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結果と分析

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第 5 章 テイナイ形におけるアスペクト仮説の検証

5.5 結果と分析

5.5.1 テイナイ形に用いられる動詞の出現順序

アスペクト仮説に基づき、テイナイ形に使用される動詞タイプについて、「テイナ イ形は最も先に活動動詞と結びつき、次第に他の動詞へ広がっていく」という仮説 1 を立てている。

この仮説に対応して、まずテイナイ形に使われた全ての動詞を分類別に表 5 まとめ る。さらに時期ごとにテイナイ形に使われた動詞の異なり数に対する各動詞タイプの 異なり数の割合を図1に示す。

表 5 テイナイ形に使われた動詞

状態動詞 活動動詞 達成動詞 到達動詞

1 年生 持つ(3)、決める(2)、やる(2)

覚える、始まる

2 年生 違う 習う、楽しがる 覚える(4)、持つ(7)、変わる、

言う、理解する、なる、できる、

やる、立つ、割る、取れる 3 年生 違う、属す する(2)、体験する、

勉 強 す る 、 運 動 す る、信じる、走る、

期待する、重視する

開発する、注目す る、する

覚える(2)、決める(4)、持つ

(2)、なる、読み終わる、変わ る、慣れる、気がつく、決まる、

入る、消える、見終わる、押す、

発見する 4 年生 見える 重 視 す る 、 放 送 す

る、流行る、減る

分ける、分類する、

解決する、確実す

持つ(3)、慣れる、消える、分 かる、参加する、成年する

注:数値は該当動詞の延べ数

まず、表 5 の動詞タイプ別の出現順を見ると、1年生では到達動詞のみが見られた。

2 年生になると、新たに 1 年生のほぼ 2 倍の語数になり、「変わる」、「言う」、「理解す る」などの到達動詞も出現した。到達動詞とともに、活動動詞と状態動詞も 2 年生で 見られたが、それぞれ活動動詞では「習う」、「楽しがる」、状態動詞では「違う」、「属 する」の 2 語のみであった。3 年生では到達動詞と活動動詞が共に多く使用され、数 が増えると共に、初期段階において、適用範囲の広い動詞「やる」から、「体験する」、

「期待する」、「見終わる」、「押す」などのような、より具体性の高い動詞へ広がる傾 向が見られた。以下に例を示す。

(7)まだ午前中なので、いろいろな店はまだやっていませんでした。(1 年生)

(8)サッカーはそんなに人に注目されていないものだった。(3 年生)

(9)まだ読み終わっていないが、ストーリーに気になって、早く読み終わりたい。

(3 年生)

4 年生ではテイナイ形の産出が減少する傾向を示したが、1年から 4 年生までの出

現順を見ると、テイナイ形はまず到達動詞から使用されると言えよう。

7.0% 6.0%

14.0%

29.0% 27.0%

12.0% 27.0%

100.0%

79.0%

52.0% 40.0%

0% 7.0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1年 2年 3年 4年

到達動詞 達成動詞 活動動詞 状態動詞

図 1 テイナイ形に使われた動詞タイプの使用割合

次に、図1の動詞タイプ別の使用割合の変化を見ると、1年生から 4 年生までの調 査期間を通じて、つねに到達動詞の使用割合が活動動詞より高いことが分かった。そ の具体的な使用割合は 1 年生 100%、2 年生 79%、3 年生 52%、4 年生 40%であり、全体 としては段階的に減少することが確認できる。すなわち、テイナイ形が習得が他の動 詞タイプへと広がっていく傾向が示された。

以上、テイナイ形がまず到達動詞に結びつき、次第に他の動詞タイプへと使用が広 がっていくことが分かった。つまり、「テイナイ形は最も先に活動動詞と結びつき、次 第に他の動詞へと広がっていく」という仮説 1 が成立しなかったと言える。

5.5.2 「動作の持続」と「結果の状態」の習得順序

アスペクト仮説に基づき、「動作の持続」と「結果の状態」の習得の難易度につい て、「『動作の持続』は『結果の状態』より先に習得される」という仮説 2 を立ててい る。

この仮説に対応して、学習者が産出した「動作の持続」と「結果の状態」のいずれ かに分類されるテイナイ形の使用回数(延べ数)と割合を時期別に示すと、表 6 のよ うになる。

表 6 「動作の持続」と「結果の状態」の比較

1年生 2 年生 3 年生 4 年生

動作の持続 2 7 3

結果の状態 4 12 11 6

合計 4 14 18 9

表 6 を見ると、仮説 2 で示したような、テイナイ形が先に「動作の持続」から習得 されるという予測とは反対に、「結果の状態」は「動作の持続」より先に出現したこと が分かった。

また、「動作の持続」と「結果の状態」の両用法以外に、「過去の事態を現在に基づ いて議論し、出来事が発話時(現在)まで実現されていないが、その実現の可能性が 残されていることを示すもの」という「未完了」(2 章を参照されたい)を表すテイナ イ形の使用が目立ったことも興味深い。以下に例を示す。

(10)まだ、将来の仕事がはっきり決めていません。(1 年生)

(11)このドラマは全部を見終わっていないけど、ドラマの内容がとても好きです。

(3 年生)

この「未完了」の使用回数を時期別に集計し、「動作の持続」、「結果の状態」と合 わせると、表 7 で示すように、1 年生では「結果の状態」とともに「未完了」が出現 し、調査時期を通じて多用され続けたことが分かった。

表 7 テイナイ形の用法別の使用状況

動作の持続 結果の状態 未完了 その他

1 年生 4 4

2 年生 2 12 4 3

3 年生 7 11 8 9

4 年生 3 6 6 3

合計 12 33 22 15

以上、「動作の持続」と「結果の状態」の両用法の難易度については、「結果の状態」

は「動作の持続」より先に習得され、その使用頻度は調査期間を通じて、常に「動作 の持続」を上回っていることが分かった。また、それ以外に、「未完了」という用法も 多く見られ、初期段階から「未完了」は「結果の状態」と共に習得される可能性が考 えられる。いずれも、「『動作の持続』は『結果の状態』より先に習得される」という 仮説 2 を支持しない結果である。

5.5.3 動詞タイプとテイナイ形の用法との対応関係

アスペクト仮説に基づき、動詞タイプとテイナイ形の用法との対応関係について、

「活動動詞は『動作の持続』と結びつきやすい、両者の組み合わせの使用頻度が最も 高い」という仮説 3 を立てている。

この仮説に対応して、全ての用例について、動詞タイプ別とテイナイ形の用法別に 分類し、その対応関係を表 8 にまとめる。なお、「動作の持続」と「結果の状態」以外 に、「未完了」の使用も目立っているため、それを両用法と共に示した。

表 8 動詞タイプとテイナイ形の用法との対応

動作の持続 結果の状態 未完了 その他 状態動詞

活動動詞 達成動詞 到達動詞

1 3

10 5

1 3 1 2

30 21 5

合計 12 33 22 15

「動作の持続」の用例は 12 例で、そのうち活動動詞は 10 例、達成動詞は 1 例、状 態動詞は 1 例観察された。仮説では、活動動詞は「動作の持続」に結びつきやすいと 述べており、活動動詞の 15 例のうち 10 例が「動作の持続」と結びついていることは この仮説を支持する結果と言えるだろう。それ以外、「見えていない」、「注目されてい ない」のように、状態動詞、達成動詞がテイナイ形と結びつき、「動作の持続」を表す ことも観察された。いずれも菅谷(2005)が指摘しているとおりの例である。

一方、「結果の状態」は 33 例で、そのうち、到達動詞は 30 例、達成動詞は 3 例観 察された。それ以外、「到達動詞+未完了」の組み合わせも目立っており、計 22 例も

の持続」との結びつきの使用頻度が最も多いという仮説 3 に反する結果である。

上記の 3 種類の用法以外に、各タイプの動詞がテイナイ形と結びつき、様々な意味 をあらわしうることも明らかになった。そこから、テイナイ形そのものの複雑性が窺 える。以下、いくつかの例を示す。

(12)流行は古くから存在しているものです。昔、中国の女性は額で花の絵を描く 流行がありました。しかし今は、誰もしていません。(3 年生)

(13)それに、両親の立場は特別どの政党に属していません。(3 年生)

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