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5. 生薬試験法

5.02 生薬の微生物限度試験法

(図5.01-2)を付け,油浴中で注意して130~150℃で加熱し,

沸騰させる.定量器の目盛り管には,あらかじめ水を基準線ま で入れ,更にキシレン2.0mLを加えておく.別に規定するもの のほか,5時間沸騰を続けた後,加熱をやめ,しばらく放置し た後,定量器の活栓を開き,水を徐々に流出させ,油層の上端 を目盛り管の予備線にほぼ一致させ,常温で1時間以上放置す る.次に油層の上面を目盛り管のゼロ線まで低下させ,常温で 油量(mL)を量り,キシレンの量を減じて生薬中の精油量とす る.

図5.01-1

図5.01-2

5.02 生薬の微生物限度試験法

生薬の微生物限度試験法は,生薬に存在する増殖能力を有す る特定の微生物の定性,定量試験法である.本試験法には生菌 数試験(好気性細菌と真菌)及び特定微生物試験(腸内細菌とその

他のグラム陰性菌,大腸菌,サルモネラ及び黄色ブドウ球菌) が含まれる.試験を遂行するに当たって,外部からの微生物汚 染が起こらないように,細心の注意を払う必要がある.また,

被検試料が抗菌作用を有する場合又は抗菌作用を持つ物質が混 在する場合は,希釈,ろ過,中和又は不活化などの手段により その影響を除去しなければならない.試料は任意に選択した異 なる数箇所(又は部分)から採取したものを混和し用いる.試料 を液体培地で希釈する場合は,速やかに試験を行う.また,本 試験を行うに当たっては,バイオハザード防止に十分に留意す る.

1. 生菌数試験

本試験は,好気的条件下において増殖しうる中温性の好気性 細菌と真菌(かび及び酵母)を測定する試験である.本試験では 低温菌,高温菌,好塩菌,嫌気性菌,特殊な成分を増殖に要す る菌などは,大量に存在しても陰性となることがある.本試験 法には,カンテン平板混釈法,カンテン平板表面塗抹法,液体 培地段階希釈法(最確数法)及びメンブランフィルター法の四つ の方法がある.試験を行うときは,その目的に応じて適当と思 われる方法を採用する.なお,ここに示した方法と同等以上の 検出感度と精度を有する場合は,自動化した方法の適用も可能 である.好気性細菌と真菌では使用培地及び培養温度が異なる.

液体培地段階希釈法(最確数法)は細菌のみに用いうる試験法で ある.

1.1. 試料の採取と調製

別に規定するもののほか,次の方法によって試料を採取し,

測定用の試料を調製する.

(ⅰ) 小形の生薬,切断生薬及び粉末生薬は,よくかき混ぜた 後,試料50~250gを採取する.

(ⅱ) 大形の生薬はよくかき混ぜた後,試料250~500gを採取 し,切断生薬を調製する.

(ⅲ) 1個の質量が100g以上の生薬は5個以上を採取し,試料と するか,又は生薬を適当な大きさに切断してよくかき混ぜた後,

試料500g以上を採取し,必要に応じて切断生薬を調製する.

(ⅳ) 液状の生薬又は製剤は混和した後採取する.

(ⅴ) 不溶性固形剤は不溶性物質をできるだけ細かく磨砕した 後採取する.

1.2. 試料溶液の調製

試料の分散又は希釈には,pH7.2のリン酸緩衝液,pH7.0の ペプトン食塩緩衝液又は使用する液体培地を用いる.別に規定 するもののほか,通例,試料10g又は10mLを量り,上記の緩 衝液又は液体培地90mL中に振り混ぜ分散又は溶解し,分散し た試料は,更に,10分間振り混ぜる.なお,付着菌の回収率 の低い生薬については同様の操作を繰り返し,試料溶液とする.

ただし,試料の性質によっては,規定された量よりも大量の緩 衝液又は液体培地中に分散させるか,異なる量の試料を使用し なければならない場合がある.試料溶液は,pH6~8に調整す る.試料溶液は調製後1時間以内に使用しなければならない.

(ⅰ) 液状製剤:10mLを量り,上記の緩衝液又は液体培地 90mL中に振り混ぜ試料溶液とする.ただし,試料の性質によ っては,規定された量よりも大量の緩衝液又は液体培地中に分 散させるか,異なる量の試料を使用しなければならない場合が ある.

(ⅱ) 不溶性固形剤:10gを量り,不溶性物質をできるだけ細 かく磨砕して,上記の緩衝液又は液体培地90mL中に振り混ぜ

試料溶液とする.ただし,試料の性質によっては,規定された 量よりも大量の緩衝液又は液体培地中に分散させるか,異なる 量の試料を使用しなければならない場合がある.必要に応じて ブレンダーなどで浮遊液を均一に分散させることも可能である.

適当な界面活性剤(例えば,0.1w/v%ポリソルベート80)を加え て可溶化させてもよい.

1.3. 試験の手順

1.3.1. カンテン平板混釈法

本法では,直径9~10cmのペトリ皿を使用する.一希釈段 階につき2枚以上のカンテン培地を使用する.1mLの試料溶液 又は試料溶液を希釈した液を無菌的にペトリ皿に分注する.こ れにあらかじめ45℃以下に保温されて融けた状態にある滅菌 したカンテン培地15~20mLを加え混和する.カンテン培地と しては,好気性細菌の検出を目的とする場合はソイビーン・カ ゼイン・ダイジェストカンテン培地を使用する.試料中に混在 する生薬の組織片などへの対応や真菌の増殖をできるだけ抑制 する目的から,好気性細菌染色色素TTC試液や抗真菌剤アム ホテリシンB試液を培地に添加することができる.TTC試液及 びアムホテリシンB試液は,滅菌したカンテン培地へ使用直前 に1L当たりTTC試液2.5~5mL,アムホテリシンB試液2mLを 添加し,混和する.真菌の検出を目的とする場合は抗生物質添 加サブロー・ブドウ糖カンテン培地,抗生物質添加ポテト・デ キストロースカンテン培地又は抗生物質添加GPカンテン培地 のいずれかを使用する.かびがカンテン培地上に拡散する場合 は,ローズベンガル試液を培地に添加することができる.ロー ズベンガル試液は,カンテン培地1L当たり5mLを添加し,混 和後,121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する.カンテンの固化 後,好気性細菌の試験は30~35℃,真菌の試験は20~25℃で 少なくとも5日間培養する.多数の集落が出現するときは,好 気性細菌の場合は一平板当たり300CFU以下の集落を持つ平板 から,真菌の場合は一平板当たり100CFU以下の集落を持つ平 板から得られる計測結果を用いて生菌数を算出する.信頼性の 高い集落数の計測値が得られたと判断される場合に限り,培養 後5日以前の計測値を採用してもよい.

1.3.2. カンテン平板表面塗抹法

本法は,固化させ表面を乾燥させたカンテン培地上に0.05~

0.2mLの試料溶液をのせ,コンラージ棒などで均等に塗抹する 方法である.ペトリ皿の大きさ,使用カンテン培地の種類と量,

添加試薬,培養温度と時間及び生菌数算出法などは,カンテン 平板混釈法と同様である.

1.3.3. 液体培地段階希釈法(最確数法)

本法では,9~10mLのソイビーン・カゼイン・ダイジェス ト培地を入れた試験管を使用する.各希釈段階において3本の 試験管を使用する.最初の試験管3本の各々に1mLの試料溶液 (0.1g又は0.1mLの試料を含む)を加えて10倍希釈試験管とする.

次いでこの10倍希釈試験管の各々から1mLをとり,3本の試験 管の各々に混和し,100倍希釈試験管とする.更に100倍希釈 試験管の各々から1mLをとり,3本の試験管の各々に混和し,

1000倍希釈試験管とする.なお,希釈が必要な場合には同様 な操作を繰り返す.対照として各希釈段階の希釈液1mLを1本 の試験管にそれぞれ加える.これらの試験管は30~35℃で少 なくとも5日間以上培養する.対照の試験管で微生物の増殖が 観察されてはならない.結果の判定が難しい場合又はあいまい な結果の場合は,カンテン培地又は液体培地に約0.1mLを移植

し,30~35℃で24~72時間培養し,増殖の有無を判定する.

表5.02-1から1g又は1mL当たりの最確数を求める.

第一カラム(0.1g又は0.1mLの試料を含む)において増殖を示 した試験管数が2以下の場合,1g又は1mL当たりの微生物の最 確数は100以下の可能性が高い.

表5.02-1 微生物の最確数表 下記の量の試料を加えた場合に 微生物の増殖が観察された試験管の数 試験管当たり

0.1g又は 0.1mL

試験管当たり 0.01g又は 0.01mL

試験管当たり 1mg又は 1μL

試料1g当たり 又は 1mL当たりの 微生物の最確数 3 3 3 1100

3 3 2 1100

3 3 1 500

3 3 0 200

3 2 3 290

3 2 2 210

3 2 1 150

3 2 0 90

3 1 3 160

3 1 2 120

3 1 1 70

3 1 0 40

3 0 3 95

3 0 2 60

3 0 1 40

3 0 0 23

1.3.4. メンブランフィルター法

本法では,メンブランフィルターは,孔径0.45μm以下の適 当な材質のものを使用する.フィルターの直径は,約50mmの ものが望ましいが,異なる直径のものも使用できる.フィルタ ー,フィルター装置,培地などはすべて十分に滅菌されていな ければならない.通例,20mLの試料溶液(2gの試料を含む)を 量り,2枚のフィルターで10mLずつろ過する.必要に応じて 試料溶液を希釈して試験してもよい.菌濃度が高い場合は1枚 のフィルター当たり10~100CFUの集落が出現するように希釈 することが望ましい.試料溶液をろ過した後,各フィルターは pH7.0のペプトン食塩緩衝液,pH7.2のリン酸緩衝液又は使用 する液体培地などを洗浄液として用いて,3回以上ろ過洗浄す る.1回のろ過洗浄に使用する洗浄液の量は約100mLとするが,

フィルターの直径が約50mmと異なる場合には,大きさに従っ て洗浄液の量を調整する.脂質を含む試料の場合には,洗浄液 にポリソルベート80などを添加してもよい.ろ過後,好気性 細菌の試験を行うときはソイビーン・カゼイン・ダイジェスト カンテン培地の,真菌の試験を行うときはサブロー・ブドウ糖 カンテン培地,ポテト・デキストロースカンテン培地又はGP カンテン培地(いずれも抗生物質添加)のいずれかの表面にフィ ルターを置く.好気性細菌の試験は30~35℃で,真菌の試験 は20~25℃でそれぞれ少なくとも5日間培養後,集落数を計測 する.信頼性の高い集落数の計測値が得られたと判断される場 合に限り,培養後5日以前の計測値を採用してもよい.

1.4. 培地の性能試験及び発育阻止物質の確認試験

次に記す菌株,又はこれらと同等と考えられる菌株を使用す ることができる.ソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテ ン培地を用い,細菌は30~35℃,Candida albicansは20~

25℃で培養する.