第 8 章 「寛容」と「生命尊重」を課題意識とした総合単元的道徳学習の提案
第2節 総合単元的道徳学習の実際
1 コアとなる道徳授業の実際
本研究では、学校現場において、第 5 学年の 1 クラスを借りて継続的に道徳授業を指導 していった。その授業は、総合単元的に他教科との結びつきを強め、テーマを「寛容を基盤 とした生命尊重の心を育てる総合単元的道徳学習」として学年の担任教師にも協力を得な がら、研究を進めていった。以下に、簡単にそれぞれの道徳授業についてふりかえる。
<道徳授業第1回 9月10日(木)2校時>
ねらい 「生命とは一回失ったら二度と元へ戻らないことに気付き、生命を尊重しよ うとする心情を育てる」
資料 「母とながめた一番星」(学研『みんなのどうとく』5年)
中心発問 「自分のいのちに対して何かメッセージを送るとしたら何と言いますか?」
体験活動 総合的な学習の時間において「稲作体験」第1回の田植えを6月中旬に 実施している。また、夏休み期間には希望者とその保護者が、田植えをし た水田で、田の草取りの活動を実施している。
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<道徳授業第2回 11月26日(木)2校時>
ねらい 「生命とは多くの生命のつながりの中にあることに気付き、生命をかけがえ のないと考える判断力を育てる」
資料 「その思いを受けついで - いただきますを考える」
中心発問 「主人公のぼくは、おじいちゃんののし袋を見てどんな決意を胸にしたでし ょうか?」
体験活動 総合的な学習の時間において「稲作体験」第3回の稲刈りを10月上旬に 実施している。また、家庭科の学習で「安全な食品と栄養素」の学習で、
収穫したコメについての栄養に関する学習を行い、その後調理実習で炊飯 について学んでいる。
<道徳授業第3回 2月25日(木)2校時>
ねらい 「相手の意見を素直に聞いて、自分と異なる意見を尊重する謙虚な態度を育 てる」
資料 「銀のろうそく立て(『レ・ミゼラブル』から)」(学研『みんなのどうとく』
5年)
中心発問 「司教さんはどんな気持ちでジャン・バルジャンをゆるしたのでしょうか?」
体験活動 総合的な学習の時間において「稲作体験」でお世話になった農家の方に、
これまでのお礼と感謝の気持ちをまとめた手紙を文集として、2学期末の 12月に作製して送っている。
<道徳授業第4回 3月10日(木)2校時>
ねらい 「相手との違いを広く受けとめ、謙虚な態度で、自他の生命を尊重して、よ りよく生きようとする態度を育てる」
資料 「青の洞門」(学研道徳ビデオより)
中心発問 「実之助は、親の仇である了海のいのちをとらず、なぜ手をともにとりあっ たのでしょう?」
体験活動 1年間をふりかえり、心に残ったことを5年生最後の授業参観・保護者会 で一人ひとりの児童が発表する機会をもった。これは総合的な学習の時間 のまとめの活動でもある。ここで、一人ひとりの児童が農家の方々への感謝 の気持ちに加えて、稲作という稲の生命に対する思いやそれを食べて生き ている人間の生命に対して思いを深める活動を行った。
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2 総合単元的道徳学習のまとめとなる第4回の道徳科の授業について
<総合単元的道徳学習の第4回道徳科授業>
日直: これから道徳の授業をはじめます。(礼、お願いします)
教師: 今日は、いのちを考えるシリーズの4回目です。最後の授業になります。
これまで3回をふりかえると、1回目は生命とは一度なくしたら二度と元に戻らな いことを、あなた方の親御さんからの手紙を読んで考えました。2回目は「いただ きますを考える」ということで、なぜみんなは「いただきます」「ごちそうさま」
を言うのか考えました。すると、「稲作体験学習」の作文からお米のいのち、稲の いのちを食べるから「いただきます」という意見がでて、お米だけでなく牛や豚の 肉だったり、お魚だったりと動物のいのちを「いただきます」ということにもなる とみんながの考えがまとまりましたね。
3回目は「銀のろうそく立て」の話を読みました。ジャン・バルジャンという刑
務所から出てきたばかりの男に銀の食器をぬすまれたのに、教会の司教さんはこ れももっていくのではなかったですかと銀のろうそく立てを渡してくれた。耳元 でもう誠実に生きていくと約束したのですよとジャン・バルジャンは言われた。そ ういう話です。どんな時にあなたは、ゆるしますかということについて話しました。
事故で家族を亡くした人は事故を起こした人をゆるせるかどうかで話が盛り上が りました。今日は、まとめの4回目です。
教師: これまで考えたことを活かして今日の授業にのぞんでください。
最初に DVDの教材をみんなに視聴してもらいます。タイトルは、『青の洞門』と 言います。菊池寛という人が書いた小説『恩讐の彼方に』からの作品です。出てく る登場人物は、了海というお坊さんと実之助というお侍さんです。 (板書)
DVD教材 『青の洞門』 (14分間)
教師: ではこれからみなさんに幾つか尋ねてみます。その問いに答えてみましょう。
まず、一つ目、了海が鎖渡しを通る時、自分が主人を殺してしまったことを思い出 した。岩山を前に了海はこの岩をくりぬいて村人から死人がでるのを無くそうと決 意する場面。
【DVD発問①】了海はどんな思いから「道を作ろう」と考えたのでしょう?
どうですか、だれか発表してください。
C1:何百人、何千人の人のいのちを守るために。(T:鎖渡しで死んでるからね…)
C2:死人というか、もう死ぬ人がでないようにするために道を作ろうと思った。
C3:了海は、ご主人さまを殺してしまったつぐないのために道をつくろうとした。
T : ほかはいいですか。はい、みんなの意見も3人の人に近いでしょうか。
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T : もうこれ以上死人がでないようにするために作ったと思う人は挙手して。(8人)
ご主人さまを殺してしまったつぐないのために作ったと思う人は挙手して。(28 人)
【DVD発問②】実之助はどんな気持ちで了海を切ろうとしたのでしょう?
(発問の画面を児童が見ている間に、いまの児童の発言を板書した)
C4:3歳の時にお父さんを殺した了海に対して、かたきをとろうと思った。
T :他にどうでしょうか。(児童はみなうなずいている)皆だいたい同じ意見ですか。
T :はい、そうですか。いま、かたきうちをしようと思って、いま了海を殺そうとしてい ます。
【DVD発問③】実之助はどんな気持ちで洞窟堀りを手伝ったのでしょう?
(発問の画面を児童が見ている間に、いまの児童の発言を板書した)
T :だって、普通ねえ、殺されたお父さんの子どもでしょう、実之助は。
(黒板を示して)こちらは(了海を指して)、殺人をした犯人ですよ。
かたや、かたき討ちをしようとした、こちらはつぐないをしようとしている。
そんな2人が目の前にいて、2人で洞窟をほってしまったってありますか?
どんな気持ちで洞窟堀を手伝ったのでしょう?
C5:早くかたきを討ちたかったから。
T :もういま討ってしまえばいいのではない?
C6(数名の子)洞窟を開通させないと、村人が困ると言っていた。
C7:石工たちがお願して、言ったから。
T :ということは、少し許したのかな。(うん)
少し待ってあげたわけかな。(うん)待ってあげたのだねえ。
C8:別の意見だけど(いいですよ)、どんな気持ちで洞窟堀りを手伝ったかというと、
了海という年寄が一人でがんばっていたのを見て、心をうたれて手伝ってあげた。
T :みんなが寝ていても一人で洞窟堀りをしているのを見てしまって、心を打たれた。
そうですか。ほかには?(とくに挙手なし)みんな今で意見に近いのかな。
T :では聞いてみましょう。ちょっと待ってあげてもいいと思って、早く終わらせるため に手伝ったと思う人は?(6名)
T :ではC8さんのように夜中でも一人でがんばっている了海に感動して手伝ったと思う 人は?(15名)
C :どちらもです、まざってます、等々。
【DVD発問④】洞窟が完成したとき、了海はどんな気持ちだったのでしょう。
それに対して実之助はどう思ったのでしょう。
(発問の画面を児童が見ている間に、いまの児童の発言を板書した)
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T :まず、了海の気持ちをききましょう。洞窟のトンネルが完成しました…
C9:村人のためにできて、うれしくて感動したのだと思います。
T :なんで感動したかというと、村人のために、道をつくることができてうれしくて、
感動したんだと思うと言ってくれました。ほかには?
C10:了海は、実之助がやりたいことをこれでやらせてあげることができるからほっとし ていると思います。
T :実之助が洞窟をほるために待ってあげていた。実之助のやりたいことは、かたきをと ること。そのかたきうちは、了海その人を殺すことだったのだね。それを実行するとき がようやくきたのだ。だから、もういいよ。そういう気持ちなのでだって。
よく考えましたねえ。ほかにはどうですか。いいですか。
T :それでは、逆に実之助。ついに来ました、かたきをとるときが、この時実之助は どう思ったんですか?
C11:ただたんに殺せばいいやと思ったのだけれども、村人のために洞窟堀りをがんばって いる了海を見ていて、了海が完成させて感動しているのを見て、それに対して実之助 も感動した。
T :村人のことを見て洞窟を完成させて感動した了海を見て、実之助も感動した。
C12:人生をかけて300メートルの洞窟をほった了海を見て、父を殺されたけれども了海の 優しさが分かって、謝罪の気持ちが分かったから、ゆるした。
T :了海の村人に対する優しさを見たら、もうお父さんへのかたきうちをしなくてもいい と思ったそうです。
T :さあ、前を向いて下さい。みんなはそういう意見でよろしいですか。(うなずく)
T :了海は何と言っていたかというと、「さあ御切りなさい」「もう洞窟は完成したよ」
こういう話なんだね。(黒板に表した関係図を示して)
T :最後はお父さんを殺されてしまった実之助は、村人のためにがんばっていた了海を ゆるしてあげるという話でした。(さらに黒板に書き加えながら)
T :この殺す、殺さないという話になると、先週の君たちのごはんを食べる時の、お米の いのちを食べてしまう、牛肉や豚肉など動物のいのちを食べてしまう、そういう5年 生のみなさんとそれを食べられてしまっている稲作のイネ、それから牛、豚、鳥、
野菜こういう食べられているものがしゃべることができたらどうでしょうか。
T :5年生のみなさんは、いねや牛、豚、鳥、野菜のいのちを食べています。稲や牛、豚、
鳥、野菜はもし喋ることができたらなんというでしょうか。その場で隣の人に、5年 生の食べる人だと思って、つぶやいてみてください。
C :ぎゃあ、やめてくれ。いたい、いたい。助けてくれー。
C13:ぼくは肉牛だから別にいいよ。 (他には)
C14:食べないでくれー。
C15:牛とか豚は食べられるために生きてきたのだから、食べてあげることが大事なので、