6. 製剤試験法
7.02 プラスチック製医薬品容器試験法
本試験法は,プラスチック製医薬品容器の設計及び品質評価 に用いることができる.常に,どのような医薬品容器について も,ここに記述したすべての試験を行うことが必要なわけでは ない.他方,本試験法はプラスチック製医薬品容器の設計・品 質評価に必要なすべての試験方法を示すものではない.したが って,必要に応じて他の試験を追加すべきである.
水性注射剤に使用するプラスチック製容器は,内容医薬品と 作用して,その有効性,安全性,安定性に影響を与えず,また,
内容剤が微生物汚染しないものであり,「2.プラスチック製水 性注射剤容器の規格」に適合する.
1. 試験方法 1.1. 灰化試験 1.1.1. 強熱残分
容器の切片約5gを精密に量り,強熱残分試験法〈2.44〉によ り操作して,試験を行う.
1.1.2. 重金属
容器の切片の適当量を磁製るつぼにとり,重金属試験法第2 法〈1.07〉により操作し,試験を行う.比較液には鉛標準液 2.0mLを加える.
1.1.3. 鉛 1.1.3.1. 第1法
容器の切片2.0gを白金製又は石英製るつぼにとり,硫酸 2mLで潤し,徐々に加熱して乾固した後,450~500℃で灰化 する.必要ならばこの操作を繰り返す.冷後,残留物を水で潤 し,塩酸2~4mLを加え,水浴上で蒸発乾固し,更に塩酸1~
5mLを加え,加温して溶かす.次にクエン酸一水和物溶液(1
→2)/塩酸混液(1:1)0.5~1mL及び加熱した酢酸アンモニウ ム溶液(2→5)0.5~1mLを加える.不溶物が残るときはガラス ろ過器(G3)でろ過する.得られたろ液にクエン酸水素二アンモ ニウム溶液(1→4)10mL及びブロモチモールブルー試液2滴を 加え,液の色が黄色から緑色になるまでアンモニア試液を加え る.これに硫酸アンモニウム溶液(2→5)10mL及び水を加えて 100mLとする.次にN,N-ジエチルジチオカルバミン酸ナト リウム三水和物溶液(1→20)20mLを加えて混和し,数分間放 置した後,4-メチル-2-ペンタノン20.0mLを加えて激しく 振り混ぜる.これを静置して4-メチル-2-ペンタノン層を 分取し,必要ならばろ過し,試料溶液とする.
別に鉛標準液2.0mLをとり,水を加えて正確に10mLとし,
この液1.0mLにクエン酸水素二アンモニウム溶液(1→4)10mL 及びブロモチモールブルー試液2滴を加え,以下試料溶液と同 様に操作し,標準溶液とする.
試料溶液及び標準溶液につき,次の条件で原子吸光光度法
〈2.23〉により試験を行い,試料溶液中の鉛濃度を定量する.
使用ガス:
可燃性ガス アセチレン又は水素 支燃性ガス 空気
ランプ:鉛中空陰極ランプ 波長:283.3nm
1.1.3.2. 第2法
容器の切片を5mm角以下に細断し,その2.0gをビーカーに とり,2-ブタノン50mL及び硝酸0.1mLを加えて加温し,溶 解する.これにメタノール96mLを徐々に加えて樹脂分を沈殿 させた後,吸引ろ過する.
ビーカー及び樹脂分をメタノール12mL,次に水12mLで洗 い,洗液とろ液を合わせて減圧で約10mLになるまで濃縮し,
分液漏斗に移す.これに酢酸エチル10mL及び水10mLを加え て激しく振り混ぜた後,静置し,水層を分取し,これを蒸発乾 固する.残留物に塩酸5mLを加え,加温して溶かす.次にク エン酸一水和物溶液(1→2)/塩酸混液(1:1)1mL及び加温した 酢酸アンモニウム溶液(2→5)1mLを加える.不溶物が残るとき はガラスろ過器(G3)でろ過する.得られた液にクエン酸水素二 アンモニウム溶液(1→4)10mL及びブロモチモールブルー試液 2滴を加え,液の色が黄色から緑色になるまでアンモニア試液 を加える.これに硫酸アンモニウム溶液(2→5)10mL及び水を
7.02 プラスチック製医薬品容器試験法 123 .
加えて100mLとする.次にN,N-ジエチルジチオカルバミン 酸ナトリウム三水和物溶液(1→20)20mLを加えて混和し,数 分間放置した後,4-メチル-2-ペンタノン20.0mLを加え,
激しく振り混ぜる.これを静置して4-メチル-2-ペンタノ ン層を分取し,必要ならばろ過し,試料溶液とする.
別に鉛標準液5mLを正確に量り,水を加えて正確に50mLと する.この液2.0mLをとり,クエン酸水素二アンモニウム溶液 (1→4)10mL及びブロモチモールブルー試液2滴を加え,以下 試料溶液と同様に操作し,標準溶液とする.
試料溶液及び標準溶液につき,第1法と同じ条件で原子吸光 光度法〈2.23〉により試験を行い,試料溶液中の鉛濃度を定量 する.
1.1.4. カドミウム 1.1.4.1. 第1法
カドミウム標準液2.0mLにクエン酸水素二アンモニウム溶液 (1→4)10mL及びブロモチモールブルー試液2滴を加え,以下
「1.1.3.1.第1法」の試料溶液と同様に操作し,標準溶液とする.
「1.1.3.1.第1法」の試料溶液及び標準溶液につき,次の条件で 原子吸光光度法〈2.23〉により試験を行い,試料溶液中のカド ミウム濃度を定量する.
使用ガス:
可燃性ガス アセチレン又は水素 支燃性ガス 空気
ランプ:カドミウム中空陰極ランプ 波長:228.8nm
1.1.4.2. 第2法
カドミウム標準液2.0mLにクエン酸水素二アンモニウム溶液 (1→4)10mL及びブロモチモールブルー試液2滴を加え,以下
「1.1.3.2.第2法」の試料溶液と同様に操作し,標準溶液とする.
「1.1.3.2.第2法」の試料溶液及び標準溶液につき,「1.1.4.1.
第1法」と同じ条件で原子吸光光度法〈2.23〉により試験を行い,
試料溶液中のカドミウム濃度を定量する.
1.1.5. スズ
容器の切片を5mm角以下に細断し,その5.0gをケルダール フラスコにとり,硫酸/硝酸混液(1:1)30mLを加え,マッフ ル炉で穏やかに加熱しながら内容物が褐色澄明の液になるまで,
時々,硫酸/硝酸混液(1:1)を少量ずつ滴加して分解する.次 に液の色が淡黄色澄明となるまで加熱した後,徐々に濃縮し,
液をほとんど蒸発乾固するまで加熱する.冷後,残留物に塩酸 5mLを加え,加温して溶かし,冷後,水を加えて正確に10mL とする.この液5mLを正確に量り,25mLのメスフラスコ(A) にとる.次に残りの液を25mLのビーカー(B)に水10mLを用い て移し,ブロモクレゾールグリーン試液2滴を加え,薄めたア ンモニア水(28)(1→2)を用いて中和し,中和に要した容量をa mLとする.次にAに液の色がわずかに微紅色を呈するまで過 マンガン酸カリウム試液を滴加した後,少量のL-アスコルビ ン酸を脱色するまで加える.次に1mol/L塩酸試液1.5mL,ク エン酸一水和物溶液(1→10)5mL,薄めたアンモニア水(28)(1
→2)a mL及びポリビニルアルコール試液2.5mLを順次加え,
更にフェニルフルオロン・エタノール試液5.0mL及び水を加え て25mLとし,よく振り混ぜて約20分間静置し,これを試料溶 液とする.
別にスズ標準液1.0mLを正確に量り,水5mLを加え,液の 色がわずかに微紅色を呈するまで過マンガン酸カリウム試液を
滴加し,以下,試料溶液と同様に操作して得た液を標準溶液と する.
試料溶液及び標準溶液につき,水を対照として紫外可視吸光 度測定法〈2.24〉により波長510nmの吸光度を測定する.
1.2. 溶出物試験
容器のできるだけ湾曲が少なく,厚さが均一な部分をとって 切断し,厚みが0.5mm以下のときは,表裏の表面積の合計が 約1200cm2になるように,また,厚みが0.5mmを超えるとき は,約600cm2になるように切断片を集め,更にこれらを,通 例,長さ約5cm,幅約0.5cmの大きさに細断し,水で洗った後,
室温で乾燥する.これを内容約300mLの硬質ガラス製容器に 入れ,水200mLを正確に加え,適当に密栓した後,高圧蒸気 滅菌器を用いて121℃で1時間加熱した後,硬質ガラス製容器 を取り出して室温になるまで放置し,この内容液を試験液とす る.
なお,複合材料容器の場合は,容器に表示容量の水を入れて 抽出を行ってもよい.ただし,抽出液量と材料面積の比を記録 しておくこと.
また,容器が121℃で変形する場合は,耐えられる最高温度 で抽出する.その場合,温度と抽出時間の関係は次のとおりと する:100±2℃,2±0.2時間;70±2℃,24±2時間;50±
2℃,72±2時間;37±1℃,72±2時間.
別に水につき,同様の方法で操作し空試験液を調製する.た だし,複合材料容器の場合は,水を空試験液とする.試験液及 び空試験液につき,次の試験を行う.
(ⅰ) 泡立ち:試験液5mLを内径約15mm,長さ約200mmの 共栓試験管に入れ,3分間激しく振り混ぜ,生じた泡がほとん ど消失するまでの時間を測定する.
(ⅱ) pH〈2.54〉:試験液及び空試験液20mLずつをとり,こ れに塩化カリウム1.0gを水に溶かして1000mLとした液1.0mL ずつを加え,両液のpHを測定し,その差を算出する.
(ⅲ) 過マンガン酸カリウム還元性物質:試験液20.0mLを共 栓三角フラスコにとり,0.002mol/L過マンガン酸カリウム液 20.0mL及び希硫酸1mLを加え,3分間煮沸し,冷後,これに ヨウ化カリウム0.10gを加えて密栓し,振り混ぜて10分間放置 した後,0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で滴定〈2.50〉する (指示薬:デンプン試液5滴).別に空試験液20.0mLを用い,同 様に操作する.試験液及び空試験液の0.002mol/L過マンガン 酸カリウム液消費量の差を算出する.
(ⅳ) 紫外吸収スペクトル:試験液につき,空試験液を対照と し,紫外可視吸光度測定法〈2.24〉により試験を行い,波長220
~240nmの区間及び241~350nmのそれぞれの区間での最大 吸光度を記録する.
(ⅴ) 蒸発残留物:試験液20mLを水浴上で蒸発乾固し,残留 物を105℃で1時間乾燥し,その質量を量る.
1.3. 微粒子試験 1.3.1. 操作法
容器の内外を微粒子試験用水でよく洗い,容器に表示された 内容量の微粒子試験用水又は0.9w/v%塩化ナトリウム溶液を入 れ,表示内容量500mLにつき容器内の空気の量が約50mLとな るようにして密栓した後,高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で25 分間加熱し,2時間放冷した後に取り出し,常温で約24時間静 置する.なお,容器が121℃で変形する場合にあっては,溶出 物試験の温度・時間条件に関する規定を準用する.次に容器の
外部を清浄にし,5~6回転倒混和した後,直ちに容器のゴム 栓にフィルターのない清浄な輸液セットの針をさし,穏やかに 振り混ぜながら,流出液を清浄な測定用容器にとり,試験液と する.
微粒子の測定は,塵埃の少ない清浄な設備内又は装置内で光 遮蔽粒子計数装置を用いて行う.装置のセンサーは,粒子径 1.5μm以上の微粒子が測定できるものを用い,測定用量は 10mLとする.装置をあらかじめ調整した後,その状態で測定 する.粒子径及び粒子数の校正は,光遮蔽型自動微粒子測定器 校正用標準粒子を微粒子試験用水又は0.9w/v%塩化ナトリウム 溶液に懸濁させた液を用いて行う.
試 験液を かき 混ぜな がら粒 子径5~10μm,10~25μm,
25μm以上の粒子数をそれぞれ5回測定し,初めの測定値を除 いた4回の平均粒子数から試験液1.0mL中の粒子数を求める.
1.3.2. 試薬
微粒子試験用水及び0.9w/v%塩化ナトリウム溶液は,微粒子 試験法により試験するとき,5~10μmの粒子数が1.0mLにつ き,0.5個以下のものを用いる.
1.4. 透明性試験 1.4.1. 第1法
容器表面に凹凸やエムボス加工などがなく,比較的湾曲の少 ない容器の試験に適用できる.
容器の胴部から,できるだけ湾曲が少なく厚さが均一な部分 をとって,約0.9×4cmの大きさに切断したもの5個を作り,そ れぞれを水を満たした紫外線吸収スペクトル測定用セルに浸し,
水だけを満たしたセルを対照として,紫外可視吸光度測定法
〈2.24〉により波長450nmの透過率を測定する.
1.4.2. 第2法
官能試験 容器表面に凹凸やエムボス加工がある容器の試験 に適用できる.また,内容医薬品の析出などによる濁りを見つ ける必要があるような医薬品の容器の透明性を試験する場合に 適用できる.
1.4.2.1. 試液
(ⅰ) ホルマジン標準乳濁液:ホルマジン乳濁原液15mLに水 を加え1000mLとする.調製後24時間以内に使用することとし,
用時よく振り混ぜて用いる.
(ⅱ) 参照乳濁液:ホルマジン標準乳濁液50mLに,水を加え て100mLとする.
1.4.2.2. 操作法
(ⅰ) 有対照法:試験容器2個を用意し,片方に参照乳濁液を 表示容量だけ入れ,他方に水を同じ量だけ入れる.どちらに参 照乳濁液を入れたか知らされていない5人の被験者それぞれに,
個別にこの二つの試料をみせて比較させ,どちらが濁っている かを問い,正解率を求める.
(ⅱ) 無対照法:試験容器6個を用意し,番号をふる.その中 の3個には水を,他の3個には参照乳濁液を表示容量だけ入れ る.どの容器に何が入っているか知らされていない被験者5人 を個別に呼び,ランダムな順序でこの6個の容器を一つ一つみ せて,内容液が濁っているかどうかを問い,水及び参照乳濁液を 入れた2容器群について,濁っていると判断した率(100X/15:
Xは濁っていると判断された試験容器の数)を求める.
1.5. 水蒸気透過性試験 1.5.1. 第1法
主に水性注射剤容器に適用する.容器に表示された内容量の 水を入れ,密封した後,その質量を精密に量る.次に相対湿度 65±5%,温度20±2℃で14日間放置した後,再び質量を精密 に量り,その減量を算出する.
1.5.2. 第2法
製剤の容器を通した吸湿性の評価に適用する.別に規定する もののほか,次の方法により試験を行う.
1.5.2.1. 乾燥剤
微粉を入れないように注意しながら,水分測定用塩化カルシ ウムを浅い容器にとり,110℃で1時間乾燥後,デシケーター 中で放冷する.
1.5.2.2. 操作法
容器12個をとり,乾燥布で表面を清浄にし,各容器を30回,
毎回一様に開閉する.この中の10個を試験容器として,残り の2個を対照容器として用いる.ねじ付栓は,表7.02-1に規 定されたトルクで閉める.試験容器10個をとり,各々に乾燥 剤を内容20mL以上の容器では栓から13mm以内まで,内容 20mL未満の容器では容器容積の2/3まで加える.内部の深さ が63mm以上の容器では,容器と乾燥剤の総質量を最小にする ような詰め物かスペーサーを底部に入れてもよいが,容器内の 乾燥剤の層は5cm以上になるようにする.乾燥剤を加えた後,
直ちにねじ付栓を規定のトルクで閉める.対照容器2個をとり,
試験容器の質量とほぼ等しくなるようにガラスビーズを加え,
同様の強さで閉める.調製した各容器の質量を,内容20mL未 満の容器では0.1mg単位まで,内容20mL以上200mL未満の容 器では1mg単位まで,内容200mL以上の容器では10mg単位ま で精密に量り,相対湿度75±3%,温度20±2℃で保存する.
表7.02-1 ねじ付容器 に適切なトルク 栓の径(mm)トルク(N・cm)
8 59 10 60 13 88 15 59~ 98 18 78~ 118 20 88~ 137 22 98~ 157 24 118~ 206 28 137~ 235 30 147~ 265 33 167~ 284 38 196~ 294 43 196~ 304 48 216~ 343 53 235~ 402 58 265~ 451 63 284~ 490 66 294~ 510 70 314~ 569 83 363~ 735 86 451~ 735 89 451~ 794 100 510~ 794 110 510~ 794 120 618~1069 132 677~1069