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差周波光源と光共振器吸収セルを用いた分光計の開発

ドキュメント内 大久保章 (ページ 52-55)

第 3 章 分光計の開発 48

3.2 差周波光源と光共振器吸収セルを用いた分光計の開発

3.2.1 光共振器吸収セル

本研究では,光共振器を差周波光源の狭線幅化の誤差信号発生に用いると同時に,試料セ ルとして使う分光計を開発した.図3.1に使用した光共振器(Neoark; CAVI-GCELL250) を示す.2 枚のミラーが吸収セルの窓を兼ねた一体構造をしており,共振器の中に置 いた吸収セルの窓による損失がない.本論文では,これを光共振器吸収セル(CEAC:

cavity-enhanced absorption cell)と呼ぶ.

CEAC2枚のミラーは,波長3.4µmでの反射率が99.0%,曲率半径が2 m,直径が

12.7 mmの凹面鏡で,ミラーの間隔は23.6 cmである.(2.66) 式から計算した共振器の

基本モードのレイリー長は47 cm,ビームウェストでのビーム径は0.71 mmである.ミ ラーの位置でのビーム径が0.74 mmであるから,ミラーからの光電場の漏れは(2.69) 式 からe−7.4×106 と求められ,これは無視できる.FSR636.16 MHz,透過スペクトルの 半値全幅は2.1 MHzで,フィネスは303である.これらは,波長 1.55µmのインライン

型EOMを用いてサイドバンドを発生させて測定した.ミラーの損失を0.3 %,透過率を

0.7 %とすると,空のCEACでは実効光路長が198倍,検出感度が139倍になる.また,

CEAC内の電場の振幅が定在波の腹で入射光の17倍になる.これは飽和パラメータ72 倍に相当する.ミラーにはリング型のPZTとべローズが取り付けられており,PZTに電 圧を印加して真空を保ったまま共振器長を変えることができる.このCEACにサンプル ガスを封入し分光測定を行う.

3.1 光共振器吸収セル(CEAC

3.2.2 分光計の構成

図3.2 に本研究で使用した分光計の基本構成を示す.差周波発生のシグナル光源には 波長1.55µmのECLD(Opto Comb; LT-5001N),ポンプ光には波長1.06µmのNd:YAG レーザー(Innolight; Mephisto 500NE),波長変換素子には導波路型PPLNを使用した.

シグナル光のパワーをEr 添加ファイバーアンプ(EDFA: Er-doped fiber amplifier, IPG Photonics; EAD-200-C-PM)で50 – 100 mWに増幅し,ファイバーカップラーでポンプ光 と重ね,ピッグテイル付きのPPLNモジュール(NTT Electronics; WD-3360-000-A-B-C へ入射する.擬似位相整合を達成するために,PPLNの温度をモジュール内蔵のペルチェ 素子に電流を流して最適化する.また,試料分子の吸収線に合わせて同調可能帯域が86.4

– 89.0 THz(測定値)と88 – 91 THz(未測定,データシートからの推定値)の異なる2

つのPPLNを使用した.

中赤外光の周波数は,PDH 法を用いてCEAC のある縦モードの共振周波数に安定化

3.2 分光計の構成.ECLD:外部共振器型半導体レーザー,EOM:電気光学変調器,

FA:ファイバーアンプ,XO:水晶発振器,PPLN:周期分極ニオブ酸リチウム,BP: リュースター板,CEAC:光共振器吸収セル,PZT:ピエゾ素子,OBPF:光バンドパス フィルタ,I – V:トランスインピーダンスアンプ.

した.インライン型EOM(Photline; MPX-LN-0.1)を用いてECLDからのシグナル光に

10 MHzの位相変調を加えると,中赤外光にも周波数変調が加わる.CEACから反射した

中赤外光を,シリコン製ブリュースター窓と1/4波長板を使って取り出し,液体窒素冷 却された帯域30 MHzの高速InSbフォトダイオード(Judson Technologies;

J10D-M204-R500U-60)で検出した.光電流を高速トランスインピーダンスアンプによって電圧信号

に変換し,DBMで復調して誤差信号を得た.そのうち,1.4 Hz以下の低周波成分はPI

(proportional-integral)コントローラーを介してECLDの回折格子を駆動するPZTに,高 周波成分は40 kHz以下の成分をECLDの注入電流の低速入力に,40 kHz以上の成分を 高速入力にフィードバックし,中赤外光の周波数をCEACに安定化した.このときの制 御帯域は約250 kHzである.CEACPZT1に三角波電圧を印加し共振器長を変えるこ とで光源周波数を掃引した.中赤外光の周波数はサーボコントロールによりCEACの縦 モード共振周波数に追従して変化する.PDH法に使用した回路は付録Cに示す.

CEAC からの透過光は,帯域 2 MHzの液体窒素冷却された InSbフォトダイオード

(Hamamatsu Photonics; P5968-100)で検出し,トランスインピーダンスアンプで電圧信 号に変換してオシロスコープに送られる.PZT1へ印加した掃引電圧と透過光信号を,そ れぞれオシロスコープのX入力,Y入力に入力してスペクトルを観測した.

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