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産業(業種・製品)の構造変化発生の視認が可能な視覚化

6 価格‐販売量推移曲線モデル

6.2 価格‐販売量推移曲線の導入

6.2.4 価格‐販売量推移曲線から視覚的に得られる情報

6.2.4.2 産業(業種・製品)の構造変化発生の視認が可能な視覚化

一般的に構造変化は、分析対象とする経済指標を目的変数とする回帰モデルのパラメー タが、ある時点の前後で変化したことで知ることができる。そしてその回帰モデル構築の 際は、説明変数は経済学的視点で目的変数に因果関係のある指標が選ばれる。計量経済分 析的には、構造変化の時点があらかじめわかっている時には Chow test 等、わからない時

にはCUSUM testやCUSUMSQ test等を用いて構造変化発生の有無を検定する [51]。ここ

では販売統計の価格‐販売量推移曲線を推定するだけで、上記の検定をするまでもなく一 目で構造変化を確認できることを示す。

ここで取り上げる事例は、半導体メモリー(CPU(中央処理装置)が直接読み書きできる RAMやROMなどの半導体記憶装置)である。図36はWSTSが毎月公開している販売64統 計の中の一項目であるTOTAL MOS MEMORYの販売数量・金額の推移を1997年1月から 2008年9月までの月次データを用いてグラフ化したものである。金額推移に大きなうねり があり、2000年の IT バブルの影響を受けていたようにも見えるが、その割に数量はきわ めて単調に増加している。この図からは、半導体メモリーに潜む大きな構造変化を感じる ことは難しい。しかし2003年12月以前と2004年1月以降で、重大な構造変化が発生して いたことをこれから示したい。

36と同じ期間のうち1997年1月から2003年12月まで間の価格‐販売数量・金額推 移曲線を推定したグラフが図37、そして2004年1月から2008年9月までの間の価格‐販 売数量・金額推移曲線を推定したグラフが図38である。図37と図38の価格‐販売数量・

金額曲線が、明らかにまったく別の関数形に変化しているのがわかる。1997年1月から2003 年12月の間では、価格が約1.75$から5.5$の間でゆっくりと上下していたが、出荷数量は

63 散布図への関数の当てはめは、単調に増加あるいは減少する関数、例えば、線形関数、指数 関数、対数関数、ベキ関数、場合によっては多項式関数を当てはめ、その決定係数を比較して 高いものを選択する方法で、本研究の目的を満足させることが可能である。

64 データは出荷量であるが用語の統一性を図り販売量と表記。

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ほとんど横ばいであった。しかし2004年1月以降の価格‐販売数量・金額推移曲線は激変

し、約3.5$の価格から急激に価格が下落し、それに伴い販売数量は直線的に増加している。

価格は、2008年9月時点で約1.75$まで下落している。このように2003年末から2004

図 36 半導体メモリーの販売数量・金額推移

図 37 1997年1月から2003年12月までの価格‐販売量推移曲線 0

500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 3,000,000 3,500,000 4,000,000 4,500,000 5,000,000

97.1 98.1 99.1 00.1 01.1 02.1 03.1 04.1 05.1 06.1 07.1 08.1

年月

出荷数量(K個)

0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 3,000,000 3,500,000 4,000,000 4,500,000 5,000,000 5,500,000 6,000,000 6,500,000

出荷金額(K$)

金額 右

数量 左

2003年12月以前

0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 3,000,000 3,500,000 4,000,000 4,500,000 5,000,000

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 価格($)

出荷数量(K個)

0

1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000

出荷金額(K$)

金額 右

数量 左

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図 38 2004年1月から2008年9月までの価格‐販売量推移曲線 年初にかけて、半導体メモリー業界に明確な構造変化が発生している。

この構造変化は、下記の特徴を有す。

1) 2003年末以前は、価格変化が、直接、出荷金額に影響を与えていたものが、2004年 初以降は、価格変化が、直接、出荷数量に影響を与えるようになった。

2) 2004年初以降の構造では、価格が約2.6$の時が最大出荷金額であり、価格が下がる ことで出荷数量は増えているものの、金額は減少するステージに突入した。

半導体メモリーのこの構造変化は、業界にとってきわめて重大な変化であり、ビジネス・

モデルの修正を迫るインパクトがある。半導体メモリーの場合、2004年初以降の価格‐販 売量推移曲線は、後述する「ライフ・サイクル」のステージが、成長期から成熟期65に突 入したことを示唆しているのである。

一般の構造変化検定では、同一モデルのパラメータの変化に注目するが、本章の事例の ように、価格‐販売量推移曲線を用いると、その曲線の関数形までが激変している状況を 一目でとらえることができる。つまり本方法では、価格軸で見た販売量トレンドのカタス トロフィック(不連続)な変化として構造変化を捉えていることになる。

65 この製品ライフ・サイクルのステージは7.1.3の定義による。7.1.2の定義では、「成長期か ら衰退期」となる。

2004年1月以降

0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 3,000,000 3,500,000 4,000,000 4,500,000 5,000,000

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0

価格($)

出荷数量(K個)

0

1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000 7,000,000

出荷金額(K$)

金額 右

数量 左

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