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第2節 社会参加とアンラーニングを開発原理とした社会科授業と学習評価

5 小 括

本節では、正統的周辺参加に依拠した社会科教育論について考察してきた。正統的周辺参加によれ ば、学習とは共同体への参加である。その共同体は政治的市民社会と考える。すると、政治的市民社 会に十全的な参加を目指していくことが学習となる。しかし、その反面参加の程度は、慣れや思考の 固定化を促す。そのため、新たに学び直す必要があると考える。すなわち、アンラーニングとしての 周辺的な参加の回復である。周辺的な参加を回復すれば、他の共同体を横断的に往還する契機を得る ことができる。さらに、その共同体にとどまることなく横断的に越境することも可能性として考えら れることを示したのである。それらを踏まえて、社会参加とアンラーニングという2つの学習を達成 する基本的開発方法についても示している。

最後に周辺的な参加を回復したり、越境したりする市民の育成から考える社会科授業のあり方につ いて確認したい。その意義は、1つの共同体に意味や価値を有する知識や技能に左右されない自由な 市民の育成である。異なる共同体を越境することは、一般化された知識や技能でさえも特権化されず 1つの思考のリソースとなっていく。そのため、市民として振舞うためには、従来のリソースとして の知識や技能、さらにはその状況にこそ対応する新たなリソースを形成し、再組織化していくことが 求められる。その再組織化を不断に行っていくことも1つの「探究」としての姿であると考えている。

【註及び引用・参考文】

1)正統的周辺参加について、次を参照した。

レイヴ、J.、ウェンガー、E.、2005、『状況に埋め込まれた学習-正統的周辺参加-』(訳:佐伯 胖)産業図書。

2)次を参照されたい。

佐長健司、2017、「サイボーグ化する学習者のハイブリッド学力を求めて-拡張した心の理論から

-」佐賀大学大学大学院学校教育学研究科編『佐賀大学大学院教育学研究科紀要』第1巻、pp.27

-40。

3)社会科教育における正統的周辺参加の論考は、例えば、次である。

佐長健司、2012、「社会科授業における問いの状況論的検討-正統的周辺参加としての学びを求め て-」日本社会科教育学会編『社会科教育研究』第 115 号、pp.79-89。

4)前掲1)、p.17。

32 5)同。

6)アンラーニングは、佐伯胖らが一連の文献で論じている。次を参照されたい。

佐伯胖、苅宿俊文、高木光太郎編、2012、『1 まなびを学ぶ』東京大学出版。

7)科学主義としての社会科教育論については、次を参照されたい。

森分孝治、2005、『社会科授業構成論の理論と方法』明治図書。

8)批判主義としての社会科教育論については、次を参照されたい。

池野範男、1999、「批判主義の社会科」全国社会科教育学会編『社会科研究』第 50 号、pp.61-70。

9)社会参加としての社会科教育論については、次を参照されたい。

唐木清志、2008、『子どもの社会参加と社会科教育-日本型サービス・ラーニングの構想』東洋館 出版。

10)森分孝治、2001、「市民的資質育成における社会科教育-合理的意思決定-」社会系教科教育学会 編『社会系教科教育学研究』第 13 号、p.46。

11)同書、p.47。

12)同書、pp.47-48。

13)佐長健司、2009、「社会科教育内容の状況論的検討-概念的知識のディコンストラクション-」全 国社会科教育学会編『社会科研究』第 71 号、pp.1-10。

14)池野範男、2006、「市民社会科歴史教育の授業構成」全国社会科教育学会編『社会科研究』第 64 号、pp.51-60。

15)同書、p.54。

16)同書、p.58。

17)学校のカプセル化問題については、次を参照されたい。

山住勝弘、2004、『活動理論と教育実践の創造-拡張的学習へ-』関西大学出版部。

山住勝広、2017、『拡張する学校-協働学習の活動理論-』東京大学出版会。

18)唐木清志、前掲9)、p.80 を基に作成。

19)同書、pp.62-71 を基に作成。

20)松浦雄典、2013、「社会科における批判的参加学習としての授業構成-小学校第4学年『安全なく らしを守る人たち』を例に-」全国社会科教育学会編『社会科研究』第 79 号、p.39。

21)前掲1)、p.7。

22)同。

23)同書、p.8。

24)同書、p.10。

25)同書、p.12。

26)同書、p.96。

27)ゴールフリー評価論は、次を参照されたい。

根津朋実、2006、『カリキュラム評価の方法-ゴール・フリー評価論の応用-』多賀出版。

33 28)タイラーについては次を参照して欲しい。

R.W.Tyler,1969, Basic Principles of Curriculum and Instruction, Univ of Chicago 29)ブルームについては次を参照して欲しい。

ブルーム、J.、S.他、1973、『教育評価法ハンドブック―教科学習の形成的評価と総括的評価-』

(梶田叡一他:訳)第一法規出版。

30)樺島郁男、1988、『政治参加』東京大学出版会、p.5。

31)アレント、H.、2010、『人間の条件』(志水速雄・訳)ちくま書房、p.47。

32)真正の評価論については、次の論考を参照している。

Wiggins,G.,1998,Educative Assessment:Designing Assessments to Inform and Improve Performance,Jossey-Bass.

Wiggins,G. & McTighe,J.,1998,Understanding by Design.Association for Supervision and Curriculum Development.

33)パフォーマンス評価については、次を参照されたい。

ギップス、C.、V.、2001、『新しい評価を求めて-テスト教育の終焉-』(鈴木秀幸訳)論創社。

松下佳代、2009、『パフォーマンス評価-子どもの思考と表現を評価する-』日本標準ブックレッ ト No.7。

ハート、D.、2012、『パフォーマンス評価入門-「真正の評価」論からの提案-』(田中耕治:訳)

ミネルヴァ書房。

34)石井英真、2003、「米国における教育評価の研究の動向-『真正の評価』論の展開を中心に‐」田 中耕治編『教育評価の未来を拓く-目標に準拠した評価の現状・課題・展望-』ミネルヴァ書房、

p.205。

35)前掲1)、p.11。

36)同。

37)佐長健司、2016、「社会変革へ向かう学習を求めて-正統的周辺参加における拡張による学習-」

佐賀大学大学院学校教育学研究科編『佐賀大学大学院教育学研究科紀要』第1巻第1号、pp.117-

131。

38)教師以外の第三者による評価については、根津朋実、前掲 25)より示唆を得ている。

39)ナラティヴ・アプローチについては、次を参照した。

佐長健司(研究代表者),2012,『ナラティヴ・アプローチによる附属学校の学びのヒストリーに 関する調査研究』平成 23 年度日本教育大学協会研究助成研究成果報告書。

佐長健司(研究代表者),2013,『附属学校卒業生等の学びのヒストリーの調査研究』平成 24 年度 文部科学省特別経費プロジェクト支援事業報告書。

40)構成主義的なナラティヴ・アプローチは、実証主義的な量的研究とは大きく異なる。それは、語 り手と聞き手が相互に構成し合った物語を作り出すことに大きな価値を見いだすのである。構成さ れた物語は語り手、聞き手のどちらにも還元できない。いわば両者の創発(emergence)により生ま

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れるものである。したがって、作り出されたナラティヴの中に、何が構成されたのかを解釈するこ とで新たな知見を得ることができるのである。

①構成主義に関わる文献は以下を参照した。

バーガー、P.、L.、ルックマン、T.、1977、『現実の社会的構成-知識社会学論考-』(山口 節郎:訳)新曜社。

バー、V.、1997、『社会的構築主義への招待-言説分析とは何か-』(田中一彦:訳)川島書店。

ガーゲン、K.J.、2004、『あなたへの社会構成主義』(東村知子:訳)ナカニシヤ出版。

平英美、中河伸俊、2006、『新版 構築主義の社会学-実在論争を超えて-』世界思想社。

ハッキング、I.、2006、『何が社会的に構成されるのか』(出口康夫、久米暁:訳)岩波書店。

②ナラティヴ・アプローチの手法に関して参考にした文献は以下である。

桜井厚、小林多寿子編、2005、『ライフストーリー・インタビュー-質的研究入門-』せりか書 房。

秋田喜代美、藤江康彦編、2007、『はじめての質的研究法』東京図書。

谷富夫編、2008、『新版ライフストーリーを学ぶ人のために』世界思想社。

桜井厚、2011、『インタビューの社会学-ライフストーリーの聞き方-』せりか書房。

③構成主義的なナラティヴ・アプローチを援用した社会科教育に関する文献は以下である。

竹澤伸一、2010、「子どものライフストーリーを創造する社会科教育-こどもエコクラブ卒業生 の足跡調査を考察して-」日本社会科教育学会編『社会科教育研究』第 111 号、pp.13-25。

村井大介、2014、「ライフストーリーの中で教師は如何に語るか-教師の授業観からみた社会科 教育研究の課題」日本社会科教育学会編『社会科教育研究』第 121 号、pp.14-27。

村井大介、2014、「地理歴史科教師の歴史教育観の特徴とその形成要因 -教師のライフストー リーの聴き取りを通して-」全国社会科教育学会編『社会科研究』第 81 号、pp.27-38。

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