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第 3章   研究 1:応 用行動分析に基づ く研修プログラム の開発及 びその効果

第 2節   研究 1‑2:応 用行動分析に基づ く研修プログラムの改善及びその効果 I

―参加者に対する質問紙調査による検討 ―注

2

2‑1.   序

研 究 1‐

1で

は、主任保育士 を対象 に、

ABC観

察記録 を含む応用行動分析 に基づ く研修 プ ログラムを実施 し、参加者 の支援行動の研修 内の変化及び保育所 内への移行 を確認 した。

参加者 の支援行動 の改善については、適切 な行動 に対す る言語称賛等 の対応(適切 な行動 に 対す る正 の強化)については十分な効果が得 られたが、(1)困つた行動 に対す る注 目の除去 と い う対応(不適切 な行動 に対す る消去)については小 さな効果であつた。そのため、研修 プ ロ グラムの改善 として、消去及び分化強化 の講義内容 の追加 が指摘 され た。 また、(2)研修受 講後 の

ABC観

察記録 の中で、

Cの

欄 の記述 が極端 に長 い参加者 が見 られたが、これ は複数 の

ABCが

連 な る場面 を記述す る表記方法 を研修 プ ログラムの中で提示 していなかった こと が原 因である と考 え られ た。 この点 についてのプ ログラムの改善 を行 うことも、今後 の展 望 と して指摘 され た。 これ ら(1)、 (2)に加 えて、(3)標的行動 の記録、(4)グルー プ ワー クの形 式 について も改善の必要があるこ とが指摘 された。

本研 究では、研 究 1‐1と は別 の指導的立場 の保育士 に対 して

ABC観

察記録 を含 む応用行 動分析 の研修 プ ログラムを実施 し、研 究 1‐1と 同様 、参加者 の研修 内の支援 の立案 スキル の 変化及 び保 育所 内へ の効果 を検討 した。本研 究では、参加者 の支援 の立案 スキル及び対象 園児 の支援 については、特 に、研 究1‐1で研修 内の支援 の立案 スキル の変化 か ら保 育所 内ヘ の対象 園児へ の支援 に移行 が見 られた、園児 の行動 の後 の対応(後続事象)に焦点 を当てて、

分析 を行 つた。 また、研修 プ ログラムによる新たな支援行動の獲得 を検討す るために、平

注2)この研 究は以下の学術学会大会 において発表 され てい る。

田中善大・ 三 田村仰・野 田航・馬場 ちはる0嶋崎恒雄 。松見淳子 (2010).行動 的支援 の研修 プ ロ グラムが主任保 育士の支援行動 に及 ぼす効果 の検討 .日 本行動分析学会第

28回

年 次大 会発表論文集,70.

均 回答数 ではな く、回答 を行 った参加者数 に注 目した分析 を行い、研究 1‐1の追試 を行 つた。

本研 究では研修 1‐1と 同様 に

ABC観

察記録 を含 む応用行動分析 の研修 プ ログラムを実施 したが、(1)消去及び分化強化 の講義 内容、

(2)ABC観

察記録 の表記方法、(3)標的行動 の記 録 、(4)グルー プ ワー クの形式の

4点

について改善 を行 つた。(1)消去及び分化強化 の講義 内 容 については支援行動 の分析 によって、

(2)ABC観

察記録 の表記方法 につ いては参加者 が行 つた

ABC観

察記録 の分析 に よって、(3)標的行動 の記録 については記録 の実施状況 の分析 に よつて、それぞれ改善点の効果 を検討 した。

2‑2。 方 法

2‑2‑1。 参加者及び対象園児

研修 プ ログラムには、神戸市の保育所 に所属す る 17名 の保育士が参加 した。質問紙 を実 施 した最終セ ッシ ョンに欠席 した

3名

を除 く、14名(主任保育± 13名、担任保育± 1名)

を本研 究の参加者 として分析 を行 つた。公立保育所所属が6名で、私立保育園所属が6名、 認 可外保 育園所属が 2名 で あった。参加者 は全て女性 であ り、平均年齢 は39。1歳(範囲:24 歳

‑55歳

)であった。主任歴への回答が未記入 であった 1名 を除 く12名の主任保 育士の平 均主任歴 は 1.5年(範

:0年 ‑5年

)であつた。参加要件 は、研究 1と 同様 の ものであった。

各参加者 が事例 と して取 り上げた園児(以下、対象園児 と呼ぶ)16名 の平均年齢 は4。1歳(範

:3歳 ‑5歳

)で、全 て男児 であった。なお、2名の参力日者 については、研修 の途 中で対象 園児 を変更 したため、2名の園児 を対象 としていた。変更理 由は、2名 とも対象園児 が落 ち 着いて きたた めで あった。9名の園児が、障害児保育の認定を受 けていた。

2‑2‑2.講

師及び ファシ リテー ター 、研修 プログラム

講師、ファシ リテー ターは、研究 1‐1と 同様 であった。また、プ ログラムの構成 について も研 究 1‐1と 同様 の ものであった。なお、第 1セ ッシ ョンは

200X年

8月 22日 、第

4セ

ッ シ ョンは翌年 の1月 16日 に行 った。

プ ログラムの内容 については、消去・分化強化、

ABC観

察記録 、標 的行動 の記録 、 グル 74

先行事象 ω 行動(B) 後続 事象(C)

T先

生 :他 の園児 と遊 んで い る。

後 ろか ら

T先

生 に向つてお もちやを投 げ

楽 しそ うな表情 で逃 げ る。

T先

生 :Aく ん の方 に振 り向 く。

T先

生 :追いか けて

Aく

ん を捕 ま え、投 げた理 由 を聞 いた り、

投 げてはい けない と注意す る。

Figure 3‑2‑1.複数の相互作用 を記録 したABC観察記録の記述例.

― プ ワー クの形式 について変更があつた以外 は、研究 1‐1と 同様 の ものであった。消去・分 化 強化 については、第 3セ ッシ ョンにおいてイ ラス ト(Whitham,1991/2002)を 用いた講義 を追加 した。講義 で用いたイ ラス トは、買い物の場面で母親 が子 どもの行動 問題(商品棚 に 登 る)に対 して消去 を実施 してい るものであった。

ABC観

察記録 については、グループ ワー クにおいて、複数 の相互作用 を記録す る方法 について解説 を行 った。複数 の相互作用 を記 録す る方法 は、矢印 を用いて、改行 を行 うとい うものであった(Figure 3‐2‐ 1)。 標 的行動 の 記録 については、行動 の記録 シー トを研 究1‐1よ りもよ り簡便 な もの とし、講義 の中で説 明 を行 つた。新 しく用いた行動 の記録 シー ト(Figure 3‐2‐2)は、標的行動 の回数 を記録す る欄 を削除 し、生起 の有無 を記録す る欄 のみ と した。 また、生起 の有無 は、参加者 の直接観察 だ けでな く、担任保 育士等 の他 の保 育士へ の間き取 りも可能 であることを伝 えた。 また、

2セ

ッシ ョンの最後 に、標 的行動 の記録 のグラフ化 について講義 を行 つた。Figure 3‐2‐3 は、グラフ化 のために配布 したグラフ用紙 である。1週間の内、標 的行動(行動 問題)が生起 しなか った 日にシール貼 る とい う方法 を伝 えた。 これ は、行動 問題 の非生起 とい う子 ども の望 ま しい状態 に注 目を向けることを意図 した ものであった。

行動の記録シート (2008年 8月 23日8月 29日) 先 生 の お 名 前

対 象 園 児 の気 に な る行 動 また は 困 って い る行 動 (ABC分析 シー ト1.参)の記 録 をお 願 い します 。 行mこ った 日 に「 ノJ、

起 こ ら な か った 日 に「OJをつ け て くだ さい。 記 録 は 、 直接 観 察 して い た だ い て も、他 の 先 生 (夕l任 の 先 生)からの 聞 き取 りで も どち ら で もか まい ませ ん。

気になる行動庁たは日ってllろ行動:

 先 週 は 何 日起 こ りま した か? (       /      )

8月

(土) 24日 (日) 25日 (月) 26日 (火) (水) 28 (ジオく) 29日 (4】)

テ動

生 起 (ノ)

Figure 3‑2‑2.研究 1‑2で用 いた標 的行動の記録のための記録用紙(行動の記録 シー ト).

3/25‑8/31     /    /     /     /     /     /     /     /     /     /

Figure 3‑2‑3.グ ラフ化のための用紙(グラフ用紙).

76

グル ープ ワー クの形式 については、第1セッシ ョンか ら、 グルー プ ワー クの際 グループ毎 に講師 あるいはファシ リテー ターが進行役 として入 つた研 究 1‐

1で

は第

2セ

ッシ ョンか ら で あった)。 また、研 究 1‐1の第2セ ッシ ョンで実施 した仕事場面の ビデオ演習 は、研究1‐2 では実施 しなかつた。巡回相談の形式 は、研究 1‐1と 同様 の ものであ り、希望のあった 10 園 に対 して実施 した。

2‑2‑3口 質問紙

支援 の立 案スキル

 

プ ログラム参加前後の参加者 自身 の支援 の立案 スキル の変化 を測定す るた めに、第 1セ ッシ ョン(プ)と第4セッシ ョン(ポス ト)で、研修 のために作成 した事例(共

通事例)に対す る支援方法 について記述 による回答 を求 めた。

2種

類 の事例 が あ り、内容 に ついては、第

1研

究 と同様 の ものを用いた。第

1研

究 と同様 に、行動 問題 の原 因について 回答 を求 めた ところ、プ レ、ポス ト共 に全 ての参加者 において、注 目の獲得 に関す る記述 が見 られ た。第

1研

究 と同様 に、参加者 は、プ レとポス トで、異なる事例(事A、 事例 B) へ 回答 を行 った。 プ レでは、

8名

の参力日者 が事例

Aに

ついて、

6名

の参加者 が事例

Bに

つ いて回答 を行 つた。

園 での支援

 

園 での対象園児 に対す る支援方法の変化 を測 定す るために、対象 園児 に対 し て実際 に行 った支援方法について、第

1セ

ッシ ョンの実施前(プ)と

4セ

ッシ ョン(ポス ト)で、記述 に よる回答 を求 めた。 プ レの質問紙 は、第 1セッシ ョンの

3週

間前 に質問紙 を 参加者 に郵送 し、第

1セ

ッシ ョンで回収 を行 った。 プ レでは、対象園児 の気 になる行動 ま たは困 つた行動 に対す る参加者及 び他 の保育士の支援 について、ポス トでは、研修 で取 り 上 げた行動 に対 して新 たに行 つた参加者及び他 の保育士の支援 について回答 を求 めた。

2‑2‑4.結

果の分析

支援 内容の分類

 

共通事例へ の支援案及び対象園児へ の支援方法 の記述 について分類 を行 った。適切行動 に対す る正の強化 に関す る

2つ

のカテ ゴ リー と、不適切行動 に対す る消去 に関す る

1つ

のカテ ゴ リーの計

3つ

のカテ ゴ リーについての記述が、各参加者 の記述の中 に含 まれ てい るか否か を分類者 1(著者)が分類 した。正 の強化 に関す る

2つ

のカテ ゴ リーは、

able 3‑2‑1

適切行動に対する正の強化及び不適切行動に対する消去に関する支援内容の分類カテゴリーと定義

カテゴリー 定 義

適切行動への言語称賛

適切な行動に対して、ほめる、認めるなどの言語称賛を用いた 強化に関する支援(例、できたことをほめる/できたことを 保育士、園児に伝えるなど)

適切行動に対する 正の強化

適切行動への言語称賛以外の強化 適切な行動に対して、物(シールなど)を与える、特権を与える、

スキンシップを行うなど言語称賛以外の強化に関する支援

不適切 行 動へ の注 目の除去

適切行動へ の言語称賛、適切行動へ の言語称賛以外 の強化 であつた。消去 に関す るカテ ゴ リー は、不適切行動への注 目の除去であった。各カテ ゴ リーの定義 は、Table 3‐2‐1に示 し た。 また、分類 の信頼性 を算 出す るために、分類者

2が

全 ての記述 を対象 に同様 の分類 を 行 った。 なお、言語称賛及び言語称賛以外 の強化 の分類結果 に基づいて、適切行動 に対す る強化全体 の回答者数 を算 出 した。具体的 には、言語称賛、言語称賛以外 の強化 のいずれ かまたは、両方 を回答 した参加者 の数 を算出 した。

記録 の実施状況

 

本研 修 プ ログラムにおいて改善 を行 つた行動 の記録 シー ト及 び標 的行動 の記録 の講義 内容 の効果 を検討す るために、標的行動の記録の実施率及び

ABC観

察記録 の 実施率 について算 出 した。

ABC観

察記録

 

本研修 プ ログラムにおいて新 たに導入 した複数 の相互作用 の記録 の使 用 を 確認 す るために、第

4セ

ッシ ョン時 に収集 した

ABC観

察記録 について分析 を行 った。本 プ ログラムで提案 された複数 の相互作用の記録方法は、後続事象(C)の記述 に続 いて、矢印 を 用 いて先行事象ω または行動(B)の記述 が連 なる とい うものであった。各参加者 の記録 につ いて、 この記録方法の有無 を確認 した。

2‑3.結

2‑3‑1.研

修で取 り上げた行動

Table 3‐2‐

2に

参力日者が取 り上げた行動 とその分類結果を示 した。Table 3‐2‐

2か

ら、様々 な行動が研修プログラムの中で取 り上げられていることがわかる。その中でも、暴力(4名)、

不適切行動に

対する消去 不適切な行動に対して、無視する、注 目しない、さらつと流すなど

の消去(注目の除去)に関する支援

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