本分野における研究開発では,人工バリアを含む処分場施設の構築に必要となる設計,建設,操 業,閉鎖などの技術や,構築された人工バリアを含むニアフィールド環境において熱-水-応力-化学 連成挙動などの長期にわたる挙動評価に必要なモデルやデータベースなどを対象とする。処分場の 工学技術では,精密調査地区の選定や概要調査結果に基づく処分場の概念設計とともに,安全規制 による安全審査基本指針の策定に必要となる処分場の設計・施工技術や長期健全性評価技術を技 術基盤として整備しておくことが重要である。特に,精密調査では地下の坑道掘削が行われることから,
処分事業や安全規制に先行して処分場の設計・施工技術の適用性を実際に確認し,提示していく。
本全体計画の計画期間について,フェーズ2及びフェーズ3の個別課題へと計画を展開する上で,
表5.2-1に示す分類を設定して個別課題の展開を図る。双方のフェーズに分類レベルでの差異はな いものの,同表に示すフェーズ2及びフェーズ3への展開に伴う分類目標の変化,或いは技術開発の 進捗にも応じて,細目レベルでの取捨選択等を行い,表5.2-2に示す細目設定に従い詳細計画への 展開を図る。具体的には,フェーズ2では個々の技術について最新の科学的知見を適切に取り込み技 術基盤の充実を図っていくとともに,深地層の研究施設等の活用を図り適用性を確認していく。フェー ズ3ではこれら技術基盤の充実と適用性の確認に加え,総合的に技術基盤としての体系化を図ってい くといった研究開発の展開を進める。
なお,東北地方太平洋沖地震の発生を踏まえた巨大地震・津波や発生確率が低いと考えられる事 象等への対応を意図して,フェーズ2の課題展開では,対応する新たな分類を加えている。また,フェ ーズ3の課題設定においては,従来は他分野として位置付けられていた,TRU廃棄物分野の課題を 本分野で統合的に扱うこととしている。これについては後述の 5.4 節に整理する。
表5.2-1 処分場の工学技術分野における分類とフェーズ毎の分類目標
分類
(フェーズ 1)
分類
(フェーズ 2 以降) 分類目標(フェーズ 2) 分類目標(フェーズ 3)
(1) 処分場の総合的 な工学技術
実際の地質環境への適用を考慮した 柔軟性のある工学技術の体系化
実際の地質環境への適用性が確認 された工学技術全体の体系化 (1)工学技術 (2) 処 分 場 の 設 計 ・
施工技術
設計・建設技術の実際の地質環境へ の適用性確認と操業・閉鎖技術の整 備
処分場の設計・施工技術の実際の 地質環境への総合的な適用性確 認
(2)長期健全性 (3) 長期健全性評価 技術
実際の地質環境へ適用可能な長期健 全性評価モデルの整備
実際の地質環境に対する長期健全 性評価モデルの総合的な適用性確 認
表5.2-2 処分場の工学技術分野における分類毎の細目構成
分類 細目(フェーズ2)
(1) 処 分 場 の 総 合的な工学技 術
①深地層の研究施設における適用性検討
②工学技術オプション
③巨大地震・津波に対する処分場工学技術の高 度化
④発生確率が低いと考えられる事象に関わる検 討
⑤処分場の限界状態評価手法の開発
⑥残置物の影響評価と対策検討
(2) 処 分 場 の 設 計・施工技術
①人工バリア a) オーバーパック b) 緩衝材
②支保・グラ ウト・シーリ ング
a) シーリング
b) 支保(低アルカリ性セメント)
c) グラウト
③ 建 設 ・ 操 業 ・ 閉 鎖 等 の 工 学 技術
a) 建設技術 b) 操業技術 c) 閉鎖技術 d) 品質管理 e) 回収技術
(3) 長 期 健 全 性 評価技術
①緩衝材
a) 緩衝材の長期力学的変形 挙動
b) 緩衝材の長期変質挙動 c) 緩衝材流出・侵入挙動
②岩盤
③熱-水-応力-化学連成評価技術
④ガス移行挙動
⑤人工バリアせん断応答挙動
分類 細目(フェーズ3)
(1) 処 分 場 の 総 合的な工学技 術
深地層の研究施設における適用性検討
(2) 処 分 場 の 設 計・施工技術
①人工バリア a) オーバーパック b) 緩衝材
②支保・グラ ウト・シーリ ング
a) シーリング
b) 支保(低アルカリ性セメント)
c) グラウト
③ 建 設 ・ 操 業 ・ 閉 鎖 等 の 工 学 技術
a) 建設技術 b) 操業技術 c) 閉鎖技術 d) 品質管理 e) 回収技術
(3) 長 期 健 全 性 評価技術
①緩衝材 a) 緩衝材の長期力学的変形 挙動
②セメント・コンクリート
③岩盤
④熱-水-応力-化学連成評価技術
⑤ガス移行挙動
(2) 研究開発内容
本全体計画の計画期間(平成25年度~平成29年度)において,フェーズ2及びフェーズ3の課題 として計画される研究開発内容を,上表の分類毎に概括整理する。
①処分場の総合的な工学技術
本分類は,個別に進めているテーマの連携の強化やそれらを体系化していくための方策を具体 化することを意図して設定しており,後述の②,③で得られる2つの特徴的な研究開発の成果を 技術基盤として柔軟に統合していくことを意図している。
フェーズ2では,従来からの研究開発の取組を踏襲し,引き続き適用可能な技術の選択肢を 狭めることなくその信頼性を高めていくこととし,様々なサイトの特徴に応じた処分概念を構築でき るよう,従来の処分概念の拡張を含め工学技術の体系化を図っていく。具体的には,深地層の研 究施設での掘削段階において得られる地質環境情報をもとに,評価手法,データベース,人工バ リアの製作・施工技術といった個々の研究開発成果を設計・施工フローを踏まえた実用的な視点 から体系化を継続的に進める。その中で,特に可能性のある代替の工学技術オプションの構築に 必要な共通的技術基盤の検討に注力する。これらは次の細目構成で進める。
○深地層の研究施設における適用性検討:
1)実用的視点での処分場全体及び構成要素の設計フローを構築。
2)処分場設計に使用する評価ツール(モデル,解析コード,データ,データベース,方法論
等)の体系的な整備・拡充(幌延における地上からの調査データを利用した設計手法の適 用性の確認を通して実施)。
○工学技術オプション:
1)地上からの調査に基づく利用可能な情報(サイト環境の特徴)に即した処分概念の構築と 施設設計へのフィードバック。
2)新たな処分概念の創出を目的とした処分場概念構築ツールとその基盤となる知識ベース を提供。
○巨大地震・津波に対する処分場工学技術の高度化,発生確率が低いと考えられる事象に 関わる検討,処分場の限界状態評価手法の開発等:
1)安全評価との連携と品質保証を考慮した,巨大地震・津波を含むシビアアクシデントに対 する標準的な評価手法,対策技術,及び対策技術導入に際しての処分システム成立性 への影響を確認。
2)超長期における処分場性能の限界条件を提示。
3)残置物の人工バリア長期性能に対する影響や残置物に対する工学的な対策の提示。
フェーズ3では,本計画期間の2年目に予定する中間評価(継続の必要性を判断)を前提とし て,上記の幾つかの細目設定を見直す。現段階では,深地層の研究施設における適用性検討と して,坑道掘削時の地質環境条件に応じた最適な処分場設計の方法論を提示するとともに,後 述の「②処分場の設計・施工技術」,「③長期健全性評価技術」の検討で実施する処分場の設 計に係る方法を取りまとめる。
②処分場の設計・施工技術
人工バリアを含む処分施設の構築に必要な技術を念頭に,フェーズ2では,設定した細目単位 で次のような取組を計画する。
○人工バリア(オーバーパック,緩衝材):
1)オーバーパックの個別腐食現象に関するデータ整備と実験データに基づく評価手法を構 築。
2)緩衝材に関する事業,規制のニーズに則した標準的な測定手法及び基本特性データを 提示。
○支保・グラウト・シーリング:
1)シーリング埋め戻し材の基本特性を幅広い環境条件で取得し,データベースに集約をはか るとともに,埋め戻し材の長期安定性評価事例を提示。
2)支保(低アルカリ性セメント):pH 低下挙動のモデル化による低アルカリ性を明示するととも に,配合選定手法の整備による処分場支保工への低アルカリ性セメント吹付けコンクリート の適用性を提示。
3)グラウト:グラウト設計手法の標準化に向けた検討を行う。
○建設・操業・閉鎖等の工学技術(建設技術,操業技術,品質管理,廃棄物の取り出し技術
(回収技術
19)):
1)建設技術:実際の処分場建設の際に用いられる設計手法の改良。
2)操業技術:地上施設における緩衝材の定置技術を実証するとともに,遠隔溶接・検査技 術及び遠隔搬送・定置技術の高度化。
3)閉鎖技術:シーリングと同様の内容を実施。
4)品質管理:性能評価や地質環境分野からの観点も含めた品質管理計画や最新の知見に 基づく人工バリアや処分施設に対する性能保証項目を提示するとともに緩衝材の性能を 考慮した定置精度に係る検討を実施。
5)回収技術:オーバーパックの竪置きや横置き等の多様な定置概念を対象とした回収技術 を提示。
フェーズ3では,上記のフェーズ2の取組を踏襲するものの,表5.2-1に示した両フェーズの分 類目標の変遷も踏まえて,次のような取組を計画する。
○人工バリア(オーバーパック,緩衝材):
1) オーバーパック:
腐食の概念と構造(強度)の概念を統合した,オーバーパック長期健全性評価モデルや候 補サイトでの精密調査時の地下調査施設で行う腐食試験に必要なツール等の基盤技術 を提供(例えば精密調査における地下調査施設に適用可能なモニタリング技術/方法と 選択肢を提示)。
2)緩衝材:
処分施設の基本仕様設定に伴う緩衝材の最適化・合理化設計のためのデータベース及 び手法を整備するとともに,施工法や材料特性(組合せ)に応じた緩衝材の再冠水挙動の 長期健全性評価モデルを提示。
○支保・グラウト・シーリング:
1)シーリング:実岩盤条件における閉鎖要素の実証及び性能の確認。
2)支保(低アルカリ性セメント):
深地層の研究施設での実証及び影響評価試験による低アルカリ性セメントの実用性の実 証。
3)グラウト:実岩盤条件におけるグラウト設計技術の実証及び性能の確認。
○建設・操業・閉鎖等の工学技術(建設技術,操業技術,品質管理,回収技術):
1)建設技術:
実際の処分場建設の際に用いられる設計手法の体系化及び施工技術の実証。
2)操業技術:
19 将来世代の様々な選択を可能とするために,廃棄体の回収可能性を一定期間維持することが海外において検討されている。仏国の放 射性廃棄物の管理に関する計画法(2006 年制定)では,地層処分の可逆性(回収可能性含む)を確保する最低期間を 100 年未満とす ることはできないとされれている。