第5章 選挙制度
3 立候補
d. 収拾が不可能な事態に関する確認事項等の関連当局への連絡調整
(法第 66条(4))
(6)選挙立会人
非政府組織や国内法人は地方首長・副首長選挙の立会人(Pemantau Pemilihan) として投票所における開票作業や郡選挙委員会等における集計作業の立会いを通じて 選挙に参加することができる。選挙立会人となることができる団体の要件は、a.政党 と無関係で独立していること、及び b.団体の資金源が明確であることであり、当該選 挙を実施する総選挙委員会に登録し、認定を受ける必要がある。選挙立会人となった 場合は、当選した地方首長・副首長の就任から7日以内に、立会結果報告を地方総選 挙委員会に提出する義務を負う(法第113条,第114条)。
わりに当該選挙区に居住する有権者から一定数の支持を集める必要があり、これらの 住民の支持は、州知事・州副知事選挙の個人候補者ペアの場合は当該州内の過半数以 上の県・市で、県知事・県副知事及び市長・副市長選挙の個人候補者ペアの場合は当 該県・市内の過半数以上の郡で獲得しなければならない。有権者からの支持は住民カ ードまたは住民証明書を添えたサポートレターの形で表明され、支持リストにまとめ られる。有権者は1組の個人候補者ペアに対してのみ支持を行うことができる(法第 59条)。個人候補者ペアが集めなければならない支持の数は以下のとおりである。
【図表5-1-1 地方首長・副首長選挙への立候補に必要な支持】
州知事・州副知事選挙個人候補者ペアの場合
a. 人口 200万人未満の州 有権者の6.5%以上の支持 b. 人口 200万人以上600万人未満の州 有権者の5.0%以上の支持 c. 人口600万人以上1200万人未満の州 有権者の4.0%以上の支持 d. 人口1200万人以上の州 有権者の3.0%以上の支持
県知事・県副知事及び市長・副市長選挙個人候補者ペアの場合
a. 人口 25万人未満の県・市 有権者の6.5%以上の支持 b. 人口 25万人以上50万人未満の県・市 有権者の5.0%以上の支持 c. 人口50万人以上100万人未満の県・市 有権者の4.0%以上の支持 d. 人口100万人以上の県・市 有権者の3.0%以上の支持
(法第59条(2a)(2b))
(2)候補者要件
地方首長・副首長候補者となることが出来る者は、以下の要件を充たすインドネシ ア国民である。
a. 唯一至高神への信仰を行っていること
b. 建国五原則パンチャシラ、憲法、独立の理想、国家の単一性を守り、政府に対 し忠実であること
c. 高等学校卒業以上またはそれに相当する教育を受けていること
d. 州知事・州副知事候補者の場合は 30 歳以上、県知事・県副知事及び市長・副 市長候補の場合25歳以上であること
e. 医師による全身健康診断の結果、心身ともに健全であること f. 5年以上の懲役刑に処されたことがないこと
g. 裁判所から被選挙権の剥奪措置を受けていないこと
h. 当該地域の実情を熟知し、地域住民からも認知されていること i. 個人資産リストを提出し、その公開に応じること
j. 地方財政に損害を及ぼし得る個人の債務または自身の責任となる法人の債務 を有していないこと
k. 裁判所から破産宣告を受けていないこと
l. 納税者基本番号または納税証明書を保有していること
m. 学歴、職歴、家族構成、及び配偶者の記載のある履歴書を提出すること n. 当該地方政府の地方首長または副首長を合計で2期務めたことがないこと o. 地方首長職務代行者の地位にないこと
p. 現職で立候補する場合は辞職すること (法第58条)
(3)立候補手続き
以上の要件を満たすもので立候補を行おうとするものは、以下の手続きによって候 補者と認定される。
①個人候補予定者ペアの住民の支持の検証
個人候補者ペアの場合は、立候補の必要書類の提出に先立つ事前審査において住 民の支持を得ているかどうかについて検証される。この手続きは郡選挙委員会、投 票委員会及び地方総選挙委員会が行うものであり、以下ような流れで行われる。
a. 個人候補予定者ペアは投票委員会に各地域の有権者から集めた支持リストを 提出(州知事・州副知事選挙の場合は立候補届提出の28日前までに、県知事・
県副知事及び市長・副市長選挙の場合は立候補届提出の21日前までに提出)
b. 投票委員会は個人候補予定者ペアから支持リストを受領後 14 日以内に検証及 び集計作業を実施し、郡選挙委員会に検証及び集計結果の記録を送付するとと もに個人候補予定者ペアに写しを交付
c. 郡選挙委員会は、投票委員会からの検証・集計記録の受領後7日以内に、住民 が重複して個人候補予定者ペアを支持していないかという観点から、支持リス トの検証・集計を実施、当該結果は投票委員会の検証・集計記録に追記されて、
県・市総選挙委員会に送付されるとともに個人候補予定者ペアに写しを交付(県 知事・県副知事及び市長・副市長選挙の場合は、この写しが有権者からの支持 獲得要件の証明書となる)
d. 州知事・州副知事選挙の場合は、県・市総選挙委員会において住民が重複して 個人候補予定者ペアを支持していないかという観点から、再度、支持リストの 検証・集計を実施、郡選挙委員会の検証・集計記録に追記されて、州総選挙委 員会に送付されるとともに個人候補予定者ペアに写しを交付(州知事・州副知 事選挙の場合はこの記録の写しが有権者の支持獲得要件の証明書となる)
(法第59A条)
②立候補届及び必要書類の提出及び検証
立候補を行おうとする者は立候補届受付開始後7日以内に、a.立候補届、b.政党及 び政党連合から擁立された候補者ペア(以下「政党候補者ペア」という。)の場合は政 党または連立政党の擁立合意書、c.候補予定者ペアのビジョン、使命及び政策プログ ラム、d.立候補を取り下げないとする表明書、e.現職公務員の場合は公職を辞職する 表明書、f.現職議員等の場合は立候補する旨の地方議会への届出書、g.地方首長・副首 長の候補要件を充たすことを証明する資料、h.個人候補予定者ペアの場合は住民の支 持リスト及び証拠書類 等の必要書類を、当該選挙を実施する地方総選挙委員会に提出 する。
立候補届及び必要書類が提出された場合、当該選挙を実施する総選挙委員会は、提 出期限から 21 日以内に届出の内容を審査し、候補者に認定または却下の判断を通知 する。立候補届及び必要書類の内容に不備があった場合は、立候補予定者ペアは審査 結果の通知後に修正の機会が与えられ、政党候補の場合は新しい候補者を推薦する機 会が与えられる。なお、立候補届及び必要書類の修正の機会は1度のみであり、地方 総選挙委員会の再審査以後に不備が残り、届出が却下された場合は、個人候補予定者 ペアは立候補することができず、政党及び連立政党は再度新たな政党候補者ペアを擁 立することはできない。
以上によって立候補届及び必要書類の検証が終了した後に、地方総選挙委員会は二 組以上の候補者ペアを確定し、この名簿は審査終了後7日以内に公表され候補者番号 を決めるための公開抽選会が行われる(法第59条~第 61条)。
③立候補の辞退
前述(1)で紹介したとおり、地方首長・副首長選挙に立候補するためには地方議 会に一定の議席を有する政党または連立政党による擁立、または、住民から一定の支 持を得る必要があるため、インドネシアの地方首長・副首長選挙においては泡沫候補 の発生は想定しておらず、立候補のための供託金の制度も存在しない。
その上で法第62条は、候補者ペアの確定以降に、政党及び政党連合が政党候補者ペ アの擁立を取り下げ、あるいは政党候補者ペアが立候補を辞退した場合には、当該政 党及び政党連合から代替候補を擁立することはできないとしている。さらに、個人候 補者ペアが候補者ペアの確定以降に立候補を辞退した場合には、その者は、個人候補 者としても、政党候補者としても、以後インドネシアで実施される全ての地方首長・
副首長選挙に立候補することは許されず、さらに200億ルピア(約1億5千4百万円
42)の罰金が課されることとなる(法第62条)。
42 本稿を通じて、為替レートは1円=130ルピア(2月18日現在のインターバンクレート)で計算している。