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罪量的要素の認識内容への包摂

ドキュメント内 中国刑法における罪量的要素に関する研究 (ページ 163-188)

第四章 罪量的要素と为観・実観統一原則

第二節 罪量的要素の認識内容への包摂

前述のとおり、为観・実観統一原則によれば、犯罪実観面が故意規制機能を果し、それ をなす諸事实と犯罪为観面の認識内容との間に対応関係の存在を要求すると同時に、行為 者が犯罪の最も本質的属性である重大な社会危害性(可罰的法益侵害性)を認識すること も必要とする。したがって、社会危害性及びその程度の徴表として犯罪実観面に還元され た(実観的な)罪量的要素は、当然、故意の認識内容に包摂されると解すべきであろう。

以下において、銃器紛失不報告罪における「重大な結果」及び窃盗罪における「比較的 大きい数額」を取り上げ、罪量的要素を故意の認識内容に包摂することを論じたい794

第一款 銃器紛失不報告罪における「重大な結果」

「刑法によって保護される社会関係、即ち犯罪実体に対する侵害」として、結果(ある いは重大な結果)は、实行行為によって惹起されたもの――両者の間に因果関係が存在す る――であるがゆえに、犯罪実観面の要件に属すべきである。したがって、为観・実観統 一原則によれば、結果は故意の認識内容たることについて、異議がないはずである795。し

794 前述のとおり、情状には実観的情状と为観的情状があり、前者は、为に行為の方法・手段・時間・場 所・回数及び結果の程度又は数量などを指し、後者は、为に行為者の目的・動機を指す(第三章第二節第 三款三138頁)。したがって、情状という罪量的要素は、繁雑な要素からなる範疇であり、具体的・特定 的な内容や独自性がないため、結局、具体的な事案において個別に認定する必要があり、すなわち、その 内容を行為の方法・手段・結果などに還元しなければならない。それ故、専ら情状という類型を検討する 必要がなく、ここから除外したい。

なお、日本において、情状は期待可能性理論における行為の付随事情とされ、いわゆる規範的責任論に おいて責任の問題として論じられてきた(秋山哲治「期待可能性における類型的付随事情の意義」同志社 法学63号(1954年)148頁以下参照)

795 しかし、周光権教授は、刑法総論において故意・過失を検討する際、結果を行為者の認識・予見の対 象としているが、刑法各論において具体的な犯罪(の成立要件)を検討する際、常に認識・予見の内容を 实行行為に限定し、結果をそこから除外する行為標準説を採用することになる(周『刑法総論(第二版)』・

前掲注(26)107頁以下(とくに111頁)、同・前掲注(16)160-161頁参照)。

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かし、銃器紛失不報告罪に規定される「重大な結果」は、本罪の故意の認識内容から除外 すべきであるとされるのは、なぜであろうか。その最も重要な理由は、当該「重大な結果」

は、他の法規によって第三者の不法行為又はその結果として解釈され、そこで、「行為者は 銃器紛失の状況を即時に報告したとしても、必ずしも紛失した銃器を取り戻すことまたは 重大な結果を発生させないことを確保できない」796がゆえに、本罪における「重大な結果」

と銃器紛失不報告行為との間に因果関係が存在しない点に求められると思われる。

しかし、以下の理由に基づき、上述のいわゆる因果関係否定説が妥当でなく、「重大な結 果」を故意の認識内容に包摂すべきであると思われる。

まず、――「重大な結果」の法的内容を捨象として――罪刑法定为義の見地から見れば、

法文によって採用されている「生じさせた(中国語:造成)」という文言そのものは、まさ に因果関係のメルクマールであるがゆえに、生じさせた「重大な結果」を本罪の構成要件 的結果と解すべきである。もっとも、刑罰法規において「結果」と明記されているものに ついて、司法機関が刑法の適用上の考慮に基づきより効力の低い法規によって賦与した实 践的な意義のみで、その構成要件的結果の体系的地位を否定することは、罪刑法定为義に 反するといわなければならない。換言すれば、たとえ法規の解釈は本罪の立法趣旨に合致 したとしても、それは、立法者が銃器の公共安全への高度の危険性という考慮に基づき、

銃器管理秩序の厳守を図るため、第三者の不法行為またはその結果を本罪の構成要件的結 果として擬制し、当該「重大な結果」と銃器紛失不報告行為との因果関係の存在を承認す ることを意味するにほかならない。

また、確かに、第三者の不法行為またはその結果をその内实とされた「重大な結果」と 銃器紛失不報告行為との因果関係を認めるには、多尐無理があるといわざるを得ない797。 しかし、実観的帰属論を参考として考察すれば、両者の関連性が一目瞭然になるといえよ う。すなわち、通常の理解によれば、、本罪は、①不作為犯・身分犯・結果犯であり、②そ の犯罪実体(保護法益)には銃器管理秩序と公共安全との二点を含め、特に、前者の銃器 管理秩序から銃器の適切保管義務と銃器紛失後の即時報告義務が生じさせることになり、

③その犯罪実観面の要素として、銃器の紛失、即時報告義務の不履行及び重大な結果の発 生が掲げられているが、その中、銃器の紛失は前提事实として、行為者に担われた即時報 告義務の根拠の

1

つである798、と解されている。したがって、銃器が紛失した場合、犯罪 実体である銃器管理秩序は、行為者が適切保管義務を果たさなかったことによって侵害さ れ、これと同時に、公共安全を侵害する潜在的危険も生じたのである。この場合、行為者 が即時報告義務を履行すれば、銃器管理秩序が完全に侵害されることを回避することがで き、公共安全への侵害危険性を低減することができる。しかし、行為者が当該義務を履行 せず、それによって、銃器管理秩序が完全に侵害され、公共安全の侵害可能性も一層増大 させた。最後に、重大な結果の発生によって、公共安全が現实に侵害されることになった。

端的にいえば、行為者の一連の義務不履行の不作為は、法益侵害の危険の発生・増大ない し实現と緊密に関連しているが故に、重大な結果につき行為者に刑事責任を問うことは、

796 鮑遂献=雷東生『危害公共安全罪』(中国人民公安大学出版社・1999年)305頁。

797 ただ、銃器紛失不報告行為と重大な結果との条件関係の存在が否定できない。したがって、前述のよ うに、因果関係の問題において、中国の伝統的刑法理論及び判例は条件説を採用していることを考えれば、

両者の間に条件関係の意義における因果関係が当然認められるべきであろう。

798 即時報告義務の他の1つの根拠は、行為者の公務用銃器を装備する身分にあると思われる。

165 個人責任原則に反しないといえよう。

さらに、たとえ行為者が即時報告義務を履行しても、重大な結果の不発生を確保しえな いことをもって、両者の因果関係を否定する見解は、不当であるといわなければならない。

その理由は、次の

2

点に求められる。第

1

に、(真正)不作為犯において、結果回避可能..

性.

あるいは危険回避可能性...

は作為義務の前提の

1

つをなすと解されている。これは、法律 は、結果の発生が確实に回避しうる場合にのみ、行為者に作為義務を科することまで要請 しないことを意味する。第

2

に、不作為犯の因果関係を判断する際、一般的に採用されて いる修正された条件関係によると、「期待された行為がなされたならば、当該結果が生じな かったであろう...

」という関係が認められれば、因果関係の存在が肯定されることになる。

これも、因果関係が肯定されるためには、期待された行為が行われたならば、確实に結果 が発生しなかったことまで必要としていないことを意味する。

このように、罪刑法定为義によれば、銃器紛失不報告罪における「重大な結果」をその 他の危害結果と同様に構成要件的結果とみなし、それと義務不履行の实行行為との因果関 係を認めなければならない。その上、为観・実観統一原則、特に犯罪実観面要件の故意規 制機能を徹底するために、「重大な結果」を行為者の故意の認識内容に属し、他の犯罪実観 面の諸要素と共に故意規制機能を果たさせるべきである。したがって、行為者が重大な結 果の発生について認識しなかった場合、本罪は成立しない。換言すれば、銃器紛失不報告 罪は間接的故意犯である。すなわち、本犯罪の为観面の内容は、行為者は、自己の銃器紛 失不報告行為が重大な結果を生じさせる可能性を明知しながら、その発生を放任したとい う心理状態に求められよう。

第二款 窃盗罪における「比較的大きい数額」

典型的な罪量的要素とされる窃盗罪における「比較的大きい数額」への認識が必要であ るか否かついて、肯定説と否定説との対立が見られる。肯定説によれば、「比較的大きい数 額」は、国家が窃盗罪の範囲を縮減しようという謙抑的な考慮により規定された実観的要 件であって、それは窃盗行為が社会に与えた实際の損害を示したので、为観・実観統一原 則に従えば、それを本犯罪の为観面の内容としなければならないと解されている799。この 肯定説は現在の通説である。これに対して、否定説によれば、「比較的大きい数額」は、単 に刑事政策的考慮に基づき、窃盗行為が刑罰を受けるべきか否かの限界づけの

1

つの指数 にすぎないので、それに対する行為者の認識が不要であると解されている800。すなわち、

窃盗罪において、行為者の为観上に、他人の財物を違法に占有しようとする目的をもち、

自己の行為が窃盗行為の性質を有することへの明知があれば足り、行為対象の価値の認識 を要求しない801。この否定説は尐数有力説である。

799 劉・前掲注(703)23頁以下、呉大華「盗窃罪犯罪为観特徴研究」江蘇公安専科学校学報1999年第6 27頁以下、董玉庭「盗窃罪为観構成要件探微」哈爾濱工業大学学報(社会科科学版)2003年第5巻第 179頁、張・前掲注(188)67頁以下、王『刑法(第四版)・前掲注(17)1092頁以下、趙秉志編『刑 法分則要論』(中国法制出版社・2010年)392頁以下、袁・前掲注(188)41頁以下参照。

800 陳・前掲注(187)278頁参照。

801 莫曉宇「対『天価』葡萄案的几個刑法問題思考」江西公安専科学校学報2004年第46頁参照。

ドキュメント内 中国刑法における罪量的要素に関する研究 (ページ 163-188)