• 検索結果がありません。

結論および展望

ドキュメント内 Vol Nishizawa Since 1997 Seminar (ページ 126-143)

本稿の分析結果から言えることは, ①民族関係の存在によって

「国際危機」が再発しやすいということはなく, 逆に民族危機は再 発しにくいということ, ②「国際危機」の終結時点での勝敗が明確 であれば再発する可能性は低くなるということ, ③内生的要因モ デルに比して外生的要因モデルは「国際危機」の再発に強い影響を 与える可能性が高いということである.

以上の分析結果は, 民族関係が存在することで「国際危機」は 再発するとした仮説1を棄却し, 危機の収束時点での勝敗が曖昧 であれば「国際危機」は再発するとした仮説2を支持する. 

 ここから消極的平和の実現を阻害する要因としての国際危機を 減少させるには, 危機の勝敗を明確にすることが重要であるとい うことがわかる. 

消極的平和が実現されたあとに問題となるのは構造的暴力であ る. とくに 危機の勝敗を明確にすることによって得られる危機 の減少は, アクター間のパワー関係の固定化から得られたもので あるかもしれないので構造的暴力の温床となりやすい. なぜなら そうした場合の危機の減少は対立の解消によってもたらされたも のではなく, 危機を起こしても勝ち目がないと見越しての結果だ からである。 よって次なる課題は構造的暴力の排除となる.     

また分析面に関しては, 本稿では存在するケースすべてを分析

対象としたが,  1910年から1994年という期間を一まとめにして 分析したため, 国際システムや年代の影響を考慮に入れていない. 

国際システムの変化は危機や紛争などは大きな影響を与えるであ ろうし, 年代によって特徴があるであろう. 国際システムや年代 による時間分類をして分析をすることも新たな課題である. 

1 消極的平和が実現されてから積極的平和が実現されるという考 え方は, 単線的発展論的な考え方である. このような考え方は問 題であるとする見解もあるが, 少なくとも個人的暴力を戦争や紛 争に限定すれば, そうした中で構造的暴力を排除することを第一 義的価値にすえることはありえないだろう. そのため筆者はこう した観点から, 単線的発展論は当を得た考え方であると考える. 

2 国際危機を分析するにあたって, 演繹法的統計的アプローチ を採用する. 

国際危機を未然に防ぐためには, 国際危機がなぜ発生するのか という問いに答える必要がある. すなわち国際危機の本質(国際危 機発生の構成要件)を解明する必要がある. それではいかにすれ ば国際危機の本質を解明できるのであろうか?

それには2通りの方法がある. 第1は1つ1つの国際危機を丹 念に調べ上げ, それらの共通する特徴を抽出する方法である(帰納 法). 第2の方法はある特定の要因に注目し, その要因によって国 際危機の発生を説明しようというものである(演繹法).

2つのアプローチのうち, 第2の方法である演繹法を採用する. 

特定の国際危機を選択して分析することは, 分析自身および結果 にバイアスがかかることを意味する.  国際危機に関する包括的 データが存在する以上, すべてを対象とすることがそうしたバイ アスを避ける方法である. 演繹法になじむ研究手法にはゲーム論 的手法や統計的手法があるが, ここでは国際危機の構成要因を知 ることが主たる目的となるので, 統計的手法を用いる. 

3 ICBデータによる.

4 また国際危機を未然に防ぐという観点からは, 予防外交や信頼 醸成なども国際危機研究の領域に加えることができる. NATOのロ シア軍との共同軍事演習やOSCEの信頼醸成外交などがそれらの ひとつに挙げられるが, 現段階で体系だった理論として提示され ているとは思えないので, 先行研究には含めない.

5 内生的要因と外生的要因のほかにも「国際危機」の再発・収束に 影響を与える要因としては, 国際システムなどがあるが, ここで は内生的要因と外生的       要因 のみに焦点を当てたいので割愛する.

6 ゲームツリーは本来, 期待利得や確率を必要とするが, すべて の危機に対応できる具体的数値を当てはめることは不可能である と考えたのでここでは割愛する.

7 BrecherとWilkenfeldによると国際危機と認定するのに当たっ

て, 3つの基準を満たすこと必要とされる.  第1は危機の主体が 主権国家であり, 国際体系の一員であること,  第2は意思決定者 が外交危機の要件である3つの要件を知覚しているという証拠が あること, すなわち基本的価値に対する危機, 対応するまでの時 間が限られていること, 軍事的敵対に発展する可能性が高いこと である,  第3は敵対者が主権国家もしくは敵対的連合であること が明確であることである.     

8 彼らの定義はHermannの定義を基礎にしている(Brecher and Wilkenfeld, 1997 p.3).

9従属変数が2点尺度であるので, 本来であればプロビット分析を 行うべきであるが, 現段階では筆者に十分な知識がないため直線 回帰分析にとどめる.

10 各変数についての詳細はICBのHPを参照のこと. 

http://web.missouri.edu/~polsjjh/ICB/

11分析結果の表に関しては, 全危機を考慮しているので危険率は 必要ではないが, 「国際危機」の性質上カウントされていないも のの存在や潜在的危機状況にある可能性も否定できないので,  参 考までに記載した. ただし本稿では危険率は考慮しない.

12 内生的要因, 外生的要因に関連する変数の投入の仕方によって,  この結果は異なってくる.

参考文献

Brecher, Michael and Wilkenfeld, Jonathan. A study of crisis.

Ann Arbor, The university of Michigan press, 1997.

小平 修 『エスニシティと政治』, ミネルヴァ書房, 1999.  

鈴木 基史 『国際関係』, 東京大学出版会, 2000. 

ヨハン・ガルトゥング著, 高柳先男, 塩屋保, 酒井由美子訳,『構 造的暴力と平和』, 中央大学出版部, 1991. 

人間関係と

      コミュニケーション

  ―コミュニケーション・ジレンマを克服する人間関係―

     

高田康夫

1 .はじめに  

私は昨年のディスクール論文、「組織加入−政治参加メカニズ       ムの検証」において、社会関係資本(social capital)の議論を参考に、

組織加入が政治参加をもたらすメカニズムが 2 つ存在することを 示した。1そして水平的人間関係の組織においては政治議論が活発 になり、それが政治参加へとつながっているという結論に達した (高田2002)。しかし、次の2つの問題点が残されたままであった。

①水平的人間関係と垂直的人間関係をどのように分けるべきか。

「人間関係を客観的に判断できる指標」はあるのか(高田2002, p.

217)。

②パットナムは水平組織の方が垂直組織よりもコミュニケーショ ンが活発になるというが、どういったときに活発になるのか。

日常会話の時でも水平組織の方が活発なのか、それとも何か特 別な状況の時に活発になるのか。

本論文は、この2つの問題に対して次の答えを出すことを目的と する。

①人間関係において、6種類の社会的勢力(social power)ごとの均 衡・不均衡を測定することにより、人間関係の水平・垂直を客観 的に測定することができる。

②コミュニケーション・ジレンマを克服できるかどうかが、コミュ ニケーションが活発になるかならないかの差である。6種類の社 会的勢力ごとに、その水平・垂直がコミュニケーション量に与え

る影響は異なる。

この 2 つの答えを出すことでパットナムの社会関係資本のメカ ニズムを検証することにもなる。パットナムは、社会関係資本を 蓄積するためには水平的なネットワークが重要であると指摘して いる。その理由として4 つの仮説を挙げており、その1つに、水 平的ネットワークは「コミュニケーションを促進し、諸個人の信 頼性に関する情報の流れをよくする」というコミュニケーション についての仮説がある(パットナム 2001, p. 216)。2しかし、水平 的ネットワークではどのようにコミュニケーションが活性化され るのかということは述べられていない。

このパットナムの仮説のメカニズムを考えるためにはコミュニ ケーション・ジレンマという概念が必要だと考える。人間関係に おいて、コミュニケーションを促進しようとしても簡単にはコミ ュニケーションは活性化されない。なぜなら、コミュニケーショ ンをとること自体がジレンマとなっていることが多いからである。

3パットナムの言う「水平的ネットワークにおけるコミュニケーシ ョンの活性化」とは、水平的人間関係においてはコミュニケーシ ョン・ジレンマを克服できるということではないかと私は考える。

以下、次のように議論を進める。2節では、コミュニケーション・

ジレンマについての先行研究に言及し、本論文の着目点を述べる。

3節では、社会的勢力とその種類を考察し、社会的勢力により人間 関係の水平・垂直を定義する。4 節では、どのような人間関係がコ ミュニケーションに影響を与えるかを考え、人間関係とコミュニ ケーションについての仮説を立てる。5節では、仮説を検証するた めに私が行ったコミュニケーション・ジレンマ実験を紹介する。6 節では、分析に用いる変数を検討し、7節で実験結果の分析をする。

最後に8節では本論文で明らかになった結論を述べる。

2.コミュニケーション・ジレンマ

Bonacich他は、コミュニケーション・ジレンマの定義として、「知 識を他の人に伝えるより貯め込むことの方が、個人にとっては合 理的であっても、グループ全体としては、その選択が目的達成の 妨げになったり、全体に悪影響を及ぼすこと」と述べている (Bonacich他 1992, p. 227)。本論文でもこのBonacich他の定義を

ドキュメント内 Vol Nishizawa Since 1997 Seminar (ページ 126-143)