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第3節  授業モデルの成果

 前節では,これまでの研究成果をもとに,クリティカル・シンキングの因果関係決定方 略を用いた授業モデルを提示した。本節では,第皿章で示した分析フレームワークを用い て分析した結果から,クリティカル・シンキングの因果関係決定方略を用いた社会科授業 モデルの成果について述べる。

1.フレームワークによる分析

 ここでは,第皿章で示した分析フレームワークをもとに,授業モデル「日本の地域間の結 び付き」の分析を行った。その際,中核となる問いが設定され,説明的知識を獲得するまで の過程を分析した。分析結果を以下に示す(表1V−5)。

表W−5 開発した授業モデルの分析

No.

筆者 出典

単元名 西沖尚士

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単元の主な目標

【視点1】

問いの 構造

日本の地域間の結び付き 対象   中学校 第2学年

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発行者    ***

形式 編集者 発行年

■本時指導案

■展開例

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・日本は高次の都市機能をもつ世界都市・首都,東京を中心とする国であ る。そのため,東京を中心とする交通網・通信網が整備され,東京を中 心に,関東各地・全国・世界から人・もの・情報が集まるところである。

(説明的知識)

 日本の交通が東京を中心に整備されているのはなぜだろう。

      【中核となる問い】

a−1東京都を訪れた国内旅行者数,外国人観光者数はそれぞれどのくらい   なのか。

a・2東京国際空港には年間とのくらいの乗降客数があるのか。

a・3なぜ,東京を訪れる人が多いのだろう。東京はどんなところだろう?

a−4人々はどのような目的で東京を訪れるのだろう。東京にはどのような   施設が集まっているのだろう。

a・5なぜ,東京にはさまざまな機能が集中しているのだろう。

a・6東京はどのように発展してきたのだろう。

a−7なぜ,東京から多くの情報が発信されるのだろうか。

b・1大阪府ではどこが経済,交通の中心となっているのか。

b・2なぜ,大阪府において大阪市を中心に交通網が整備されているのか b−3大阪市にはどのような施設があるのだろうか。大阪市はどのように発   属してきたのだろう。

b・4なぜ,大阪府において大阪市を中心に交通網が整備されているのか。

c−1鳥取市の交通網はどのように発達しているだろう。

c−2鳥取駅,鳥取ICを中心に交通網が発展している鳥取市の工業や商業の   推移はどのように変化しているのだろう。

c−3鳥取市はどのように発展していったか。

c−4鳥取市の人口はどのように変化しているのか。

c−5県庁所在地である鳥取市の交通網が他と都市と比べて,発達してい  ないのはなぜだろう。

c・6日本の交通が東京を中心に整備されているのはなぜだろう。

      【中核となる問いの再提示】

a−1東京都に訪れた国内旅行客数は約4.6億人(2010年)。外国人観光客数   は約594万人(2010年)。

a・2利用客は6,O00万人を超え,国内線空港では群を抜いている。

a−3***

a・4東京都心部には中央省庁,大企業の本社,商業,大学,文化施設等が   集積している。秋葉原(電気衝)などの特色ある地区が形成されている。

a−5企業活動には,行政の許認可が必要な事項が多く,許認可を得たり,

  最新の情報を得るために都心に立地したほうが良い。また,企業が集   申している地域には商業施設等が立地しやすい。

a・617世紀初めに江戸幕府ができてから関東地方の開発は一層進み,交通   網の基礎が作られた。さらに,明治以降は東京が首都になることによ   り東京への中央集権が強化された。

a・7意思決定機能をもつ東京は国内外を相手に多種多様な情報を送受信す   る地域である。

b−1大阪市は大阪府の府庁所在地であり,古くから大阪における政治・

  経済の中心地である。そのため,現在も多くの機能が大阪市に集中   し交通網も発達している。

b・2大阪市には難波宮,難波京といった古代の首都があった。近世には   豊臣秀吉によって大坂城が築城されたことや,天下の台所として経   済・商業・交通が発達した。

b・3大阪市には府庁といった府の中枢機関や高等裁判所といった国家機関   が設置されている。大阪には難波宮,難波京といった古代の首都があ   った。近世には豊臣秀吉によって大坂城が築城されたことや,天下の   台所として経済・商業・交通が発達した。

b・4大阪市は大阪府の府庁所在地であり,古くから大阪における政治・経   済の中心地である。そのため,現在も多くの機能が大阪市に集中し交   通網も発達している。

c−1鳥取市の鉄道網は,東西はJR山陰本線,南は神戸・大阪方面へ伸   びるJR因美線が通っている。高速道路に関しては,2009年に鳥   取自動車道が大阪・神戸方面,山陽方面に伸びている。

c・2交通網が発展しているのに,工業・商業の事業所数は減少している。

c・3現在の鳥取市は,江戸時代に池田光政が因幡・伯者藩に入部して以降,

  城下町として栄えた。明治になり,廃藩置県により鳥取市は県庁とな   ったが,島根県に合併されるなど都市における地位は高くなかった。

  現在は特例市としての位置づけである。

c・4鳥取自動車道が開通しても人口が減少している。

c・5鳥取市はかってから,城下町として栄えていたため廃藩置県後も県   序となったが,都市としての影響は弱かったため,広範囲における   中枢管理機能をもたず交通網の整備も遅れている。

c 6日本は高次の都市機能をもつ世界都市・首都,東京を中心とする国であ る。そのため,東京を中心とする交通網・通信網が整備され,東京を中 心に,関東各地・全国・世界から人・もの・情報が集まるところである。

       【説明的知識】

仮説設定者 口授業者     ■学習者 仮説の数 □単数      ■複数

口類似 ■対立

【視点2】

□個人の視点 口個人の視点

仮説の 内説 「仮説(個人の思い,行動)」 「仮説(個人の思い,行動)」

容の

関係性 の関 口社会システムの視点 ■社会システムの視点

質係 「仮説(社会背景)」 「東京が首都で,日本の政治・経済・

文化の中心地だから。」

「東京は江戸時代から交通網が発達 し,その名残がある。」

共 □レベル1  ロレベル2   ■レベル3

関 ・交通網を視覚的に確認させたり,商工業事業者数や人口数の推移に関

【視点3】 係 する具体的データを取り入れ,交通網と都市との相関関係を把握する ことができる。

規準の

□レベル1  □レベル2  ■レベル3

第一段階 的

・各事例を扱う際に,歴史年表を用いて時間的順序関係を把握すること

関 ができる。

演 口なし   口演繹的方法   ■一致法 緯

的 ・地域の中心地であり,中枢管理機能を持つため交通網も発展した

【視点4】 他も

のつ 東京と大阪市を扱うことにより,同じ原因と結果を事例とする一 原と 致法が行われている。

規準の 因も

のら □なし   日帰納的方法   ■差異法との併用法 第二段階 排し

除い ・一v法で取り上げた事例とは異なる原因と結果の地域を扱わなげ ればなわない。ここでは,中枢管理機能を持たないため交通網の

記… 発達が遅れている鳥取市を扱う。一致法で扱った地域と鳥取市と を比較していることから,差異法との併用法が用いられている。

この単元は,クリティカル・シンキングの因果関係決定方略を組み込んだ,

「日本の地域間の結び付き」についての学習をしている。

各視点ともに規準が満たされており,因果関係が認められた状態である。さ らに,東京と大阪市の事例から,広域に影響する中枢管理機能をもつ都市は交 考察 通網が発達する,という知識を獲得てから鳥取市の事例を扱うことにより,広

域にわたり中枢管理機能をもたない都市には交通網は発達しないことを学習 する。この一致法と差異法の併用を用いていることから,地域の中心地である ならば交通網が広がるということが排除される。

この授業モデルは,社会事象における因果関係の把握に有効である。

(筆者作成)

2.フレームワーク分析結果の考察

 上記のように,開発した授業モデルを分析した。授業設計の各視点から授業モデルにつ いて考察する。

①探究のサイクルの中で主となる問いを設定し,下位の問いによって習得した記述レベル  の知識を説明するレベルに高め,授業者が再び主となる問いを提示すること。

①においては,中核となる間い「日本の交通が東京を中心に整備されているのはなぜだろ う」・を設定し,rなぜ,東京にはさまざまな機能が集中しているのだろう」やrなぜ,東京 から多くの情報が発信されるのだろうか」といった下位の問いを設定している。また,下 位の問いをさらに細分化することにより,問いを構造化し中核の問いに対する答えを導

きやすくしている。そして,まとめとして中核となる問いを再提示することにより,説 明的知識の獲得に導いている。

②仮説の設定段階においては,主となる問いに対し学習者から複数の仮説を設定させる。

 その際,仮説が対立になるよ一うな工夫が必要であること。

②においては,「中心地である東京に中心地機能があることが影響しているのでは」に加 え,「世界の中心都市の一つである東京だからでは」といった,複数の問いを投げ掛けて いる。前者は,日本というスケールに対し,後者は世界というスケールを対象としてい る。そのため,中心地機能が限定されるのか,それとも広域にわたって影響するのかを

とらえやすくし,対立の仮説を設定することができる。

③因果関係を明らかにするとき,原因と結果の相関関係,時間的順序関係の双方を把握す  ることが可能である資料の提示が必要であること。

③においては,共変関係では具体的に数値化されているデータ,時間的順序関係では年 表を用いることによって,いつ何が起きたのかを把握させることのできる資料の提示を 行っている。共変関係については,交通網が視覚的に把握できる資料や商工業事業者数,

人口数の推移のデータを提示している。時間的順序関係については,東京,大阪市,鳥