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切欠き部の降伏状態の影響

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第 4 章 環状切欠きを有するオーステナイト系ステンレス鋼 SUS304 の疲労寿

4.2. 環状切欠き丸棒試験片の有限寿命域における影響因子

4.2.1. 切欠き部の降伏状態の影響

Kt6.6 の環状切欠き丸棒試験片の環状切欠きを環状き裂とみなし,疲労き裂進展特性に基 づいて予測した疲労寿命特性(有限寿命域,疲労限度)は,実際の試験結果と一致しなかった

(Fig. 3. 9).SCM435 の同形状の試験片を用いて同様の検討を行った山辺らの報告[1]と傾向

が異なっており,環状切欠き丸棒試験片で取得される疲労寿命特性の決定に関わる支配因 子は,材料毎に異なることを示唆している.ここでは,SUS304とSCM435の降伏強度の違 いに着目し,考察を行った.

き裂先端での応力やひずみは,材料が弾性を保つとしたならば,極めて高い値になるので,

実在の材料においては,き裂先端付近で両者の関係が線形ではなくなり,降伏などによる非 線形変形をした領域が出現する.この領域の大きさが,き裂の長さや残りの断面の寸法に比 べて十分小さい場合を,小規模降伏状態(Small Scale Yielding, SSY)と呼ぶ.この状態に対し ては,線形破壊力学が若干の補正をしたうえで適用可能とされている[2].CT試験片を用い た疲労き裂進展試験の場合,試験の有効性を示す判定基準の 1 つとして以下の式(4-1)が用 いられる[3].

(𝑊 − 𝑎) ≥ (4 𝜋⁄ )(𝐾max/𝜎ys)2 (4-1)

W−aは試験片リガメント幅,Kmaxは最大応力拡大係数,ysは材料の0.2%耐力である.式

(4-1)は,SSYを満たしているか否かの判断基準でもある. Fig. 3 .2に示したSUS304の

da/dN-K曲線は,式(4-1)を満足していることを確認しているが,一般的にSUS304はSCM435に 比べてysが低いため,SSYを満たしにくいことが式(4-1)からわかる.つまり,実際の環状 切欠き丸棒試験片の疲労試験において,切欠き底から発生したき裂は,SSY を満たさずに 進展した可能性がある.仮にSSYを満たしていなかった場合,疲労き裂進展特性(da/dN-K 曲線)を参照して疲労寿命を予測するという方法自体が成立しないことになる.

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上述を確認するために有限要素解析を用いて検討を行った.実際形状の試験片モデルと,

実際形状の10倍相似モデルに対し,同じ応力拡大係数となるような引張荷重を負荷した場 合の両者の塑性域寸法, sを求めた.同じ応力拡大係数を与えた場合,き裂とみなした切 欠き底近傍の応力状態は等しくなる.一般的にき裂の絶対寸法が大きいほうがSSYを満た しやすい,つまり相似モデルのほうが長いき裂を有するので,オリジナル形状モデルよりも SSYを満たしやすい.SSYを満たしているならばオリジナル形状モデルの塑性域寸法と相 似モデルの塑性域寸法sが同じになる,つまり/s ≈ 1になる.徐々に応力拡大係数を増加 させていき,/s ≠ 1となった場合,オリジナル形状モデルが小規模降伏条件から逸脱し たと判断する.ここでは繰返しの負荷は想定せず,1サイクル目の最大引張荷重が負荷され た際の塑性域寸法, s (Fig. 4. 1)を有限要素法で算出した.

オリジナル形状モデルにおける切欠き断面での引張応力をten.とすると,応力拡大係数

KI,originalは式(4-2)で表される.

𝐾I,original= 𝐹I𝜎ten.√π𝑑𝑐

𝐷 (4-2)

ここで,FI’は無次元化応力拡大係数で,2.4.2に示したとおりである.相似モデルでの切欠 き断面での引張応力をten,smとすると,応力拡大係数KI,smは式(4-3)で表される.

𝐾I,sm= 𝐹I𝜎ten,sm√π∙ 10𝑑 ∙ 10𝑐 10𝐷

(4-3)

オリジナル形状モデルと同じ応力拡大係数を相似モデルに対して与える場合,つまり 𝐾I,original= 𝐾I,smとなる場合の相似モデルの遠方の引張応力 ten,smは式(4-4)で表される.

𝜎ten.,sm=𝜎ten.

√10 (4-4)

有限要素解析の条件と結果をTable 4. 1に示す.Fig.3.1(c)に示した疲労試験の結果は応力 振幅で整理していた.それに合わせて,オリジナル形状モデルにおける引張応力ten.が最大 応力となる試験条件R における応力振幅aを横軸にとり,縦軸に/sをとって整理し たグラフをFig. 4. 2示す.

a ≦160 MPaの試験条件においては /s は約1.0であり,オリジナル形状モデルと相似 モデルの塑性域寸法は等しく,ともにSSYを満たしていると判断できる.一方,a >160 MPa

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の試験条件においては,/sは1.0よりも大きくなり,オリジナル形状モデルの塑性域寸法 が相似モデルよりも大きくなったことを示している.つまり,実際の試験片形状(オリジナ ル形状モデル)において160 MPa以上の高応力振幅の領域では,き裂進展の初期段階でSSY を満たしていない状態,つまり大規模降伏状態で疲労き裂が進展したことを示唆している.

上述は環状切欠きモデルを用いて検討した結果であるが,同様の検討を環状き裂モデル を用いて実施した.結果をTable 4. 2とFig. 4. 3に示す.環状切欠きモデルでの検討と同様 に,160 MPa以上の高応力振幅の領域ではSSYを満足しないことが明らかとなった.

一般的に,小規模降伏条件下よりも大規模降伏条件下のほうが疲労き裂進展速度は速く なることが知られており[4]–[6],オーステナイト系ステンレス鋼にも同様の傾向がみられる ことが報告されている[7].以上のことから, Fig.3. 9で示した疲労き裂進展特性に基づく予 測結果が実験結果よりも長寿命側に予測された理由は,実際の疲労試験の応力振幅が

160MPa以上においては小規模降伏条件の仮定が有効ではなくなり,大規模降伏条件下でよ

り大きな進展速度でき裂が進んだためであることが明らかとなった.

Fig. 4. 1 Schematic illustration of plastic zone size at notch root.

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Table 4. 1 Calculation results of plastic zone size in original notch model and mechanically equivalent notch model.

Original notch model

σa MPa 50 75 100 160 200 250 300

d mm 6.4 6.4 6.4 6.4 6.4 6.4 6.4

D mm 12.8 12.8 12.8 12.8 12.8 12.8 12.8

c mm 3.2 3.2 3.2 3.2 3.2 3.2 3.2

σten. MPa 111 167 222 356 444 556 667

F1' - 0.684 0.684 0.684 0.684 0.684 0.684 0.684

K1 MPa・m1/2 5.388 8.081 10.775 17.240 21.550 26.938 32.325

ρ mm 0.058 0.097 0.139 0.250 0.396 1.000 3.200

Mechanically similar notch model

σa MPa 15.81 23.72 31.62 50.60 63.24 79.06 94.87

d mm 64 64 64 64 64 64 64

D mm 128 128 128 128 128 128 128

c mm 32 32 32 32 32 32 32

σten.sm MPa 35 53 70 112 141 176 211

F1' - 0.684 0.684 0.684 0.684 0.684 0.684 0.684

K1 MPa・m1/2 5.388 8.082 10.774 17.241 21.548 26.939 32.326

ρs mm 0.055 0.093 0.132 0.240 0.338 0.467 0.667

ρ/ρs - 1.062 1.047 1.054 1.043 1.172 2.141 4.798

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Fig. 4. 2 The relationship between /s and stress amplitude in the original notch model, a

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Table 4. 2 Calculation results of plastic zone size in original crack model and mechanically equivalent crack model.

Original crack model

σa MPa 50 75 100 160 200 250 300

d mm 6.4 6.4 6.4 6.4 6.4 6.4 6.4

D mm 12.8 12.8 12.8 12.8 12.8 12.8 12.8

c mm 3.2 3.2 3.2 3.2 3.2 3.2 3.2

σten. MPa 111 167 222 356 444 556 667

F1' - 0.684 0.684 0.684 0.684 0.684 0.684 0.684

K1 MPa・m1/2 5.388 8.081 10.775 17.240 21.550 26.938 32.325 ρ mm 0.015 0.030 0.055 0.135 0.240 0.566 1.574

Mechanically similar crack model

σa MPa 15.81 23.72 31.62 50.60 63.24 79.06 94.87

d mm 64 64 64 64 64 64 64

D mm 128 128 128 128 128 128 128

c mm 32 32 32 32 32 32 32

σten.sm MPa 35 53 70 112 141 176 211

F1' - 0.684 0.684 0.684 0.684 0.684 0.684 0.684

K1 MPa・m1/2 5.388 8.082 10.774 17.241 21.548 26.939 32.326 ρssy mm 0.015 0.030 0.055 0.132 0.200 0.320 0.460

ρ/ρs - 1.00 1.00 1.00 1.02 1.20 1.77 3.42

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Fig. 4. 3 The relationship between /s and stress amplitude in the original crack model, a

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