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価格‐販売量推移曲線の数理モデル

6 価格‐販売量推移曲線モデル

6.3 価格‐販売量推移曲線の数理モデル

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表 13 6種類のエレクトロニクス関連製品の価格変動モデルの推定結果とその精度

データの出典は1~5が経済産業省生産動態統計、6はカメラ映像機器工業会(CIPA)

て販売している民生エレクトロニクス関連製品において、成長期→成熟期→衰退期初期の間に 限定することにより、多くの製品カテゴリーの価格推移が、(30)式で表せることを確認した[図 39]。

13 は、受動部品であるチップ抵抗と金属化有機フィルムコンデンサー、変換部品で ある録画再生用磁気ヘッド、メモリー部品としてオーディオ・ビデオ磁気テープとフロッ ピー・ディスク(ここまでの出所はすべて [48])、そして民生電子機器として DSC [68]に、

(30)式を適用し推定した結果の精度評価である。R2値は、すべての製品で比較的高い値と

なっている。

6.3.2 実験式としての Bass モデル

新製品普及モデルは、導入から成長期に加速的に販売数量が増加し、成長期から成熟期にか けて増加速度が減速し、その後販売数量がピーク・アウトして衰退していく過程をうまく描く という特徴を有している。一方7.1に示すように、価格を変数とした価格‐販売量推移曲線に おいても、PLCの特徴的な局面を明示することが可能である。我々は、このような両者の関係 から、価格‐販売量推移曲線モデルにおいて、この新製品普及モデルが構成要素の1つをなす ものと考えた。

一般的に、普及曲線としてロジスティック曲線やゴンペルツ曲線、さらに Bass モデル等が 挙げられる [61]。なおこれらの普及曲線は、ハザード関数による定式化では系統的に扱うこと ができる [69]。

本論文では、新製品普及の代表的モデルであり、ロジスティックモデルを包含するモデ ルになっている Bass モデルに注目した。Bass モデルは、電気機器・電子機器には広く適 用されてきたが、購入者数で購入数量が決定されるような製品に適用することを前提とし て構築されている [58] [64] [65]。一方、本論文で適用を考えている電子部品のような生産

z0 g0 R2

1 チップ抵抗器 1986年~2010年 25 0.770 0.0608 0.906

2 金属化有機フィルムコンデンサー 1981年~2000年 20 38.0 0.0357 0.922

3 磁気ヘッド(録画・再生) 1987年~2003年 17 528.5 0.0706 0.928

4 AV磁気テープ 1981年~1996年 16 531.2 0.1264 0.975

5 フロッピー・ディスク 1985年~1999年 15 312.2 0.2750 0.988

6 DSC 2000年/1Q~2011年/2Q 46 44.4 0.0271 0.987

No. 製品 期間 データ数 価格変動モデル

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財やオーディオ・ビデオ用磁気テープ等は、反復購入されるため、購入者数により購入数 量が決定されるようなものではない。しかしながら我々は、Bassモデルが、このような製 品にも良好なフィッティングを示すケースをしばしば経験している。そこでこれらの前提 条件の呪縛から逃れるために、現象を数式によって模写する実験式として、Bassモデルを 活用することを考えた。

Bass基本モデルでは、1期当たりの販売数量

S (t )

は下式で与えられる [58]。

2 ) (

) ( 2

} 1

{ ) ) (

(

t q p

t q p

pe q

e q p t m S

 

(31)

新製品普及モデルとしてのBassモデルは、さまざまな製品の普及過程を記述することに成 功しているものの、ピークを過ぎて1ポイント以上のデータが無いと、予測の信頼性が乏 しいことがわかっており [59] [60] [61]、out of sampleにおいてピークの販売数量予測には 有効であるとはいえない。

またBassモデルでは、(31)式における

p

は外的影響(革新係数)、

q

は内的影響(模倣係数)、

m

は飽和普及水準67と解釈されている。しかし本論文では

p

q

m

を単にデータにフィ

ットさせるためのパラメータとして捉えなおし、さらに 6.3.4 において、新たな解釈を試 みている。

6.3.3 価格‐販売量推移曲線モデル

本項では、(30)式を用いて(31)式のtを消去し、価格の関数に変換することにより価格‐販売 量推移曲線モデルを構築する。(31)式を 1期当りの販売数量を与える関数とすると、価格‐販 売数量推移曲線モデルQ(z)は(32)式で与えられる。

2 0

0 2

} {

) ) (

(

0 0

0 0

g q p g

q p

g q p g q p

pz z q

z z q p z m

Q

  (32)

さらに販売金額が、販売数量と平均価格の積(

A ( z )  zQ ( z )

)で与えられることから、価格‐

販売金額推移曲線

A (z )

は、(35)式の両辺に価格

z

を乗じることで得られる。

67

m

は、一般的に「潜在市場の大きさ」、「潜在市場規模」等と呼ばれている。しかし本論文

では2.3.2で、潜在市場を別の定義で用いているため「飽和普及水準」と呼ぶことにした [65]

[91]。

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2 0

0 2

} {

) ) (

(

0 0

1 0 0

g q p g

q p

g q p

p z z q

z z q p z m

A

g q p

 

(33)

(33)式の価格‐販売金額推移曲線モデルを用いて、販売データにおける販売金額がピークを超 えた時点で各パラメータを推定し、それらのパラメータを(32)式に代入して価格‐販売数量推 移曲線

Q (z )

を推定することにより、信頼性の高い最大販売数量Q(zmax_q)や最大販売数量に達 する価格zmax_q等を推定することが可能となる。

6.3.4 各パラメータによる価格‐販売量推移曲線の挙動

40、41、42は、(33)式で表せる価格‐販売金額推移曲線の曲線形に対する、パラメータp

q

g

0の影響を図にしたものである。図40pの変化、図41qの変化、図42

g

0の変 化による曲線形の変化を示している。

pqに関しては、いずれも大きくなると価格下落に伴い曲線の立ち上がりが早まる。こ のことからpqは、製品の市場への浸透の速さを表す指標ととらえることができる。Bass モデルの考え方を取り入れると、pは外的影響、すなわち、まだその製品を購入していない人 が、広告などの外的な要素に影響されて購入を開始する見込み・可能性による浸透の速さの指 標であり、qは内的影響、具体的にいうと、まだその製品を購入していない人が、すでにその

図 40 pの変化による曲線の変化 (q=0.1,

g

0=0.027,

m

=6×1011)

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図 41 qの変化による曲線の変化 ( p=0.002,

g

0=0.027,

m

=6×1011)

図 42

g

0の変化による曲線の変化 (p=0.002,q=0.1,

m

=6×1011)

製品を使っている人からの影響(口コミなど)を受けて購入を開始する見込み・可能性による 浸透の速さの指標と考えることも可能である。したがつて、

pq

は、当該製品の総合的な市 場への浸透の速さを表す指標ととらえることができる。一方

g

0は、大きくなると価格下落に

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伴う曲線の立ち上がりが遅くなり、最大販売金額価格も低下し最大販売金額も減少する。図42 は、

g

0が大きくなると、製品リリースから最大販売数量までの累積金額の減少を招く可能 性があることを示唆している。しかし実際には、

g

0qに影響し累積金額が減少しないこ とを6.6で示す。

6.3.5 最大販売数量と最大販売金額に達する価格

(32)、(33)式は、両者ともにベル型の曲線を描く。そのため、両式をそれぞれ価格zで微

分して 0 となる価格が、最大販売数量に達する価格zmax_qと最大販売金額に達する価格 zmax_aになる[図33]。本モデルの場合、

q p g

q q

z p z



 



0

0 max_

q p g q

p g

a p q g

g q p q

z p z



 

 

 



0 0

0 0 0

max_

であり

q p g

g q p

g q

p



 

 

0

0

0 (34)

とすると、

zmax_qzmax_aの間に

z

max_q

   z

max_aの関係が成り立つ。

6.3.6 最大販売数量

最大販売数量に達する価格

z

max_qにおける販売数量、最大販売数量Q(zmax_q)は、下式で 与えられる。



 

 

q

p q p z m

Q q

4 ) ) (

(

2

max_ (35)

(35)式は、販売金額A(z)のピーク・アウトが確認できた時点で推定したパラメータのみで、

最大販売数量Q(zmax_q)が推定できることを示している。さらに市場への浸透速度が速い製 品カテゴリーほど、それも内的影響に比べて外的影響による浸透が早い製品カテゴリーの

方が、Q(zmax _q)が大きくなることを示唆している。一方、製品カテゴリーの価格下落の速

さは

z

m ax _a

z

max_qに影響するが、(35)式には

g

0が含まれていないことから、最大販売数

量には影響していないといえる。

100 6.3.7 θ値の性質

値は、

Q (z )

に対して

A (z )

がどの程度先行しているかを示す一種の先行性指標ととら えることができる。またこれを7.1で定義する

z

max_aから

z

max_qの間を製品ライフ・サイク ルの成熟期68とした場合、この成熟期の長さを示す指数ともとらえることができる。この

の値が 1 と比較して小さい製品カテゴリーほど、

Q (z )

に対する

A (z )

の先行性が高く成熟

期が長い。そのため販売金額がピーク・アウトした後、販売数量のピークまでに十分な時 間を確保できる。このような場合、本モデルにより予測した

z

max_q

Q ( z

max_q

)

を用いて、

事業運営のための政策立案とその実行が可能となる。

6.3.4 で述べたように、(35)式を構成するパラメータpqは、製品カテゴリーの市場へ

の浸透の速さを表す指標ととらえることができる。一方

g

0は単位期間当りの価格下落率で あり、製品カテゴリーの価格下落の速さを表す指標と捉えられる。したがって、

の値は、

注目する製品カテゴリーの市場への浸透の速さと、価格下落の速さのバランスにより決ま ると考えることができる。

図 43 各パラメータに対するθ値の等高線図

68 一般的に知られている製品ライフ・サイクルのステージの定義の場合、成熟期は、製品が市 場の潜在的購入者のすべてに行き渡り、成長期での販売の伸びに比べて減速する期間である [75]。しかし、ここで使用する用語「成熟期」は、7.1.3で定義するものであることに注意。

101

43は、パラメータ pq

g

0に対する

値の等高線図である。図の形状は、価格下落 が早いほど、製品カテゴリーの市場への浸透速度が遅いほど

値が小さくなり成熟期が長 くなることを示唆している。

本論文では、7章で定義する成熟期(

z

max_aから

z

max _qの期間)の長さを示す尺度として

を導入し、その性質等について議論している。しかし著者はここで止まることなく、本モ デルにより、成熟期の長さや製品寿命を時間(期間)で示す方法の検討を進めている。現在、

実データよる検証を行っている。なお本件に関しては、本論文末で補遺として触れておく。