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光周波数の位相同期

ドキュメント内 大久保章 (ページ 43-47)

第 2 章 理論 17

2.5 光周波数の位相同期

2.5.1 光のビート信号検出と基準信号への位相同期

図2.17 は,角周波数ω1ω2ω1 > ω2)のレーザー光のビート信号検出系を示す.

2 本のレーザーの光電場を,振幅の絶対値を E1E2 としてそれぞれ E1ei(ω1t+φ1(t)) E2ei(ω2t+φ2(t)) と書くと,検出器で検出される強度信号は

Vdet(t)∝E12+E22+ 2E1E2cos [(ω1−ω2)t+ (φ1(t)−φ2(t))] (2.82) となる.第3項がビート信号を表し,これを測定すると2本のレーザーの周波数差が分か る.測定には周波数カウンターやスペクトラムアナライザを使用する.ここで,φ1(t)と φ2(t)はそれぞれレーザー光電場の位相揺らぎを表す.これによってビート信号にも位相 揺らぎが生じる.

detector laser 1

laser 2

frequency counter

spectrum analyzer

2.17 ビート信号検出によるレーザー周波数差の測定方法.

ある信号の位相を基準となる信号の位相に同期することを位相同期と呼ぶ.位相の時間 微分が瞬間周波数であるから,位相を同期すると周波数が合致する.例えば,図2.17 ビート周波数1−ω2|が基準信号周波数ωref に位相同期するようにレーザー1(2)の周 波数を制御すると,レーザー2(1)の周波数をレーザー1(2)の周波数からωref だけ異 なる周波数に安定化することができる.これをオフセットロックといい,光周波数の基準 となるレーザーをマスターレーザー,マスターレーザーに安定化されるレーザーをスレー ブレーザーという.オフセットロックでは,2つのレーザーは周波数だけでなく位相も含 めて同期することができる.

図2.18は位相比較器としてDBMを用いたオフセットロックの系を示す.(2.82) 式か らビート信号の周波数と位相揺らぎをそれぞれωbeat =ω1−ω2φbeat(t) =φ1(t)−φ2(t)

とし,ビート信号の位相を θbeat(t) = ωbeatt +φbeat(t),基準信号の位相を θref(t) = ωreft+φref とすると,ビート信号は

Vbeat(t) =V1cosθbeat(t), (2.83) 基準信号は

Vref(t) =V2cosθref(t) (2.84) で表せる.したがって,DBMで乗算しローパスフィルタを通した出力は

e(t)∝ V1V2

2 cos (θbeat(t)−θref(t)) (2.85) となる.これを誤差信号として,e(t) = 0となるようにレーザーをフィードバック制御 すると,2本のレーザーは θbeat(t)−θref(t) = π/2を保つように位相同期される.した がって,ωbeat = ωrefφbeat(t)−φref =π/2となり,ビート信号の周波数,位相揺らぎ とも基準信号に安定化される.ここまではω1 > ω2 の場合を考えた.ω1 < ω2 の場合は ωbeat <0であるから,ローパスフィルタを通した出力は

e(t)∝ V1V2

2 cos (θbeat(t) +θref(t)) (2.86) となる.フィードバック制御によって2本のレーザーはθbeat(t) +θref(t) =π/2を保つ ように位相同期される.したがって,ωbeat = −ωrefφbeat(t) +φref = π/2となる.こ のような位相同期の原理は,PLL(phase-locked loop)回路を使ったRF発振器と同じ仕 組みであるため,レーザー周波数のオフセットロック機構をOPLL(optical phase-locked loop)ともいう.

2.18 ビート信号を使ったレーザー周波数のオフセットロック.∆φ:ビート周波数 と参照信号の位相差.

2.5.2 分周によるキャプチャーレンジの拡大

再びω1 > ω2とする.DBMを用いた位相比較器は,検出できるビート信号cosθbeat(t) と基準信号cosθref(t)の位相差の範囲が

0< θbeat(t)−θref(t)< π (2.87) である.この範囲外の位相差は0< θbeat(t)−θref(t)< πと区別できない.そのため,位 相同期するには(ωbeat−ωref)1程度の時間での位相揺らぎがπ以下で,フィードバック の制御帯域がこれより広い必要がある.位相比較器にDBMを用いた場合,キャプチャー レンジ(制御可能な位相の大きさ)は狭い.例えば,ビート信号に急激な位相の飛びがあ ると位相同期が外れる.

図2.19は,ビート信号を分周して基準信号に位相同期する系を示す.DBMN 回分 周したビート信号cos (θbeat(t)/N)と基準信号cos (θref(t))の位相差を検出すると,その 範囲は

0< θbeat(t)

N −θref(t)< π (2.88) である.これを元のビート信号と基準信号の位相差に換算すると

0< θbeat(t)−N θref(t)< N π (2.89) となる.したがって,N 回分周することでキャプチャーレンジは N 倍になる.検出 した位相差を誤差信号としてレーザーをフィードバック制御すると,2 本のレーザー はθbeat(t)−N θref(t) = π/2 を保つように位相同期され,ωbeat = N ωrefφbeat(t) + N φref(t) =π/2となる.このとき,ビート信号の位相雑音は基準信号のN 倍となる.ま た,分周回数を増やすとビート信号の速い位相揺らぎに対してDBMが応答しなくなるた め,分周によるキャプチャーレンジの拡大はフィードバックの制御帯域の確保とトレード オフの関係にある.図2.20は,分周回数とキャプチャーレンジ,制御帯域の関係を示し ている.

2.19 ビート信号を使ったレーザー周波数のオフセットロック.図中の1/N N 回分周器を表す.

制御帯域

キャプチャーレンジ

分周回数 多

2.20 分周回数とキャプチャーレンジ,制御帯域の関係.

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