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第 3 章 可塑化中のガス発生を抑制するためのスクリュ形状の最適化検討

3.5 結果及び考察

3.5.3 可塑化能力

Fig.3-8に,各スクリュの可塑化能力と,計量ストロークSをスクリュ径Dで除したS/

Dとの関係を,シリンダ温度を200ºCと210ºCとした際の傾向をそれぞれ示す.S/D が 大きくなるに従い可塑化能力は低下する傾向にあり,シリンダ温度が低い場合に,その傾向 が顕著となることがわかる.これは,樹脂材料が材料投入口から吐出されるまでの熱履歴に 依存することが考えられ,Variable-flightスクリュは,Standardスクリュよりも可塑化中 に受ける熱エネルギーが全体的に低いことが要因と考えられる.また,Photo. 3-5に示す成 形品の色の混錬状態を比較しても,Variable-flight スクリュの方が悪い傾向であることか ら,可塑化能力の結果を裏付けている.但し,これら可塑化能力の違いは約 0.2g/s である ため,実用上の使用においては大勢に影響のない範囲内である.

一方,実際の成形比較においては,Table 3-6に示すように,Variable-flightスクリュは,

所定の樹脂量を計量する可塑化時間が短くなること以外に,Standardスクリュと特に大き な違いはみられない.さらに,Fig. 3-9には,連続50回の成形を行った際の各成形データ

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の偏差を示すが,可塑化時間を除き,成形品重量や充填中の圧力やクッション位置に大きな 違いはみられない.可塑化時間の偏差の違いについては,Photo. 3-4の結果より,特にスク リュ圧縮部における樹脂の流動挙動の違いが考えられ,流動シミュレーションにおける粒 子の滞留時間や,フライト内のせん断応力分布の均一性に関係することが示唆される.

以上のように,Variable-flightスクリュは,可塑化能力がStandardスクリュよりも低い 傾向を示すことが確認されたが,フライト流路内での圧力損失が少なく,結果として生じる 圧縮圧力が小さくなることで,漏洩流(バックフロー)の抑制による計量時間の短縮と,可 塑化の安定性が向上することが確認できた.これは,流動シミュレーションによる結果との 比較において,スクリュ内で発生する圧力や平均せん断応力が Variable-flight スクリュの 方が低く,滞留時間においても短い傾向を示していることと定性的に一致していることか ら,粒子追跡法による検討が有効であることを示している.

Fig. 3-8 Relationship between recovery rate and S/D(charge Stroke/screw Diameter).

3.5 3.7 3.9 4.1 4.3 4.5

2 3 4

Plasticizing capacity, g/s

S/D, -Standard 210℃

Variable-flight 210℃

Standard 200℃

Variable-flight 200℃

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Table 3-6 Injection molding data with each screw.

Photo. 3-5 Comparisons of color unevenness on the surface of the molded parts.

Fig. 3-9 Comparison of the molding stability with each screw.

Plasticization time Cushion mount Filling pressure Weight of molding

(s) (mm) (MPa) (g)

Standard 14.6 4.14 25.4 41.00

Variable-flight 11.2 4.18 25.0 41.04

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20

Plasticization time (s)

Cushion mount (mm)

Filling pressure (MPa)

Weight of molding (g)

Standard deviation σ

Molding profile data

Standard Variable-flight

50