第 7 章 ダルメージ形状の最適化
7.5 結果及び考察
7.5.1 流動シミュレーション結果
Fig.7-8に,粒子追跡法による平均せん断応力の比較を示す.V&Rスクリュは,
V&Long-Dスクリュに比べて平均せん断応力が低くなっていることがわかる.これは,V&Rスクリ ュはフライト部の切り欠き溝をV&Long-Dスクリュよりも多く設けているため,流路の容 積が拡大し,流体のせん断速度が低下したことが要因と考えられる.
Fig.7-9には,総せん断ひずみ量の比較を示す.総せん断ひずみ量については,V&Rスク
リュの方が大きくなっていることがわかる.さらに,Fig.7-10には,粒子の滞留時間の比較 を示すが,V&Rスクリュの方が長くなることがわかる.これは,V&Rスクリュにおける総 せん断ひずみ量が,せん断速度の高いV&Log-Dスクリュよりも大きくなった理由として,
粒子の滞留時間が関係していることを意味している.つまり,これらの結果は,流路の容積 が拡大することでせん断速度が低下し,せん断応力が低くなるが,流路が複雑化することで 滞留時間が長くなり,結果として可塑化中の繊維折損の防止と繊維分散性が向上すること を示唆している.
Fig. 7-8 Mean shear strain evaluated by particle tracking method for V & R screw.
0.40 0.42 0.44 0.46 0.48 0.50 0.52 0.54
V & Long-D V & R
Mean shear stress, kPa
102
Fig. 7-9 Total shear strain evaluated by particle tracking method for V & R screw.
Fig. 7-10 Residence time evaluated by particle tracking method for V & R screw.
7.5.2 残存繊維長及び繊維分散性
Fig.7-11 に,各スクリュによる試験片の残存繊維長の測定結果を示す.残存繊維長は,
V&R スクリュの方が長い結果であり,Fig.7-8 に示す流動シミュレーションによる結果と
同様の傾向を示していることから,ダルメージ部におけるせん断応力が残存繊維長に影響 を及ぼしていることがわかる.
一方,Fig.7-12には,各スクリュによる試験片断面のフラクタル値を示す.フラクタル値 においても,V&Rスクリュの方が高く分散性が良好な結果となっており,Fig.7-9に示す流 動シミュレーション結果と同様の傾向を示している.これは,繊維分散性が流体の滞留時間
2.00 2.40 2.80 3.20 3.60 4.00
V & Long-D V & R
Total shear strain, ×103
-3.00 3.50 4.00 4.50 5.00 5.50 6.00
V & Long-D V & R
Residence time, sec
103
に依存することを示す結果であり,V&R スクリュのダルメージ部における滞留時間が,
Fig.7-10に示す結果と同様に,V&Long-Dスクリュよりも長くなったためと考えられる.
以上の結果から,繊維長と繊維分散性を両立させるために必要なダルメージ形状として は,繊維折損を抑制するためにせん断応力を小さくし,技術的に対立する繊維分散性につい ては,流体の滞留時間を延長する形状が望ましいことが明らかとなった.
Fig. 7-11 Residual fiber length for V & R screw.
Fig. 7-12 Fractal value for V & R screw.
5.0 5.5 6.0 6.5
V & Long-D V & R
Residual fiber length, mm
0.76 0.77 0.78 0.79 0.80
V & Long-D V & R
Fractal value,
-104