既に述べたように,使用済燃料の直接処分に関する研究開発は,上述したHLW・TRU廃棄物の地 層処分の事業段階の節目等にも整合するように3つのフェーズを定義して取り組まれてきた先行する4 つの研究開発分野と,その研究開発の位置付けや目標設定が異なる。そのため,本全体計画におけ る平成25年度から平成29年度を対象とした使用済燃料の直接処分に関する研究開発計画の展開 では,6.3 節に詳述する技術的取りまとめに向けた5ヵ年のマイルストーン(第1次取りまとめ:実現可能 性の提示,第2次取りまとめ:技術的信頼性に関する見通しの提示[レビュー版/最終版])を踏まえ,
研究開発計画を具体化する。
(1) 研究開発の実施方針
研究開発は,5ヵ年のマイルストーンを踏まえて段階的に実施することを前提に,使用済燃料の直 接処分に特徴的な現象に着目して必要となる研究開発の細目と課題の設定を行う。計画の策定及び 研究実施における基本方針は以下のとおりである。
○研究開発の効率化・合理化の観点から,並行して実施されるガラス固化体やTRU廃棄物を対象 とした地層処分に関する研究開発を積極的に取り入れ,使用済燃料の直接処分に特有な課題 に重点をおいた研究開発を行う。
○研究開発は,後述の技術的取りまとめを経てエネルギー政策及び原子力政策の検討に資するこ とを意図するが(例えば,核燃料サイクルのシナリオ選択に柔軟性を与える),発電用原子炉だけ でなく,発電用原子炉以外(例えば,試験研究炉など)の使用済燃料も対象とするとともに,東京 電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置に伴う燃料デブリや破損燃料等の処理・処分の対 策検討などへの成果反映も念頭に進める。
○研究開発の実施(及び技術的取りまとめ)では,HLW及びTRU廃棄物を対象とした地層処分に 関する研究開発成果と同様に,研究開発成果の網羅性や追跡性,信頼性の確保を意識して取 り組む。
○直接処分に特徴的な現象に着目して必要となる研究開発を展開するとともに,使用済燃料等の 特性(被覆管の腐食,核種インベントリ・発熱量の変化)に大きな影響を及ぼす可能性のある中間 貯蔵の方法や期間との関係にも留意する。
また,研究開発課題の展開では,ガラス固化体やTRU廃棄物の処分研究において共通課題とし て取り組まれている地質環境調査評価技術分野での研究開発成果を活用することとし,本研究 開発では,直接処分に係る廃棄体データベース開発,処分場の工学技術及び性能評価技術を 中心に取り組む。
○5ヵ年のマイルストーンにおける各節目(技術的取りまとめ)において,その段階での研究開発の進 捗や成果,レビューなどを踏まえ,その後の研究開発計画を柔軟に見直す。
(2) 研究開発内容
既に述べたように,使用済燃料の直接処分についての実現可能性を第1次取りまとめとして提示す
るために,当初の具体的な研究開発は,平成16年11月に原子力委員会新計画策定会議技術検討
小委員会が取りまとめた「基本シナリオの核燃料サイクルコスト比較に関する報告書」(以下,「コスト比 較報告書」)における技術検討結果を出発点とする。特に,技術的成立性における不確定要素として 残された課題等を対象に研究開発を行い,使用済燃料の直接処分の実現可能性を示す。コスト比較 報告書で抽出・整理された直接処分に関する安全評価上の課題と設計・施工上の課題は次のとおり であり(図6.2-1にガラス固化体と使用済燃料の特徴を示す),これらの課題への対処が当初の研究 開発課題となる。
A.安全評価上の課題(7項目)
①評価上考慮するシナリオ
②臨界回避・評価
③核種の瞬時溶出挙動と評価
④UO
2マトリクス溶解挙動とそれに伴う核種溶出挙動及びそれらの影響
⑤放射線分解や酸化還元フロント進展の挙動と影響
⑥廃棄体が大きくなることによる掘削影響領域の拡大等の挙動と影響
⑦核種挙動や移行特性 B.設計・施工上の課題(9項目)
①ガラス固化体に比べ,寸法,重量ともに大きくなることに対する処分坑道,処分孔,人工バリア 仕様等の検討
②ガラス固化体に比べ発熱量が大きくなることに対する処分場設計への影響評価
③ガラス固化体に比べ放射線量が大きくなることに対する遮へい対策
④放射線分解による酸化還元フロントに対する対策
⑤臨界を避けるための検討
⑥非収着性核種(C-14)に対する被ばく低減化対策
⑦地上施設の詳細検討
⑧操業中及び閉鎖後管理段階の保障措置やテロ対策
⑨回収可能性の検討
【ガラス固化体の特徴(日本の例)】 【使用済燃料の特徴(スウェーデンの例)】
図6.2-1 ガラス固化体と使用済燃料の特徴
上記のコスト比較報告書で示された課題を当初の研究開発課題として取り組むことを含めて,5ヵ年 を見据えた研究開発の計画として,表6.2-1に示すように,直接処分の研究開発を,廃棄体データベ ース開発,処分場の工学技術及び性能評価技術に分類し,細目・課題設定を行うことにより,研究開 発課題の展開を行う。
分野・分類・細目設定に基づく研究開発内容について,以下に5ヵ年を見据えた課題として包括的 に整理するが,既に述べたように,これらの課題(計画)は,5ヵ年のマイルストーンにおける各節目(段 階的な技術的取りまとめ)において,その段階での研究開発の進捗や成果,レビューなどを踏まえ,そ の後の課題展開を柔軟に見直すこととしている。
表6.2-1 5ヵ年を見据えた研究開発の分類設定(コスト評価報告書で示された課題対応を含む)
分野 分類 細目 課題の設定 コスト評価報告書で提示された課題*
使用済燃料発生量評価
使用済燃料インベントリ評価
直接処分に関する方策の検討 B⑧ 操業中及び閉鎖後管理段階の保障措置やテロ対策 B⑨ 回収可能性の検討
設計技術開発
設計支援システム開発
使用済燃料の特徴を考慮した人工バリア 概念の設定
B① ガラス固化体に比べ,寸法,重量ともに大きくなることに対する処分坑道,処分孔,人工バリア仕様等の検討 B② ガラス固化体に比べ発熱量が大きくなることに対する処分場設計への影響評価
B③ ガラス固化体に比べ放射線量が大きくなることに対する遮へい対策 B⑤ 臨界を避けるための検討
B⑥ 非収着性核種(C-14)に対する被ばく低減化対策
人工バリア概念設定に資する基盤データ
の整備及び評価手法開発 B④ 放射線分解による酸化還元フロントに対する対策
現象理解・モデル開発
-使用済燃料の溶解と核種の浸出挙動 -使用済燃料からの放射線分解影響
A③ 核種の瞬時溶出挙動と評価
A④ UO2マトリクス溶解挙動とそれに伴う核種溶出挙動及びそれらの影響 A⑤ 放射線分解や酸化還元フロント進展の挙動と影響
データ整備・データベース開発 -使用済燃料の核種浸出データ取得 -核種移行データの取得 -核種移行データベースの開発
A⑦ 核種挙動や移行特性
地質環境条件の設定
シナリオの開発 A① 評価上考慮するシナリオ
処分場周辺における臨界可能性評価 A② 臨界回避・評価
直接処分総合性能評価手法開発 A⑥ 廃棄体が大きくなることによる掘削影響領域の拡大等の挙動と影響
直接処分に係る技術・知識・情報・データ 等の知識ベース化
*「基本シナリオの核燃料サイクルコスト比較に関する報告書(平成16年11月)」,原子力委員会新計画策定会議技術検討小委員会
B① ガラス固化体に比べ,寸法,重量ともに大きくなることに対する処分坑道,処分孔,人工バリア仕様等の検討 B② ガラス固化体に比べ発熱量が大きくなることに対する処分場設計への影響評価
B③ ガラス固化体に比べ放射線量が大きくなることに対する遮へい対策 B⑨ 回収可能性の検討
B⑦ 地上施設の詳細検討
A⑥ 廃棄体が大きくなることによる掘削影響領域の拡大等の挙動と影響
総合性能評価手法の開発 使
用 済 燃 料 の 直 接 処 分 に 関 す る 研 究 開 発
人工バリア概念の開発
性能評価モデル/データ整備 処分場設計技術開発 処
分 場 の 工 学 技 術
性 能 評 価 技 術 廃 棄 物 デー
タ ベー
ス 開 発
インベントリデータ整備