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仮説の提示および仮説のメカニズム

ドキュメント内 Vol Nishizawa Since 1997 Seminar (ページ 116-119)

2.1 仮説     国際危機を再発させる要因は, 大きく内生的要因と外生的要因 とに分けられる. そこで内生的要因のひとつとして「民族関係」

(危機において民族の分離独立要求があること)を, 外生的要因と して「危機の勝敗関係」を考える. 「民族関係」を取り上げた理由は,  民族の分離独立に絡む危機では表面的な解決は十分な効果を持ち えないということを実証したいからであり, 「危機の勝敗関係」を 取り上げた理由は, 危機の勝敗が明確でないことが危機の再発に

及ぼす影響力が大きいということを実証したいと考えたからであ る. 分析では内生的要因と外生的要因に関するその他の要因も取 り上げる.5 

内生的要因とは国際危機そのものに内在する要因である(一次 的要因). たとえば危機の主要アクターが民族であるということ や, 危機が生じたときに問われていた価値が領土的なものである といったものである. 一方外生的要因とは国際危機の枠組みから 生じた要因である.(副次的要因). たとえば危機の終結の仕方が 公的であるということや, その結果にどれだけの関係アクターが 満足しているかといったものである. 

 ここで以下のような仮説を提示する.

仮説1: 国際危機に分離独立を求める民族が関係する場合,  危 機は再発しやすい(民族の分離独立と民族関係とを同義で用いる.)

仮説2: 国際危機の収束時点で勝敗が曖昧であった場合, 危機 は再発しやすい.   

 

2.2 仮説のメカ  第1の仮説は, 民族危機であるという属性が危機を再発させる ニズム    方向の影響を与えるというものである. 

小平によれば, もともとエスニックなアイデンティティは理屈 や利害打算を超えた情念であり, 人間のもっとも根源的な自己愛 や自尊心そのものにほかならない. 外部からのエスニックアイデ

ンティティに対する脅威や攻撃は対立感情を引き起こし, 攻撃を 出現させる. この対立感情にもとづいた攻撃メカニズムは, 対立 沈静メカニズムによって抑止されないかぎり(または抑止されるま で)熱狂的にエスカレートする傾向をもつ(小平  1999,  p.11). 

小平の理論によると, 分離独立を要求する民族はエスニックア   図2      図3

<民族危機>      <国家間危機>

         

  C  現状      要求      現状      要求      

  D   認める   抑圧       認める 妥協 対抗

  C      諦める  抵抗=紛争       諦める 妥協 紛争

イデンティティを抱いていることは明らかである. そうするとエ スニックアイデンティティは理屈や利害打算を超えた情念である ため, 非合理な要求・挑戦を行う可能性が高く, 妥協が成立しに くいということになる. さらに一度発生した攻撃メカニズムは彼 らの要求が実現されるまでは沈静する可能性が低いため, エスカ レートする傾向を持つだろう. すなわち要求が実現されないうち は何度も危機を引き起こす可能性が高いのである.  

ここで民族関係を含まない国家間危機との比較をし, エスニッ ク危機が国家間の危機に比べて再発性の高いものであることを示 す. この説明にはゲームツリーを用い, 危機の発展段階の相違を 明らかにする.6

エスニック危機と国家間危機の構造は単純化すれば図 3, 4の ようになる(四角は危機を,  Cはチャレンジャーを,  Dはディフ ェンダーを表す). 両者の基本構造で異なっているのは, 選択肢 としての妥協が存在するか否かである. 民族危機を表すものが図 3であるが, ここには国家間危機の図では表記されている「妥協」

が表記されていない. これは民族危機に妥協が成立しにくいとい う小平の議論を受けたものである. さらに民族は非合理的に動く との小平の理論から一度要求を取り下げたとしても再度要求しや すいとの想像ができる. もちろん民族危機にも妥協は存在するし,  ゲームツリーのどちらに動くかはアクターを取り巻くさまざまな 状況に影響されるので, 断定することはできないが, 少なくとも 選択肢の点で民族危機のほうが再発しやすいことを示している. 

  第2の仮説は危機の終結時点において, 勝敗が明確でなけれ ば危機は再発するというものである. すなわち危機の勝敗が曖昧 であれば, 関係アクターは少なくとも負けて はいないので, 再度 同じ危機を引き起こす可能性が高くなる. なぜなら国家を合理的 アクターであると仮定すると, 前回の危機で負けていないという ことは, 同じ条件であれば意思決定者は次回の危機でも負けるこ とはないと考えるだろうからである. つまり負けないということ が事前にわかっている状況で, かつ関係アクター間に係争点が存 在している場合, 国家は再度同じ危機を引き起こす可能性が高い と考えられるのである. 

ドキュメント内 Vol Nishizawa Since 1997 Seminar (ページ 116-119)