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疲労き裂発生強度に及ぼす硬化の影響

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 130-135)

第 4 章 環状切欠きを有するオーステナイト系ステンレス鋼 SUS304 の疲労寿

4.3. 環状切欠き丸棒試験片の疲労限度に対する影響因子

4.3.2. 疲労過程における切欠き部の硬度および微視組織の変化に関する考察

4.3.2.2. 疲労き裂発生強度に及ぼす硬化の影響

4.3.2.1では,切欠き底の微視組織が変化し硬化して疲労限度が決定する試験条件と,硬化

を伴わずに疲労限度が決定する試験条件が存在することを明らかにした.第 3 章で示した 通り,本研究で取得した環状切欠き丸棒試験片の疲労限度は,停留き裂は存在せず,き裂の 発生限界で決まっていることから,硬化の影響は疲労き裂発生の抑制という形で表れてい ることが予想される.そこで,疲労き裂の発生強度に及ぼす硬化の影響を明らかにするため に,Kt2,R = −1の疲労限度(a = 200MPa)を例にとり,104cycles,105 cycles,106 cyclesで試 験を中断した試験片に対し切欠き部の硬度測定を行い,さらにき裂発生の有無を調べた.ま た,実際に破断する試験条件における硬化とき裂発生の時期の関係を調べるために,Kt3,

R = −1,a = 200MPa (Nf = 1.5×105 cycles)を例にとり, 104 cycles,105 cyclesで試験を中断 した試験片に対して硬度測定を行い,さらにき裂発生の有無を調べた. Fig. 4. 7 上の破線 で囲んだ試験片を硬度測定とき裂観察の対象とした.

Fig. 4. 11 (a)に,Kt2の硬度測定の結果を示す.104,105 cyclesの硬度に変化はなく,初期

硬度のままであった.一方,106 cyclesでは切欠き底から50mの位置において,初期硬度

比33%の硬度上昇が確認された.また,104,105,106 cyclesの切欠き底において疲労き裂は

確認されなかった.最終的に試験終了繰返し数である107 cyclesに到達した段階では初期硬

度比 50%の硬度上昇がみられた.以上のことから,切欠き底の局所的な硬化は,105 cycles

以降で始まり,疲労き裂の発生を伴わずに試験終了繰返し数である107 cyclesに至るまで続 いたと考えられる.

Fig. 4. 11 (b)に,Kt3の硬度測定の結果を示す.104,105 cyclesにおいてそれぞれ初期硬度

に比べ12%~22%程度の硬度上昇がみられた.また,104 cyclesではき裂は確認されなかっ

たが,Fig. 4. 12に示すとおり,105 cyclesでは切欠き底から長さ約290mのき裂が確認され

た.以上のことから,Kt3の場合, 104 cycles以降に硬度が徐々に上昇していく段階で疲労 き裂が発生し,その後繰返し数の増加とともに進展したと考えられる.

負荷繰返し数とその時点での切欠き底から50mの位置の硬度の関係をFig. 4. 13に示す.

Kt2においては105 cycles以降に急激に硬度が上昇し,未破断のまま107 cyclesに到達した結 果,疲労限度が決定されたと判断できる.その一方,Kt3においては104 cyclesの時点で若 干の硬化がみられるが,その後の硬度変化は緩やかで,Kt2に見られたほどの硬化を示す前 に疲労き裂が発生,進展し,最終的に破断に至ったと判断できる.つまり,SUS304環状切 欠き丸棒試験片の応力比R = −1における疲労限度は,繰返し負荷の過程の中で,疲労き裂 が発生する前に切欠き底の局所的な硬化が起きるような試験条件として決定されているこ ととなる.

4.3.2.1 に述べた通り,硬化の主たる要因は繰返し負荷の過程における転位構造の発達と

部分的に誘起されたマルテンサイト変態である.「切欠き底の疲労き裂発生強度の向上」と いう形で硬化の効果を有効とするには,疲労き裂が発生する前に切欠き底で積層欠陥が高 密度化し,マルテンサイト変態が誘起されることが重要であり,そのような力学条件が切欠

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以上のことから,4.3.2.1に示した疲労の過程における硬化の有無に加えて,疲労き裂発生 寿命と硬化が起きる時期の関係は SUS304 環状切欠き丸棒試験片の疲労限度を決定する重 要な因子であることが明らかとなった.

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Fig. 4. 11 Vickers hardness, HV as functions of the distance from the notch-root. (a) Kt2, at the fatigue limit stress level under R = −1 conditions. (b) Kt3, at infinite fatigue life stress level under R = −1 conditions.

(a)

(b)

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Fig. 4. 12 ECCI micrograph around the notch root in Kt3 specimens subjected to an interrupted fatigue test at a = 200 MPa, R = −1, n/Nf = 0.67.

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Fig. 4. 13 Relationship between Vickers hardness at vicinity of notch root of Kt2 and Kt3 specimen and number of loading cycles.

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