第 2 章 先行研究
2.3 先行研究
2.3.1 第二言語習得(SLA)における動機減退研究
2.3.1.2 第二言語習得研究(SLA)における研究目的別の動機減退研究の特徴
表 15 では、レビューした 22 本の第二言語習得研究における研究目的別の動機減退研究の分類を示す。各先 行研究の具体的なリサーチ・クエスチョンや研究目的の分類になる。
表 15 第二言語習得研究における研究目的別の動機減退研究の分類
先行研究 リサーチ・クエスチョン(具体的) 研究目的の分類
Falout & Maruyama (2004) ・EFL 環境下、学習者の英語学習熟達度によって、動機減退要因
はどのように異なるか。
・動機減退要因と熟達 度の関係
Kikuchi & Sakai (2009) ・日本の大学英語学習者の動機減退要因は何か。 ・動機減退要因
Sakai & Kikuchi (2009)
・日本の高校生英語学習者の動機減退要因は何か。
・動機づけの高いグループと低いグループは動機減退要因に関 して何が異なるか。
・動機減退要因
・動機減退要因と動機 づけの強度の関係
Falout & Elwood & Hood (2009)
・日本のEFL英語学習者の動機減退要因は何か。
・過去の動機減退要因はどの程度現在の熟達度に影響するか。
・低熟達度の学習者は動機減退時の自己制御力は低いのか。
・動機減退要因
・動機減退要因と熟達 度の関係
Hamada (2011)
・日本の中学生と高校生の動機減退要因はそれぞれ何か。
・中学生と高校生の動機減退要因の強さの順位はどのようにな っているか。
・高校では、強い動機減退要因はどのように変化するか。
・動機減退要因
・学習者の属性による 動機減退要因の比較
Mahbudi & Hosseini (2014)
・イラントルコ系マイノリティ中学生の動機減退要因は何か。
・強い民族性を持つ学生(More ethnic)と弱い民族性を持つ学生 (Less ethnic)の動機減退要因は何が異なるか。
・動機減退要因
・動機減退要因と民族 性の関係
Agawa & Ueda (2013)
・EFL 学習者はどのような動機減退を経験したか。
・学習者は動機減退へどのように反応したか。
・動機減退要因
・動機減退への反応パ ターン
Krishnan & Pathan (2013) パキスタン大学生の英語学習動機減退要因は何か。 ・動機減退要因
Li & Zhou (2013)
・中国大学生の英語学習の動機減退要因は何か。
・韓国大学生の英語学習の動機減退要因は何か。
・中国と韓国大学生の動機減退要因での文化と特別な要因は何 か。
・動機減退要因
・国別の動機減退要因 の比較
Trang & Baldauf (2007)
・動機減退はどの程度問題になっているか。
・ベトナムの大学生の動機減退要因は何か。
・これらの動機減退要因の強さの順位はどのようになっている か。
・学習者が動機減退を克服する理由は何か。
・動機減退要因
・動機減退要因の強度 動機減退への克服理 由
Sahragard & Ansaripour (2014)
・イラン大学生の動機減退要因は何か。
・イラン大学生の再動機づけ要因は何か。
・動機減退要因
・再動機づけ要因
Song & Kim (2017) ・韓国高校生の動機減退要因は何か。
・韓国高校生の動機回復要因は何か。
・動機減退要因
・再動機づけ要因 Ghadirzadeh & Hashtroudi
& Shokri (2012)
・イラン大学生英語学習の動機減退要因は何か。
・動機づけの高いグループと低いグループの動機減退要因を比 較する。
・動機減退要因
・動機減退要因と動 機づけ強度の関係
Meshkat & Hassani (2012)
・英語教室学習におけるイランの高校生の動機減退要因のパー センテージはどれぐらいあるか。
・男子と女子の動機減退要因に何か相違があるか。
・動機減退要因
・性別による動機減退 要因の比較
Hu (2011) ・台湾学習者の過去の動機減退経験と英語学習達成度の関係は
何か。
・動機減退要因と熟達 度の関係
Gao & Liu (2016)
・中国における中学生の英語学習動機減退要因は何か。
・農村出身と都市出身の学習者の動機減退要因には何か異なる か。
・動機減退要因
・動機減退要因と学習 者出身地の関係
Kim (2009)
・韓国における中学生英語学習者の動機減退要因は何か。
・低い熟達度の学習者と高い熟達度の学習者の動機減退要因の 間で何が異なるか。
・動機減退要因
・動機減退要因と熟達 度の関係
Hosseinpour & Tabrizi (2016)
・イラン大学生の動機減退要因は何か。
・英語学習熟達度によって、動機減退要因はどうなるか。
・動機減退要因
Yadav & BaniAta (2013)
・サウジアラビアの大学生の動機減退要因は何か。
・学習者の弱点と動機減退要因を知った上で、学習者の不安と 動機減退はどう軽減できるか。
・動機減退要因
・動機減退と不安を軽 減する方法
Cankaya (2018)
・学習者の動機減退要因の中で、影響の強い要因と弱い要因は それぞれ何か。
・動機減退要因は男女別に有意差があるか。
・動機減退要因はクラス別に有意差があるか。
・動機減退要因は専攻別に有意差があるか。
・動機減退要因
・男女別、クラス別、
専攻別による動機減 退要因の比較
Rajabi & Pozveh (2016)
・特別な英語授業に参加した学習者と参加しなかった学習者は それぞれ最も影響のある動機減退要因は何か。
・特別な英語授業に参 加したかによる動機 減退要因の比較
荒井 (2004)
・日本における大学の学習者は何によって外国語のやる気が失 われるか。
・動機減退にどのように対処したか。
・動機減退要因
・動機減退への対処・
反応
表 15 は、22 本の先行研究の具体的なリサーチ・クエスチョンと研究目的の分類を示している。今まで、
第二言語習得研究における動機減退の研究目的は、動機減退要因に注目する研究、動機減退要因と言語学
習熟達度、動機づけの強度、性別、国別、民族性などの関連を分析する研究の 2 つに大別できる。それ以 外に、動機減退後の再動機づけ(Remotivation)が可能である(Falout 2012)ため、動機づけへの反応・再 動機づけに関する研究も以上の先行研究のリサーチ・クエスチョンに見られる(荒井 2004、Song & Kim 2017、Sahragard & Ansaripour 2014)。
以下では上述の 22 本の先行研究の「動機減退研究」の部分に焦点を当て、再動機づけ(Remotivation)
も重ね、第二言語習得分野における動機減退研究の研究目的を述べる。
まず、動機減退要因に注目する研究はKikuchi & Sakai (2009)、Sakai & Kikuchi (2009)、Song & Kim (2017)、 Falout & Elwood & Hood (2009)、Hamada (2011)、Mahbudi & Hosseini (2014)、Agawa & Ueda (2013)、Krishnan
& Pathan (2013)、Li & Zhou (2013)、Trang & Baldauf (2007)、Cankaya (2018)、荒井 (2004)、Sahragard & Ansaripour (2014)、Ghadirzadeh & Hashtroudi & Shokri(2012)、Yadav & BaniAta (2013) 、Meshkat & Hassani (2012) 、Gao
& Liu (2016)、Kim (2009)、Hosseinpour & Tabrizi (2016)がある。異なる国、異なる教育段階の学習者の動機 減退要因は何かを解明しようとするものがほとんどである。
次に、動機減退要因と言語学習熟達度、動機づけの強度、性別、国別、民族性などの関連を分析する研 究も窺える。各先行研究の目的を比較すると、「学習者の動機減退要因は何か」のみに注目するものは少な く、多くの研究はそれを元に、何か変数を取り入れ、その変数と動機減退の関連、比較をするものが多い。
例えば、動機減退要因を明らかにした上で、動機減退要因と学習者の熟達度の関係(Falout& Maruyama 2004、
Falout & Elwood & Hood 2009、Hu 2011)、動機減退への反応パターン(荒井 2004、Agawa & Ueda 2013)、 国別の動機減退要因の比較(Li & Zhou 2013)、動機減退要因と動機づけ強度の関係(Sakai & Kikuchi 2009、
Ghadirzadeh & Hashtroudi & Shokri2012)がある。また、Cankaya(2018)では、動機減退を専攻別に、男女別 に、クラス別に研究してきた。以上に挙げられた視点からの研究は特定の国の社会的状況を考慮せず、一 般的な視点からの研究である。
一方、Mahbudi & Hosseini (2014)は学習者民族性の強弱と動機減退要因の関係を探索した。Gao & Liu (2016)では、中国の都市・農村出身、学習者の出身地による動機減退要因を比較した。この民族性と出身地 の視点は熟達度、動機づけの強度のような視点と比べ、社会的背景を考慮に入れたユニークな視点である と考えられる。
将来の動機減退の研究はビリーフ、社会的背景、パーソナリティー、など他の変数と動機減退要因の関 連も考えるべきだとCankaya (2018)で指摘されている。以上の 22 本の先行研究で示しているように、動機 減退要因と学習者の熟達度の関係、動機減退への反応パターン、動機減退要因と動機づけ強度の関係はす でに研究者に意識され、研究されてきた。しかし、動機づけは社会的コンテクストと深く関わっているも のの、民族性、学習者の出身地などの社会的背景も考慮した研究の端緒が見えてはきたが、このような研
究は未だ少ないのが現状である。