第 2 章 樹木年輪情報の収集と樹木年輪クロノロジーの構築
2.1 樹木年輪情報の収集
2.1.3 結果と考察
樹木年輪試料の概要を
Table 2.2
に示した。個体数は20
個体以上を選択する ことを目指したが,ツガは演習林に現存する個体数が少なく,ミズナラは年輪 数が50
年輪を超えるような個体数が少なかったため,ともに16
個体となった。また,スギ
1
個体とミズナラの1
個体,サワグルミの12
個体においてX
線ネガ 像での年輪界が不明瞭であったため測定ができなかった。特に,サワグルミは 交錯木理を呈する場合があるため(桃井ら 2005),繊維方向と常に垂直な横断 面を切り出すことが困難であった。また,アカマツとモミにおいては4
方向か ら試料を採取した個体があるため測定した方向が多くなっている。平均年輪幅 はモミ,ツガ,ヒノキで2 mm
以下と狭かったが,アカマツ,サワグルミ,ミズ ナラで,3 mm 以上と広かった。b)
年輪幅実測値における経年変動の傾向年輪幅実測値における経年変動の傾向について,その概要を樹種ごとに以下 に示す。アカマツでは
Fig. 2.8a
に示したPIDE02
のようにはじめは広いが1934
年までに急激に狭くなり,以後はほぼ一定となる傾向(供試個体中6
個体,以 下同じ)と,PIDE06
のように1984
年ごろまで徐々に狭くなり,それ以後広く なる傾向(5 個体),そしてPIDE15
のように全体的にはほぼ一定である傾向(5 個体)があった。モミでは
Fig. 2.8b
に示したABFI01
のように徐々に広がり一定となるが,1964
年に急激に狭くなり,以後は狭いままの傾向(
10
個体)と,ABFI06
のように1945
年ごろまで徐々に狭くなり,それ以後は狭いままの傾向(4 個体),そしてABFI13
のように全体的にほぼ一定である傾向(16
個体)があった。ツガでは
Fig. 2.8c
に示したTSSI05
のように全体的に狭い時期と広い時期とが-31-
ある傾向(5 個体),TSSI08 のようにはじめは広いが徐々に狭くなる傾向(5 個 体),そして
TSSI12
のように徐々に広くなり,その後狭くなっていく傾向(5 個体)があった。他の樹種と異なり複数個体に共通する特定時期の大きな変動 は明確ではなかった。スギでは
Fig. 2.8d
に示したCRJA04
のように年輪数が約100
年輪以上あり,1930
年ごろから10
年間前後狭く,その後は広くなりほぼ一定である傾向(5 個 体)と,残りの個体は樹齢60
年前後であり,はじめは広いが徐々に狭くなって いたが,その中でCRJA07
のようにそのまま狭くなる傾向(7個体)とCRJA12
のように1975
年前後から広くなる傾向(10個体)があった。ヒノキでは
Fig. 2.8e
に示したCHOB13
のようにはじめは広いが1935
年まで に急激に狭くなり,以後は狭いままの傾向(11
個体)と,CHOB04
のように1955
年前後から15
年間ほど狭くなっている傾向(4
個体),そしてCHOB22
のよう に全体的にはほぼ一定である傾向(6個体)があった。サワグルミでは
Fig. 2.8f
に示したPTRH04
のみだが,年輪数が100
年輪以上 で1953
年から1970
年まで狭く,その前後はほぼ一定である傾向(1
個体)と,残りの個体は樹齢
50
年前後であり,はじめは広いが徐々に狭くなっていが,その中で
PTRH22
のようにそのまま狭くなる傾向(9 個体)とPTRH24
のように1980
年前後から一定となる傾向(7
個体)があった。ミズナラでは
Fig. 2.8g
に示したQUCR06
のように徐々に広くなる傾向(6 個 体)と,QUCR15 のように徐々に狭くなる傾向(5 個体),そしてQUCR16
のよ うに一度広くなった後に狭くなる傾向(6 個体)があった。以上のように各樹種の年輪幅実測値における経年変動の傾向には,同一樹種 であっても複数の傾向があることがわかった。加齢に伴う年輪幅の減少傾向は,
造林木であるスギとサワグルミにおける年輪数が
60
年輪以下の個体で明確であ った。また,他の地域でも確認された年輪幅実測値における経年変動の傾向と-32-
して,鈴木(1992, 1997)は,本研究地域の
45~65 km
ほど南に位置する神奈川 県の大山周辺や箱根周辺に生育するモミとスギについて,また,亀岡ら(1992)は
20~90 km
ほど東に位置する関東平野に生育するスギについて,1960年代から
1970
年代にかけて年輪幅が狭くなっていることを報告している。この傾向は 本供試樹木においても当てはまる個体が多数あり,さらにモミとスギ以外にツ ガとヒノキとサワグルミでも確認された。鈴木(1992,1997)は,原因として
両報告では大気汚染と関連付けている。実際のところ原因は不明であるが,本 研究地域を越える広範囲の地域に共通しているようであるが,気候による影響 とは異なる経年変動も年輪幅には記録されている可能性もあると考えられる。-33-
Table 2.2.
樹木年輪試料の概要凡 例:Table 2.1 を参照,W
ar
:年輪幅注 :括弧内の数値は測定できなかった,または,測定しなかった個体数ま たはコア試料数を示した。
樹種
コード 個体数 コア試料数
年輪数 年輪幅 (mm)
最大 平均 最大 平均 最小
PIDE 20 53 101 59.7 6.23 3.47 1.58
ABFI 32 92 175 102.8 4.02 1.96 0.80
TSSI 16 34 156 111.2 2.61 1.89 1.33
CRJA 23(1) 47(2) 115 67.4 4.47 2.99 1.27
CHOB 23 46 159 100.8 2.96 1.86 0.68
PTRH 16(12) 32(27) 113 46.3 5.84 3.47 2.36
QUCR 15 (1) 30 (1) 66 48.0 4.56 3.30 2.31
-34-
Fig. 2.8.
年輪幅実測値の経年変動凡 例:Table 2.1 を参照
0 2 4 6 8 10
1800 1850 1900 1950 2000
PIDE02 PIDE06 PIDE15
1934
1984
個体番号年輪幅(
m m
)年
0 2 4 6 8 10
1800 1850 1900 1950 2000
ABFI01 ABFI06 ABFI13
1945 1964
0 2 4 6 8 10
1800 1850 1900 1950 2000
TSSI05 TSSI08 TSSI12
0 2 4 6 8 10
1800 1850 1900 1950 2000
CRJA04 CRJA07 CRJA12
1930 1975
年輪幅(
m m
)年
年輪幅(
m m
)年
年輪幅(
m m
)年
a
b
c
d
-35-
Fig. 2.8.
年輪幅実測値の経年変動(つづき)凡 例:
Table 2.1
を参照0 2 4 6 8 10
1800 1850 1900 1950 2000
CHOB04 CHOB13 CHOB22
1955 - 1975 1935
0 2 4 6 8 10
1800 1850 1900 1950 2000
PTRH22 PTRH24 PTRH28
1953 - 1970
0 2 4 6 8 10
1800 1850 1900 1950 2000
QUCR06 QUCR15 QUCR16
年輪幅(
m m
)年
年輪幅(
m m
)年
年輪幅(
m m
)年
e
f
g
-36-
ドキュメント内
樹木年輪年代学的手法による樹木の気候応答の解析
(ページ 35-41)