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周波数の変調と復調

ドキュメント内 大久保章 (ページ 37-40)

第 2 章 理論 17

2.4 周波数変調法

2.4.1 周波数の変調と復調

(2.5)式で表される光電場に変調角周波数Ωm,変調指数β で位相変調を加えると,

E(t) = 1

2E0ei(ωt+βsin Ωmt)+ c.c. (2.70) となる.ここでは時間変化の効果だけを考えるので,z = 0とした.瞬間角周波数ωinsは 位相の時間微分で定義されるので,位相変調された光では(2.70)式から

ωins=ω+βΩmcos Ωmt (2.71) となる.これは,光の周波数が深さβΩm で変調されていることを表し,位相変調と周波 数変調が等価であることを示している.

(2.70)式をBessel関数を使って表し,β 1の場合に1次まで展開すると,

E(t) = 1 2E0

n=−∞

Jn(β)ei(ω+nΩm)t+ c.c.

1 2E0

[

eiωt+ β

2ei(ω+Ωm)t β

2ei(ωm)t ]

+ c.c. (2.72) となる.ここで,β 1のときJ0(β)1,J1(β)≈β/2となることと,Bessel関数の関 係式Jn(β) = (1)nJn(β)を用いた.図2.11は,ωで振動する光(キャリア光)に加え てω±mで振動する光(サイドバンド光)が発生することを示している.このとき,±1 次のサイドバンド光は互いに位相がπ異なる.

周波数変調した光が原子分子の吸収線や共振器を透過したときに得られる信号を考え

2.11 周波数変調した光のキャリアとサイドバンド.

る.位相変調した光が中心角周波数ω0,半値半幅γ のLorentz型伝達関数 T(ω) = γ

ω−ω0+ (2.73)

を通過するとき,出力光電場はβ 1次までの範囲で

Eout = 1 2E0

[T(ω)eiωt+T(ω+ Ωm)β

2ei(ω+Ωm)t

−Tm)β

2ei(ωm)t]

+ c.c. (2.74)

となる.したがって,出力光強度は

Iout =I0 [

|T(ω)|2+ β2

4 |T(ω+ Ωm)|2+ β2

4 |Tm)|2 ]

+I0βRe [T(ω)T(ω+ Ωm)−T(ω)T(ωm)] cos Ωmt +I0βIm [T(ω)T(ω+ Ωm)−T(ω)T(ωm)] sin Ωmt

+ (2Ωmterms) (2.75)

となる.ここで,I0 は入射光強度,第2,第3項は変調信号と同じ角周波数Ωmで振動す る成分である.変調信号と位相がπ/2だけずれている第2項は直交位相成分,同位相の 第3項は同位相成分である.

図2.12は周波数変調で発生した(2.75)式の第2,第3項の信号を検出する装置を示して いる.検出信号をV1sin(ω1t+φ1),ローカルオシレータからの参照信号をV2sin(ω2t2) とする.ここで,V1,(2)ω1,(2)φ1,(2)はそれぞれ検出信号と参照信号の振幅,角周波数,

位相を表す.これらをダブルバランスドミキサ(DBM:double balanced mixer)で乗算す ると,出力信号は

Smix =V1V2sin(ω1t+φ1) sin(ω2t+φ2)

= V1V2

2 cos [(ω1−ω2)t+ (φ1−φ2)] V1V2

2 cos [(ω1+ω2)t+ (φ1+φ2)] (2.76) となる.さらにローパスフィルタに通して直流成分のみを取り出すと,ω1 = ω2 の 場合にのみ (2.76) 式の第 1 項がフィルタを通過し,出力信号が得られる.その振幅が

cos(φ1 −φ2) に比例し検出信号と参照信号の位相差に依存することから位相敏感検波

(PSD: phase-sensitive detection)と呼ばれ,参照信号を使って検出信号の変調成分を取 り出すことを復調という.したがって,(2.75) 式の直交位相成分を検出するためには cos Ωmt,同位相成分を検出するためにはsin Ωmtで振動する参照信号を使って復調すれ ばよい.通常,位相敏感検波にはロックインアンプを用いる.これは,上で説明したPSD に加え,ローカルオシレーターや位相シフター,各種フィルタ,アンプなどで構成され,

参照信号の周波数や位相,ローパスフィルタの時定数など各パラメーターを調整できる.

local oscillator

LPF detector

DBM

2.12 位相敏感検出器.DBM:ダブルバランスドミキサ,LPF:ローパスフィルタ.

2.4.2 1f 検出

変調角周波数Ωmが伝達関数の半値半幅によりも小さい場合(Ωm γ),伝達関数は

T±m)≈T(ω)± dT(ω)

dω Ωm (2.77)

と展開できるので,

T(ω)T(ω+ Ωm)−T(ω)T(ωm)2Re [

T(ω)dT(ω) dω

] Ωm

= Ωm

d|T(ω)|2

dω (2.78)

となる.したがって,変調角周波数Ωm で復調した場合には(2.75) 式第2項の直交位相 成分だけが検出され,その信号は

S1f(ω)∝I0βΩm

d|T(ω)|2

dω (2.79)

となり,出力光強度スペクトルの1次微分形が得られる.この信号検出方法を1f 検出,

得られた信号を1f 信号と呼ぶ.図2.13は得られる信号の例を示す.

1f 検出は,変調周波数以外の周波数成分を持つ雑音を検出しないため,雑音の少ない 周波数帯に変調周波数を選ぶと検出信号の雑音が低減する.変調周波数付近の雑音成分も 参照信号との位相関係がランダムなのでローパスフィルタの時定数を大きくとると平均化 され,検出信号のS/Nを改善することができる.また,微分信号はスペクトルのピーク幅 が狭くなるため近接した吸収線を分離しやすくなり,周波数依存性が緩慢なバックグラウ ンドの信号も取り除かれる.そのため,飽和吸収分光法ではドップラー幅で広がった線形 吸収によるバックグラウンドを除去し,Lambディップが観測しやすくなる.さらに,原 子分子の吸収線や共振器の透過スペクトルの中心周波数に対して反対称な信号が得られる

ため,これを誤差信号としてレーザー光の周波数を吸収線や共振器の共振周波数に安定化 することができる.

2.13 1f 検出信号.

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