第 3 章 各種試験結果および解析結果
3.2 各種試験結果
3.2.3. ひずみ制御疲労試験
平滑丸棒試験片を用いたひずみ制御疲労試験によって得られた SUS304 の低サイクル疲 労特性について述べる.
Fig. 3. 4に,全ひずみ範囲tと破断繰返し数Nfの関係を〇印で示す.図中には比較のた
めに,NIMS で実施されたSUS304平滑丸棒試験片を用いたひずみ制御疲労試験の結果[19]
を*マークでプロットしている.本研究で得た結果と NIMS の結果は化学成分や試験片形 状,試験周波数が異なるが,よい一致を示した.これは,全ひずみ範囲に対してプロットし た鋼の低サイクル疲労寿命曲線は,引張強さや破断延性が異なっていても,一本の幅の狭い 領域にプロットされるという畑中らの報告[20]に従う結果である.
Fig. 3. 5に,塑性ひずみ範囲pと破断繰返し数Nfの関係を〇マークで示す.pとNfは
両対数グラフ上で直線関係にあることが確認された.クリープを無視できる温度における 多くの金属合金の低サイクル疲労試験において,塑性ひずみと疲労寿命との間に,式(3-3)が 成立することが知られている.
∆𝜀𝑝
2 = 𝜀f′(2𝑁f)𝑐 (3-3)
式(3-3)はManson-Coffin 則[21]と呼ばれ,塑性ひずみ範囲(1 サイクル中の塑性ひずみの 変化幅)で評価するとき,疲労寿命のべき乗と塑性ひずみ範囲の積が一定値になることを示 した実験式である.f’は疲労延性係数,cは疲労延性指数である.本研究で得られたデータ について最小二乗法によりf’およびcを求めた結果,f’ = 0.046,c = −0.286であった.本研 究で得たcの値は,SUS304の低サイクル疲労特性を調べた研究の結果(c = −0.22)[22]と同 等であった.Manson-Coffin則での近似曲線をFig. 3. 5中に破線で示す.実験結果は近似曲 線上に位置しており,本研究で用いた供試材の低サイクル疲労特性はManson-Coffin則で近 似できることが示された.
Fig. 3. 6は,各試験条件における約Nf/2サイクルの最大応力を縦軸に,最大ひずみを横軸
にとり,繰返し応力-ひずみ曲線を求めたものである.一般的にひずみ制御疲労試験におい ては寿命中期に繰返し変形特性がほぼ安定するため,約 Nf/2 サイクルにおけるヒステリシ スループ群の先端を連ねる曲線として定義される.ここでは比較のために室温大気中にお ける単軸引張試験で得られた応力-ひずみ曲線をFig. 3. 6中に破線で示す.t = 0.5% (t/2
= 0.25%)の場合,単軸引張試験で同じひずみを与えられた場合のほうが応力は高く,繰返し 硬化はみられない.一方,t = 1.0%, 1.5% (t/2 = 0.5%, 0.75%)においてはその関係は逆転 し,繰返し硬化を示す材料の挙動が見られた.
Fig. 3. 7は,横軸に塑性ひずみをとり,繰返し応力-塑性ひずみ関係として整理しなおした
もので,式(3-4)が成立することが知られている.
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∆𝜎
2 = 𝐾′(∆𝜀p 2 )
𝑛′
(3-4)
K’は繰返し強度指数,n’は繰返し硬化指数である.Fig. 3. 7に示した繰返し応力-塑性ひず み関係についてK’およびn’を最小二乗法により求めた結果,K’ = 15603,n’ = 0.62461であ った.
以下では,試験中に逐次取得した応力とひずみのデータを基に各試験条件での代表的な サイクルのヒステリシスループ,および最大応力値の履歴からわかることを述べる.
Fig. 3. 8 (a) ~ (c)に,全ひずみ範囲t = 0.5%, 1.0%, 1.5% の代表的なサイクル数における ヒステリシスループを示す.縦軸は真応力(True stress),横軸は真ひずみ(True strain)であり,
塑性体積一定条件を満たすと仮定し,式(3-5),(3-6)を用いて算出した.
σ = 𝜎Nominal(1 + 𝜀Nominal) (3-5) 𝜀 = ln(1 + 𝜀Nominal) (3-6)
いずれの試験条件においても,圧縮負荷中の早期降伏現象であるバウシンガ効果が確認 された.t = 0.5%においては,ヒステリシスループの形状は初期サイクルから破断直前に かけて若干縮小する傾向がみられた.一方,t = 1.0%,1.5%においては,サイクル数の増 加とともに著しい変化がみられ,試験条件(全ひずみ範囲)に応じてヒステリシスループの変 化の度合いが明らかに異なることが確認された.
Fig. 3. 9 (a) ~ (c)に,全ひずみ範囲t = 0.5%,1.0%,1.5% の疲労試験中の各サイクルにお
ける最大応力値の履歴を示す.いずれの試験条件においても,10 ~ 20サイクルまでは初期 硬化を示した.その後若干の軟化を示すが,それに続く挙動は全ひずみ範囲tの大きさに よって異なった.t = 0.5%の場合,サイクル数が増加しても最大応力値が変化しない安定 領域が現れ,50000サイクル以降では再度緩やかな硬化を示した.t = 1.0%の場合,t = 0.5%の場合に比べて安定領域が狭く,その後の硬化の程度も著しかった.特に破断直前の 9000サイクル以降では極端な硬化挙動を示した.t = 1.5%の場合,ほかの2条件にみられ た安定領域は現れず,破断に至るまでサイクルの増加とともに著しい硬化を示した.
SUS304のひずみ制御疲労過程における硬化および軟化挙動と微視組織の関係について検
討した津﨑ら[22]や D.Ye ら[23]の実験結果も同様の傾向を示している.津﨑ら[22]は,
SUS304平滑丸棒試験片を用いてt = 0.6% ~ 2.5%のひずみ制御疲労試験を行い,疲労試験
中に試験片のマルテンサイト量をフェライトスコープで計測した結果,最大応力値と繰返 し数の関係を決定づけるのは,疲労過程におけるマルテンサイト変態の有無だけではなく,
変態が生じるタイミングも関与すると説明している.本研究で得られた結果についても同 様に,疲労過程中のマルテンサイト変態がSUS304の低サイクル疲労特性の決定に重要な役 割を担っていると考えられる.
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Fig. 3. 4 Relationship between total strain range, t,and number of cycles to failure, Nf, obtained by strain controlled fatigue test using smooth specimen.
Fig. 3. 5 Relationship between strain range, p and number of cycles to failure, Nf,obtained by strain controlled fatigue test using smooth specimen.
[18]
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Fig. 3. 6 Cyclic stress- strain curve obtained by strain controlled fatigue test using smooth specimen.
Fig. 3. 7 Cyclic stress- plastic strain curve obtained by strain controlled fatigue test using smooth specimen.
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Fig. 3. 8 Stress-strain hysteresis loops for SUS304 at various number of cycles: (a) t = 0.5%, (b)
t = 1.0%, (c) t = 1.5%.
(a)
(b)
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Fig. 3. 8 Stress-strain hysteresis loops for SUS304 at various number of cycles: (a) t = 0.5%, (b)
t = 1.0%, (c) t = 1.5%. (Continued)
(c)
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Fig. 3. 9 Variation in stress amplitude in the hysteresis loops as a function of the number of cycles:
(a) t = 0.5%, (b) t = 1.0%, (c) t = 1.5%.
(a)
(b)
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Fig. 3. 9 Variation in stress amplitude in the hysteresis loops as a function of the number of cycles:
(a) t = 0.5%, (b) t = 1.0%, (c) t = 1.5%. (Continued)
(c)
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