第 1 章 序論
3.1 緒言
第 3 章
「発展研究 1 」
「ネットワーク型社会知」を構成する
「ディジタルビジネス型地域社会ネットワークシステム」の研究
く,③「場」を通じて相互の知識が共有されることが知識創造の起点である.暗黙知と形式 知の相互作用による知識創造理論としてSECI (Socialization Externalization Combination
Internalization) モデルがある[3].知識創造の「場」としてのワークプレイスへの関心が高ま
っている.SECIモデルが示す知識創造の「場」を基本にして,4種類の「場」,「対話場,体 系場,実践場,及び創発場」が構成される[4].ユーザ(企業システムのユーザ,パートナー 企業のユーザ,及び顧客としてのユーザ)が「知」を創りだすための「場」には,①ユーザ 相互の「アクセシビリティ」が高いこと,②チーム,グループ,及びクラスター等各階層で
「文脈の共有」ができること,③知を創出できる「プロセスや仕掛け」が埋め込まれている
「場」を軸に,「情報」ではなく「人間」を起点とした組織的知識創造のアーキテクチャ形 成の必要性が記述されている[5].
「知」を生み出す組織づくりに向けたワークスタイル改革ソリューション例が示されてい る[14].世界中の英知を結集して新しい価値を創造する仕組みとしてネットワークコラボレ ーション手法を活用した,新しいアイデア創出手段,ビジネスアイデア具現化手段,価値創 造するコラボレーション基盤が紹介されている[15].
「ディジタルビジネス」に対して,五つの提言が寄せられている.①キラー・バリュー・
ストリームの探索,②四つの側面(MOST:マネジメント,オペレーション,ソーシャル,
テクノロジー)から品質とリスクの評価,③モデル(エレクトリック・コマースにおけるビ ジネスモデルやマーケティング・プロセス)の活用,④変化に即応するためシステム自体が 自律的に進化するような仕組みの構築,⑤バリュー・ストリームはパートナーと連携して作 り出せばよく,戦略的アウトソーシングの検討が示されている[16].
三つの変化-Interaction(ネットの変化),Fusion(概念の変化),Collaboration(関係の変化)
-により,リアル空間とネット空間は融合し「サード・リアリティ」が出現する.従来と異 なるコミュニケーションのあり方,知識のあり方,ビジネスのあり方,及び社会のあり方を 示すビジョンがある[17].
以上の状況を踏まえてまとめると,これまでのネットワークコラボレーション手法を活用 したイノベーションは,企業経営面からみた新しい価値創造活動・価値獲得活動に中心をお いたものとなっている.ビジネス空間は,個人・企業・社会の関わる程度から三つに区分で きる.①自由・公正・弱肉強食型グローバルビジネス空間(企業が中心),②国家・公共・
福祉・支援ビジネス空間(社会が中心),及び③地域生活的豊かさビジネス創造空間(個人・
企業・社会がバランスよく)の三つのビジネス空間で構成される.グローバルビジネス空間 は富の獲得・喪失の戦いの場である.地域社会は地域生活的豊かさビジネス空間であること,
あわせて個人能力及び企業組織能力の再生・新生の場であることが求められる[23].
図3.1に,三つのビジネス空間と知識創造事業を示す.
先進国市場の成熟化と新興国市場の勃興により,マーケットの多様性とビジネス環境変化 の激しさは増す.変化に対し一層の柔軟性と俊敏性を持つ必要がある.このためには,これ からのネットワークコラボレーション手法を活用したイノベーションには「企業活動」だけ でなく,基本に立ち返り,社会の構成要素である「個人活動」,「企業活動」,及び「社会活 動」をバランスよく支える「社会基盤としてのネットワークシステムの働き」が求められて いると考える.これに対し,「ネットワーク型社会知」を構成する「ディジタルビジネス型 地域社会ネットワークシステム」を検討した[23].
本章では,これからの新しいネットワークシステムによって,新たな可能性を持つ三つ目 の地域生活的豊かさビジネス創造空間における「知識創造事業」に着目して検討を深める.
第3.2節では,これからのネットワークとしての「知識創造活動支援型ネットワーク」を考 察する.第3.3節では,本章で提案する,個人知,組織知,及び社会知の連結・統合と共有・
分有の「場」を創造することによって「ネットワーク型社会知」を構成する「ディジタルビ ジネス型地域社会ネットワークシステム」について考察する.あわせて,「ネットワーク型 社会知」の効果について考察する.第3.4節では本章のまとめを行う.
図3.1 三つのビジネス空間と知識創造事業
3.2 知識創造活動支援型ネットワークの概念