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変数の定義

ドキュメント内 Vol Nishizawa Since 1997 Seminar (ページ 94-110)

4.1 感情的要素 具体的な分析にはいる前に、感情的要素をどのような指標を用い

の指標  て測定すればいいのかを検討しておかなければならない。本稿で は、長期的な感情的要素には身近な政党を、短期的な感情的要素 には政党感情温度計を指標として用いるのであるが、その根拠を 以下に述べる。

  長期的な感情的要素に身近な政党を用いる根拠は2つある。

第 1 に、身近な政党が心理的一体感を伴った政党帰属意識に近 い指標であるからである。西澤によると、バーンズらの実験的な 比較研究の結果は、「closeness」を用いた指標が「support」を用 いた指標よりも政党帰属意識により近いというものであった(西澤 1998, p. 7)。本稿の分析では、従属変数に日本では支持、米国では 帰属を用いるのであるが、表 1 でみたように、両者は厳密にはワ ーディングが異なる。だから、心理的一体感を伴った政党帰属意 識に近いと考えられ、両国で共通のワーディングである指標を用 いるメリットは非常に大きいだろう。

第 2 に、指標の性質上、身近な政党は政党感情温度計に比べ鈍 感な尺度だからである。三宅・西澤によると、政治的態度の指標 には「選択」型の指標と「好意度の差」型の指標の2種類がある(三 宅・西澤 1992, p. 69)。「選択」型の指標は複数の選択肢から1つ を選択することを強要した結果を用いた尺度であり、「好意度の 差」型の指標は感情温度計を用いた尺度である。両者の性質の違 いは、前者が敏感な尺度であるのに対して、後者が鈍感な尺度で あるということである。この違いを三宅は次のように説明してい る。「好意度の差」型の指標において、好き嫌いの度合いは連続尺 度上を自由に移動し、その移動は尺度値としてすべて記録される。

この意味で敏感な尺度である。それに対して、「選択」型の指標は

「閾値」を持つ。「閾値」は態度空間の囲いのようなものであり、

その囲いの中は自由に移動できるが、その移動は尺度値として記 録されない。この意味で鈍感な尺度である(三宅 1985, p. 111)。「好 意度の差」型の指標の敏感な動きは、例えば、三宅の JESⅡのパ ネル・データを用いた分析などで明らかになっている(三宅 1997, 第3章)。

 短期的な感情的要素に政党感情温度計を用いる根拠は、第1に、

この指標が感情を表す指標であり、第 2 に、先に述べたように、

この指標が敏感な尺度だからである。

なお、政党感情温度計と身近な政党には、このような指標の性 質の違いがあるので、分析の結果の解釈には注意が必要である。

三宅・西澤は「選択」型の指標が「好意度の差」型の指標よりも

「選択」型の指標と強い相関をもつことを実証している(三宅・西 澤 1992)。本稿の従属変数である政党支持・帰属は「選択」型の 指標であるので、指標の性質上、長期的な感情的要素(身近な政 党)の方が短期的な感情的要素(政党感情温度)よりも強い相関 を示すことになる。だから、1国の分析だけでは、どちらの要因の 影響力が強いのかといった議論はできない。本稿のような比較分 析を行う必要がでてくるのである。

4.2作業定義 具体的な作業定義は以下の通りである。

政党支持・帰属(7点尺度)

日本は、自民党支持者を+1、自民党以外の政党支持者を−1、

支持無しと不明を 0 とコーディングしたものに、支持強度の「強 い」「弱い」「最も弱い」の 3 段階でウェイト付けしたものを用い る。米国も同様にして民主党帰属者がプラス、共和党帰属者がマ イナスになるようにしたものを用いる。

短期的な感情的要素(200点尺度)

 日本は、感情温度計による自民党への好意度から、自民党以外 の政党への好意度の中で最も評価が高かったものを引いたものを、

米国も同様に、感情温度計による民主党への好意度から、共和党 への好意度を引いたものを用いる。4

長期的な感情的要素(9点尺度)

日米両国とも身近な政党を聞いた質問の回答を政党支持・帰属 と同じようにしてコーディングしたものを用いる。5

ここで注意しなければいけないのが、身近な政党を聞いた質問 文と政党支持・政党帰属を聞いた質問文の形式の相違である。身 近な政党を聞いた質問文は、初めにそのような政党の有無を聞き、

あると答えた場合にのみその政党名を聞く。それに対して、政党 支持・政党帰属を聞いた質問文は、表 1 で見たように、政党の有 無とその政党名は 1 つの質問文で聞いている。三宅によると、前 者の質問文は後者に比べ支持無しを増やす(三宅 1998, p. 203)。だ から、長期的な感情的要素の政党支持・政党帰属に与える影響力 は実際よりも弱い結果がでるであろう。係数の推定値はこの点を 差し引いて考えなければならない。とはいえ、本稿は、1国の中 での相対的な影響力を厳密に推定するよりも、2国間で比較するこ とに主眼を置いているので、この点は考慮しない。

認知的要素(日本:30点尺度、米国:24点尺度)

短期的な感情的要素 政党帰属意識

短期的な感情的要素 政党支持態度

長期的な感情的要素

認知的要素

長期的な感情的要素

認知的要素

 日本は評価的な政党イメージを聞いた質問文で自民党を挙げた 場合+1点、自民党以外の政党を挙げた場合−1点とし、批判的な 政党イメージを聞いた質問文で自民党を挙げた場合−1点、自民党 以外の政党を挙げた場合+1 点とし、その和をとったものである。

米国は評価的な政党イメージしかないのであるが、同様の方法で コーディングしたものである。6

5 分析

では、長期感情仮説と認知仮説を検証するために行った分析の 結果を見ていこう。結果を図2・3に示した。

図2:政党支持態度のパス=ダイアグラム(日本)

調整済み決定係数:矢印①②③ .45 矢印④ .13 矢印⑤⑥ .00 N=1244

図3:政党帰属意識のパス=ダイアグラム(米国)

調整済み決定係数:矢印①②③ .76 N=740、矢印④ .29 矢印⑤⑥ .59 N=746

①.60(22.23, .00)

②.27(9.51, .00)

③.09(3.82, .00)

①.47(20.85, .00)

②-.04(-1.75, .08)

③.34(15.06, .00)

この図は、日米それぞれにおいて行った 3 つの回帰分析の推定 結果を1つのパス=ダイアグラムに整理したものである。3つの回 帰分析というのは、1)矢印①、②、③の影響力を推定するための、

従属変数を政党支持・帰属、独立変数を長期的な感情的要素、短 期的な感情的要素、認知的要素とする重回帰分析、2)矢印④の影響 力を推定するための、従属変数を認知的要素、独立変数を長期的 な感情的要素とする単回帰分析、3)矢印⑤、⑥の影響力を推定する ための、従属変数を短期的な感情的要素、独立変数を長期的な感 情的要素、認知的要素とする重回帰分析である。図の矢印番号に 続く数値がβ係数の推定値で、括弧の2つの値は前者がt値で、後 者が危険率である。なお、図の矢印において、一方の国の矢印が 太い場合、他方の国よりも影響力が強いことを表す。

5.1 長期感情仮説 まず、長期感情仮説を検証する。この仮説は、長期的な感情的要 の検証 素の影響力が、直接的にも、間接的にも、米国の方が日本より強

いというものであった。

まず、直接的に党派性に与える影響力であるが、矢印①をみる と、日本よりも米国の方が強いことがわかる。日本ではβ係数が.47 であるのに対して、米国では.60である。β係数は相対的な影響力 の大きさしか比較できないのだが、矢印①、②、③の党派性を説 明する割合を示す決定係数の値が日本で.45、米国で.76 であるこ とと合わせてみると、影響力は日本よりも米国の方が強いといえ る。直接的な影響力において、長期感情仮説を支持する結果であ る。次に、間接的に党派性に与える影響力である。この影響力は、

矢印⑤→②、④→⑥→②、④→③であり、日本よりも米国の方が 強いことがわかる。矢印⑤→②をみると、日本では危険率が矢印

⑤で.86、矢印②で.08なので、統計的に有意ではないのに対して、

米国ではどちらも有意である。また、矢印⑥→②をみると、日本 では、危険率が矢印⑥で.10、矢印②で.08 なので、統計的に有意 ではないのに対して、米国ではどちらも有意である。よって、日 本における間接的な影響力は矢印④→③だけなので.36×.34=.12 である。また、米国における影響力は.57×.27+.54×.30×.27+.54

×.09=.26 である。間接的な影響力において、長期感情仮説を支 持する結果である。

 最後に、直接的な影響力と間接的な影響力を合計した総合的 な影響力をみてみると、米国の方が日本より強い。日本において

は.47+.12=.59であり、米国においては.60+.26=.86である。総 合的な影響力において、長期感情仮説を支持する結果である。

5.2 認知仮説の 次に認知仮説を検証する。この仮説は認知的要素が直接的に党派 検証 性に与える影響力は米国に比べて日本の方が強く、認知的要素が

短期的な感情的要素を通して間接的に与える影響力や認知的要素 が長期的な感情的要素から受ける影響力は日本に比べて米国の方 が強いという仮説であった。

まず、認知的要素が直接的に党派性に与える影響力であるが、

矢印③をみると、日本の方が米国より強いことがわかる。日本で はβ係数が.34であるのに対して、米国では.09である。ただ、こ の影響力の値には長期的な感情的要素の影響力が含まれている。

つまり、先に見た④→③の影響力である。その影響力を差し引く と、日本では.34−.12=.22、米国では.09−.05=.04である。差し 引いても日本の方が米国よりも影響力が強い。直接的な影響力に おいて、認知仮説を支持する結果である。

次に、短期的な感情的要素を通して間接的に与える影響力であ るが、これに関しても長期的な感情的要素の影響力を差し引かな ければならない。つまり、矢印⑥→②の影響力から矢印④→⑥→

②の影響力を差し引かなければならない。すると、先に見たよう に、日本では統計的に有意でないのに対して、米国は.30×.27−.54

×.30×.27=.04である。米国の方が日本より強いことがわかる。

間接的な影響力において、認知仮説を支持する結果である。

最後に、認知的要素が長期的な感情的要素から受ける影響力で あるが、矢印④をみると、日本よりも米国の方が強いことがわか る。日本ではβ係数が.36であるのに対して、米国では.54である。

先に述べたように、β係数は相対的な影響力の大きさしか比較で きないので、決定係数の値をみると、日本で.13、米国で.29 であ る。このことと合わせてみると、影響力は日本よりも米国の方が 強いといえる。認知的要素が長期的な感情的要素から受ける影響 力において、認知仮説を支持する結果である。

6 おわりに

以上の分析で、私が提示した長期感情仮説と認知仮説をデータ で裏付けることができた。つまり、米国の政党帰属意識が心理的 一体感を伴った態度であるのに対して、日本の政党支持態度は心

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