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第 5 章 積雪荷重による地すべり⼟層の鉛直圧縮

5.2 鉛直変位計の開発

5.2.1 鉛直変位計の構造と計測原理

地すべりの移動量を計測する代表的な機器に地中伸縮計がある。すべり⾯以深まで掘削 されたボーリング孔(地下部)の孔底から地表部まで⽴ち上がったインバー線が地すべり 移動によって地中へ引き込まれるとき,その⻑さを地上部ポテンショメ−タで計測して地 すべり移動量に変換する。同計は⽔平⽅向の移動量に限らず地すべり⼟塊内部の変形にと もなう鉛直⽅向の圧縮,膨張量を併せて捉えうることがある(平元ほか,2008)。本研究 はこの点を利⽤し,地中伸縮計のインバー線を炭素繊維強化プラスチック製の棒,いわゆ るカーボンロッドに置き換えて変位の追従性を強化し,さらにポテンショメ−タの代わり に計測精度の⾼いひずみ式変位計を⽤いて⼟塊の鉛直変位量のみを⾼精度に計測可能な鉛

82 直変位計(図5.1,写真5.1)を開発した。

鉛直変位計の基本的な設置⼿順と計測の仕組みを図 5.2 に⽰す。掘削したボーリング孔 内にカーボンロッドを挿⼊し,下端を孔底に固定した。地表部に露出したカーボンロッド 上端にひずみ式変位計2基(VE1,VE2)を据え付け,測定⼦を地上部の台座に接触させた。

この状態でカーボンロッド挿⼊区間の⼟塊が沈下すると,地上部台座は地表に追従して沈 下する。⼀⽅で孔底から⾃⽴したカーボンロッドは沈下しないため結果としてカーボンロ ッド上端と台座との相対距離が広がる。逆に⼟塊が膨張した場合は相対距離が縮まる。こ の距離変化を計測することで⼟塊の鉛直変位量が求められる。各部の具体的な構造と特徴 は以下の通りである。

図5.1  鉛直変位計の構造

Fig. 5.1  Structure of a vertical extensometer

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(1)地下部(ボーリング孔)

内径86 mmのボーリング孔内に直径 5 mmのカ

ーボンロッド(炭素繊維プラスチック製の棒;

CFRP)を挿⼊し,その下端をアンカー⾦具とセメ ントによって孔底に固定した。カーボンロッドの 外側には保護管(有孔塩ビ管 VP40)を挿⼊し,ボ ーリング孔の空隙に硅砂を充填して孔の安定をは かった。カーボンロッドの温度特性は従来のイン バー線と同等程度に⼩さく気温や⽔温の影響をほ とんど受けない。またインバー線は⼟塊の膨張

(隆起)時にワイヤーの緩みが⽣じて計測精度低 下の恐れがあるのに対し,剛体であるカーボンロ ッドに緩みの恐れはなく⼟塊の圧縮,膨張の両変 動に対して⾼い追従性を有している。

(2)地上部

孔の⽴ち上がり部に地表⾯となる台座(W 0.7 × D 0.7 × H 0.3 m;コンクリート製)を設置した。台 座内の孔⼝から⽴ち上がるカーボンロッドの上端 には重錘によるテンションを常時与えて⾃⾝の傾 倒やたわみを抑制した。台座とカーボンロッドと の⼲渉を防ぐため,カーボンロッドの外周には2つ の保護管(VP40およびVU50) を挿⼊した。

(3)計測機器

カーボンロッドの上端にひずみ式変位計 VE1

(F.S. 10 mm)および VE2(F.S. 50 mm)(共和電

業製DTH-A-10,DTH-A-50)を取り付け,台座上に

埋め込んだガラス板(180 mm × 130 mm)に測定⼦

を接触させて地表⾯との距離を計測した。装置全 体としての変位に関する計測精度,測定分解能等 は表5.1のとおりであり,従来のポテンショメ−タ

写真5.1  鉛直変位計の外観(上

:全体、中:側面、下:保護箱 被覆後)

Photo 5.1  Apparatus of the vertical extensometer. The above is a whole view. The middle is a side view. The bottom is a view after covered by the protecting box.

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型地中伸縮計に⽐べ⾼精度の計測が可能である。補正⽤カーボンロッドの変位は補正⽤ひ ずみ式変位計によって計測した。ひずみ式変位計3基(計測⽤2基,補正⽤1基)および 気温計1基,⽔温計1基の各信号を記録するため,2台のデータロガー(オサシテクノス,

NetLG-401)を台座上に設置し,バッテリー駆動により 1 時間間隔で計測した。なお⾬⽔

・融雪⽔の浸⼊や雪圧による機器の破損を防ぐため,地上部台座には保護箱(保護等級 IP55)を被せた。

図5.2  鉛直変位計による計測の仕組み

Fig. 5.2  Mechanism of measurement of a vertical extensometer

表5.1 鉛直変位計の仕様

Table 5.1 Specisications of the vertical extensometer

85 5.2.2 計器の設置

本研究で開発した鉛直変位計を伏野地 すべり試験地の下部ブロック(図 5.3)に 設置した。対象地点のすべり⾯深度は事 前のチェックボーリングで GL −3.62 m と 確認された。本研究の⽬的は地すべり⼟

塊の圧密確認のため,厳密には地表⾯か らすべり⾯深度(GL −3.62 m)までの全区 間の鉛直変位量を計測するべきである。

しかし,カーボンロッドをすべり⾯深度 まで挿⼊するとロッドが破損する恐れが あるため,今回はすべり⾯深度よりやや

浅い GL −3.50 m に設置し,計測の確実性

を確保した。なお,同孔の地質は強⾵化 の凝灰岩,泥岩の互層の上に礫混じり粘 性⼟が堆積しており,指圧で変形するよ うな軟質部を多く含んでいる。ロッド挿

⼊に続いて上部台座を設置し,各種計測 機器と保護箱を据え付けたのち,2009 年 12⽉から 2012年10⽉まで観測をおこな った。なお温度依存性が⼩さいとされる カーボンロッドではあるが,今回は試験 的に温度依存性を確認するため,ボーリ

ング孔内に⽔温計,地上部に気温計を設置した。またカーボンロッドの持つノイズ成分の 確認と補正のため,補正⽤カーボンロッドを表層部(深さ約0.5 m)に設置した。