• 検索結果がありません。

第 7 章 ダルメージ形状の最適化

7.2 スクリュ形状の部分的評価

7.2.1 評価方法

スクリュ形状の部分的評価には,Fig.7-1に示す3本のスクリュ形状を用い,W,X,Yの 3箇所の位置を定めて行った.評価は,5.3節と同様に流動シミュレーションを行い,スク リュの各位置における平均せん断応力の変化を評価した.また,スクリュ内での各位置にお ける繊維折損状況を確認するため,連続成形後にシリンダからスクリュを取り出し,スクリ ュの各位置に滞留する樹脂をサンプリングし,繊維長をそれぞれ測定した.なお,本実験に 用いた樹脂,可塑化条件は 5.4.1 節と同様であり,サンプリングした樹脂中の繊維長は,

5.4.2節で示す方法と同様に測定を行い,特にX-Y間の特徴あるスクリュ形状における平

均せん断応力と,繊維折損の関係を調査した.

Fig. 7-1 Partial evaluation positions of three tested screws.

7.2.2 評価結果

Fig.7-2に,各スクリュ位置における平均せん断応力分布を示し,Fig.7-3には,スクリ

ュ内のW,X,Y位置における繊維長の測定結果を示す.W位置からX位置において,各

スクリュの平均せん断応力は一様に分布していることから,スクリュ内の平均繊維長にも 大きな変化はみられない.しかし,X位置からY位置にかけては,Dulmadgeスクリュが 最も平均せん断応力の変化が大きくなり,それに伴い繊維折損が生じていることが確認で

96

きる.これまでの検討では,前述のとおりスクリュ全域に対して行ってきた.スクリュ全 域としての検討では,Fig.7-4に示すように,平均せん断応力と繊維折損量の関係が得ら れ,近似線の決定係数R2が0.81であることから,適度な相関関係にあることがわかる.

しかし,Fig.7-5に示すように,X位置からY位置にかけての繊維折損率と平均せん断応 力の増加率の関係をみると決定係数が0.99であり,非常に強い相関関係にあることがわか る.

一方,繊維分散性については,スクリュ全域におけるせん断ひずみ量とフラクタル値の

関係をFig.7-6に示すように,近似線の決定係数が0.97と強い相関関係にあり,部分的な

評価をしなくとも傾向を把握できることが確認できる.これは,総せん断ひずみ量がダル メージ形状への依存度が高いため,部分的な評価をしなくても強い相関関係が得られたと 考えられる.

以上のように,繊維長を長く残し,繊維分散性を向上させるためには,スクリュ形状を 部分的に評価し,且つ,特にダルメージ部での繊維折損を最小限に押さえた上で,分散性 を向上させるための形状の最適化が必要である.

Fig. 7-2 Mean shear stress distribution for each screw.

0 2 4 6 8

0 100 200 300 400

Mean shear stress, kPa

Screw position, mm Standard

Dulmadge Variable pitch

Y X

97

Fig. 7-3 Relationships between fiber length and screw position for each screw.

Fig. 7-4 Relationship between breakage length of fiber and mean shear stress.

5 6 7 8 9 10

Standard Dulmadge Variable-pitch

Fiber length, mm

W-point X-point Y-point

R² = 0.8128

0 1 2 3 4 5 6 7

4 4.5 5 5.5 6 6.5 7

Breakage length of the fiber, mm

Mean shear stress, kPa Standard Variable-pitch

Dulmadge

98

Fig. 7-5 Relationship between fiber breakage rate and increase rate of shear stress.

Fig. 7-6 Relationship between fractal value and average of total shear strain.