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4. 生物学的試験法/生化学的試験法/

4.03 消化力試験法

消化力試験法は,消化酵素剤の原体及び製剤のでんぷん消化 力,たん白消化力及び脂肪消化力を測定する方法である.

1. でんぷん消化力試験法

でんぷん消化力の測定は,次のでんぷん糖化力測定法,でん ぷん糊精化力測定法又はでんぷん液化力測定法により行う.

1.1. でんぷん糖化力測定法

でんぷん糖化力は,でんぷんにアミラーゼが作用するとき,

グルコシド結合の切断に伴って増加する還元力を測定して求め る.その単位は,操作法の条件で試験するとき,1分間に1mg のブドウ糖に相当する還元力の増加をもたらす酵素量を1でん ぷん糖化力単位とする.

1.1.1. 試料溶液の調製

操作法により試験するとき,還元力の増加が試料濃度に比例 する範囲内の試料濃度になるように,試料に適量の水又は医薬 品各条に規定する緩衝液又は塩類溶液を加えて溶かし,試料溶 液とする.その濃度は,通例,0.4~0.8でんぷん糖化力単位 /mLである.必要ならばろ過する.

1.1.2. 基質溶液の調製

でんぷん消化力試験用バレイショデンプン試液を用いる.た だし,必要ならばpH5.0の1mol/L酢酸・酢酸ナトリウム緩衝 液10mLの代わりに医薬品各条で規定する緩衝液又は塩類溶液 10mLを加える.

1.1.3. 操作法

基質溶液10mLを正確に量り,37±0.5℃で10分間加温した 後,試料溶液1mLを正確に加え,直ちに振り混ぜる.この液 を37±0.5℃で正確に10分間放置した後,でんぷん消化力試験 用フェーリング試液のアルカリ性酒石酸塩液2mLを正確に加

え,直ちに振り混ぜる.次に,でんぷん消化力試験用フェーリ ング試液の銅液2mLを正確に加え,軽く振り混ぜた後,水浴 中で正確に15分間加熱し,直ちに25℃以下に冷却する.次に,

濃ヨウ化カリウム試液2mL及び薄めた硫酸(1→6)2mLを正確 に加え,遊離したヨウ素を0.05mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で 滴定2.50する(a mL).ただし,滴定の終点は,滴定が終点 近くなったとき,溶性デンプン試液1~2滴を加え,生じた青 色が脱色するときとする.別に,基質溶液の代わりに水10mL を正確に量り,同様に操作して滴定2.50する(b mL).

でんぷん糖化力(単位/g)=ブドウ糖の量(mg)×

10 1 ×

M 1 ブドウ糖の量(mg)=(b-a)×1.6

M:試料溶液1mL中の試料の量(g) 1.2. でんぷん糊精化力測定法

でんぷん糊精化力は,でんぷんにアミラーゼが作用するとき,

でんぷんの直鎖成分(アミロース)の低分子化に伴うでんぷんの ヨウ素による呈色の減少を測定して求める.その単位は,操作 法の条件で試験するとき,1分間にバレイショデンプンのヨウ 素による呈色を10%減少させる酵素量を1でんぷん糊精化力単 位とする.

1.2.1. 試料溶液の調製

操作法により試験するとき,でんぷんのヨウ素による呈色の 減少が試料濃度に比例する範囲内の試料濃度になるように,試 料に適量の水又は医薬品各条に規定する緩衝液又は塩類溶液を 加えて溶かし,試料溶液とする.その濃度は,通例,0.2~0.5 でんぷん糊精化力単位/mLである.必要ならばろ過する.

1.2.2. 基質溶液の調製

でんぷん糖化力測定法に準じて調製する.

1.2.3. 操作法

基質溶液10mLを正確に量り,37±0.5℃で10分間加温した 後,試料溶液1mLを正確に加え,直ちに振り混ぜる.この液 を37±0.5℃で正確に10分間放置した後,この液1mLを正確に 量り,0.1mol/L塩酸試液10mLに加え,直ちに振り混ぜる.次 に , こ の 液0.5mLを 正 確 に 量 り ,0.0002mol/Lヨ ウ 素 試 液 10mLを正確に加え,振り混ぜた後,水を対照とし,紫外可視 吸光度測定法〈2.24〉により試験を行い,波長660nmにおける 吸光度ATを測定する.別に,試料溶液の代わりに水1mLを正 確に加えて同様に操作し,吸光度ABを測定する.

でんぷん糊精化力(単位/g)=

B T B

A A A-

×M 1

M:試料溶液1mL中の試料の量(g) 1.3. でんぷん液化力測定法

でんぷん液化力は,でんぷんにアミラーゼが作用するとき,

でんぷんの低分子化に伴う粘度の低下を測定して求める.その 単位は,操作法の条件で試験するとき,1分間にバレイショデ ンプン1gに相当する基質溶液の粘度を50%ショ糖標準液の粘 度の2倍から1倍に減少させる酵素量を1でんぷん液化力単位と する.

1.3.1. 試料溶液の調製

操作法により試験するとき,粘度の低下が試料濃度に比例す る範囲内の試料濃度になるように,試料に適量の水又は医薬品

4.03 消化力試験法 87 .

各条に規定する緩衝液又は塩類溶液を加えて溶かし,試料溶液 とする.その濃度は,通例,0.15~0.25でんぷん液化力単位/mL である.

1.3.2. 基質溶液の調製

あらかじめ,バレイショデンプン約1gを精密に量り,105℃

で2時間乾燥し,その減量を測定する.その換算した乾燥物 15.00gに 対 応 す る バ レ イ シ ョ デ ン プ ン を 正 確 に 量 り , 水 300mLを加え,よく振り混ぜながら,徐々に2mol/L水酸化ナ トリウム試液25mLを加えてのり状とし,時々振り混ぜながら 水浴中で10分間加熱する.冷後,2mol/L塩酸試液で正確に中 和し,医薬品各条に規定する緩衝液50mL及び水を加えて正確 に500gとする.用時製する.

1.3.3. 50%ショ糖標準液の調製 白糖50.0gを水50.0mLに溶かす.

1.3.4. 操作法

50%ショ糖標準液50mLを100mLの三角フラスコに入れ,37

±0.5℃の恒温槽中に15分間放置した後,図4.03-1に示す粘 度計をその下端がフラスコ底にほとんど触れる程度に垂直に取 り付け,恒温槽の水を粘度計の外筒に循環させる.50%ショ 糖標準液を粘度計の上の球の中ほどまで静かに吸い上げた後,

重力により流下させ,上下の標線間の流下時間(t1秒)を測定す る.次に,基質溶液50gを100mLの三角フラスコに正確に量り とり,37±0.5℃の恒温槽中に20分間放置した後,試料溶液 1mLを正確に加え,直ちに振り混ぜ,粘度計をその下端がフ ラスコの底にほとんど触れる程度に垂直に取り付け,恒温槽の

A:球容量5mL B:標線 C:外径30mm

D:毛細管内径1.25~1.30mm E:外径8mm

図4.03-1

水を粘度計の外筒に循環させる.時々,反応液を粘度計の上の 球の中ほどまで静かに吸い上げた後,重力により流下させ,上 下の標線間の流下時間(t秒)を測定し,tがt1より短くなるまで 繰り返す.測定のつど,試料溶液を加えたときから液面が上の 標線を通過するときまでの時間(T′秒)を記録する.(T′+t/2) をtに対応する反応時間(T )とし,tとTの曲線を描き,内挿に よりt1及び(2×t1)に対応するT1及びT2を求める.

でんぷん液化力(単位/g)=

2 1

60 T T- ×

M .5 1

M:試料溶液1mL中の試料の量(g) 2. たん白消化力試験法

たん白消化力は,カゼインにプロテアーゼが作用するとき,

ペプチド結合の切断に伴って増加する酸可溶性低分子分解産物 の量をフォリン反応で比色測定して求める.その単位は,操作 法の条件で試験するとき,1分間にチロシン1μgに相当するフ ォリン試液呈色物質の増加をもたらす酵素量を1たん白消化力 単位とする.

2.1. 試料溶液の調製

操作法により試験するとき,非たん白性のフォリン試液呈色 物質の増加が試料濃度に比例する範囲内の試料濃度になるよう に,試料に適量の水又は医薬品各条に規定する緩衝液又は塩類 溶液を加えて溶かし,試料溶液とする.その濃度は,通例,

15~30たん白消化力単位/mLである.

2.2. チロシン検量線

チロシン標準品を105℃で3時間乾燥し,その50mgを正確に 量り,0.2mol/L塩酸試液に溶かし,正確に50mLとする.この 液1mL,2mL,3mL及 び4mLを 正 確 に 量 り , そ れ ぞ れ に 0.2mol/L塩酸試液を加え,正確に100mLとする.それぞれの 液2mLを正確に量り,0.55mol/L炭酸ナトリウム試液5mL及び 薄めたフォリン試液(1→3)1mLをそれぞれ正確に加え,直ちに 振り混ぜ,37±0.5℃で30分間放置した後,これらの液につき,

0.2mol/L塩酸試液2mLを正確に量り,同様に操作して得た液 を対照とし,紫外可視吸光度測定法2.24により試験を行い,

波長660nmにおける吸光度A1,A2,A3及びA4を測定する.縦 軸に吸光度A1,A2,A3及びA4を,横軸にそれぞれの液2mL中 のチロシン量(μg)をとり,検量線を作成する.吸光度差1に対 するチロシン量(μg)を求める.

2.3. 基質溶液の調製

(ⅰ) 基質溶液1:カゼイン(乳製)約1gを精密に量り,105℃で 2時 間乾燥 し,その減量 を測定する .その換算 した乾燥 物 1.20gに対応するカゼイン(乳製)を正確に量り,乳酸試液12mL 及び水150mLを加え,水浴中で加温して溶かす.流水で冷却 した後,1mol/L塩酸試液又は水酸化ナトリウム試液で医薬品 各条に規定したpHに調整し,水を加えて正確に200mLとする.

用時製する.

(ⅱ) 基質溶液2:カゼイン(乳製)約1gを精密に量り,105℃で 2時 間乾燥 し,その減量 を測定する .その換算 した乾燥 物 1.20gに対応するカゼイン(乳製)を正確に量り,0.05mol/Lリン 酸水素二ナトリウム試液160mLを加え,水浴中で加温して溶 かす.流水で冷却した後,1mol/L塩酸試液又は水酸化ナトリ ウム試液で医薬品各条に規定したpHに調整し,水を加えて正 確に200mLとする.用時製する.

2.4. 沈殿試液の調製

(ⅰ) トリクロロ酢酸試液A:トリクロロ酢酸7.20gを水に溶か し,100mLとする.

(ⅱ) トリクロロ酢酸試液B:トリクロロ酢酸1.80g及び無水酢 酸ナトリウム1.80gに6mol/L酢酸試液5.5mL及び水を加えて溶 かし,100mLとする.

2.5. 操作法

医薬品各条に規定する基質溶液5mLを正確に量り,37±

0.5℃で10分間加温した後,試料溶液1mLを正確に加え,直ち に振り混ぜる.この液を37±0.5℃で正確に10分間放置した後,

医薬品各条の規定に従い,トリクロロ酢酸試液A又はB 5mLを 正確に加えて振り混ぜ,再び37±0.5℃で30分間放置し,ろ過 する.初めのろ液3mLを除き,次のろ液2mLを正確に量り,

0.55mol/L炭酸ナトリウム試液5mL及び薄めたフォリン試液(1

→3)1mLをそれぞれ正確に加え,よく振り混ぜ,37±0.5℃で 30分間放置する.この液につき,水を対照とし,紫外可視吸 光度測定法〈2.24〉により試験を行い,波長660nmにおける吸 光度ATを測定する.別に,試料溶液1mLを正確に量り,医薬 品各条の規定に従い,トリクロロ酢酸試液A又はB 5mLを正確 に加えて振り混ぜた後,医薬品各条に規定する基質溶液5mL を正確に加え,直ちに振り混ぜ,37±0.5℃で30分間放置し,

以下同様に操作し,吸光度ABを測定する.

たん白消化力(単位/g)

=(AT-AB)×F × 2 11×

10 1 ×

M 1

M:試料溶液1mL中の試料の量(g)

F:チロシン検量線より求めた吸光度差が1のときのチロシ ン量(μg)

3. 脂肪消化力試験法

脂肪消化力は,オリブ油にリパーゼが作用するとき,エステ ル結合の切断に伴って生成する脂肪酸の量を滴定して求める.

その単位は,操作法の条件で試験するとき,1分間に1マイク ロモル(μmol)の脂肪酸の増加をもたらす酵素量を1脂肪消化力 単位とする.

3.1. 試料溶液の調製

操作法により試験するとき,脂肪酸量の増加が試料濃度に比 例する範囲内の試料濃度になるように,試料に冷やした適量の 水又は医薬品各条に規定する緩衝液又は塩類溶液を加えて溶か し,又は懸濁し,試料溶液とする.その濃度は,通例,1~5 脂肪消化力単位/mLである.

3.2. 基質溶液の調製

乳化液/オリブ油混液(3:1)200~300mLを乳化器(図4.03-

2)の 容器に入れ,10℃以下に冷却しな がら,毎分12000~

16000回転で10分間乳化する.この溶液は乳化後1時間冷所に 放置し,油層の分離しないことを確認した後に使用する.

3.3. 乳化液の調製

医薬品各条に規定するポリビニルアルコール20gに水800mL を加え,かき混ぜながら75~80℃で約1時間加熱して溶かす.

冷後,必要ならばろ過し,水を加えて正確に1000mLとする.

3.4. 操作法

基質溶液5mL及び医薬品各条に規定する緩衝液4mLをそれ ぞれ正確に量り,三角フラスコに入れて振り混ぜ,37±0.5℃

A:モーター箱 B:内柱 C:外柱 D:冷却槽取付板 E:モーター頭部 F:モーター軸 G:モーター上下レバー H:回転調節レバー I:コップ保持器 J:冷却槽 K:ツマミ L:コップのふた M:吹上げ止め N:刃 O:ねじ

図4.03-2 乳化器

で10分間放置した後,試料溶液1mLを正確に加え,直ちに振 り混ぜる.この液を37±0.5℃で正確に20分間放置した後,エ タノール(95)/アセトン混液(1:1)10mLを加えて振り混ぜる.

次に0.05mol/L水酸化ナトリウム液10mLを正確に加え,更に エタノール(95)/アセトン混液(1:1)10mLを加えて振り混ぜ た後,過量の水酸化ナトリウムを0.05mol/L塩酸で滴定2.50 する(b mL)(指示薬:フェノールフタレイン試液2~3滴).別に 基質溶液5mL及び医薬品各条に規定する緩衝液4mLをそれぞ れ正確に量り,三角フラスコに入れて振り混ぜ,37±0.5℃で 10分間放置した後,エタノール(95)/アセトン混液(1:1)10mL を加え,次に試料溶液1mLを正確に加えて振り混ぜる.次に 0.05mol/L水酸化ナトリウム液10mLを正確に加え,以下同様 に操作して滴定2.50する(a mL).

脂肪消化力(単位/g)=50×(a-b)×

20 1 ×

M 1

M:試料溶液1mL中の試料の量(g)