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第9章 地方税及び地方利用者負担金制度

第4節 税の徴収

2 地方税の徴収実務の例

地方税はその性質上、定期的に支払いが行なわれるものと、その都度支払うべきものに 分類され、前者は、ホテル税、レストラン税、街灯税、常設の看板に課する広告税、娯楽 税が、後者は、臨時的な広告税、コンサート等のイベントにかかる娯楽税、駐車税が該当 する。以下では、徴税方法の例として、ホテル税・レストラン税と、駐車税を紹介する。

(1)ホテル税及びレストラン税

ホテル税とレストラン税は、MPS方式(Membayar Pajak Sendiri:自己納税方式)

とNon-MPS方式(Taksasi)と呼ばれる2種類の方法を選択することができる。

MPSとは事業主自らが売上金を元に課税額を申告する方式であり、ホテル・レストラ ン経営者は毎月4回(7 日、14日、21日、28日)、税務申告書(SPTPD)及びレジ記 録等の添付書類を用意し、一週間分の売り上げを市税務局窓口で申告納税する。

MPS方式を選択する事業者は毎月の申告の他に、定期的に行なわれる税務検査への協 力が義務付けられており、税調査チームによって売上伝票、銀行取引簿、キャッシュフ ロー計算書、損益計算書、貸借対照表等の検査が行われている。虚偽の申告を行った場 合、過少申告額について月額2%の罰金を課している。

Non-MPS 方式とは、スラバヤ市の税務局の税調査チームが事業主に代わって売り上

げ伝票から課税額を決定するものであり、数ヶ月に一度、市税務局担当官による帳簿検 査を行われる。審査の結果、納税額を記載した税金支払命令書が通知され、事業主は命 令日から15日以内に支払いを行うものである。

(2)駐車税

駐車税については、駐車場の経営者が利用者に交付する駐車券やレシートを未使用の 状態で窓口に持参し、税金を前納する。具体的には市役所職員が納税済を表す刻印を駐 車券に施す方法で納税を行なう。駐車場の経営者は、各利用者から税額を含んだ駐車料 を徴収し、前納した税金を回収する。

左:スラバヤ市税務局納税窓口 右:駐車券に納税済刻印を押す様子

第5節 地方利用者負担金

地方税と並んで、地方政府の自主財源の柱となるのが地方利用者負担金であり、地方政 府が提供する様々な特定の行政サービスに対する手数料を意味する。すべての地方政府の 行政サービスが地方利用者負担金の対象になるわけではなく、社会・経済状況を考慮に入 れて、適当と考えられる特定の行政サービスを対象としている。

地方利用者負担金は、地方税法によりその対象や運用方法が定められており、①公共サ ービス負担金、 ②事業サービス負担金、 ③許認可サービス負担金の、3 種類のカテゴリ ーに分類できる。また、具体的な地方利用者負担金の対象は、地方利用者負担金に関する 2001年政令第66号に列挙されているが、その詳細は地方条例によって定められている。

なお、地方利用者負担金は財源再配分機能を有しており、県政府によって徴収される地 方利用者負担金については、当該サービスの提供に関係がある村へと、その一部を交付す ることとされている。以下、地方利用者負担金の例を挙げる。

(1)公共サービス負担金

a. 医療施設診察料、b. ゴミ処理、衛生サービス料、c. 住民票変更、居住証明料、

d. 墓地使用料、e. 路上駐車料、f. 市場使用料、g. 自動車検査料、h. 消火器検査料 、 i. 都市計画地図変更・発行手数料、j. 漁船船舶検査料

(2)事業サービス負担金

a. 地方財産使用料、b. 卸売市場、ショッピングセンター使用料、c. 競売場使用料、

d. ターミナル使用料、e. 特別駐車場利用料、f. 宿泊施設等利用料、

g. し尿汲み取り料、h. 屠殺場使用料、i. 港湾使用料、j. スポレク施設使用料、

k. 渡船サービス料、l. 汚水処理料、m. 物産品販売代金

(3)許認可サービス負担金

a. 建物建築許可手数料、b. アルコール飲料販売許可手数料、

c. 迷惑事業許可手数料、d. 旅客運送路線許可手数料

【図表9-5-1 スラバヤ市の地方利用者負担金の例(排出施設別ゴミ収集料金等)】

区分 場所 料金 備考

一般公共施設 2,000ルピア/月広場等の公共場所、宗教施設、水飲場、集会所 特別公共施設 5,000ルピア/月学校、病院、クリニック、保健所

A1住宅 12,000ルピア/月主要幹線道路、排水口及び路肩の整備された道路, 又は経済価値の高い道路沿いの住宅

A3住宅 3,000ルピア/月幅6.5m以下の排水口や路肩の整備された道路沿い の住宅

政府機関 6,000ルピア/月インドネシア・海外政府機関の施設 中小企業

7,800ルピア/月協同組合、個人企業、サービス業、零細企業、プー ル、保健サービス、運動施設、民間の病院・診療 所、薬局、開業医

大企業 16,500ルピア/月銀行、不動産業、工場、倉庫、公営企業、デパー ト、娯楽施設

大規模レストラン 55,000ルピア/月20以上の座席を有するレストラン 小規模レストラン 25,000ルピア/月20以下の座席を有するレストラン 5つ星ホテル 180,000ルピア/月

3つ星ホテル 150,000ルピア/月

小規模企業 5,250ルピア/月家庭内工業、内職 大規模企業 110,000ルピア/月金属・機械工業、基礎工業 政府所有市場 39,000,000ルピア/月政府が所有・管理する市場 地方公営市場 2,500,000ルピア/月

民間市場 4,250ルピア/日民間が所有・管理する市場 移動トイレ  600,000ルピア/日地域社会のための移動トイレ

ゴミ運搬トラック 5,000ルピア/㎥ゴミを最終処理所(TPA)まで運搬するトラック ゴミコンテナ(容量14㎥)  25,000ルピア/日コンテナのレンタル料金

掘削機  125,000ルピア/時間ゴミ・土を集めるための重機械 ブルドーザー  125,000ルピア/時間ゴミ・土を集めるための重機械

屋台 1,000ルピア/日個人所有者によって路上に設置される屋台 最終処理所へのゴミ持込 2,500ルピア/㎥

下水処理所での汚水持込 3,750ルピア/㎥

ゴミ焼却場へのゴミ持込 9,375ルピア/㎥

公共施設

非商業施設

商業施設

工業施設

出典:スラバヤ市地方条例2000年第4号別表を元に作成 市場

市所有設備の 貸し出し

その他

2.5㎥以下の場合。2.5㎥ 以上の場合は3,000ルピア/

<主要参考文献>

【日本語書籍・論文】

インドネシアの地方分権化 松井和久編(アジア経済研究所 2003年)

【インドネシア語文献】

Pemerintahan dan Otonomi Daerah Hanif Nurcholis著(Grasindo 2007年)

【参照法令(インドネシア語)】

地方税及び地方利用者負担金に関する2000年法律第34号 地方税に関する2001年政令第65号

第10章 特別地方自治法

インドネシア共和国の地方制度は、全ての州で 2004 年地方行政法に基づく単一制度が 導入されているが、ジャカルタ首都特別州、ジョグジャカルタ特別州、ナングロ・アチェ・

ダルサラーム州、パプア州及び西パプア州の 5つの州では、その地位や宗教・民族・歴史 的経緯に基づき、単一制度を基本としつつ、特殊な地位や特別な自治権が付与されている。

本章では、これら5州で実施されている特別な地方自治制度について、それぞれの法令の 主な規定を踏まえて紹介する。

第1節 ジャカルタ首都特別州行政法

ジャカルタ首都特別州(DKI Jakarta:Daerah Khusus Ibukota Jakarta)は、州レベ ルの地方政府であるとともにインドネシア共和国の首都としての特別な任務、権利、義務 及び責任を有する地域であり、外国の代表機関や国際機関の所在地としての役割を有する。

ジャカルタ首都特別州では、地方行政法等の法令による地方制度を基本としつつ、「ジャカ ルタ首都特別州の行政に関する2007年法律第29号(以下「首都法」という。)」で定めら れる特別な制度が適用されている。同法の主な点は、以下のとおりである。

(1)県行政区・市行政区の設置

通常の州の場合、州の行政区域の中には下位の地方政府である県政府や市政府が存在 し、独立した地方政府として、住民による直接選挙で選出される県知事・市長や地方議 会を有している。ジャカルタ首都特別州においても、行政区域内に県や市に相当する機 関が置かれているが、それは日本の政令指定都市の「行政区」に相当する機関であり、

ジ ャ カ ル タ 首 都 特 別 州 に は 州 の 機 構 の 一 部 と し て 、1 つ の 県 行 政 区 (Kabupaten Administrasi)と4つの市行政区(Kota Administrasi)が設置されている。

県行政区知事及び市行政区長は、州議会の意見を踏まえ、州の公務員の中からジャカ ルタ首都特別州知事が選出し、任命を行う。県行政区副知事や副市行政区長は州議会の 意見のプロセスを要さずにジャカルタ首都特別州知事が任命することができる。それら を補佐する官房長については、県行政区知事または市行政区長の提案により、ジャカル タ首都特別州知事が任命することとされている(首都法第19条,第20条)。

県行政区や市行政区には、通常の地方議会に代わる機関として県協議会(Dewan Kabupaten)と市協議会(Dewan Kota)が設置され、住民サービスの向上について協 議を行う場と位置づけられている。協議会はそれぞれの行政区内の区毎に1名の割合で 議席を配置しており、議員は住民の提案に基づき、州議会の同意を経てジャカルタ首都 特別州知事が任命する(首都法第24条)。