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第 3 章 競合依存性と再生固有性の問題点に関する実験的検討 43

3.1.2 結果

検索経験の成績 検索経験段階における各検索経験条件の正再生率は,通常,語尾,カ テゴリ名条件でそれぞれ66.7%98.5%93.5%であった。正再生率に対して1要因の分 散分析を行った結果,要因の効果が有意であった,F (2, 178) = 92.35, MSE = 0.03, p

< .001Ryan法による多重比較*5 を行ったところ,語尾条件は通常条件よりも再生率が

高かったが,t(178) = 12.64, p < .001,語尾条件とカテゴリ名条件との間に有意な差は みられなかった,t(178) = 1.98, p = .049。また,カテゴリ名条件の再生率は通常条件よ りも高かった,t(178) = 10.65, p < .001

テストの成績 テスト段階における各検索経験条件の項目タイプ別の正再生率をTable 3.1(下段)に示す。正再生率に対して検索経験タイプ×項目タイプの 2要因分散分析を

*4本実験の検索経験は1回であったが,検索経験の回数が検索経験成功率および検索誘導性忘却の生起には 影響しないことが示されており(Macrae & MacLeod, 1999),問題はないと考えられる。

*5以下の実験では多重比較は全てRyan法を用いた。

行った結果,項目タイプの主効果,F (2, 178) = 127.75, MSE = 0.04, p < .001,および 交互作用,F (4, 356) = 2.52, MSE = 0.05, p = .04,が有意であった。検索経験タイプ の主効果は有意でなかった,F (2, 178) = 1.41, MSE = 0.04, p = .25。交互作用の下位 検定を行ったところ,Rp+における検索経験タイプの単純主効果が有意であった,F (2, 534) = 5.11, MSE = 0.04, p = .006。多重比較を行ったところ,語尾条件におけるRp+ の再生率は通常条件,t(534) = 3.04, p = .002,およびカテゴリ名条件よりも有意に高 かったが,t(534) = 2.39, p = .017,通常条件とカテゴリ名条件の間には差がなかった,

t(534) = 0.66, p = .51。さらに,全ての検索経験条件において項目タイプの単純主効果

が有意であった,通常: F (2, 534) = 26.72, MSE = 0.04, p < .001,語尾: F (2, 534)

= 60.22, MSE = 0.04, p < .001,カテゴリ名: F (2, 534) = 27.75, MSE = 0.04, p <

.001。検索経験条件ごとに多重比較を行った結果,全ての検索条件においてRp+Nrp に比べて高かったが(ps < .001Rp−Nrpとの間には差がなかった。

検索経験成功率の高低による分析 全体の成績の分析では,通常条件でも検索誘導性忘 却が認められなかった。その原因として,通常条件の検索経験成功率(66.7%)が低かっ たからではないかと考えられる。一般に,検索誘導性忘却の研究において項目タイプの要 因の効果を議論するには検索経験の成功が前提となる。換言すれば,通常条件における検 索経験の失敗は, Rp+ と Rp− のそれぞれが 検索経験段階で検索した項目 と 検 索しなかった項目 ということを意味しなくなる。そのため,Rp+項目を検索したこと によるRp−項目への影響を検討するための項目タイプの分類であるにもかかわらず,そ れを正当化あるいは保証することができない。また,本実験と同様の実験材料を用いてい る月元・川口(2004)では96.3%Tsukimoto & Kawaguchi2006)では93.8%という 高い成功率を得た上で検索誘導性忘却を確認している。そこで,通常条件で5項目以上を 正答した者を検索経験成功率高群,4項目以下を検索経験成功率低群として分析を行った

(検索経験項目数は6項目)*6 。この基準に従って群分けをしたところ,検索経験平均成 功率は,通常,語尾,カテゴリ名について高群(n = 40)ではそれぞれ89.6%98.3% 95.0%,低群(n = 50)ではそれぞれ48.3%98.7%92.3%であった。高群 (上段)と

*6語尾条件のテスト成績は語尾条件の検索経験成功率で分けて比較する必要があるかもしれないが,語尾条 件の検索経験成功率を同様の基準(検索成功数5項目以上を高群,4項目以下を低群)で群分けすると低群は1 名になり,群分けによる分析ができない。また,本実験は通常条件で検索誘導性忘却の生じる実験参加者におい て,語尾条件では検索誘導性忘却が生じるか否かを明らかにする目的のため,語尾条件の群分けによる比較は妥 当ではないと考えられる。

低群 (中段) それぞれにおけるテスト段階の再生率をTable 3.1に示す。

検索経験成功率の高低を実験参加者間要因として加え,正再生率に対して検索経験成功 率×検索経験タイプ×項目タイプの 3要因混合分散分析を行ったところ,検索経験成功率

×検索経験タイプ×項目タイプの交互作用が有意であった, F (4, 352) = 9.44, MSE =

0.04, p < .0012次の交互作用について下位検定を行った結果,検索経験成功率高群,

低群いずれも検索経験タイプ×項目タイプの単純交互作用が有意であった,高群: F (4, 352) = 6.09, MSE = 0.04, p < .001,低群: F (4, 352) = 5.97, MSE = 0.04, p < .001 さらに,高群では全ての検索経験条件で項目タイプの単純・単純主効果が有意であった,

通常条件: F (2, 528) = 60.04, MSE = 0.04, p < .001,語尾条件: F (2, 528) = 34.98, MSE = 0.04, p < .001,カテゴリ名条件: F (2, 528) = 12.93, MSE = 0.04, p < .001 一方,低群では語尾条件,F (2, 528) = 30.94, MSE = 0.04, p < .001,およびカテゴリ 名条件,F (2, 528) = 17.09, MSE = 0.04, p < .001,において項目タイプの単純・単純 主効果が有意であったが,通常条件は有意でなかった,F (2, 528) = 0.90, MSE = 0.04,

p = .41。項目タイプの単純・単純主効果の下位検定は検索経験成功率の高低に分けて以

下に記述する。

検索経験成功率高群 高群における項目タイプの単純・単純主効果に関して多重比較を 行ったところ,全ての検索経験条件においてRp+がNrp に比べ高かった,ps < .001 しかし,全体の成績とは異なり,通常条件でのみRp− Nrp よりも有意に低かった,

t(528) = 2.80, p < .005。これは,検索経験成功率高群において,通常条件でのみ検索 誘導性忘却が認められたことを示している。また,高群ではRp−の再生率に関して検索 経験タイプの単純・単純主効果が有意であった,F (2, 528) = 8.40, MSE = 0.04, p <

.001。多重比較の結果,通常条件は語尾条件,t(528) = 3.04, p = .002,およびカテゴリ 名条件よりも低く,t(528) = 3.62, p < .001,語尾条件とカテゴリ名条件には差がなかっ た,t(528) = 0.57, p = .57。これらの結果は,通常条件のRp−の再生率はベースライン となる同じ検索経験条件のNrpよりも低かっただけでなく,他の検索経験条件のRp− 比べても低かったということを示している。

検索経験成功率低群 低群における項目タイプの単純・単純主効果に関して多重比較を 行ったところ,語尾条件,カテゴリ名条件のどちらもRp+がNrp に比べて高かったが

(ps < .001),Rp−Nrpと差がなかった。