3. LP ガス市場の現状
4.2 石炭取引状況及び商品先物取引所への上場に関する国内ヒアリング
ヒアリングを実施した各企業の属する業種・分野ごとに、その内容を整理し、まとめる。
(1)電力企業
・石炭取引について:
-豪州、インドネシア、ロシア、カナダ、米国などからの輸入。豪州からが多い。
-豪州内でも分散化を図りリスク軽減をしている。
-石炭火力発電所の増設計画もあり、今後の購入量は増える。
-石炭火力発電所は現在ほぼ 100%稼動。原子力発電所の今後の稼働状況で変わる 可能性あり。
-子会社による一括調達
-石炭輸入実務は、商社や子会社が代行 ・石炭の値決めについて:
-2本立てで契約。山元との長期契約と市況連動型(インデックス・リンク)契 約。山元との長期契約は、数量を決定し、価格については、四半期毎にその後の1 年分の固定価格を決めている。市況連動型(インデックスリンク型)は、グロー バルコール社が毎日発表している石炭価格指標による現物先物のスクリーントレ ードで決めている。
-グローバルコールのスクリーントレードやプラッツの石炭価格インデックスを使 って値決めしている。
-相対で山元とグローバルコールの価格インデックスを参考に条件を決めて、その 時々で値決めしている。
-契約は、複数年契約や 1 年契約が主で、スポット契約は少ない。長契でベースを 押えて他の方式を加えている。
・石炭の先物取引について:
-グローバルコール・インデックスによる現物先物取引を行っている。
-子会社を使って、現物の先物ヘッジングをしている。
-スワップの海外取引をグローバルコール・インデックスのスワップを使用してやっ ている。
-先物は相手方が見えるOTCでやっている。
・東京での石炭先物市場について:
-商品設計がどうなるか。取引通貨は、US ドル建てか円建てか。取引価格は FOB ベースかCIF (CFR)着ベースか。石炭の基準品位はどう設定されるのか
-石炭はFOB契約が主流で、CIFベース、着ベースの価格といのは一般的ではない。
価格設定をCIF ベースとした時に、市場の中でどう分けるのか、我々が使い易い ものになるのかも課題。
78
-石炭の品位設定については、豪州ニューキャッスル積みの標準品位でFOBを決め ているグローバルコールの基準が参考になる。
-石炭の銘柄を見て、消費できるか判断して買っている。大括りで豪州炭といっても、
いろいろな品位の条件付けて確認をしないと買えないということもある。
-石炭は、各発電所(ボイラー等)によって相性があり、基準品位の設定について は、多くのユーザーにヒアリングして、分類分けが必要かもしれない。
-価格ヘッジングのためのヘッジツールとして使うことはある。現物の変動とマッ チしなければならないので、現実の動きと違うと使えない。
-日本には石炭サプライヤーがいなく、ユーザーも電力会社などに限られており、活 発な取引があるのかなどボラティリティの関係からも、信頼性の点からも、既にあ るグローバルコールやアーガスの機能に勝る魅力あるものにならばければ、わざわ ざフィーを払って参加はしないだろう。
-日本のバイヤーというより、それ以外の国のバイヤーがどこまで日本の市場を使 ってくれるかというところがキーになる。
-自社で消費する石炭購入が基本で、現物取引が大前提。石炭在庫を適切に管理して おり、石炭が余ったから、また足りないからといって、市場で石炭を売買すること は有り得ない。
-現物先物ヘッジ取引なら参加する可能性はある。現物が伴わないペーパー取引なら 参加しないだろう。
(2)セメント企業
・石炭取引について:
-ロシアからの輸入が多い。工場の港の規模の関係と距離が近いことで、船賃が安 く、CIF価格で競争力がある。しかし、物流面で、鉄道・港湾システムが洗練さ れておらず、計画的調達に不安が残る。
-豪州炭も輸入しているが、インドネシア炭は揮発分が高いので使用しない。
-セメント業界の特徴として、高級炭である必要はなく、他業界で敬遠されるアッシ ュ分や窒素分が高い石炭や低カロリー炭でも使用する。
・石炭の値決めについて:
-ロシアとの契約は、約8割が年間数量を確定して契約。値決めは銘柄毎にずらし て行い、年間契約や半年毎の契約もあり、分散させている。今後、スポット調達 の拡大を検討。
-豪州炭は、山元と、電力会社の決定価格やグローバルコールの価格インデックス を参照して決めている。
-輸入業務は商社が代行している。
・東京での石炭先物市場について: -
-豪州炭の現物先物取引だと、ロシア炭が中心なので、利用しいだろう。セメン ト兼業メーカーは豪州炭、インドネシア炭が多いので参加の可能性はある。
79
-豪州炭のデリバティブで、差金決済はあり得るかもしれないが、ヘッジはシッパ ーがやっているので、実質的に参加しないだろう。
-商品設計はどうなるか。石炭の基準品位をどうするかが難しい。
-電力会社は微量元素が規制されているので、石炭品位を気にする。もし、電力会 社の要求に従って基準品位、取引基準が設定されれば、セメント業界としては、
その石炭を使うことはないだろう。― 取引に参加することはない。(それは一級 品の高価な石炭であるから。)
-グローバルコールのスペック基準が参考になるが、その基準で現物取引されてい る豪州ニューキャッスル積みの石炭量は年間1000万トンくらいで、非常に少ない。
豪州ニューキャッスル積みの全石炭輸出量は年間1億6000万トンくらいある。
-先物市場の取引では相手が分からない。日本では、品質問題やクレーム対応など でサプライヤーが誰なのか相手を知っていたいという思いがある。
-基準価格は、円建てではなく、ドル建てであること。積出港FOB価格なのか、着 港渡しCIF価格なのか。
(3)商社
・石炭取引について:
-日本向けの輸入と一部海外取引(三国間取引)もやっている。豪州の石炭開発にも 出資し、出資相当分を輸入。
-主に電力会社へ納入、他に一部セメント会社や製紙会社へ納入。
-輸入先は、豪州、インドネシア、カナダ、米国、ロシア。
-電力会社向けの一般炭は、熱量、灰分、硫黄分を重視。
-今後の見通しは、原子力発電所の再稼動次第だが、石炭は、地勢的に安定してお り、安価なエネルギーであり、大きく減る可能性は少ない。
・石炭の値決めについて:
-基本的に需要家(電力会社)とサプライヤー(山元)が相対で四半期毎に、グロ ーバルコール社が発表する価格インデックス(FOBニューキャッスル)を参考に 直接契約する。かつては年間契約として1年間の価格を固定価格で決めるケース が殆どであったが、最近は、グローバルコール社の価格インデックスにリンクし て、配船時に価格が確定するインデックス・リンク型契約が増えてきている。
・石炭の先物取引について:
-インデックス・リンクの場合は、配船時までに価格が確定しない為、需要家は市 況動向をみながら先物ヘッジを行って価格固定をするニーズが生じる場合もある。
需要家が直接先物ヘッジを行うことは不可能ではないが、ヘッジ会計導入の煩雑 さを理由に商社が売買契約に介在して先物ヘッジを行う場合もある。
・東京での石炭先物市場について:
-一般炭の先物市場が新たに開設された場合、使い勝手がよいかどうかは流動性
80
があるかどうかにかかっている。買い手として投機家や機関投資家を引き込み、
取引量が増え、ボラティリティが高まってくると一般投資家も入ってくるという 好循環になる。
-既存の石炭先物市場として、シンガポールのSGXがあり、API 4(FOB南ア・
リチャーズ・ベイ)とAPI 8(CFR中国着)を上場しているが、流動性は余 り高くない。東京に石炭先物市場が開設し上場された場合、シンガポールと時 差がほとんどない為、差別化するのが難しいのではないか。
-既に海外でやっており、日本でなければできないという訳ではない。従い、東京 市場にメリットがあるような政策支援なども必要か。
-商品設計・制度設計をちゃんと考えないといけない。
・どのインデックスを使うのか。グローバルコールにするのか。
・価格はFOBなのか、着ベースCIFとするのか。
・現物のデリバリーを伴うのか、差金のペーパー取引だけなのか。
・プレーヤーを誰にするのか。業者間だけを対象とすれば、プレーヤーは電力会 社、商社、トレーダーであり、みんな分かっている相手なので、敢えて取引所 を使う必要はない。
・取引サイズ(ボリューム)をどうするか
・どのスペックにするのか。基準品位を決め、その差はカロリーの計算式があるの でカロリー調整をすればよい。
(4)石炭取扱業社・石炭商社 ・石炭取引について:
-開発出資鉱山から輸入し、電力会社向けに販売。
-電力会社の輸入代行業務のほか、自社開発出資分の輸入販売も。
-石炭の今後については、原子力発電が再稼動しても変わらない。原子力発電がフル 稼働していたときも、石炭火力発電はベースロードとしてフル稼働で動いていた。
新しい石炭火力発電所の建設計画もある。
・石炭の値決めについて:
-電力会社が豪州の山元と値決めする4月リファランス(価格)が決まってから出資 している山元と交渉し、4月リファランスより安く購入。
-開発出資している山元と石炭価格インデックスを参考に値決め。
・東京での石炭先物市場について:
-独 自 に ス ポ ッ ト で の 石 炭 手 当 て 等 は や っ て お ら ず 、マ ー ケ ッ ト で 買 っ て 、 マ ー ケ ッ ト で 売 る と い う こ と は な い 。
-東京先物市場で、石炭が安定的に安価で調達できるのであれば使いたい。
-東京先物市場の開設上場より、電力システム改革が最終的にどういう形で落ち 着くのか。その方が先であると思う。