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1節GALT(post−test)

1 GALT得点の推移

 事前調査で実施したGALT−pretestの得点結果と授業実践後に実施した GALT−posttestの得点結果を対比したものを巻末資料7に示す。

 pretestとposttestのGALT得点の差(posttest−pretest)の平均は全体で 0.37点、標準偏差は1。79であった。これから99%の信頼区間を算定すると、

    037−1.79×2.58<X<0.37十1.79×2.58          −4.25〈X<4.99

 となる。つまり、pretesもとposttestのGALT得点の差が5点以上開いた場  合はそのデータを1%の有意水準で棄却してよいことになる。そもそも、

 GALT得点は被験者の論理的思考能力の発達を反映するものであるから、得  点が5点下がることはもちろん、2か月という短期間で5点以上上昇するこ  とも考えられない。これはpretest、 posttestのいずれかもしくは両方の回答  方法に不備があったと思われる。そこで、pretestとpos枕estのGALT得点  の差が5点以上開いた4名の生徒については以下に行う分析の対象から除外

 した。

2 実験群・統制群間の有意差検定

 実験群と統制群のposttest同士の有意差検定は下の表12のようになり、

posttestでは実験群と統制群との間には5%の有意水準で有意差が認められた。

       表12 実験群・統制塁間のGALT得点の比較 人数 平均 標準偏差 t

実験群

73

6. 05 2. 82 2. 15   * 統制群

70 5.06

2. 71

       * p<0.05

 pretestでは両群とも有意差は認められなかったので、この結果から実験群の 方がposttestで得点が伸びたと考えてもよいが、μetestでは有意差は認めら

れないものの、実験群の方が得点が高かったという事実がある(P45参照)。

つまり、posttestで認められた有意差は、授業を行う以前にあった差を含んで いると考えられなくもない。そこで、実験群・統制群それぞれのGALT得点の 上昇度を比較した。表13がその結果をあらわしている。

        表13実験群と統制群のGALτ得点の伸び 人数 差の平均 差の標準偏差 t値

実験群

73

0. 521 1. 79 2.79  **

統制群

70

0. 229 1. 80

1.19 NS

      ** P<0.01

 pretestとposttestの問には約2か月の期間が経過しているので、実験群・統 制群ともにposttestの得点が上昇しているのは当然である。しかし、統制群の 得点の上昇が5%の有意差の範囲に収まっているに対し実験群では得点の上昇 に有意差が認められた。つまり、統制群の得点上昇よりも実験群の得点上昇の 方が有意に大きかったことがこの分析から明らかになった。これで先の posttestで認められた有意差は、実験授業の前後において実験群の得点が統制 群よりもよく伸びたためと説明ができる。

2節 定期テスト

1 定期テスト(学年末テスト)の作成

 実験授業を実施したことによって生徒の学習内容の定着度(知識獲得)に影 響が及んだかどうかを定期テストの結果を利用して検討する。

 3章 研究の計画の指導計画(P41参照)にあるように実験授業を含んだ10 時間の授業を筆者が実施したので、学年末テストの範囲中、筆者が実施した10 時間分の問題は筆者が作成した。残りの問題は本来の教科担任が作成した。(便 宜上これ以降、この本来の教科担任をrK教師」と呼ぶ。)筆者の作成した問 題は34問、K教師が作成した問題は15問であった。

 出題の仕方は特別に「のりこえ」を意図したものではなく、普段の定期テス

一66一

トと同じ要領で作成した。

 問題の内容については巻末資料8に掲載している。

2 定期テストの結果と群別の比較

 学年末テスト問題のうち筆者が作成した問題の正答率を実験群と統制群で比 較を行った結果、表14のようになった。

表14学年末テストの正答率の比較 人数 正答率(%) 標準編差 t

実験群

73

54. 76 2. 27 2. 24  **

統制群

74 46.94

1. 94

       p〈0.05

 これより、両個の問には5%の有意水準で有意差が見られることになるが、

もともと両群の間には学力差があり、このような差が生じたと考えることもで きる。そこで学年末テスト問題のうちK教師が作成した問題の正答率と2学期 に実施した期末テストの正答率も同様に比較してみた。

    表15学年末テスト(K教師作成分)と期末テストの比較

テスト名 正答率(%) 標準偏差 t

実験群 56. 07 2. 58

1.19 NS

学年末テスト

j教師作成分 統制群

51.67

2. 19

実験群

62.26

2。 37

1.48 NS

2学期

坙麻eスト 統制群 56. 54 2. 31

       P〈0. 05

結果は表15のようである。K教師作成の学年末テストも期末テストも実験群の 方が平均が高いことが分かるが、有意な差が出るほど高くはない。これに対し 筆者が担当した範囲の学年末テストでは有意差が認められたわけであるから、

実験授業を含む、筆者の実施した授業では実験群の方が学習内容の定着度が有 意に高かったことが明らかになった。

3 定期テスト問題と素朴概念の連関  定期テストは「のりこえ」を特に意識

       ア 導体と磁性体の概念が未分化 して作成してはいないが、問題によって

       である。

は生徒の素朴概念が変化したかどうかを

       イ 電流が直接・直線的に磁気作用 把握することができる。

       を及ぼすと考えている。

 例えば問題9は、第4章2節で挙げた

素朴概念(表16及びP50参照)が克服さ 表16「磁石の性質に関する調査」

れていないと正しい解答を得ることがで   から抽出された素朴概念 きない問題である。

 そこで、素朴概念を持っていた生徒のうち、この問題の正解者を調べること で、素朴概念がどの程度克服されたのかを明らかにし、さらに実験群と統制群 でその比較を行う。

 第4章2節でも述べたように、素朴概念アは「磁石の1二二に関する調査」の 問題1B、1Cより抽出された。そこでまず同調査の問題1B、1Cの回答が 共に正しい科学概念と一致しなかった生徒数を調べた。問題の回答が共に正し い科学概念と一致しないということは、これらの生徒は素朴概念アを持ってい る生徒と考えられる。そこでこれらの生徒を実験群・統制群に分けてみたとこ ろそれぞれの生徒数は表のようになった。

人数(人) 素朴概念アを持っ

トいると考えられ

髏カ徒数(人)

それ以外の生徒数

i人)

実験群

71 47 24

統制群

70 43 27

    df=1    κ20=0. 34〈κ2α05(3. 84)

 これをκ2検定にかけると同表のように5%の有意水準で実験群と統制群間 のア群の生徒数には連関が見られなかった。つまり、素朴概念アを持っている 生徒は実験群・統制群ともほぼ同程度の人数が存在していることになる。

一68一

 同様に問題5、6、8番の回答がそれぞれ正しい科学概念と一致しなかった 生徒数を調べ実験群・統制群間での連関を調べた。

人数(人) 素朴概念イを持っ

トいると考えられ

髏カ徒数(人)

それ以外の生徒数:

i人)

実験群

71 58 13

統制群

70 59 11

    df=1     Z20=0. 68〈κ2α05(3. 84)

 結果は表のようであるが、これも同様に、素朴概念イを持っている生徒は実 験群・統制群ともほぼ同程度の人数が存在していることが明らかになった。

定期テスト問題9番と素朴概念アを持っている生徒の連関

 素朴概念アを持っている生徒の内、定期テストの問題9番の3問をすべて正 解した生徒を調べたところ表のようになった。

素朴概念アを持っ トいると考えられ

髏カ徒数  (人)

問題9番を全 竦ウ解した生

k数  (人)

それ以外の生

k数

@  (人)

実験群

47 26 21

統制群

43

ユ0

33

    df=1     κ20=9. 62>κ20.01(6. 63)

 これらの生徒は素朴概念アを持っていたが、定期テストではその素朴概念が 克服されたと考えられる。これらの生徒数実験群・統制群との連関を調べると 表のように1%の有意水準で連関が見られた。つまり、素朴概念アを持ってい

る生徒のうち実験群にいた生徒の方が統制群にいた生徒より素朴概念を克服で きた生徒が多かったと言える。

定期テスト問題9番と素朴概念イを持っている生徒の連関

 素朴概念イを持っている生徒についても素朴概念アを持っている生徒と同様 に定期テストの問題9番の全問正解者数を調べた。

素朴概念イを持っ トいると考えられ

髏カ徒数  (人)

問題9番を全 竦ウ解した生

k数: (人)

それ以外の生

k数

@  (人)

実験群

58 35 23

統制群

59 17 42

    df=1   

κ2 O=11.77>Z2αoて(6.63)

 これらの生徒も素朴概念イを持っていたが、定期テストではその素朴概念が 克服されたと考えてよい。さらに、実験群・統制群との連関を調べると素朴概 念アを持っている生徒と同様に1%の有意水準で連関が見られた。つまり、素 朴概念イを持っている生徒の生徒のうち実験群にいた生徒の方が統制群にいた 生徒より素朴概念を克服できた生徒が多かったと言える。

一70一

3節 事後調査のまとめと考察

 GALT(pretest、 posttest)及び定期テストを分析した結果、実験群と統制 群の相違点を以下のように指摘することができる。

①実験授業の前後で生徒の論理的思考能力を比較すると、統制群に比べて   実験群の方が有意に伸びていた。

② 実験授業の範囲での学習内容の定着度は実験群の方が統制群よりも有意   に高かった。

③電磁気現象に関して、素朴概念が科学概念に変換した生徒を調べると実   験群の方が有意に多かった。

  これらの結果について「のりこえの構造」加味した理科授業の有効性の検   討を行った。

  ①について

 前にも述べたようにGALTは生徒の論理的思考力を測定するものである。

したがって、GALTの得点が有意に伸びたからといって生徒の概念変換が促 進されたという根拠にはならない。しかし、 「のりこえの構造」を加味した理 科授業が論理的思考能力の発達に何らかの影響を与えたことは見逃すことので

きない事実である。論理的思考能力は理科学習を遂行していくうえで重要な能 力のひとつである。その点を考慮すると、この結果は「のりこえの構造」を加 味した理科授業の有効性を傍証するものであると考えられる。

 ②について

学習内容の定着度についてもGALT同様に生徒の概念変i換が促進されたという 根拠にはならない。しかし、概念変換が促された結果、生徒の学習内容の定着 度が向上したと考えればこれも①と同様に「のりこえの構造」を加味した授業

の有効性を傍証するものと考えられる。

  ③について

素朴概念ア、イを持つ生徒は実験群・統制群ともにほぼ同数存在した。しかし、

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