• 検索結果がありません。

荷重制御疲労試験

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 74-79)

第 3 章 各種試験結果および解析結果

3.2 各種試験結果

3.2.1. 荷重制御疲労試験

Fig. 3. 1 (a) ~ (d) に,環状切欠き丸棒試験片(Fig. 2. 3 (b) ~ (e))で取得したS-N線図を示す.

S-N線図は応力比毎に作成した.応力比 R = −1については,比較のために平滑丸棒試験片 (Fig. 2. 3 (a))で取得したデータも併せてプロットした.荷重振幅を試験片の最小断面積で除 した値を公称応力振幅aとし,非破断となった試験片については実線の矢印を付して示し た.また,第4章で詳述するが,途中で試験を中断して試験機から取り外し,切欠き底近傍 の硬度測定や微視組織の観察を行った試験片には破線矢印を付した.Kt6.6 については,大 気中に加えて0.7MPa水素ガス中でもS-N線図を取得したため,その他の試験片と分けて整 理した(Fig. 3. 1 (c), (d)).

Fig. 3. 1 (a) に応力比がR = −1の場合の結果を示す.Kt1に比べ環状切欠き丸棒試験片の

疲労寿命は有限寿命領域,疲労限度のいずれも低下した.応力集中係数 Ktが高いほどその 低下量が大きく,応力集中の影響によって疲労強度が低下したと言える.

Fig. 3. 1 (b) に応力比がR = 0.1の場合の結果を示す.有限寿命領域においては,R = −1の

場合と同じく応力集中係数が高いほうが疲労寿命は短くなった.一方,疲労限度はすべての 試験片で同じ値となり,応力集中の影響が現れなかった.

ここで,応力比がそれぞれの試験片の疲労限度に与える影響について述べる.R = 0.1の 場合,それぞれの試験片における疲労限度の値は,R = −1の場合に比べ大きく低下した.オ ーステナイト系ステンレス鋼の平滑材の疲労特性に与える平均応力の影響はないと報告さ れている[1]–[4].それに対して,SUS304の環状切欠き丸棒試験片の場合,疲労限度に対す る応力比の影響が存在することが本研究の結果から明らかとなった.

Fig. 3. 1 (c) にKt6.6の大気中および0.7MPa水素ガス中,応力比R = −1で取得したS-N

図を示す.ここでは比較のために,Kt1の大気中および115MPa水素ガス中,応力比R = −1 で取得したデータも併せてプロットした.いずれの試験片においても,水素ガス中の疲労寿 命は大気中に比べ著しく短寿命となった.一方,疲労限度に対する水素ガスの影響はほとん

第3章 各種試験結果および解析結果

68 どみられなかった.

Fig. 3. 1 (d) にKt6.6の大気中および0.7MPa水素ガス中,応力比R = 0.1で取得したS-N線 図を示す.Nf < 105の寿命領域では,水素ガス中の疲労寿命は大気中に比べ短寿命となった.

一方,Nf > 105の寿命領域では,水素ガス中と大気中の疲労寿命に差は確認されなかった.

また,疲労限度については二つの試験環境の間で若干の差があるものの,水素ガスの影響に よる低下は確認されなかった.

3.2.2に後述するが,SUS304の水素ガス中における疲労き裂進展速度は,大気中に比べ約

10 倍上昇する.有限寿命領域において,水素ガス中の疲労寿命が大気中に比べ短寿命とな った理由は,疲労き裂進展速度の上昇が原因と考えられる.疲労限度に対する水素ガスの影 響がほとんどみられないという傾向は,別の種類のオーステナイト系ステンレス鋼[5]や低

合金鋼SCM435 の切欠き材[6], [7],および平滑材[8]についても同様の傾向が報告されてい

る.本研究においても,SUS304の環状切欠き丸棒試験片および平滑材の疲労限度に対する 水素の影響はほとんどないことが明らかとなった.

第1章で述べたとおり,切欠き材の疲労限度は,「き裂の発生限界」もしくは「き裂の進 展限界」のいずれかで決まることが知られている.過去の研究例において,室温大気中で

SUS304の切欠き材には停留き裂は現れないと報告されている[9], [10].本研究においても,

試験後の試験片の切欠き底をSEM(Scanning Electron Microscopy)で入念に観察した結果,す べての疲労限度において停留き裂は確認されなかったことから,疲労限度は「き裂の発生限 界」で決まっていると考えられる.

上述の疲労試験によって取得された疲労限度に対して 1.1.2 で述べた切欠き係数 Kfの予 測式が適用可能か否かを検討した.ここでは,代表例としてPetersonの式[11]を用いて各種 環状切欠き丸棒試験片の切欠き係数 Kfを予測し大気中における実験結果との比較を行った.

比較した結果をFig. 3. 2に示す.全ての試験片において,予測結果は実験結果よりも1.5~

2.0倍高い値となり実験結果と一致しなかった.以上のことから,従来から提案されている 切欠き係数の予測式では,SUS304 環状切欠き丸棒試験片の疲労限度(切欠き係数)を予測す ることができないことが明らかとなった.

第3章 各種試験結果および解析結果

69

Fig. 3. 1 Relationship between stress amplitude and number of cycles to failure (S-N diagrams) of circumferentially-notched specimens of SUS304. (a) Kt3, Kt3rev., Kt2, Kt1 at R = −1 in air, (b) Kt3, Kt3rev., Kt2 at R = 0.1 in air, (c) Kt6.6 at R = −1 in air and 0.7MPa H2, (d) Kt6.6 at R = 0.1 in air and 0.7MPa H2.

(a)

(b)

第3章 各種試験結果および解析結果

70

Fig. 3. 1 Relationship between stress amplitude and number of cycles to failure (S-N diagrams) of circumferentially-notched specimens of SUS304. (a) Kt3, Kt3rev., Kt2, Kt1 at R = −1 in air, (b) Kt3, Kt3rev., Kt2 at R = 0.1 in air, (c) Kt6.6 at R = −1 in air and 0.7MPa H2 , (d) Kt6.6 at R = 0.1 in air and 0.7MPa H2.(Continued)

(c)

(d)

第3章 各種試験結果および解析結果

71

Fig. 3. 2 Prediction results of notch factor of circumferentially-notched specimen by Peterson’s equation.

第3章 各種試験結果および解析結果

72

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 74-79)