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社会科授業分析 1.分析の視点

第皿章 クリティカル・シンキングの

      因果関係決定方略を用いた授業分析

 これまで,クリティカル・シンキングにおける因果関係を決定する検証過程について明 らかにした。それでは,これまでの社会科授業において,このような科学的な方法により 因果関係を明らかにする実践は行われてきたのだろうか。

 本章では,これまで述べてきたクリティカル・シンキングの因果関係決定方略をもとに,

授業分析フレームワークを示し,先行授業実践および作成した授業モデルの分析を行う。

そして,その分析結果から,クリティカル・シンキングの因果関係決定方略を用いた中学 校社会科地理的分野の授業設計の視点を明らかにする。

第1節 社会科授業分析

れているか否か。

以下,各視点について述べる。

【視点1】問いの構造

 因果関係を把握していく過程で,どのような問いが用いられているか。また,谷間い によりどのような知識が習得されているのか。

 問いは「情報を求める問い」と「情報間の関係を求める問い」の大きく2つの種類に分ける ことができるとしている。社会科で因果関係を求める問いはW11y,つまり「なぜ疑問」によ

り原因と結果を明らかにすることで,社会事象の関係性を説明的知識として増やし,概念 を形成していくことが求められる。しかし,因果関係を求めるにはWllyをいきなり提示す るのではなく,下位の問いを設定し求めていくことによって,因果関係を明らかにするこ

とができる1。

 このことから,社会科の授業において社会事象の因果関係が『なぜ疑問」だけでなく,下位 の問いが設定されているかを明らかにするため,問いの構造を考察する。また,「なぜ疑問」

や下位の問いにより,社会事象の因果関係を説明している説明的知識あるいは説明的知識 に相当する知識が獲得されているのかについても明らかにする。

(ア)問い

 学習課題の提示や社会事象の因果関係が把握される問いは,どのように設定されている のか,その問いを明らかにする下位の問いは設定されているのか。

(イ)習得される知識

 それぞれの問いに対して,どのような知識が習得されているのか。そして因果関係を明 らかにした説明的知識あるいはそれに相当する知識があるかどうか。

【視点2】仮説設定

因果関係を把握していく問いに対して,誰がどのような仮説を設定しているのか。ま

た,設定した仮説はどのような質を持っているのか。

 視点1により問いが設定され,因果関係を求めていくときに仮説が設定される。その際 に,誰がどのような仮説を設定するのかを分析する。そして,仮説が複数設定されている ならば,仮説と仮説の関係性、質を分析する。

 ところで,クリティカル・シンキングにおける原因を推論することは,もっともらしい 他の原因の排除または第三変数を探ることを重視することであると述べた。岡崎誠司は子 どもにシステムそのものを正しいものとして受容させるのではなく,なぜそのようなシス テムとなっているのか構造の解明を行わせたり,そのシステムの背景や原因を探らせ,問 題点を明らかにさせたりすることを意図した「仮説吟味学習」2を提案している。これは,子

ども自身が,問題に対する根拠ある仮説を設定し,正当性・合理性を個人の側と社会の側 の両面から吟味する過程を保障している。

 複雑な社会事象の原因と結果を明らかにするには,設定された仮説を批判的に吟味し,

もっともらしい他の原因の排除を行う必要がある。ここでは,岡崎の論をもとに仮説の質 と関係性を明らかにする。

(ア)仮説

・仮説は誰が設定しているのか。

・仮説が複数設定されているのか。(単数、複数)

・仮説が複数設定されているのならば,どのような関係性になるか(類似,対立)。また,ど  のような質があるのか(個人の視点,社会システムの視点)。個人の視点(個の願いや思い)

 に政治的背景や社会背景が含まれるのであれば,社会システムに位置づく。

【視点3】規準の第一段階

 クリティカル・シンキングの手法による因果関係を検証する規準である,共変関係・

時間的順序関係を把握する過程がみられるか。共変関係,時間的順序関係が把握されて いるならば,学習者はどのように把握しているのか。

 クリティカル・シンキングの手法による因果関係の検証を行なう第一段階を,視点3と して位置付け,検証する規準である共変関係と時間的順序関係が用いられているかどうか

考察する。そこで,学習過程において授業者が学習者に因果関係を把握させるとき,どの ように把握させているのかを三つの段階に分けて検討する。

(ア)共変関係

 出来事Aと出来事Bに何か関係性があるようなグラフ,表などの資料の提示が見られる

か。

・共変関係がみられない(レベル1)。

・資料等の明示はないが,共変があることを説明により把握できる(レベル2)。

・グラフ・表などの統計資料により相関関係が把握できる(レベル3)。

(イ)時間的順序関係

 出来事Aと出来事Bの順序関係を資料等で確認する過程が見られるか。

・時間的順序関係がみられない(レベル1)。

・出来事A,出来事Bの順序関係が説明により把握できる(レベル2)。

・出来事A,出来事Bの順序関係が資料により把握できる(レベル3)。

【視点4】規準の第二段階

 設定された仮説に対して一致法(演線的方法),差異法との併用法(帰納的方法)が用いら れているか否か。

 クリティカル・シンキングの手法による因果関係の検証を行なう第二段階を,視点4と して位置付け,検証する規準である一致法,差異法との併用が用いられているかどうか考 察する。そこで,演繹的検証と帰納的検証に大別し,それぞれ段階を設定することによっ て,もっともらしい他の原因の排除や第三変数が存在するかどうかの学習過程が用いられ ているか検討する。

(ア)演繹的検証

 因果関係を把握していく中で,一致法のような演繹的に検証する過程がみられるか。

・仮説が設定されておらず,演繹的に検証する方法がみられない(なし)。

・仮説が設定され,演繹的に原因を検証する過程がみられる(演繹的方法)。

・原因Xの目星(仮説)をつけ,同じ結果の生レている別の状況でも原因Xが存在している

かどうかを調べる過程がみられる(一致法)。

(イ)帰納的検証

 演繹的検証のあと,差異法のような帰納的方法を行い,演繹的検証と比較しているか否 か。または,帰納的方法だけの検証方法かどうか。

・複数の事象を取り上げ,原因を探る過程がみられない(なし)。

・複数の事象を取り上げ,帰納的に原因を探る過程がみられる(帰納的方法)。

・一v法と合わせて,原因Xが存在しない時,結果Yが起こらないことを立証する過程が

 みられる(差異法との併用法)。

以上,4つを分析視点として設定し,先行授業実践および授業モデルの分析を行う。

〈下位の視点も含めた分析視点〉

      【視点1】問いの構造

 因果関係を把握していく過程で,どのような問いが用いられているか。また,谷間い によりどのような知識が習得されているのか。

(ア)間い

 学習課題の提示や社会事象の因果関係が把握される問いは,どのように設定されてい  るのか。

(イ)習得される知識

 それぞれの問いに対して,どのような知識が習得されているのか。

      【視点2】仮説設定

 因果関係を把握していく問いに対して,誰がどのような仮説を設定しているのか。ま た,設定した仮説はいくっあり,どのような質を持っているのか。

(ア)仮説

・仮説は誰が設定しているのか。

・仮説が複数設定されているのか。(単数、複数)

・仮説が複数設定されているのならば,どのような関係性になるか(類似,対立)。また,

どのような質があるのか(個人の視点,社会システムの視点)。個人の視点(個の願いや 思い)に政治的背景や社会背景が含まれるのであれば,社会システムに位置づく。

      【視点3】規準の第一段階

 クリティカル・シンキングにおける因果関係を決定する規準が用いられているか否か。

用いられているならぱ,どのような資料の提示がみられるのか。

(ア)共変関係

 出来事Aと出来事Bに何か関係性があるようなグラフ,表などの資料の提示が見られ

 るか。

・共変関係がみられない(レベル1)。

・資料等の明示はないが,共変があることを説明により把握できる(レベル2)。

・グラフ・表などの統計資料により相関関係が把握できる(レベル3)。

(イ)時間的順序関係

 出来事Aと出来事Bの順序関係を資料等で確認する過程が見られるか。

・時間的順序関係がみられない(レベル1)。

・出来事A,出来事Bの順序関係が説明により把握できる(レベル2)。

・出来事A,出来事Bの順序関係が資料により把握できる(レベル3)。

      【視点4】規準の第二段階

 設定された仮説に対して一致法(演線的方法),差異法との併用法(帰納的方法)が用いら れているか否か。

(ア)演繹的検証

 因果関係を把握していく中で,一致法のような演繹的に検証する過程がみられるか。

・仮説が設定されておらず,演繹的に検証する方法がみられない(なし)。

・仮説が設定され,演線的に原因を検証する過程がみられる(演繹的方法)。

・原因Xの目星(仮説)をつけ,同じ結果の生じている別の状況でも原因Xが存在してい  るかどうかを調べる過程がみられる(一致法)。