第 1 章 実証的分析Ⅰ Y 中学校の教師
第 1 節 事例分析:北村教師 初任教師の実践的知識の発達
3 考察
3-1 北村教師 の実践的知識 の発達過程と その特徴 (Figure:K1,Figure:K2)
北村教師の教師としての行動を決定している意味パースペクティブを、授業に関する意味 パースペクティブと生徒指導に関する意味パースペクティブに大別して、その発達の過程と あり様を分析してきた。それぞれの分析から実践的知識の発達過程について 3点の特徴が見 出せる。
1 点目は、実践的知識の発達は、6 つの過程を経ることである。 北村教師の生徒指導に関 する意味パースペクティブを構成する考え方として は、生徒への「願い」について、生徒と の関わり方について、生徒指導について、生徒との「関係づくり」について、という 4つの 考え方が北村教師には形成されている。生徒への「願い」についての考え方は、著名な授業 実践に接するという大学時代の経験から形成されていたが、後者 3つの考え方の発達は省察 の深まりによって導かれており、その過程は次の過程である。
1)困難な状況での実践 からの省察の喚起。
2)自己の実践以外への批判的な検討からの新しい視点の抽出 3)考え方の形成
4)形成された考え方に基づく自己の実践への批判的な検討 5)新たな省察の喚起
6)自己の実践への省察の深まり(省察 reflection、批判的省察)
7)b:他者の言葉からの新たな視点の抽出 8)b:新たな視点に基づく実践
9)a:自己の実践への批判的な評価(批判的省察)
b:新たに見出した視点からの批判的な評価 10)批判的自己省察(考え方の発達)
授業に関する意味パースペクティブを構成する考え方としては、生徒に培いたい力について、
授業づくりについて、授業プロセス(授業の展開・指導)について、学習指導について、とい
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省察の対象
方の変容過程
【指導が困難な中での実践】【指導が困難な中での実践】
「自分がすごく引いたところが多かった」「自分もクラスター制ですごい交わりは多い学校やと思うんですけど。でもなんだかんだ2年生のクラス見れてなくて」
批判的な検討 「東先生と子どもの関わりを見ていて、東先生は近いんだけどものすごく距離感をバーンとちゃんと保ってらっしゃって、要は先生と生徒だよねっていうのが見てて分かった」 「子どもがめちゃめちゃやんちゃしてるのを客観的に教員が見たら、こいつら大変やなって思うんですけど。子どもの心の中が大変」
批判的な評価 「大学生やからすごい距離も近いやろし、子どもとよう話せるかなと思って話すんですけど。ただそれは先生としてしゃべってるんじゃなくて、大学生としてしゃべってる」
【新しい視点に気づく】【「ただ親密的にいくんじゃなくて本当に教員」】【生徒理解の必要性への気づき】
大学時代の経験から他者の実践から生徒への批判的な検討から
考え方の形成 「お互いを受け入れる温かさ」「相手のことを思える人になってほしい」「自分をちゃんと持った子になってほしい」 「白黒つけていきたい」「1人1人にやっぱり手をかけて指導してくっていうことが大事」
実践への批判的な検討からの省察の喚起
【省察の喚起】「あなたを育てるための要は手伝う人やっていうことの気持ちを子どもが持ててるかどうか」
省察(考え方の源)「引いた」ということは「目をつぶって」「見逃していた」「自分の気持ちをストレートに言ってなかった」
【批判的な検討】批判的省察 「あそこまで自分が引けてしまって、関係つくるといっても子どものペースに乗って関係をつくってる」 「怖いなと思って生徒を見てた」「こうなったら怖いなとか、こういうふうにガー責められたらまたやだなぁとかっていう気持ちがすごくあった」 生徒たちに反発されて「自分が引いてしまったっていうところ」にあった その後の指導も「すごく〔生徒の〕様子を見ながらやっていった」 「怒る中にも今までだったらガツンと怒って全然フォロー入れなかったりとか、怒ったあとになんで怒るのっていう部分が生徒に伝わってなかったりっていうことがあって、関係がうまくとれなかった」
【新しい視点に気づく】他者のアドバイスから 【生徒の「気持ちを受け止める」】他者のアドバイスから 【「本気で」叱る・褒める、「普段から」「伝える」】
【新しい視点を試す】
【批判的な評価】批判的省察 「自分が本当に導きたいところに導くというよりも子どもの思うままにというところが多かった」「細かいところを絶対見逃さないようにする」 生徒が「僕のこと分かってるみたいな感じで思ってもらえるように自分の気持ちをちょっと言って」「ストレートに言う」「そこからは結構素直に、うん分かったみたいな感じで聞くようになってきて」 「子どもらは僕が怒るとちょっと聞くようになった」「あぁそうなんやというようなことをちょっと納得できるようになってきた」
批判的自己省察新たな問題設定「本当に導きたいところに導く」関係性生徒の「気持ちを受け止める」生徒との「普段から」の「関係づくり」を行うことによって生徒に「認めてもらって」成り立つ
考え方の発達「自分が生徒指導で大事にしていきたいのは白黒させたい気持ち」「〔生徒の〕気持ちに指導の中で寄り添える」ように
ure:K1 北村教師の生活指導に関する意味パースペクティブの発達過程と構造
省察批判的省察批判的自己省察 の矢印は考え方の変容過程を表し、 の矢印は考え方の関連性を表している。 【省察の喚起】
「実践を振り返って」
「常にあなたのことを大事に思って指導をしているから、一緒に頑張っていこうよっていうような雰囲気を普段の指導で出すこと。普段から伝えていくことっていうところが一番大事」「普段の関係づくりからやっぱり切り込んでいく」 生徒への「願い」生徒との関わり方について自分の指導について生徒指導について生徒との「関係づくり」
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省察の対象考え方の変容過程
【省察の喚起】 「積極的に自分からコミュニケーション取ろうとするっていう態度はすごく大事」「それを現実的にどうしていくか」
省察(考え方の源) 「ただ単にこういう展開すればいいなっていう感じやった」
【批判的な検討】批判的省察 「自分から積極的に意見を主張できるかっていったらなかなか難しい」 「手法はいろんな先生に学んだんですけど。自分がその手法をどういうねらいで使うんか」「そこをずっと考えていなかった」 「自分が結局、授業したいなと思ってやっても、子どもがちゃんとそれを楽しめる授業かどうかってまたずれがあって」 「目の前の子どもが結局、何の課題を感じてるかっていうのが自分が見えてなかった」
【新しい視点を見出す】 「英語をする上でやっぱ大事なのは、どうその持ってる知識を使えるような状態にしていくかっていうこと」
【考え方の形成】
意識的な【省察の喚起】 「態度面だけじゃなくて、技術面で大事なのは、やっぱり頭を使って英語をしゃべれる人になること」 「この単元、今してるんだけど、子どもにとって何の意味があるんやろう」 「教え方ってたくさんあるけど、一番子どもたちに、今の子どもたちに必要な教え方ってなんやろう」 「子どもらなんでそんな逃げてくんやろうっていうとこまで」「そこをもう一度あらためて考えるようになった」
【研究授業からの新しい視点】
【新しい視点を見出す】授業には「背後」がある
省察(考え方の源) 「学習指導っていうとイコール教え方っていうところだけ切り取ってる」
【批判的な検討】批判的省察 生徒の「反応」を問う 「その教材が生徒たちに教えたときにやっぱりそこでじゃあちゃんと意見が言えるようになってるかどうか」 「生徒に合った英語を言えてないとか。こちらが生徒の1人1人に合った英語を言えてないとか。理解度に合った英語を伝えられてないとか」 「それだけを、その教え方は一般化できない」
新たな問題設定授業実践には生徒指導が関与している
批判的自己省察 【考え方の発達】 「英語を使って自分の言いたいこと。自分の言いたいことをちゃんと言えるようになるということ」 「それ〔生徒に培いたい力〕を意図して、授業を組み立てていく」 「英語が面白いって、やっぱり生徒たちが思えることと、英語で話せて英語が伝わったらなんか良かったなと思えるようになること」 「授業づくりは本当に生徒指導が基盤にあって、普段の授業の学びがある」
Figure:K2 北村教師の授業に関する意味パースペクティブの発達過程と構造
省察批判的省察批判的自己省察 の矢印は考え方の変容過程を表し、 の矢印は考え方の関連性を表している。 「心の中は自分の言いたいことを言えたとかっていう気持ち」を「大事」にする 生徒に培いたい力授業づくりについて授業プロセス(授業の展開・指導)について学習指導について
ノートずっと書いて 自主的な研究の場 (アクションリサーチ)
【「ねらいってすごく大事」】
【生徒指導からの新しい視点】
生徒の「気持ちを受け止める」「子どもの反応を見る」