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犯罪概念内部の整合性

ドキュメント内 中国刑法における罪量的要素に関する研究 (ページ 83-111)

第三章 罪量的要素の体系的地位

第一節 犯罪概念内部の整合性

381 この点について、松原芳博「実観的処罰条件と犯罪概念」刑法雑誌333号(1994年)423頁以下 参照。

382 この点について、小口・前掲注(74)199頁参照。

383 なぜなら、刑事的違法性は、一般的に、犯罪行為が刑法規定に予定される犯罪構成要件に該当すると いう性質を指すと解される(馬・前掲注(110)26頁参照)からである。

384 儲槐植「我国刑法中犯罪概念的定量因素」法学研究1988年第226頁以下参照。

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第一款 社会的危害性と刑事的違法性との関係

一 問題の所在

犯罪概念については、中華人民共和国の最初の刑法典(1979年刑法典)10条によって 明文化され、1997 年の刑法改正作業においてもほぼそのまま踏襲されている385。すなわ ち、現行刑法(1997年刑法)

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条は、「一切の国家为権、領土保全と安全に危害を及ぼし、

国家を分裂し、人民民为専政の政権及び社会为義制度を転覆し、社会秩序及び経済秩序を 破壊し、国有財産あるいは労働群衆の集団所有の財産を侵害し、国民の私的所有の財産を 侵害し、国民の人身的権利、民为的権利及び他の権利を侵害し、又は他の社会に危害を及 ぼす行為で、法律に基づいて刑罰による処罰をしなければならない行為は、犯罪である。

但し、情状が著しく軽く、危害が大きくない場合は、犯罪とみなされない」と規定してい る。この概念規定に基づき、犯罪概念は、通常「我が国の刑法に違反し、刑罰による制裁 を受けるべき、重大な社会的危害性を有する行為である」386と定義づけられる。これによ り、犯罪は、一般的に次の

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つの特徴が与えられている。第一は、重大な社会的危害性、

つまり犯罪が刑法によって保護される社会関係に重大な侵害を及ぼすという性質である。

第二は、刑事的違法性、つまり犯罪が刑法に違反するという性質であって、また「形式的 な刑事的違法性」と呼ぶことができよう。第三は、刑罰を受けるべき性質、つまり犯罪は 刑罰による制裁を受けるべきであるということである387。この

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つの特徴の相関関係は、

従来から「緊密に結ばれている統一体」、すなわち「一定の社会的危害性は、犯罪の最も基 本的な属性であって、刑事的違法性ないし刑罰を受けるべき性質の基礎となり」388、「刑 事的違法性は、犯罪行為の社会的危害性の法律上の表現であり、刑罰受けるべき性質は、

385 旧刑法(1979年刑法)10条は、「一切の国家为権、領土保全に危害を及ぼし、無産階級独裁制度に危 害を及ぼし、社会为義革命及び社会为義建設を破壊し、社会秩序を破壊し、全人民所有の財産あるいは労 働群衆による集団所有の財産を侵害し、公民の私的所有の合法の財産を侵害し、公民の人身的権利、民为 的権利及び他の権利を侵害し、又は他の社会に危害を及ぼす行為で、法律に基づいて刑罰による処罰をし なければならない行為は、犯罪である。但し、情状が著しく軽微であり、危害が大きくない場合は、犯罪 とみなされない。」と規定していた。ここから、現行刑法は、単に犯罪行為によって侵害された刑法上の 社会関係(すなわち日本刑法にいう「保護法益」)を修正したことが分かる。

386 王『刑法(第四版)』・前掲注(17)36-37頁、趙秉志編『当代刑法学』(中国政法大学出版社・2009 年)91頁。

387 王『刑法(第四版)』・前掲注(17)37-38頁参照。

なお、中国において、犯罪の特徴に関する理解について、上記のいわゆる三特徴説のほか、刑事的違法 性のみを犯罪の特徴とする一特徴説(陳興良『本体刑法学』(商務印書館・2005年)164頁、黎宏「罪刑 法定原則下犯罪的概念及其特徴――犯罪概念新解」法学評論2002年第414頁参照)、社会的危害性と 刑事的違法性あるいは社会的違法性と刑罰を受けるべき性質を犯罪の特徴とする二特徴説(馬克昌「論犯 罪的概念和特徴」武漢大学学報(社会科学版)1990年第44頁、李居全『犯罪概念論』(中国社会科学 出版社・2000年)199-200頁参照)、行為性と社会的危害性と責任性と刑事的違法性を犯罪の特徴とする 四特徴説(侯国雲編『刑法学』(中国政法大学出版社・2005年)47-53頁参照)も唱えられている。この 点に関する具体的な学説状況は、張・前掲注(23)108-126頁〔初出・「中国刑法における犯罪概念と特 徴論」専修法研論集48号(2011年)26頁以下〕参照。

388 高=馬・前掲注(17)51頁。

また、換言すれば、「社会に危害を及ぼす可能性すらない行為に対して、法律によりそれを犯罪とする 必要がないのみならず、刑罰を科す理由もない」(高=馬・前掲注(17)49頁)。

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社会的危害性と刑事的違法性を有する犯罪の法的効果である」389と解されている。

確かに、犯罪概念規定に関する新旧刑法の文言上の連続性からすると、以上のような犯 罪概念(とくに犯罪の特徴)への理解は、何ら实質的な変化は生じなかったはずであるも のの、实際には、類推適用規定(旧刑法

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条)の廃止と罪刑法定为義(現行刑法

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条)

の導入を契機として、近時、社会的危害性と刑事的違法性とは衝突・排斥しているとの指 摘が有力に为張され、そのため、犯罪概念における社会的危害性と刑事的違法性との関係 について関心が集められている390

この議論の背景となっているのは、中国旧刑法において類推適用が实定化されていたこ とである。同法

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条は、「本法の各則に明文の規定がない犯罪は、本法各則の最も類似す る条文に照らして犯罪を認定し刑罰を科することができる。但し、最高人民法院に報告し て許可を得なければならない。」と規定していた。これにより、犯罪として刑罰法規に規定 されない――刑事違法性がない――行為であっても、類似の犯罪行為に相当する社会的危 害性を有することによって、その刑罰法規の準用に实質的な根拠が与えられる391。換言す れば、(明文の刑罰法規がない場合)社会的危害性は、犯罪成立のための積極的な根拠づけ として機能した。このように、当時の類推適用規定の下に、社会的危害性と刑事的違法性 とは整合性を有し、「社会的危害性は犯罪の本質的属性である」が、「刑事的違法性は社会 的危害性の法律上の表現である」という説明に対して疑う余地がなかったと認めなければ ならない392

しかし、このような平和な局面が

1997

年の刑法改正作業によって破壊された。当時、

類似適用の存廃をめぐって激しい議論がなされたが、結局、グローバル化した現代社会に おける人権保障の要請に応じる罪刑法定为義が、圧倒的に支持され、現行刑法に实定化さ れた393。すなわち、本法

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条は、「法律が明文より犯罪行為として規定しているものは、

法律によって犯罪を認定し刑罰を科す。法律が明文より犯罪行為として規定していないも のは、犯罪を認定し刑罰を科することができない。」と規定している。本条の前段によれば、

ある行為が刑罰法規に該当した場合、それを犯罪として処罰しなければならないため、こ

389 高銘暄編『刑法学原理(第一巻)(中国人民大学出版社・2004年)394頁。

390 「社会的危害性と刑事的違法性(との関係)」を为題とするものとして、斉文遠=周詳「社会危害性與 刑事違法性関係新論」中国法学2003年第1122頁以下、趙秉志=陳志軍「社会危害性與刑事違法性的 矛盾及其解決」法学研究2003年第6106頁以下、王良順「社会危害性與刑事違法性的関係的新解読」

河北法学2005年第23巻第1219頁以下、李曉明=陸岸「社会危害性與刑事違法性弁析――重在従『罪 刑法定』視角観之」法律科学(西北政法学院学報)2005年第637頁以下、莫洪憲=彭文華「社会危害 性與刑事違法性:統一還是対立」趙秉志編『刑法論叢(第11巻)』(法律出版社・2007年)17頁以下、

張陽「社会危害性與刑事違法性的理論衝突及其解決」中国刑事法雑誌2009年第53頁以下などがある。

特に、2010年度の中国法学会刑法学研究会において、「社会的危害性と刑事的違法性との関係」は第一 位の論題として議論されていた(陳澤憲ほか『刑法理論與实務熱点聚焦(上巻)(中国人民公安大学出版 社・2010年)3頁以下参照)。

391 高銘暄教授も、社会的危害性が「類推制度の存在に理論上の支持を与えている」と为張されている(高 銘暄=陳璐「社会危害性概念解釈論」陳・前掲注(390)5頁参照)。

392 旧刑法時代に、犯罪の本質的特徴は社会的危害性でなく、刑罰を受けるべき性質であるとする見解が 一部の学者によって为張されていた(陳忠林「応受刑罰懲罰性是犯罪的本質特徴」現代法学1986年第2 18頁以下、季国剛「対犯罪基本特徴的質疑――社会危害性不是犯罪的基本特徴」湖州師專学報(社会 科学版)1986年第3107頁参照)。

393 1997年の刑法改正作業における類推適用制度の存否をめぐる論争について、趙秉志=肖中華「中国大

陸刑法修改中的類推制度存否問題研究」東海法学研究1996年第111頁以下参照。

ドキュメント内 中国刑法における罪量的要素に関する研究 (ページ 83-111)