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第 3 章 受精卵における Ca 2+ 流入の活性化

3.4 考察

消光速度の最大値は平均で10.6 ± 2.5 min–1で,減衰の時定数は11.2 ± 0.8 min であった.以上の測定及び解析結果は,Ca2+流入速度は[Ca2+]cyt上昇直後で最大 で,以後次の[Ca2+]cyt上昇が生じるまで徐々に減少していくこと,すなわちCa2+

流入速度も[Ca2+]cytの振動と同期して変動していること示すものである.

が周期的に変動することは確かである.

Mn2+流入速度を[Ca2+]cyt 上昇との時間的関連で解析することにより,マウス 受精卵でのCa2+流入速度はCa2+遊離の直後に増加すること,それ以後徐々に減 少し,次の Ca2+遊離が生じるまでにほぼ未受精卵のレベルにまで戻ることが示 された.このことは,受精時に促進されるCa2+流入は,Ca2+遊離によって活性 化されるチャネル,いわゆるCRACを介したものであることが示唆される.哺 乳類卵でのCRACの候補として,イノシトール四リン酸(IP4)によって活性化 される Ca2+透過性チャネルがある.ハムスター卵に IP4を注入すると,Ca2+流 入 が 促 進 さ れ て Ca2+ス ト ア の 再 充 填 が 速 ま る こ と が 報 告 さ れ て い る

(Shirakawa & Miyazaki, 1995).また最近,マウス受精卵でのIP3濃度はCa2+

振動と同期して周期的に増加することがわかった(Matsu-ura et al., 投稿準備 中).これは[Ca2+]cyt上昇にともなう PLCのCa2+濃度依存的な IP3産生活性に よるものと考えられる.IP3の直接の代謝産物であるIP4の濃度も IP3と同様に 周期的に変動すると予想され, IP4依存性Ca2+透過チャネルが存在すれば,そ の活性も[Ca2+]cyt上昇後に一過性に活性化されると想定される.

受精卵でのCRACのもう一つの候補は,ストア作動性チャネルSOCである.

多くの体細胞と同様に,マウス卵でも Ca2+ストアの枯渇によって活性化される SOCE の存在が示唆されている(Kline & Kline, 1992; McGuinness et al.,

1996).またSOCの1種であるOrai1チャネルタンパク質や,それを制御する

小胞体膜タンパク質である STIM1 が発現していることも報告されている

(Gómez-Fernández et al., 2009).マウス受精卵で活性化される Ca2+流入が SOCを介したSOCEかどうかについては,本論文の研究課題4で検証する.

研究課題1では,マウス受精卵でのCa2+流入は,細胞内Ca2+ストアの再充填 のためのCa2+を供給することで,Ca2+オシレーションの維持に寄与しているこ とが示唆された.しかし,もし Ca2+流入が長時間持続的に増大したままの状態 だと,[Ca2+]cytがより高いレベルに維持されることになり,その結果卵内でCa2+

依存性の自己破壊的なプロセスが活性化されかねない.一過性[Ca2+]cyt上昇時の Ca2+遊離後に一時的にCa2+流入が促進されることは,細胞内Ca2+ストアの再充 填に必要最小限の Ca2+を供給する効率的なメカニズムであるといえるであろう.

研究課題3(第4章)では,実際にマウス受精卵でのCa2+流入がCa2+ストアで ある小胞体の内腔のCa2+濃度変化に影響を及ぼすかについて検証する.

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