• 検索結果がありません。

  「探索」の段階が抽出された班は予想がアであった生徒で構成されたが、必 ずしもアという考えに固執していたわけではない。例えば生徒Kはアもしくは ウ、生徒Mはアとイのどちらか、という予想も持っていたのでとりあえず同じ 班にした。Kがアもしくはウと考えたのは次のような理由からである。

 第3時1組(実験群)1班(巻末資料p55−57参照)

Kl 私が思うには…。棒〔方位磁針〕が向いた方向にさあ、何、なんか一磁界ができるじゃん、こう やって丸く…。これ磁界ができるから、その向きも磁界の方向に向くんじゃないかと思ったんだけど。

でも。結局は真ん中にこうやって出てるわけだから、こういうふうに〔丸く〕できるんだって磁界が。

02  こうレ、うふう?

K3 だからウだって。

04 ウ?

K5 やっぱりア

 前時で磁界の様子が同心円状であることを確認しているので、その磁力線に 沿うように方位磁針が向くであろう、とKは考えた。電流がっくる磁界はあま

り強くないのでアのように完全に磁界方向を向かないのではという考えもKの 中にあり、アとウの間で迷いがあったためK3でウと言っているが、これはす

ぐにK5でアに直されている。

 Mもアかイで迷っていた。それはこの時点では、磁界の方向をどのようにし て決めればよいのか自信が持てなかったからである。そこで、MはKに磁界の 方向について質問をする(M10)。

M10 N極がこっち向くってどうしてわかるの?こっちまわりかこつちまわりか〔右まわりか逆まわ りか〕どうやって分かるの?

K11 わかるよ。

012 ねえ聞いて、聞いて。

K13(Oを制止して)ちょっと待って。電流がこうやって流れるんだから、こういうふうに回って、

こういうふうに(なったってことは)指の:方向がこっちだから、こうやって電流が流れているって考え ればいい。じゃないの。こういうふうに電流が流れるんだったら逆になつちゃうんじゃない?

 Kはすでに磁界の向きを図のような方法で求めるこ とを知っており、Mに対して実際に右手を使って説明を した(K13)。しかし、同じ班の0はKとMのやりと りを聞きながら、一方で他の班の話し合いの様子を見聞 きしていたようで、Kに対して磁界の方向が違うのでは ないか、と訊ねた(014)。

014 うん、逆だね。//あっ、でも〔電流は〕こういうふうに〔上か ら下に〕流れるんでしょ?//あれっ、うちら〔方向が〕逆じゃない。

(0は隣の班の様子を見ていたようだった。)イじゃない?

K15逆かなあ?こういくとこういって、で、こういくと反対だもん。

//逆かなあ?

016 ねえ、左手でやると〔磁界の向きを調べてみると〕方向が違うよ。

//ほら。 (と言って磁界の様子を手で示す。)

K17 本当だ。

O18 左手だよ。

K19左手かなあ?//右手だよ。習ったもん。

020 ねえ、Mこれ〔手を使って磁界を確かめる方法)知ってる。

M21知らない。でも、左手なんとかって聞いたことあるよ。

022ほれみい。左だよ。 〔左手を使って確かめるんだよ。〕

K23 じゃあ、うちらの考えは反対だったわけだ。

電瀧の  向き

 イ

¢歪)

磁界の向春

図26 電流・磁界の向き と右手の関係鮒

 Kは今まで自信を持って説明していたものの、他の班の様子まで引き合いに 出されて自分の考えが逆ではないかと問われたので、自信がなくなってしまっ た。さらに、0が磁界の方向の解決策として右手ではなく左手を用いれば磁界 の方向をイにすることができると言ったので(016)、自分が理解していた方 法が右手を使うのか左手を使うのか分からなくなってしまったのである。Mに も訊ねてみるが、Mはそのような方法を知らないが、「フレミング左手の法則」

のことをどこかで聞いたのであろうか、「左手なんとかって聞いたことある(M 21)」とKに言うのである。 (0が左手を持ち出したのも、たぶん「フレミン グ左手の法則」との混乱があるのではないかと考えられる。なお、「フレミン グ左手の法則」中学校理科では取り扱わないことになっている(59)うえ、磁界 中の電流が受ける力については第5時で学習することになっている。)このた めKは磁界の方向が自分が考えていたものと反対であることを認めるようにな ってしまったのである(K23)。

 MはKと0のやりとりを聞いていたが、右手左手で自分の疑問を解決すると

一92一

いう方法をとらなかった。Mは最:初の段階(M6)でも言及していたが、 Mが 注目していたのは前回に行ったエルステッドの実験の結果だった。

M24ねえ、いい?この前、こうやって横に導線引っ張ってやったじゃん。(第2時のエルステッド の実験のことを言っている。)

K25 うん。

M26で、その時に上に方位磁針をおいたら北が、 N極の方がこっちむいたじゃん。

K27 うん。だってこうだもん。こっちから…

M28       ↓(Kを遮って)いや、下に来るんでしょ。//だから

これでいいんじゃん。分かる?

 M24、M26でMが言いたかったことは次の

ようなことである。

 図27のように導線の上に方位磁針(黒い方 がN極とする)を置いて矢印方向に電流を流 すとN極は図の上の方に動く。N極が動く方 が磁界の方向だから、導線の手前側の磁界の 方向は図の上向きになる。これを図24の課題

       図27導線の上に置かれた方位磁針 に適用すると磁界の方向はKが最初に主張し

た方向になる、というものである。MはK 13でKから磁界の方向について説明 を聞いたが、その後Kが0と磁界の方向についてやりとりをしている間プロト コル記録にあらわれていないが、ずっとこの事を考えていたようである。

 Mの考え方はKにも変化を与えた。Mの言うとおり、前時の結果を用いれば 磁界の方向を特定することができる。人から聞いたことや参考書に書いてあっ たことではなく、実際に自分がこの目で確かめたことを自分の考えの根拠とす ることができるのである。KはMの考えが自分の考えに適用できないかMの話

に耳を傾ける。

M32で、上においたときこうやって磁界は流れているじゃん、円をかくように…で。

K33      ↓あれ?それって こうやって流れていなかった?

M34 えっ?

K35 円をかくようにして流れているんでしょ?//回りに。

M36      ↓うん。こうやってね。

K37 えっ回りなの?

M38だから、導線の回りに円をかくようにして磁界ができるんじゃない。//ここに方位磁針があ ったでしょう。

K39 こうやってなっていくんじゃないの?

M40      ↓違う違う違う。

K41      ↓なんで?//言ってたじゃんこうなってるっ

て。

M42 だから、こうなっているの//こうなっているんじゃないよ。//棒磁石と違うよ。

M43こ口なっていたらさあ、向き変わらないじゃん。方位磁針の。でもこうなっているから変わる

んだ。

K44↓うん。

//あっ、そうか。こういうふうになっていたら向きは変わんないけど、こういうふうに上に置いたと きと下に置いたときが方向が違うってことはこうやって〔磁界が〕流れているってことか。

M45そうそう。

K46 わかった。

そしてMとともに、前時の授業を振り返りながら磁界の方向を見出した。そ して、K46でK自身は磁界の方向について理解するのである。

KとMのやりとりを見ていた0も、考え方を改める。

K48 だから、こうやって磁石があるでしょ。で、もし〔導線に電流をユ流したとしたらこっちがN

〔極〕でこっちがS〔極〕ね、こうやって流れていくんだよね。

049 うん。

M49ところが、この棒〔導線〕になったらN極もS極もプラスもマイナスもないからさあ、あの、

なんか、こっちに磁石みたいに、まっすぐ、これあるじゃんN極S極、でもこっちにはないから、この まますうっと[**ユ流れが逆になるときもあるんだわね。だからここに置いたときこっちから流した

ときはこっち向いて…。あの磁石の向きが違っていたじゃん。プラスとN〔極〕。

K50 うんうん、,だから、これが変わるってことはこの棒〔導線〕のまわりに取り巻いているってこ とになるんだわね、だからこう磁界だよね。

M51だからこの前も見たじゃん。縦に通してさあ、あれを…。導線を回りに円をかくように導線が 通っているとしたら回りに円をかいて…。

052     ↓あっ、だからこういうふうになったらこういうふうになるんだ。ああ、はいはい、

分かった分かったOK!

K53分かった?

M54で、前はこうやってこっちから電流流して〔方位磁針〕上になった場合は〔方位磁針の針の向 きが〕下になったじゃん。下にN〔極〕がきたじゃん。

055 こうやって回ってるの?

M56 下にN〔極〕が来たんだから…。//こうきたじゃんだからさあ、これに〔この課題に〕置き 換えてみるとこう流れていると、こう磁界が…こっちがS〔極〕、こっちからS〔極〕が来てるから、

こう回りになる。

057 なんで?

K58赤の方はN極だから、磁界の方向に向かなきゃいけないでしょ。

059 あっ、そうかSがこっちだから、…磁界はこうなっているんだ。

M60そうこう回っている 061 わかったわかった。

一時は他の班の結果を何も検討もしないまま受け入れようとしていた0であ ったが、KとMの説明には根拠があり、その根拠は前時の実験をもとにしてい たので、彼らの説明は「分かりやすく」「まことしやか」なものとして受け入 れられた(059、061)と考えられる。

『矛盾の自覚」から『探索」の段階

生徒Jの「矛盾の自覚」では「矛盾の自覚」の後に「探索」の前段階を見出

一94一

関連したドキュメント