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第6章  総合考察と今後の課題

第1節  総合考察

2.「日本式」ピア・サポートのあり方

 生徒同士の支援活動であるピア・サポート活動の,日本の学校現場における歴 史は浅く,現在徐々に全国に広がりつつあるものの,まだまだ試行段階にある

ものがほとんどである。教育制度や国民性の異なる先進諸外国での取り組みを たとえ大きな効果があったとしても,そのままの形で日本に導入して,同じ効 果が得られるとはとうてい思えない。そのため,現在各地で行われている実践 においても,より日本の子どもや学校現場に受け入れやすいシステムの開発を 目指して研究している段階ではないかと思われる。

 現在,我が国で行われているピア・サポートの先進的な取り組みは大きく2つ の型,すなわち森川ら学校教育相談学会の有志を中心とする「ピア・カウンセ ラー養成型」と,滝ら横浜ピア・サポート研究会を中心とする「コミュニティ育 成型」に分けられる。これら2つの類型の大きな違いは,最終的にピア・サポ ーターを養成し,生徒個々の相談活動に当たらせているかどうかの違いである。

確かに,諸外国のように生徒の相談組織を作り,相談にやってきた初対面の生 徒の相談にのらせるというような活動が,日本の学校,とくに高校現場で可能 かどうかは疑問に思う。いくら同じ立場で気持ちをわかることができるとはい え,悩みを持った生徒が,教師でもカウンセラーでもない生徒のところへ相談 に行くかどうかが,まず疑わしい。根気強くPR活動をすることと,ある程度 の実績を作ることが必要となるであろう。また,相談を受ける生徒の心的負担 に対しても十分な配慮が必要だと思われる。しかし,ピア・サポートプログラム を授業やホームルーム活動においてクラス全体に行い,生徒同士が助け合う思 いやりの雰囲気を学校全体に広げていくという取り組みに対しても,それなら,

構成的グループエンカウンターやソーシャルスキルトレーニングでよいのでは ないかという疑問が生じる。ピア・サポートのトレーニングを受けて,せっかく 身に付いたスキルを十分に生かさずに埋もれさせてしまうのはもったいないよ

うに思うし,明確な目標をもっている生徒でないと,その効果も期待できない

と思われる。

 以上のことから,本研究では,相談のスキルを学び,友人の相談にのれるよ うになりたいという高い動機をもって希望してきた者を対象に,トレーニング を行った。これはあくまで「ピア・サポーター養成プログラム」であって,最終 的な目標は,複数の生徒による個人支援としてのピア・チャッティングの段階ま でとした。複数で受けることにより,相談を受ける側の生徒の負担を軽減でき

3.プログラムの効果

 現在の高校生に最も必要とされるものの一つとして人間関係スキルの向上を 目的とし,エクササイズの選定を行い,プログラムを構成した。照SS・18によ る効果測定においては,実践の前後で,社会的スキルの有意な上昇が認められ,

本プログラムの有効性が検証された。そして注目すべきは,予後(3か月後)に おける得点の更なる上昇である。その要因として,文化祭等の学校行事の影響

も考えられなくはないが,同時期の対照群の得点平均との比較から,行事だけ の影響ではないと考えられる。つまり,トレーニングを受けたことによって身 につけたスキルを,文化祭等の行事を通して,クラスやクラブの中で,実践す るという経験を通して,改めて確認し,自己評価を高めたのではないだろうか。

このことは,生徒のふりかえりや感想の自由記述の回答が,終了直後は漠然と した表現が多く,予後においてはより具体的な表現に変わっていることからも 推察される。

 この点については,森川(2001a)は,次のように述べている。

「ピアサポート活動を通しての生徒の成長は目を見張るものがあるが,それは 子どもたちにとって,トレーニングで学んだことを,毎日の生活の中で子ども なりに真剣に対処し体験的に学んでいく活動だからこそ身に付き,好ましい態 度や行動に変化がみられるようになっていくものと考えられる。このトレーニ ングや活動の『継続性』『日常性』『生活性』こそが,学校におけるピアサポー

ト活動の中核的なキーワードと考えている。」

 したがって,「ピア・サポーター養成プログラム」によって身についたスキル は,継続したトレーニングと,日常の生活場面での実践を通して,維持あるい は更なる上昇を期待することができると考えられる。

 今回は,実際の相談活動の実践にまでには至らなかったが,今後,ロールプ レイを中心とするトレーニングや,試行カウンセリング的な練習を十分積むこ とによって,実践につなげると共に,生徒の更なる成長が期待できるのではな いかと考える。

第2節 今後の課題

(1)プログラムの開発

 エクササイズにはさまざまな形態がある。今回は,1種類のプログラムしか 実践できなかったが,指導者としての体験と生徒の感想をもとに,エクササイ ズ1つ1つについて吟味し,より効果的なプログラムの開発をしていく必要が

ある。

(2)プログラムの実施時期と実施形態の検討

 今回7日間という日程で,夏休みを中心に行ったため,参加者の日程調整に 苦慮し,十分な出席者を確保できなかった。実施形態としては,校外での合宿 による短期集中のトレーニングも考えられる。

(3)ファシリテーターの養成

 トレーニングの指導に当たっては,複数の教師によるチームティーチングの 形をとる。そのうち中心となる教師にはファシリテーターとしての研修経験が あることが望ましい。学校におけるピア・サポート活動を広めるためには,教 師を対象とした指導者用の研修会の実施が望まれる。

(4)相談活動の形態の検討

 ピア・チャッティング,紙上ピア・サポート,あるいはEメールによるピア・

サポートの実践等,学校の実態やニーズによって,生徒に受け入れやすい形態 を検討する必要がある。

(5) ピア・サポートの広がり

 教師や保護者の理解と協力を得るためにも,生徒同士のピア・サポートにと どまらず,教師同士,あるいは保護者同士のピア・サポートの実践も考えてい

く必要がある。

 日本におけるピア・サポートのシステムはまだまだ開発途上にあり,検討す べき課題も多い。しかし,学校における,予防的・開発的カウンセリングとい

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