本分野における研究開発では,地層処分システムの全体性能を評価するための技術,性能評価上 重要な現象に係るモデル化やデータ取得及びそれらの信頼性向上に必要となる技術,わが国に幅広 く分布する地質環境条件下でのシステム性能評価に利用可能なモデル/データベースの整備・拡充 などを対象とする。
具体的には,最新の科学的知見を適切に取り込むとともに,深地層の研究施設計画における地上 からの調査研究等で得られた研究開発成果の活用を図りながら,「地上からの精密調査」に反映可能 な地質環境条件の設定及びそれに基づく性能評価に関する技術基盤についての整備・改良を行う。
これらをフェーズ2の課題として展開し,フェーズ3では,深地層の研究施設計画における坑道掘削時 の調査研究や坑道を利用した調査研究等から得られる研究開発成果の活用を図りながら,「地下調 査施設での精密調査」に反映可能な地質環境条件の設定及びそれに基づく性能評価に関する技術 基盤について,実際の地質環境への適用を通じて更に確かなものとしていく。
本分野の研究開発に関する各フェーズの段階目標を次のように設定している。
○フェーズ2の段階目標:実際の地質環境へ適用可能な評価手法の整備と実現性の提示
○フェーズ3の段階目標:実際の地質環境を対象とした体系的・合理的な評価手法の実証
これらの段階目標の違いを踏まえつつ,個別課題の研究開発目標を達成した技術基盤の実施主
体への積極的な技術移転,実施主体における効率性・経済性を目指した技術開発と国の基盤研究
開発との役割分担等を念頭に置き,最新の技術動向を踏まえた地層処分システム性能評価の技術
的信頼性を強化する基盤技術の開発と国の基盤研究開発での特徴的な研究資源(施設インフラ)の 活用に特化した研究開発を推進する。
以上の方針に基づき,本全体計画の計画期間(平成25年度~平成29年度)において,本分野の フェーズ2からフェーズ3への移行やフェーズ2及びフェーズ3のそれぞれの個別課題の計画への展開 も考慮し,表5.3-1に示すように分類の見直し・設定を行うとともに,表5.3-2に示す細目設定(両フェ ーズの細目対応)を行い個別課題の具体化を図ることとした。なお,フェーズ3の課題設定においては,
従来は他分野として位置付けられていた,TRU廃棄物分野の課題を本分野で統合的に扱うこととして いる。これについては後述の 5.4 節に整理する。
表5.3-1 性能評価技術分野における分類とフェーズ毎の分類目標
フェーズ2 フェーズ3
分類 分類目標 分類 分類目標
(1)評価手法 実際の地質環境へ適用可能
な評価手法の整備・改良
(1)システム
統合
実際の地質環境に対する評価手法の総合的な適用性
確認
実際の地質環境に適用可能な性能評価用パラメータセ
ットの設定手法の体系的整備
実際の地質環境に適用可能な性能評価技術に係る情
報の体系的な管理技術の整備
(2) モ デ ル 化
技術
実際の地質環境へ適用可能
な個別モデルの整備・改良 (2)システム
の理解と
表現
最新の技術動向を踏まえた個別モデルの開発と適用性
の検討
実際の地質環境に適用可能な先端的な現象理解を踏
まえたデータベースの体系的整備
(3)データベー
ス開発
データベースの拡充,性能評
価用パラメータの設定手法の
整備
表5.3-2 性能評価技術分野における分類毎の細目構成(両フェーズの細目対応を含む)
フェーズ2 フェーズ3
分類 細目 分類 細目
(1)評価手法
①シナリオ解析技術
(1)システム統合
①先進的シナリオ開発技術
②不確実性評価技術
②セーフティケース作成技術
③総合的な性能評価技術
③性能評価管理技術
(2)モデル化技術
①人工バリア中の核種移行
a)地下水化学/間隙水化学
(2)システムの理解と表
現
①リアリスティックモデリングと
データベース
①人工バリア中の核種移行
b)ガラス固化体からの核種溶出
①人工バリア中の核種移行
c)緩衝材中の核種移行
②天然バリア中の核種移行
a)岩盤中の核種移行
②天然バリア中の核種移行
b)コロイド・有機物・微生物
(3)データベース
開発
①放射性元素の熱力学データベースの整備
②収着・拡散データベースの整備
③処分場システムデータベースの整備
(2)モデル化技術 ③生物圏での核種移行/被ばく ②生物圏モデリングと一般化デ
ータベース
(2) 研究開発内容
本全体計画の計画期間(平成25年度~平成29年度)において,フェーズ2及びフェーズ3の個別 研究開発課題を包含する計画の概要を,上表の分類毎に整理する。以下に示す①~③ではフェーズ 2の個別研究開発課題を包含する計画について概括する。また,④~⑤ではフェーズ3の個別研究開 発課題を包含する計画について概括する。
① 評価手法
シナリオ解析,不確実性評価及び総合的な性能評価のそれぞれで必要となる個別的な技術 や手法について,科学的知見の拡充,技術的実現性の提示,及び先進的技術の導入という観点 を踏まえ,深地層の研究施設計画における地上からの調査研究で取得された地質環境データ等 を活用し,実際の地質環境での適用性を確認することを通して,整備・改良を進める。また,総合 的な性能評価における解析作業を一貫して行うための評価体系についても,深地層の研究施設 計画における地上からの調査研究で取得された地質環境データ等を活用し,実際の地質環境に 関する評価との連携を図ることにより実用的なものとして整備する。これらは,精密調査(前半の 地上からの精密調査)段階で得られる情報を見据え,総合的な性能評価体系の具体化に向けて 個々の技術を体系的に整備することを念頭に置きつつ,次の細目構成で展開する。
○シナリオ解析技術:
総合的な性能評価における重要要素となるシナリオの解析技術の整備。
○不確実性評価技術:
総合的な性能評価におけるシナリオ,モデル,パラメータの不確実性を整理・検討するため の技術の整備。
○総合的な性能評価技術:
総合的な性能評価を行うための評価体系の整備。
② モデル化技術
個別現象や放射性元素の安全評価上の重要度を勘案しつつ,科学的知見の拡充や先進的 技術の導入の観点から,個別モデルについての信頼性や詳細度の向上に資するため,現象理解 に即したより詳細なモデルの整備・改良を進める。また,これらモデル化技術の実証性の提示とい う観点から,深地層の研究施設計画における地上からの調査研究で取得された地質環境データ 等を活用し,実際の地質環境への適用性を評価しつつ,整備・改良を行う。これらは,精密調査
(前半の地上からの精密調査)段階で得られる情報を見据え,性能評価で用いるモデルの設定と その信頼性評価を行うための技術の整備を念頭に置きつつ,次の細目構成で展開する。
○人工バリア中の核種移行:
1)地下水化学/間隙水化学:圧縮ベントナイト中の間隙水質設定技術を整備。
2)ガラス固化体からの核種溶出:地質環境条件や人工バリア材料との相互作用を考慮した
ガラス溶解及び核種溶出に係る現象理解とモデル化のための基盤整備。
3)緩衝材中の核種移行:緩衝材中の核種の現象論的収着・拡散モデルの体系的整備。
○天然バリア中の核種移行:
1)岩盤中の核種移行:地質環境の特徴や調査の進展に応じた岩盤中の水理・物質移行評 価技術の整備と岩盤中での収着と拡散に関する原位置条件でのパラメータ評価手法の検 討。
2)コロイド・有機物・微生物:コロイド・有機物・微生物の影響を考慮した性能評価パラメータ設 定手法のの整備。
○生物圏での核種移行/被ばく:
生物圏評価のためのモデル化技術/パラメータ設定手法の整備
③ データベース開発
熱力学データ,分配係数及び拡散係数などの核種移行に係るパラメータに関するデータベー スを拡充・整備する。具体的には,個別現象や安全評価上の重要度を勘案し,信頼性及び十分 性の向上のため,わが国に幅広く分布する地質環境の条件を勘案した核種移行に係るパラメータ を継続的に取得し,取得条件も含めてデータベースの整備・拡充に反映する。また,信頼度評価 と品質向上を目指したデータ取得の方法論の整備や性能評価で用いる個々のパラメータの設定 に関する定型化した手順・手法を構築する。
上記を踏まえ,データベース開発については,データベースの機能・情報の拡充と品質向上,
性能評価で用いるパラメータの設定のための方法論の構築を念頭に置き,精密調査(前半の地 上からの精密調査)段階で得られる情報を見据え,次の細目構成で展開する。
○放射性元素の熱力学データベースの整備,収着・拡散データベースの整備:
性能評価における核種移行解析に必要な放射性元素の熱力学的データと収着・拡散に関 するデータの取得とデータベースについての,信頼性,品質保証,不確実性も考慮に入れた 整備・拡充。
④ システム統合
深地層の研究施設計画における坑道掘削時の調査研究や坑道を利用した調査研究で取得さ れる地質環境データ等を活用し,最先端の知識に基づく現象理解や数値解析技術を適用した先 進的なシナリオ構築・表現手法を開発する。また,情報提供に関する様々なプラットホームの整 備や性能評価における不確実性の取り扱いなどについて,先進的な手法を取り入れながら,深地 層の研究施設計画と連携した総合性能評価を試行することにより,わが国の幅広い地質環境条 件に適用可能なセーフティケース構築手法を体系的に検討・整備する。更に,精密調査(後半の 地下施設での精密調査)段階での性能評価を見据えた知識管理システムを構築するとともに,
構築した知識管理システムを活用して性能評価に係る最新の技術情報を含む国の基盤研究開
発の成果を知識ベースとして整備する。これらは,特に個々の技術整備でのプロセスや成果を集
約し知識化する技術と知識ベースの整備に力点をおきつつ,次の細目構成で展開する。