• 検索結果がありません。

9. 標準品,標準液,試薬・試液,計量 器・用器等

9.21 容量分析用標準液

容量分析用標準液は,濃度が精密に知られた試薬溶液で,主 として容量分析に用いるものである.

容量分析用標準液には規定のモル濃度に調製された液を用い る.それぞれの標準液につき規定された物質1モルが1000mL 中に正確に含まれるように調製した溶液が1モル濃度溶液であ り,1mol/Lで表す.

また必要に応じて,それらを一定の割合に薄めた液を用いる.

例えば1mol/L溶液を10倍容量に薄めたものは0.1mol/L溶液で ある.

容量分析用標準液は,別に規定するもののほか,無色又は遮 光した共栓瓶に入れ,保存する.

調製及び標定

容量分析用標準液は,次のいずれかの方法によって調製し,

規定された濃度n (mol/L)からのずれの度合いは,ファクターf により表す.日本薬局方では,通例,ファクターf が0.970~

1.030の範囲にあるように調製する.ファクターを決定する操 作を標定という.

(1) 純物質約1モルあるいはその倍数又は分数に相当する量 を精密に量り,規定の溶媒に溶かして正確に1000mLとし,規 定の濃度n (mol/L)に近似する濃度の標準液を調製する.この 場合,秤量した純物質の質量(g)をその物質1モルの質量(g)で除 し,更に規定されたモル濃度を表す数値nで除した値をその標 準液のファクターf とする.もし,純物質が得られない場合は,

純度が正確にわかっている純度の高い物質を用いて差し支えな い.

(2) 純物質又は純度が正確にわかっている純度の高い物質が 得られない場合,それぞれの標準液につき定められた物質約1 モルあるいはその倍数又は分数に相当する量を量り,規定の溶 媒に溶かして約1000mLとし,規定された濃度n (mol/L)付近の 標準液を調製する.この標準液の正確な濃度を知るため,標定 操作を行ってそれぞれの標準液のファクターf を定める.標定 法には直接法と間接法がある.

a) 直接法

標準試薬などそれぞれの標準液について規定された物質の規 定量を精密に量り,規定の溶媒に溶かした後,この液を調製し た標準液で滴定し,次の式を用いてそれぞれの標準液のファク ターf を定める.

VMn f 1000m

M:標準液の調製に用いた物質(例えば,1mol/L塩酸であれ ば塩酸)1モルに対応する標準試薬などの質量(g)

m:標準試薬などの採取量(g) V:調製した標準液の消費量(mL)

n:調製した標準液の規定されたモル濃度を表す数値(例えば,

濃度0.02mol/Lの標準液であれば,n=0.02) b) 間接法

直接に標準試薬などを用いない場合,調製した標準液の一定 量V2(mL)をとり,ファクター既知(f1)の規定の滴定用標準液を 用いて滴定し,次の式を用いて調製した標準液のファクター (f2)を計算する.

2 1 2 V1V f f= ×

f1:滴定用標準液のファクター f2:調製した標準液のファクター

9.21 容量分析用標準液 133 .

V1:滴定用標準液の消費量(mL) V2:調製した標準液の採取量(mL)

(3) ファクター既知の標準液の一定容量をとり,規定の方法 で正確に希釈し,規定の濃度n (mol/L)の標準液を調製する.

この場合,元の標準液のファクターと希釈して調製した標準液 のファクターとは変わらないものとする.

0.1mol/L亜鉛液

1000mL中亜鉛(Zn:65.38)6.538gを含む.

調製 亜鉛(標準試薬)を希塩酸で洗い,次に水洗し,更にアセ トンで洗った後,110℃で5分間乾燥した後,デシケーター(シ リカゲル)中で放冷し,その6.538gに希塩酸80mL及び臭素試 液2.5mLを加え,静かに加温して溶かし,煮沸して過量の臭素 を除き,水を加えて正確に1000mLとする.

0.1mol/L亜硝酸ナトリウム液

1000mL中亜硝酸ナトリウム(NaNO2:69.00)6.900gを含む.

調製 亜硝酸ナトリウム7.2gを水に溶かし,1000mLとし,次 の標定を行う.

標定 ジアゾ化滴定用スルファニルアミドを105℃で3時間乾 燥した後,デシケーター(シリカゲル)中で放冷し,その約 0.44gを精密に量り,塩酸10mL,水40mL及び臭化カリウム溶 液(3→10)10mLを加えて溶かし,15℃以下に冷却した後,調 製した亜硝酸ナトリウム液で,滴定終点検出法〈2.50〉の電位 差滴定法又は電流滴定法により滴定し,ファクターを計算する.

0.1mol/L亜硝酸ナトリウム液1mL

=17.22mg H2NC6H4SO2NH2

注意 遮光して保存する.長く保存したものは,標定し直して 用いる.

0.1mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウ ム液

1000mL中エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水 和物(C10H14N2Na2O8・2H2O:372.24)37.224gを含む.

調製 エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物 38gを水に溶かし,1000mLとし,次の標定を行う.

標定 亜鉛(標準試薬)を希塩酸で洗い,次に水洗し,更にアセ トンで洗った後,110℃で5分間乾燥した後,デシケーター(シ リカゲル)中で放冷し,その約1.3gを精密に量り,希塩酸20mL 及び臭素試液8滴を加え,穏やかに加温して溶かし,煮沸して 過量の臭素を追い出した後,水を加えて正確に200mLとする.

この液25mLを正確に量り,水酸化ナトリウム溶液(1→50)を 加えて中性とし,pH10.7のアンモニア・塩化アンモニウム緩 衝液5mL及びエリオクロムブラックT・塩化ナトリウム指示薬 0.04gを加え,調製したエチレンジアミン四酢酸二水素二ナト リウム液で,液の赤紫色が青紫色に変わるまで滴定2.50し,

ファクターを計算する.

0.1mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液1mL

=6.538mg Zn

注意 ポリエチレン瓶に保存する.

0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウ ム液

1000mL中エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水 和物(C10H14N2Na2O8・2H2O:372.24)18.612gを含む.

調製 エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物 19gを水に溶かし,1000mLとし,次の標定を行う.

標定 亜鉛(標準試薬)を希塩酸で洗い,次に水洗し,更にアセ トンで洗った後,110℃で5分間乾燥した後,デシケーター(シ リカゲル)中で放冷し,その約0.8gを精密に量り,希塩酸12mL 及び臭素試液5滴を加え,穏やかに加温して溶かし,煮沸して 過量の臭素を追い出した後,水を加えて正確に200mLとする.

この液20mLを正確に量り,水酸化ナトリウム溶液(1→50)を 加えて中性とし,pH10.7のアンモニア・塩化アンモニウム緩 衝液5mL及びエリオクロムブラックT・塩化ナトリウム指示薬 0.04gを加え,調製したエチレンジアミン四酢酸二水素二ナト リウム液で,液の赤紫色が青紫色に変わるまで滴定2.50し,

ファクターを計算する.

0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液1mL

=3.269mg Zn

注意 ポリエチレン瓶に保存する.

0.02mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウ ム液

1000mL中エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水 和物(C10H14N2Na2O8・2H2O:372.24)7.445gを含む.

調製 エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物 7.5gを水に溶かし,1000mLとし,次の標定を行う.

標定 0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム 液に準じる.ただし,亜鉛(標準試薬)を希塩酸で洗い,次に水 洗し,更にアセトンで洗った後,110℃で5分間乾燥した後,

デシケーター(シリカゲル)中で放冷し,約0.3gを精密に量り,

希塩酸5mL及び臭素試液5滴を加え,以下同様に操作する.

0.02mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液1mL

=1.308mg Zn

注意 ポリエチレン瓶に保存する.

0.01mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウ ム液

1000mL中エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水 和物(C10H14N2Na2O8・2H2O:372.24)3.7224gを含む.

調製 用時,0.02mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナト リウム液に水を加えて正確に2倍容量とする.

0.001mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリ ウム液

1000mL中エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水 和物(C10H14N2Na2O8・2H2O:372.24)0.37224gを含む.

調製 用時,0.01mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナト リウム液に水を加えて正確に10倍容量とする.

0.1mol/Lエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム液 0.1mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液

を見よ.

0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム液 0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液 を見よ.

0.02mol/Lエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム液 0.02mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液 を見よ.

0.01mol/Lエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム液 0.01mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液 を見よ.

0.001mol/Lエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム液 0.001mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液 を見よ.

0.1mol/L塩化チタン(Ⅲ)液

1000mL中塩化チタン(Ⅲ)(TiCl3:154.23)15.423gを含む.

調製 塩化チタン(Ⅲ)(20)75mLに塩酸75mLを加え,新たに煮 沸して冷却した水を加えて1000mLとし,遮光したため付きビ ュレットに入れ,空気を水素で置換し,48時間放置した後に 使用する.用時,次の標定を行う.

標定 硫酸アンモニウム鉄(Ⅱ)六水和物3gを500mLの広口三角 フラスコに量り,二酸化炭素を通じながら,新たに煮沸して冷 却した水50mLを加えて溶かし,薄めた硫酸(27→100)25mLを 加え,二酸化炭素を通じながら,速やかに0.02mol/L過マンガ ン酸カリウム液40mLを正確に加える.これにほとんど終点近 くまで,調製した塩化チタン(Ⅲ)液を加えた後,直ちにチオシ ア ン 酸 ア ン モ ニ ウ ム5gを 加 え , 塩 化 チ タ ン(Ⅲ)液 で 滴 定

2.50する.ただし,滴定の終点は液の色が消えるときとす る.同様の方法で空試験を行い,補正し,ファクターを計算す る.

注意 空気を水素で置換して保存する.

0.1mol/L塩化バリウム液

1000mL中塩化バリウム二水和物(BaCl2・2H2O:244.26) 24.426gを含む.

調製 塩化バリウム二水和物24.5gを水に溶かし,1000mLと し,次の標定を行う.

標定 調製した塩化バリウム液20mLを正確に量り,塩酸3mL を 加 え て 加 温 す る . あ ら か じ め 加 温 し た 薄 め た 硫 酸(1→

130)40mLを加え,水浴上で30分間加熱した後,一夜放置する.

この液をろ過し,ろ紙上の残留物を,ろ液に硝酸銀試液を加え ても濁りを認めなくなるまで水洗した後,ろ紙と共にるつぼに 移し,強熱灰化する.冷後,硫酸2滴を加え,再び約700℃で2 時間強熱する.冷後,残留物の質量を精密に量り,硫酸バリウ ム(BaSO4)の量とし,ファクターを計算する.

0.1mol/L塩化バリウム液1mL=23.34mg BaSO4

0.02mol/L塩化バリウム液

1000mL中塩化バリウム二水和物(BaCl2・2H2O:244.26)

4.885gを含む.

調製 塩化バリウム二水和物4.9gを水に溶かし,1000mLとし,

次の標定を行う.

標定 調製した塩化バリウム液100mLを正確に量り,塩酸 3mLを加えて加温する.あらかじめ加温した薄めた硫酸(1→

130)40mLを加え,水浴上で30分間加熱した後,一夜放置する.

この液をろ過し,ろ紙上の残留物を,ろ液に硝酸銀試液を加え ても濁りを認めなくなるまで水洗した後,ろ紙と共にるつぼに 移し,強熱灰化する.冷後,硫酸2滴を加え,再び約700℃で2 時間強熱する.冷後,残留物の質量を精密に量り,硫酸バリウ ム(BaSO4)の量とし,ファクターを計算する.

0.02mol/L塩化バリウム液1mL=4.668mg BaSO4

0.01mol/L塩化バリウム液

1000mL中塩化バリウム二水和物(BaCl2・2H2O:244.26) 2.4426gを含む.

調製 用時,0.02mol/L塩化バリウム液に水を加えて正確に2 倍容量とする.

0.05mol/L塩化マグネシウム液

1000mL中 塩 化 マ グ ネ シ ウ ム 六 水 和 物(MgCl2・6H2O: 203.30)10.165gを含む.

調製 塩化マグネシウム六水和物10.2gに新たに煮沸して冷却 した水を加えて溶かし,1000mLとし,次の標定を行う.

標定 調製した塩化マグネシウム液25mLを正確に量り,水 50mL,pH10.7のアンモニア・塩化アンモニウム緩衝液3mL 及びエリオクロムブラックT・塩化ナトリウム指示薬0.04gを 加え,0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム 液で滴定2.50し,ファクターを計算する.ただし,滴定の 終点は,終点近くでゆっくり滴定し,液の赤紫色が青紫色に変 わるときとする.

0.01mol/L塩化マグネシウム液

1000mL中 塩 化 マ グ ネ シ ウ ム 六 水 和 物(MgCl2・6H2O: 203.30)2.0330gを含む.

調製 用時,0.05mol/L塩化マグネシウム液に水を加えて正確 に5倍容量とする.

2mol/L塩酸

1000mL中塩酸(HCl:36.46)72.92gを含む.

調製 塩酸180mLに水を加えて1000mLとし,次の標定を行 う.

標定 1mol/L塩酸に準じる.ただし,炭酸ナトリウム(標準試 薬)約1.5gを精密に量り,水100mLに溶かし,滴定〈2.50〉する.

2mol/L塩酸1mL=106.0mg Na2CO3

1mol/L塩酸

1000mL中塩酸(HCl:36.46)36.461gを含む.

調製 塩酸90mLに水を加えて1000mLとし,次の標定を行う.

標定 炭酸ナトリウム(標準試薬)を500~650℃で40~50分間 加熱した後,デシケーター(シリカゲル)中で放冷し,その約 0.8gを精密に量り,水50mLに溶かし,調製した塩酸で滴定