓国の英語学習者両方とも外的要因からの影響は強いように 見えるが、中国では、日本と韓国と異なり、内的要因の影響がより強いと思われる。

表20 第二言語習得における中国人英語学習者を対象とした動機減退要因 内的要因・外的要因 動機減退要因(中国の英語学習者) 先行研究

外的要因

不十分な教室施設 Li & Zhou (2013)

学習環境 Li & Zhou (2013)Gao & Liu(2016)

社会環境 Gao & Liu ( 2016)

教師 Li & Zhou (2013)Gao & Liu(2016)

内的要因

自信の喪失 Li & Zhou (2013) 目標言語と文化に対する消極的態度 Li & Zhou (2013) 学習ストラテジーの不足 Li & Zhou (2013)

Gao & Liu (2016)は、因子分析ではなく、既存の質問紙を用い、教師関連要因、社会環境関連要因、学習 者関連要因と学習環境関連要因の4分類で、農村・都市出身の学習者の動機減退要因を比較した。この研究 では、言語熟達度など学習場面の視点に限らず、学習者の出身地という社会環境の視点も取り入れた。農 村と都市の間で、4要因はすべてに有意差が見られた。中国の農村・都市の格差が激しい社会環境では、動 機減退要因が異なることが示唆された。

中国本土以外、Hu (2011)は中国台湾南部の大学における 1 年生 467 名(男性:241 名 女性:221 名 全 員は中学校・高校段階で6年間英語学習歴があり)を対象に、彼らの過去の動機減退経験と英語学習の達 成度の関係を探索した。その結果、文法テストと相関のある動機減退要因は:(1)言語学習困難、(2)自己 価値実現、(3)単調な授業、(4)教師学生の良くない人間関係、(5)処罰、(6)言語学習不安である。リスニ ングテストと相関のある動機減退要因は(1)言語学習困難、(2)自己価値実現、(3)単調な授業、(5)処罰、

(6)言語学習不安、(7)自己決定感の不足、(8)悪い教室管理、(9)理論の応用の不足、(10)対人不安、(11) 入学試験英語力の不足である。言語学習困難は英語学習熟達度を説明するもっとも重要な変数であり、「語